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  • Airbnbの誕生と成長|借金から3兆円企業への道、そして現在

    Airbnbの誕生と成長|借金から3兆円企業への道、そして現在

    Airbnbは日本では「エアビー」という愛称までついて、それなりに知られる存在になってきました。そして、スタートアップを目指している人にとって、Airbnbがどのように生まれたのか、どのように成長したのかかなり研究されている分野かと思います。

    よくあるAirbnbの成長秘話は成功した部分だけを取り上げてあたかも順調に成長してきたかのように見えてしまいます。しかし、Airbnbはすぐに成功したわけではなく、数えきれない失敗を繰り返して、そこから学びながら成長してきました。

    例えば、資金調達がうまくいかず、クレジットカードで数百万単位の借金をして資金を作りました。プロの写真家にいい写真を撮ってもらうグロースハックも有名です。でも、そのプロの写真家って誰?どうやって写真が暗いと気がついたの?そもそも、Airbnbにとって「プロダクト」ってなんだったの?それを理解するにはもう少し掘り下げる必要があります。表面だけで学べることはあまり多くありません。

    そんなわけで「そんなのもう知ってるよ!」と思われる部分もあるかもしれませんが、英語でないと見落としてしまうような部分も細かく拾ってみようかと思います。ブライアン、ジョー、ネイサンという三人の共同創業者のインタビューから骨格だけでなく背景もわかるようにまとめました。

    ちなみに、この記事はかなり長いのではてなブックマークPocketに保存しておくことをお勧めします!

    有名なAirbnb誕生秘話とあまり知られてない前日譚

    後にAirbnbの創業者となるブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアの二人はアパートの家賃が払えなくなるために国際デザインカンファレンスの時に自宅アパートのロフトを貸出したのがAirbnbの発想となった……というのは有名な話でWikipediaにも書いてありますよね。

    あまり有名でないのは、ブライアン・チェスキーの両親はソーシャルワーカーで収入があまりなく、息子にはちゃんとお金がもらえる仕事について欲しかったという事。アートスクールに行くと決めた時「ソーシャルワーカーより収入が低い職業を見つけるなんて!」と驚かれたそうです。

    卒業後はロサンジェルスで仕事を見つけたのですが「決まった道を進むクルマに乗っている」という恐怖感に襲われたそうです。おそらくこれは誰でも持ったことのある感覚じゃないかと思います。ボクもありました。だからシンガポールやアムステルダムに行ったし、マイクロソフトをやめて起業しました。起業するきっかけっていくつかありますが「このままでいいのかという漠然とした不安感」はその一つですよね。

    閑話休題。そうした漠然とした不安感からブライアン・チェスキーはジョー・ゲビアの誘いで、起業をすることに決めたそうです。中古のホンダシビックのトランクと後部座席に家財道具を全部詰め込み、サンフランシスコに向かいました。その時に銀行にあったお金が1000ドル(日本円で10万円くらい)で、アパートの家賃が1150ドル。明らかに足りない。これが有名なAirbnbの発想につながる自宅アパートのロフト貸出しにつながるわけです。

    ちなみに、ベッドと朝食(Bed & Breakfast)は簡易な宿泊施設のこと。その当時にブライアンとジョーが貸し出せたのは空気ベッド(Air Bed)だったので、Air Bed and Breakfastという名前になり、それがAirbnbとなります。

    ちなみに、彼らが最初にやったのは民泊ではありませんでした。ルームメイトのマッチングサービスが最初のプロダクトでした。彼ら自身、国際デザインカンファレンスでやったAirbnbは無理っぽいと考えていたのです。しかし、ルームメイトのマッチングはあまりうまくいきませんでした。そこで、次に考えたのがAirbed for Conference。つまり、イベント向けの空気ベッドの提供です。このアイデアをSXSWで試しました。これもあまりうまくいきませんでした。

    何回かアイデアを試しながら……

    1. 民泊モデル(空気ベッドの貸し出しやカンファレンス専門の宿泊サイトではなく)
    2. PayPalのようなゲートウェイを使わない直接支払い方式 *1
    3. 簡単にブッキングができる(三クリックで物件を探して予約ができる。スティーブ・ジョブスのiPod開発の時のルールと同じ。)

    ……という基本のモデルを決めました。

    アイデアを実現する

    資金調達は失敗、借金ではじめる

    2008年の夏に(後にY CombinatorのCEOになる)マイケル・サイベルと出会ってエンジェル(投資家)というものを教えてもらいます。ブライアンは「この人ってエンジェル信じてるわけ?」と一瞬思ったほどスタートアップの資金調達について分かっていなかったそうです。そこで数十人のエンジェル投資家と数社のベンチャーキャピタルを紹介してもらいました。150万ドルの評価で15万ドルを調達しようとしていました。ほとんど会ってくれないか、会ってくれても全て断られたそうです。当時の投資家向けプレゼンテーションがこちら。

    断られた理由は二つ。一つ目はブライアンとジョーが開発者ではなく、デザイナーだったこと。ネイサンという開発者が三人目の共同創業者として参加していたのですが。当時のスタートアップは開発者がはじめるものという既成概念がありました。もう一つは(そして最大の理由は)人が見ず知らずの他人と部屋を喜んで共有するなんてバカげた考えだと思われたこと。そして2008年はリーマンショックで投資熱が完全に冷めていたことも要因の一つでしょう。

    結局、資金調達はうまくいかなかったため、借金ではじめることにしました。ブライアンとジョーの二人は作れる限りのクレジットカードを作ってトレーディングカードのバインダーに入れていました。そのおかげで、ブライアンの場合は3万ドル(約300万円)ほどのクレジットカードの借金があったそうです。

    借金まみれで成功が見えず、どん底が続く

    基本的なモデルは決まったものの、それを体験してもらわなければいけません。

    そしてデンバーの民主党全国会議で宿泊場所の提供をはじめます。この時に800室がWebサイトに登録され、80室がブッキングされました。共和党全国会議で同じことをやりましたが、その時は2室しかブッキングされなかったそうです。そして、次の会議ではなんとブッキングが一つもありませんでした。この頃に一人の共同創業者のネイサンが婚約者のいるボストンに引っ越してしまいます。借金まみれ、全く成功が見えない。どうしよう、どうしよう!と考えました。

    空気ベッドの貸し出しではお金が思ったように稼げないため、両党の全国会議では朝食のビジネスにピボットしました。その時に売り出したのが当時の民主党大統領候補者だったバラク・オバマと共和党の大統領候補だったジョン・マケインのスペシャルデザインのシリアルでした。

    で、借金まみれでどうやってそんな商品を作れたのか?大手のシリアル会社からは断られ、中小のシリアル会社から来た見積もりは20万ドル(約2000万円)で無理。アートスクールの先輩の会社が売り上げの分け前を渡すことを条件に無料で1000箱分を印刷してくれました。それをブライアンとジョーの二人で糊付けして組み立てます。そして、スーパーマーケットで買って来たシリアルを詰め込みます。1000箱ですよ!

    これまでのイベントで集めたプレスのリストにこのシリアルを送り、パブリシティーをしました。なんと、これがアタって(上記の理由でマケインの方は売れ残ったそうですが)30万ドル稼ぐことができたそうです。当時は民泊の会社というよりはシリアルの会社といった感じだったそうです。そしてその売り上げもその年の冬にはなくなってしまいます。

    ソース:Airbnb “Obamao”

    この時期はAirbnbにとって最も暗い時期だったそうですが、学びもありました。一つ目はアイデアを実現するのにそれほどお金はかからないということ。もう一つは、あきらめてはいけないということ。当時は週200ドル程度の売り上げしかなかったのに。

    なぜ、やめないのか?ビジネスをはじめたからにはその分野に関して誰も知らない知見があるはず。じゃなかったら、なんでそもそもはじめるのか?誰も知らない何かを知っているはず。Airbnbの場合は「自分たちが経験した国際デザインコンベンションの時の他人との共同生活の素晴らしさ」だった。これは不可能なことではなく、経験すれば誰でもすぐに理解できるはず。

    これもDropboxの共同創業者でCEOのドリュー・ヒューストンの言う所の「自分のテニスボールを見つけないといけない *2」ですね。Spotifyのダニエル・エクも同じでした。Airbnbの二人の創業者も同じで「自分のテニスボールを見つけた」ということです。

    成長段階

    とはいえ、この時、創業者の三人は自分たちの考える100%のことをしていないと感じていました。ネイサンはボストンに住んでいて、ブライアンとジョーはAir Bed & Breakfast以外のこともやっていました。スタートアップにとって一番の敵は集中できないことです。何かをしながらはできない。そこで、自分たちの100%を試すためにY Combinatorの2009年冬季バッチに応募して、合格。そこで成功のきっかけを見つけます。しかし、これもそれほど単純な話ではありません。

    当時のポール・グラハムの評価は「プロダクトはいいと思わないが(本当に全く知らない赤の他人を自分の家の泊まらせるバカがいるの?)、ゴキブリのようにしぶとい(当時は投資が冷え込んでスタートアップにとってゴキブリしか生き残れない「核の冬」と言われていました)創業者チーム」でした。プロダクトというよりもチームに期待して2万ドル(約200万円なので、クレジットカードの借金より少ないですね)の投資を受け取りました。ポール・グラハムから言われたのは最終日までに黒字にすること(経済環境があまりに悪いので、Demo Dayに投資家が全く来ない可能性もあったから)。この時に名前をAirbnbに変えています。

    この時にY CombinatorのフェローでありGmailの生みの親であるポール・ブックハイトからディープアピールについて学びます。つまり「100人のユーザーに深く愛されるプロダクトを作ること」です。ポール・グラハムからは「市場に受け入れられるプロダクト(Product Market Fit:PMF *3)」が見つかるまでスケールする必要はい」こと、そして「直接ユーザーに会いに行く大切さ」を学びます。

    最初のグロースハック:市場に受け入れられるプロダクト(PMF)を作る

    「直接ユーザーに会いに行く大切さ」と言うのは簡単ですが、当時、一番ユーザーがたくさんいたのはニューヨーク。創業者たちが住んでいたのはサンフランシスコ。そんなお金ありません。ポール・グラハムに「どうしたらいい?」と相談しても「なんとかしろ」としか言われない。

    実際になんとかして、ニューヨークに行きます。そして、全てのユーザーホスト(実はニューヨークでは二十人強のホストしかいなかった)と話をします。どうやって?Airbnbで予約をして、自分たち自身がホストの場所に住み込むのです!そこで行うのはまさにデザイン思考的なアプローチです。観察と対話。そして共感と共創。さすがデザイナー創業者!週末を使って4回に分けてニューヨークまで通いました。

    • これは有名ですが、まず気がついたのが写真の暗さ。せっかくいい物件でも明るく魅力的に撮れていない。そこでプロの写真家(と言っても創業者のブライアンとジョー本人!)が物件の撮影を無料で撮影することを提案します。そりゃ無料だよ……
    • 写真撮影の間にWebサイトのどこが使いにくいのかをテストしてもらいフィードバックを受けます。
    • 写真撮影とユーザーテストの後、一緒にビールを飲みにいきます。一回に十人程度。その飲み会の場でユーザーに自分たちのストーリーを語ります。どうしてアイデアが浮かんだのか。何を成し遂げたいのか。そうすることで共感を生みユーザーから熱狂的な支持者になっていきます。
    • ユーザーとの関係を作ることで、様々な改善の繰り返しをユーザーとともに実行できるようになりました。例えば、プロフィール文が短いのを長くするように提案したり、高すぎる家賃(一泊400ドル)を市場にあった価格まで安くすることを提案したり。

    これらの改善で売り上げが大幅に改善されました。ようやく「市場に受け入れられるプロダクト(PMF)」が見つかったのです。

    結局、Airbnbの「プロダクト」とはなんだったのか?

    では、創業者が作り上げたかった「プロダクト」はなんだったのでしょうか?それはルームメイトのマッチングでもなく、カンファレンス向けの宿泊サービスでもなく、コレクター向けのシリアルでもなく、民泊ですらありませんでした。

    Airbnbの「プロダクト」は「自分たちが経験した国際デザインコンベンションの時の他人との共同生活の素晴らしさ」ですよね。デザイナーであるブライアンとジョーはAirbnbの着想となった国際デザインコンベンションでゲストがいい体験ができる工夫をしていました。到着、イベント期間中、イベント後のカスタマージャーニーを通じて何をしたらいいのかを考えました。たった三人のゲストのためにです。

    例えば空港までの送り迎え、近所のいいカフェやバーの紹介とか。他にも「I Stayed at Air Bed & Breakfast 2007」のTシャツを作るとか、コンベンション会場に行く途中にホームレスがいて小銭をねだるから、気持ちよくホームレスを支援できるように小銭を渡しておくとか。

    しかし、Airbnbのユーザーホストたちはデザイナーではありません。「体験」を意識することはなかなかできないことです。創業者チームは単に安価な寝泊まりの場所ではなく、Airbnbのユーザーホストが自分たちのように「体験」を提供するように支援をしなければいけなかったのです。それがAirbnbのプロダクトなのだから。

    こうしてY Combinatorのプログラムを通じて自分たちにとっての「市場に受け入れられるプロダクト(PMF)」を見つけることができました。

    成長のグロースハック:急成長の原動力

    「市場に受け入れられるプロダクト(PMF)」を見つけた後は成長(グロース)の段階ですよね。せっかくですから最後はどのように最初のグロースをしたのか紹介して終わりましょう。

    Crunchbaseによると最初のY Combinatorからの(当時の借金より少ない)2万ドルのシード投資の後、プログラムを卒業してから有名なベンチャーキャピタルのSequoia Capitalなどから合計60万ドル(約6000万円)のシード投資を受け取っています。これでだいぶ一息ついてチームを作れたのではないかと想像します。

    ミートアップでのユーザーホストの教育と七つ星のエクスペリエンス

    Airbnbにとっての「プロダクト」は「自分たちが経験した国際デザインコンベンションの時の他人との共同生活の素晴らしさ」なので、ユーザーホストが同じような体験を生み出すようにしなければいけません。

    そこで、主要都市でミートアップを開催し、各地のユーザーホストと直接会ってどのようにAirbnbの体験を生み出すのかを教育しました。これはボストンやオースティンのようなアメリカの都市だけではなく、ロンドンやパリでも同様に直接創業者たちが出向きました。

    では、ユーザーホストが目指すべき「体験」とはなんでしょうか?Airbnbのレビューは最高で五つ星ですが、目指すところは七つ星です。五つ星は最低ライン。例えば、ユーザーゲストには事前に空港から宿泊場所までの地図を渡す。ユーザーゲストが到着する時には家にいてお出迎え。これが五つ星の「体験」です。六つ星は空港までユーザーホストがユーザーゲストを迎えに行く。では、七つ星の「体験」はなんでしょうか?

    例えばリムジンで空港まで出迎える?ゲストユーザーがサーファーだったらサーフィンの雑誌を車に用意しておく?八星「体験」は?九つ星「体験」は?いろいろなことが考えられます。「100人の人に心から愛されるサービスを作る」というのは五つ星では足りないということです。Airbnbが何を目指しているのかをユーザーホストと共有することが非常に大切なのです。

    また、ニューヨークで成功した写真の改善を他の地域でも行うために20人の写真家と契約をしたのも2010年からです。2012年までに約2000人の写真家と契約をしています。

    Craiglistのハック

    ただ、Dropboxの事例でもわかるように、「市場に受け入れられるプロダクト(PMF)」があるからと言って急激に成長するとは限りません。Airbnbの利用者が急増したのは2010年からで、競合サイトのCraiglistを活用したグロースハックを開始した時期と重なります。

    いい写真を見る以前に、Airbnbのサイトに来てくれないと仕方ないですからね。Craiglistは簡単に言えば三行広告プラットフォームで、非常に人気のあるサイトです。その地域の「売ります/買います」情報や民泊情報はCraiglistでチェックするのが一般的でした。そこで、Airbnbの物件を掲載したホストにCraiglistにAirbnbの物件をシェアするように促しました。

    海外進出のゲリラ作戦

    Airbnbは2010年11月に最初の大規模投資(シリーズA)で720万ドル(約7億2000万円)を調達しています。さらに翌年2011年7月に1億1200万ドルをシリーズBで調達します。二年前までクレジットカードで借金を作っていたのにすごいですね!これでかなり大規模なことができるようになります。

    「市場に受け入れられるプロダクト(PMF)」を見つけて、最初のトラクションが生まれたら、あとはかなり機械的になり、それぞれの分野の専門家がいます。もちろん全くクリエイティブでないという意味ではありません。

    1. SEO
    2. ペイドメディア
    3. ソーシャルメディア
    4. オウンドメディア

    ただし、Airbnbの場合は創業者たちがY Combinatorで学んだ手法を後から参加したチームにきちんと受け継いでいます。Airbnbの売り上げの半分はヨーロッパですが、ヨーロッパに本格的に進出する時にユーザーとの共創や大統領選のシリアルのようなクリエイティブなキャンペーンをその土地に合わせて展開しています、しかも低予算で。

    Airbnbの未来:課題と可能性

    Airbnbは、3兆円規模の企業としてホスピタリティ業界に大きな影響を与えています。しかし、その成長とともに、複雑な課題も表面化しています。これらの課題を解決することは、Airbnbが次のステージへ進むために避けて通れない道です。

    1. 規制問題と地域社会との摩擦

    Airbnbは、都市部や観光地を中心に、地元住民との摩擦が顕著になっています。特に、大都市では「短期賃貸が住宅価格の上昇や供給不足を引き起こしている」との批判が相次いでいます。一部の都市では、Airbnbホストに対して厳しいライセンス制度を導入したり、短期賃貸の上限日数を設定するなどの規制が強化されています。

    これらの規制が強化されると、Airbnbのビジネスモデルそのものに影響を及ぼす可能性があります。特に、地域の法律や文化に適応しつつ、ホストとゲスト双方のニーズを満たす仕組みを構築することが急務です。

    2. ホストとゲスト間のトラブル

    Airbnbの成長に伴い、ホストとゲスト間のトラブルも増加しています。物件の損壊や近隣住民への迷惑行為、ゲストの安全に関わる事件など、課題は多岐にわたります。

    Airbnbはこれまでに、ゲストとホスト双方に向けた保証プログラムやサポートサービスを提供してきましたが、それでも課題解決には至っていません。AIやデータ分析を活用し、問題を未然に防ぐシステムの導入が求められています。

    3. コミュニティの分断と観光公害(オーバーツーリズム)

    観光地での短期賃貸の急増により、地域コミュニティが分断されるケースも増えています。例えば、観光客向けの物件が増えることで、地元住民が住みづらくなる「観光公害(オーバーツーリズム)」が問題視されています。

    Airbnbは、観光地に対して持続可能なソリューションを提供する責任があります。これには、地元文化を尊重した観光促進や、観光客が地域社会と調和して暮らせる仕組みづくりが含まれます。

    4. ホストエコノミーの維持と支援

    Airbnbは多くのホストにとって重要な収入源ですが、競争の激化や規制の影響で、多くのホストが収益性を維持するのに苦労しています。一部のホストは、収益減少や顧客満足度の低下に直面しています。

    今後、Airbnbはホスト向けの教育プログラムを拡充し、収益を最大化する方法やホスピタリティの質を向上させる支援を行う必要があります。また、ホストの負担を軽減するための新しいツールやサービスの提供も求められています。

    5. ブランドイメージの維持

    Airbnbは、「見知らぬ人々との交流を通じた素晴らしい体験」という理念を掲げて成長してきました。しかし、急速な事業拡大の中で、一部のホストが「利益追求型」に偏ることで、ブランドイメージが揺らぎつつあります。

    創業時の「他人との共同生活の素晴らしさ」を軸に、体験の質を再確認し、それを維持・向上させるための取り組みが必要です。特に、ホストがゲストに対して提供する体験の標準を設け、それを実現するためのサポート体制を整えることが重要です。

    Airbnbの今後の挑戦

    Airbnbは、これらの課題を克服し、持続可能なビジネスモデルを構築する必要があります。そのためには、規制当局や地元コミュニティとの対話を深め、テクノロジーを活用して安全性と体験価値を高めることが鍵となるでしょう。創業時のビジョンを見失うことなく、地域社会と共存しながら成長を続けられるかどうかが、Airbnbの未来を決定づけるポイントです。

    参考文献

    Interview With AirBnB Founder – from $0 to $30 Billion Company – Brian Chesky, CEO talks – YouTube

    Blitzscaling 18: Brian Chesky on Launching Airbnb and the Challenges of Scale – YouTube

    The real story about how Airbnb was founded – Nathan Blecharczyk Co-founder Airbnb – Startup Success – YouTube

    How design thinking transformed Airbnb from failing startup to billion-dollar business – YouTube

    Travel Like A Human With Joe Gebbia, Co-founder of AirBnB!

    Airbnb leverages Craigslist in a really cool way | Hacker News

    [500DISTRO] Going for Global: 5 Guerrilla Tactics When the Slick Stuff Fails – YouTube

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    *1:実はこれすっごく難しいです。これで失敗しているスタートアップはたくさんあります。みなさん、真似しないように!いまはStripeやBraintreeとかあるので体験を重視するために独自のペイメントシステムを作る必要はないです。

    *2:犬はテニスボールを投げると夢中になって追いかけて遊ぶ。起業家も犬にとってのテニスボールのように夢中になれることを見つけないといけないという意味

    *3:マーク・アンドリーセンが提唱したコンセプト。プロダクトやサービスの生死を決めるもの。プロダクトがマーケットにフィットしている状態。つまり、プロダクトを求めるユーザーがいる状態

  • Spotifyの誕生と成長|二年半の赤字から音楽市場V字回復の立役者に

    Spotifyの誕生と成長|二年半の赤字から音楽市場V字回復の立役者に

    音楽市場は2014年まで15年続けて縮小を続けていましたが、2015年から回復して今も売上を伸ばし続けています。この音楽市場のV字回復に最大限の貢献をしているのが音楽ストリーミングで、Spotifyはその最大手です。日本の音楽市場だけ、未だに回復できていませんが、Spotifyが起爆剤になってくれることに期待ですね。

    日本語でSpotifyの歴史を詳しく解説している情報がなかったので、まとめてみました。

    Spotifyをはじめる前の成功と失敗:Spotifyをはじめるきっかけ

    ダニエル・エクはスウェーデンの生まれで、14歳の時にビジネスを(偶然)はじめました。当時すでにC++でプログラミングができました。1997年当時はWebが流行りだして、Webサイトを欲しがる人たちがいました。特にやりたくはなかったそうですが、その需要に応えるうちにいつの間にかビジネスになり、20歳くらいには人を雇い、自社のサーバー環境を運営する規模になっていたそうです。

    Googleに社員として応募したけれど、断られて自分で検索エンジンを作ることに決めたそうです。これがあまりうまくいかず、会社は破産寸前まで陥って社員を解雇しなければいけなくなりました。この頃に出会ったのがドイツ人で共同創業者のマーティン・ローレンソンでした。マーティンは自分の会社を売ってやることがなく、いろんなアイデアをダニエルと話し合いました。そこで生まれたのがSpotifyでした。2005年のことでした。ダニエル・エクが23歳、マーティン・ローレンソンが37歳でした。

    なぜ音楽ビジネス?

    音楽の聴き方にはもっといいやり方があると最初に示したのはNapsterでした。ボク自身もそれなりの音楽好きですので、Napsterが登場した時は本当に衝撃的でした。すげー!でも、え?こんなこと出来ていいの?という感覚。当時は著作権上「こんなこと出来ていいの?」という不安はまさに的中してNapsterはビジネスとして成り立つことなく消え去りました。

    思春期のダニエル・エクもNapsterの登場には衝撃を受けたそうです。ダニエル・エクにとって幸運だったのはスウェーデンに住んでいたことです。スウェーデンは当時からギガバイトのインターネットのアクセスが非常に安価(2000円/月程度)で、Napsterのような音楽ファイルの共有サービスもそれほどストレスなく使えたことです。

    失敗の後、心機一転、新しいビジネスを考える時、自分の本当にやりたいことをやろうと決めたそうです。金銭的な成功では幸せになれなかった、失敗はそれをさらに悲しいものにしました。次のステップに進むとき「次の五年間に集中できることは何か」を問いかけたそうです。そして、それは音楽とテクノロジーでした。ビジョンは「iTunesに全ての音楽が詰まっている状態」だったそうです。

    Dropboxの共同創業者でCEOのドリュー・ヒューストンも言っていますが「自分のテニスボールを見つけないといけない *1」ということですね。これは起業家だけでなく、働く人すべてにとって本当に大事なことだと思います。

    それでも、なんでよりによってみんなが失敗している音楽ビジネス?

    それにしても、音楽業界は数多のスタートアップが挑戦して失敗した企業の屍が積みあがった市場です。Napster、Rhapsody、Kazaaなど様々な企業が挑戦してノックアウトされて、退場していきました。若干成功していると言えるのはPandoraでしたが、それもユーザーが好きな音楽を好きな時に聴けるサービスではありません。Last.fmもまだ存在はしますが……ダニエルの想定は「音楽サービス自体はユーザーに受け入れられているが、ビジネスモデルが壊れている」でした。つまり、ビジネスモデルさえ確立すればいい。

    そして、ビジネスモデルに関してはダニエル・エクは楽観的だったそうです。何も知らなかったから。何か本当に革新的なことをやるにはその業界にいないほうがいい。「まあ、半年くらいでサービスインできるだろう」と予想していたそうです。そして、結局は二年半かかることになります。

    ローンチまでの二年間半の音楽業界との格闘

    プロダクト面ではプライベートベータからパブリックベータまで公開していきましたが、ライセンスの交渉は難航していました。

    当時「半年くらいでローンチできるだろう」と考えていたのは必要なロイヤリティーさえ支払えば著作権管理団体がうまいことやってくれるだろうと予想していたからです。そこで、投資家のフレッド・ウィルソンの友人のフレッド・デイビスに相談したところ「いやいや、レーベルと個別に交渉しないとダメだよ。なんだったらレーベルの人を紹介するけど」と言われたそうです。

    紹介してもらえたレーベル以外も、様々な方法でコネクションを作って交渉の場を持てるようにしたそうです。例えば、レーベルの担当者の子供が通う学校の間でSpotifyを流行らせたり。直接会えなくても、周りからせめてかなり地道な努力をしたようです。そして、メジャーレーベルや大手のインディーレーベルと交渉をはじめたダニエルでしたが、最初の反応はすごく良かったそうです。ところが、話を詰めていくとどんどんペースが落ちていったそうです。そして最後にはほとんどのレーベルで「交渉はおしまい。もう来ないでね」となってしまいました。

    ダニエル・エクはニューヨークからストックホルムへの飛行機のチケットをキャンセルして粘ることにしました。「もう来ないでね」と言われたので、アポイントは取れません。そこで、レーベルのオフィスの前で寝泊りをしたそうです。ホームレスのように。

    同じ交渉をしても断られるのはわかっているので、作戦を変えました。アメリカのレーベルにとってアメリカ市場は最大の市場であって、あまり実験的なことはやりたくない。そこで、アメリカではなく実験ができる国に最初は絞ったのです。いずれにせよ海賊版の問題があるのだから、テストマーケットとしてスウェーデンは悪くない。

    そうして創業から二年半たった2008年にSpotifyを正式にローンチできました。

    でも、二年半もどうやってお金のやりくりしたの?

    それにしても不思議なのは二年半もの間、どうやってお金のやりくりをして開発者を含む従業員に給料を支払っていたのか?ということです。

    起業家の資金調達は大きく分けて二種類、自分のお金か他人のお金です。自己資金の場合はブートストラップといい、他人のお金はエンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達です。銀行からの借金も他人のお金ですね。Spotifyの場合はブートストラップ。つまり、自己資金でした。

    ダニエルとマーティンという二人の創業者は今で言うところの連続起業家で、それなりに資金を持っていたいんですね。ダニエルの場合は会社が破産したということですが、自分の資金は別に持っていたのでしょう。二人合わせて十億円ほど使ったそうです。

    Spotifyが外部から資金調達をしたのはレーベルとの契約ができた2008年が最初です(Crunchbase参照)。それまではずっと自己資金でやってたってのはすごいですね。

    裏返して言えば、このレーベルとの交渉の結果によってはSpotifyは沈没する可能性もあったわけです。レーベルとの交渉は全てダニエル・エクが行なっていて、社員に詳しい状況は知らせていなかったそうです。振り返って考えると、社員に対してもっと透明性があっても良かったと反省しているそうです。

    Spotifyの成功要因

    プロダクトをローンチできたからといって、それがすぐに成功につながるわけではありません。「市場に受け入れられるプロダクト(Product Market Fit*2)」が必要です。先行する音楽サービスはこれがありませんでした。

    先行するプロダクト/サービスと何が違ったのか?Spotifyの成功要因はよく研究されているので、ここでは要点だけ絞ってご紹介します。

    • 「音楽全部入りのiTunes」というわかりやすいコンセプト
    • オンデマンドで好きな音楽を好きな時に聴ける利便性
    • それが全て無料で利用できるフリーミアムモデル
    • Facebookとの独占的音楽サービスインテグレーション契約(2011年)

    ソース:“Forget Taylor Swift: Spotify is facing a much bigger problem”

    Spotifyは音楽の何を変えたのか?

    Napsterが可能性としてみせたオンデマンドの音楽配信をメインストリームにしたのがSpotifyの功績で、それによって音楽業界はV字回復をすることができました。しかし、Spotifyが変えたのはそれだけではありません。

    音楽の多様化

    音楽はこれまで以上にユーザーの耳に届いています。そして、これまでにない多様な音楽を聞く機会があります。例えば、韓国でSpotifyをローンチした後にアメリカ西海岸でユーザー数が増えたそうです。そしてトルコでローンチした後にドイツでユーザー数が増えたそうです。ボク自身もオランダに住んでいた時に日本の音楽をSpotifyで聴いていました。

    聴き方の多様化

    また、アルバムという単位から解放されました。特にEDMのアーティストは毎週リリースしてるんじゃないかというくらい新曲を頻繁に発表しています。そして、アルバム単位で聴きたい人もSpotifyなら気兼ねなく全て聴く事ができます。iTunesの場合は曲単位での購入なのでアルバム全部よりも好きな曲だけ購入するというパターンが多かったそうです。

    アーティストが作品を作りやすい環境

    Spotifyのようなプラットフォームができてから、アーティストはレーベルを経由せずに直接Spotifyに作品をアップロードできるようになりました。例えば、Distrokidを使えばSpotifyだけではなく、iTunesやAmazonにも作品をアップロードできます。プロモーションも自分でできます。

    まとめ

    Spotifyの共同創業者でCEOのダニエル・エクはなかなかシャイな人であまりメディアに露出する機会がありません。メディアに出る時は色々と話をしてくれるので、隠しているわけではなく、単にシャイなんでしょうね。英語でもあまり多くないのですが、Spotifyに関して日本語でまとまった情報がなかったので、まとめてみました。

    参考文献

    World’s Largest Startup Company Platform | Startups.co

    When Spotify was young: the early years | VatorNews

    Fred Davis, Rainmaker Who Sheparded Spotify, Sticking Around as IPO Talk Ramps Up | Billboard

    E580: Spotify’s Daniel Ek on state of streaming, tenacity, transparency, competition by TWiStartups | TWi Startups | Free Listening on SoundCloud

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    *1:犬はテニスボールを投げると夢中になって追いかけて遊ぶ。起業家も犬にとってのテニスボールのように夢中になれることを見つけないといけないという意味

    *2:マーク・アンドリーセンが提唱したコンセプト。プロダクトやサービスの生死を決めるもの。プロダクトがマーケットにフィットしている状態。つまり、プロダクトを求めるユーザーがいる状態

  • Netflixから学ぶコンテンツビジネス成功の秘訣|アヴェンジャーズとディフェンダーズ/スタートアップとハリウッド/ライブストリーミングの可能性

    Netflixから学ぶコンテンツビジネス成功の秘訣|アヴェンジャーズとディフェンダーズ/スタートアップとハリウッド/ライブストリーミングの可能性

    この記事はa16zによるオリジナルインタビュー”a16z Podcast: The Internet of Taste, Streaming Content to Culture“の日本語抄訳です。英文のオリジナルはSoundCloudYouTubeで確認してください。

    創業したての頃のNetflixはどんな感じだった?

    • 当時のNetflixの社員はみんなカッターと定規を持ってた。DVDを郵便で送るのに最適なサイズを計らないといけないから。
    • 創業者でCEOのリード・ヘイスティングスがすごいのは、その当時から現在のモデルを考えていたこと。ホームエンターテイメントはもうすぐインターネットで届けられると見越していた。当時はサウスパークのビデオを電子メールで送ろうとしたら、それを開くのに7日はかかっただろうからね。クレイジーだと思った。

    スタートアップとハリウッドの違いとNetflixの文化

    • シリコンバレーは量を求める。ハリウッドは質を求める。この両方で成功することは滅多にない。
    • Netflixはシリコンバレーにもハリウッドにも拠点を置いて、ハリウッドを拠点としている1000人くらいは世界最高のエンターテインメント企業だと思ってるし、シリコンバレーを拠点としている4000人くらいは世界最高の技術会社だと思ってる。それぞれ正しいし、二つの文化を混ぜ合わせようとしない。
    • このような文化は創業者でありCEOのリード・ヘイスティングスによるところが多い。誰でも発言をしていいし、そして決まったことに関して結果を出す。具体的に何をやってるのかわかんないけど、サポートするよ。そういう文化。

    年間でどれくらいのコンテンツを作る?

    • 1日に7から10くらい。だから大体年間で2000くらい。その中から今年では30本のオリジナルシリーズになって、18のオリジナル映画、35オリジナル子供向けシリーズ、19の各国独自のシリーズ。68ドキュメンタリープロジェクト。だから実際に作られるのは100くらい。
    • 幸いにしてアイデアは無尽蔵に出てくる。足りないのはそれを実行できる人。

    VCにとって気になるのは成功するスタートアップの見極め。それはコンテンツ業界でも同じですよね。成功を見過ごす(False Positive)、失敗を掴む(False Negative)をどうやって見極めますか?

    • ストレンジャー・シングス 未知の世界』のザ・ダファー・ブラザーズがいい例。彼らは若く経験もなかった。でも、素晴らしいビジョンを持っていて、その提案を聞いてすぐにシリーズになるだろうと思った。エピソードが出来上がるに成功の核心は高まった。まさかここまで大成功するとは予想してなかったが。
    • アイデアを実行に移すという意味でも、彼らはあまり経験はなかった。他人のビジョンをシリーズ化したり、ワーナー・ブラザースでゾンビ映画を作ったけど公開はされなかった。あとでそれを見せてもらったんだけど、とてもいい映画だった。ただ、素晴らしい映画体験を作るにはリソースが少なすぎた。
    • それがヒットするかどうかは公開するまでわからない。公開したあとも、徐々に口コミで広まってしばらく経ってからヒットすることもある。『殺人者への道』は2015年12月に公開された。これは作品の良さもあるけど、タイミングもよかった。ほとんどマーケティングしなかったのに口コミがすぐに広がってヒットした。Netflixの社員の中でここまでのヒットを予想した人はいないんじゃないか。

    脚本が良くても、実際の出来が悪かった場合はどうします?

    • 会社がやり直しを命じることはない。ダメだと思ったらクリエーターが自然と方向転換する。クリエーターが「これが自分のショーだ」だと言えばそれを支援する。DVDのメーリングサービス時代の学びでもあるのだけれど、人の好みはものものすごく多様だということ。当時は10万の作品があって、一日6万作品を郵送していた。
    • 失敗と言えるのは制作費と比較して十分な視聴がされなかった時。大ヒット映画『グリーンデスティニー』の続編『ソード・オブ・デスティニー』はヒットはしたけど、かかった制作費を考えると商業的に成功したとは言えなかった。

    インターネットにより嗜好の多様性がなくなってきたと言われています。みんなアメリカのハリウッド映画を見て、みんな同じ音楽を聴いて。でも、Netflixでは多様性が見られる。

    • Netflixでは両方の現象が見られる。『ストレンジャー・シングス』はすごくグローバル。アメリカの八十年代を経験した人だけでなく、全世界様々な世代が見ている。Netflixみたいなサービスがあるからあのテレビで引用されているような音楽や映画を若い世代の人たちも理解できる。
    • 一方で19カ国で独自コンテンツを制作している。その国独自の視聴者のための独自コンテンツ。この外国で製作された独自コンテンツに英語の字幕や吹替をつけて配信すると、アメリカ国内のケーブルテレビの独自番組くらいのヒットになる。アメリカでリメイクしたものより、その国独自で作ったものをそのまま字幕や吹き替えで持ってきた方がヒットする。
    • 自分がアリゾナに住んでいてレンタルビデオ屋で働いていた時、すっごくマイナーな映画は店に置けなかった。それを借りる人が通える範囲の距離にそれほどいないから。外国映画を上映している映画館も長距離バスに乗っていかなければいけなかった。コンテンツ制作者もそういうマイナー映画を気に入った人たちに別の映画のおすすめとかできなかった。アリゾナ州に住んでいる人間でそんな映画が好きなのは自分くらいなのだったから、そんな人間を製作者が探すことは無理だった。

    コンテンツ制作とスタートアップの類似性は

    • スタートアップの創業者に近いのはテレビ番組制作ではショーランナー。映画の場合、ショーランナーは脚本家を指すし、その制作にはもっと多くの人が関わる。そういう意味ではテレビ番組の制作はシリコンバレーのモデルに近い。
    • Netflixは初期からクリエイティブの自由さで評価を得た。これは現実的にそうしないと回らないという面もあった。Netflixがエンターテイメント業界に貢献できるのは「責任の自由(Freedom of Responsibility)」と言えるもの。Netflixの仕事は素晴らしい人材を探すこと。そしてその人材に必要なリソースを提供すること。その道を妨げないこと。
    • ハウス・オブ・カード 野望の階段』がNetflixの最初のオリジナル作品だったが、デビッド・フィンチャー*1との約束はパイロットなしの二つのシーズンの提供。

    技術的には録画のストリーミングだけでなくライブ中継も可能なのでは?

    • Netflixがライブ中継をやらないのはいくつか理由がある。一つはNetflixの価値はオンデマンドであるということ。ライブ中継だとその時にしか見れない。ニュースや音楽、スポーツなどライブ中継は素晴らしいし、それを提供するサービスもある。
    • スポーツ中継などの場合、権利はスポーツリーグにある。最終的な着地点であるNFL.comやNBA.comが一番いい。

    マーベル・シネマティック・ユニバースとの関係は?

    • Netflixと契約した当時のマーヴェルの経営状況は決して良くなかった。破産寸前の時もあった。『アイアンマン』も借金をして作った。『アイアンマン』はマーベル・シネマティック・ユニバースの成否を握る最大の賭けだった。
    • Netflixもその賭けに乗った。『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』『アイアン・フィスト』『ルーク・ケイジ』などすべてのフランチャイズに関する契約はいっぺんに行った。
    • 常にリスクとリワードの考え方をする。映画の劣化版しかテレビで実現できないのではないかというリスクはあった。実際にそういう事例はたくさんある。しかし、『ディフェンダーズ』というテレビ版のアヴェンジャーズはNetflixでしか見れないというリワードは大きい。
    • それぞれの作品は関連しているけど適度な距離を保っている。そのために、一つの作品で失敗しても回復可能なモデルとなっている。これは『ディフェンダーズ』と『アヴェンジャーズ』の関係にも言える。

    競合についてどう思います?

    • Amazon Primeは資金力も豊富だし将来的に素晴らしい仕事をするんじゃないかと思う。軽く見たことはない。Netflixはテレビ番組にフォーカスしているけど、Amazonはそれ以外のこともやっていて、それぞれ成功している。ビジネスモデルが違うのでAmazon自体に関するコメントは難しい。
    • Huluはハリウッドが作ったもう一つのバイヤー。バイヤーはすでに市場にたくさんいるけど、Huluのモデルは伝統的なモデルの面白い延長線上にあると思う。
    • YouTubeをみて自分たちのストリーミングモデルが行けると確信できた。直接的な競合だとは考えていない。「ひまつぶし」のマネタイズとして優れている。Facebookや他のプレーヤーが参入してもインターネットにおけるビデオ視聴のシェアを伸ばし続けている。

    soundcloud.com

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    *1:映画『セブン』や『ファイトクラブ』の監督として有名

  • エストニアがスタートアップ国家としてデジタル政府を推進する理由

    エストニアがスタートアップ国家としてデジタル政府を推進する理由

    これまでアメリカイギリスのデジタル政府に踏み出した背景を説明してきました。なかなか評判がいいようなのでエストニアの資料も作ってみました。全ての国家はそれぞれ歴史があり、大きさも様々です。アメリカ、イギリスや日本とエストニアを単純に比べることはできませんが、一見「弱み」に見えるエストニアの特徴を「強み」に変えるしなやかさは多くの為政者や経営者の参考になるのではないでしょうか。

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  • イギリスのGOV.UKまでの長い道のり

    イギリスのGOV.UKまでの長い道のり

    GOV.UKによってイギリス政府は世界で最も進んだデジタル政府という評価を受けるようになり、様々な政府のデジタル化の参考となりました。その推進力となったGDSの発足直前から現在に至るまでの過程はGDS Storysで詳しく見ることができます。カタパルトスープレックスでも日本語に翻訳しています。

    しかし、そもそもどうして前身であったDirectGovから移行しなければいけなかったのか?それまでどのようなことがあったのか?断片的な情報はWeb上に散見してありますが、まとまった情報はありません。アメリカのデジタル公共サービスの歴史をまとめたので、今回はイギリスのデジタル公共サービスの歴史をまとめてみました。人気があればエストニアもやるかもです。今回もSlideshareGithubにアップロードしました。

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  • アメリカ政府を公共サービスのデジタル化に向かわせた二つの力と三つの組織

    アメリカ政府を公共サービスのデジタル化に向かわせた二つの力と三つの組織

    イギリスのGDSやエストニアの電子政府の情報は割とまとまったものがあります。カタパルトスープレックスも貢献していますよね!ところが、アメリカの公共サービスのデジタル化も急速に進んでいるのですが、あまりちゃんとまとまった情報が日本語ではありません。

    アメリカにはPIF18FUSDSという公共サービスのデジタル化を進める部門がアメリカ政府内にあります。それぞれ、ユーザーニーズから全てをスタートして、リーンスタートアップ、デザイン思考、アジャイルなどモダンなアプローチを公共サービスに取り入れることでイノベーションを推進しようとしています。ゴールは同じです。

    なんで、そんなことしようと思ったの?なんで三つもあるの?という疑問が浮かぶと思います。それをなるべく簡潔に説明しようと思います。興味がある人はSlideshareGithubにプレゼンテーションをアップロードしました。

    PDFのダウンロード(カタパルトスープレックスデザインのGithub)

    経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を発足したり、経団連が「デジタル省」を提言したりしています。アメリカはボトムアップとトップダウンを積み上げて、複数のアプローチをとって成功しています。日本はどうなるんでしょうね。

    個人的にはCode for Americaがアメリカの公共サービスを変える原動力になったように、「デザイン+ジャパン」が日本の公共サービスを変える原動力になればいいなと思っています。

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  • 書評|コミュニティーとソーシャルと催涙ガス?|Twitter and Tear Gas by Zeynep Tufekci

    書評|コミュニティーとソーシャルと催涙ガス?|Twitter and Tear Gas by Zeynep Tufekci

     

     インターネットとソーシャルメディアでコミュニティー活動がとてもやりやすくなりました。ボク自身も『デザイン+ジャパン』というデザインで日本の社会的問題を解決するコミュニティーをはじめましたが、インターネットがなければまともに活動できません。

     

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

     

     

    コミュニティーとインターネットとソーシャル

    コミュニティー活動自体は昔から存在していましたが、インターネットとソーシャルメディアがコミュニティーを加速度的に広げて行きました。昔だとはてなのヘビーユーザーの「はてな村」なんてありましたが(いまでもある?)、あれも一種のコミュニティーです。コミュニティーの影響力は大きく、企業でも活用しています。AWSのユーザーグループコミュニティーのJAWS-USなんて代表的な成功事例ですよね。

    目的や嗜好を共有する人たちの集まりという意味でコミュニティー活動は当然ながらインターネット以前から存在していました。例えば、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアなど公民権運動の活動家たちも人種差別をなくすという目的を共有した人たちの集まりで、モンゴメリー・バス・ボイコットやワシントンD.C.への20万人デモ行進など組織的にやらないと当然ながら実現できない。それを実現したのが当時のコミュニティーでした。

    ソーシャルと催涙ガス

    今回の本は”Twitter and Tear Gas“(Twitterと催涙ガス)という非常に物騒なタイトルで、インターネットとソーシャルがどのようにコミュニティー活動に影響を与えているか、特に政治的活動家と言われている人たちのコミュニティーに影響を与えているかを考察した本です。

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

     

    インターネットとソーシャルによって公民権運動のような活動が簡単にできるようになりました。それが表面化したのが「アラブの春」と呼ばれる一連の運動でした。海外生活が長いとはいえ、ボクも日本人なので馴染みの薄いアラブの世界はよくわからなかったです。オランダにもたくさんアラブの難民がいて、ヨーロッパ全体で難民問題は課題になっていました。

    この本を読んでわかったのですが、アラブの春って社会的にはすごいインパクトだったんですね。エジプトでの運動なんて、タハリール広場に集まった200万人の必要物資をたった四人の海外のエジプト人がロジスティックをオンラインで全て調整したんですから驚きです。オンラインと言ったって、専用ツールとかじゃなく、TwitterやGoogleスプレッドシートのような普段から使っているツールです。そして現場では座り込みを阻止するために催涙ガスで制圧しようとして軍と市民が衝突となりました。本のタイトルはここから来てるわけです。

    デジタル時代のコミュニティー維持の難しさ

    デジタル時代のコミュニティー活動はすぐに大きくなるけど継続は難しいという特徴があるようです。例えば一連のデジタルコミュニティー革命と言える事象はこれといった成果を達成していないことでもわかります。エジプトではムバラクは退陣しても軍事政権はそのままだし、アメリカでも特に貧富の差が解消されたわけではないし。

    著者は目的意識や共通認識の醸成は単純に時間がかかるというのが理由の一つとしています。「で、どうしたいの?」という合意がコミュニティー全体では生まれにくい。それはリーダーがいないというデジタル時代のコミュニティーの特徴でもある。例えば『デザイン+ジャパン』で今一番時間を使っているのは「目的と手段」の定義です。社会的課題ってなに?デザインってなに?誰が主体的なの?自分たちの役割は?こういうことを行動と並行してコミュニティー全体で考えていかないと、ツールがあっても中身がなくなってしまう。そして、その中身がコミュニティーの外からも共感が得られないようだと続かない。著者はこの辺りをシグナリング理論で説明しています。

    デジタルコミュニティーとティール組織

    この目的や行動規範の醸成という課題はティール組織やホラクラシーにも通じると思うんですよ。リーダーがいないフラットな組織という意味ではコミュニティーとティールは似ている。『デザイン+ジャパン』の組織デザインを考えた時も参考にしたのはティール組織でした。ボク自身(や数人のメンバー)がリーダーとしてなんでも決めるモデルにはしたくなかった。そして、実際にやってみるとそれはかなり難しい。「で、どうしたいの?」という共通認識がやっぱり大事です。それでも、企業の場合は「お金を儲ける」とか、「サービスを広げる」とか目先のゴールの共通認識は生まれやすいでしょう。でも、もっと大きな「で、どうしたいの?」という企業がよく掲げるミッションステートメントやビジョン、行動規範みたいなものです。コミュニティーが人の集まりであり、人それぞれ違った考えを持っている以上、こういった目的意識や行動規範の方向性を揃えるには時間がかかるのだろうと思います。

    この本ではソーシャルメディアが持ついい側面と悪い側面を活動家の立場から分析もしています。フェイクニュースやネット中立性など重要なトピックについて考えるときも、普段あまり考えたことのないアングル(政治活動家の立場)から紹介しているので理解が深まりました。

    興味のある方はTEDTalkもありますので、ご覧ください。

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  • エストニアが仮想住民のためにぺイオニアのペイメントシステムのサポートを発表

    エストニアが仮想住民のためにぺイオニアのペイメントシステムのサポートを発表

    原文:”Welcome to our digital nation, Payoneer” by Kaspar Korjus

    ぺイオニア(Payoneer)はペイメントのプラットフォームで、起業家がグローバルに支払いや支払いの受け取りをローカルと同じように簡単にできることを実現します。しかも、ローカルの銀行口座なしに。

    本日、エストニアの電子国家にぺイオニアを招待し、世界中に急速に拡大するエストニアの仮想住民(e-resident)に専任のサポートを提供します。仮想住民の企業はすでに200カ国で150通貨と35言語で運営されています。

    このコラボレーションはエストニアの仮想住民に金融サービスの選択肢を広げることになります。同時にぺイオニアにとって400万人の既存顧客へのグローバルなEU企業を完全にオンラインで設立する機会が提供できることになります。私たちはぺイオニアの既存顧客にエストニアの仮想住民制度(e-Residency)に理解していただき、登録していただきたいと考えています。

    多くのエストニアの仮想住民はすでにぺイオニアを利用して、そのサービスに前向きなフィードバックを私たちに伝えてくれています。そして、この協力関係はぺイオニアとエストニアの仮想住民制度(e-Residency)がさらに利用しやすくなることを促進します。

    この結果、ぺイオニアは仮想住民に向けて特別なキャンペーンを実施しています。このリンクを通じてぺイオニアアカウントを登録すると、口座登録3カ月以内に$5,000の支払いを受け取ることができます。さらに$250を受け取ることができます。エストニアの仮想住民はさらに低い手数料、より高い取引量、特別サポートなど特別な条件でサービスを受けることができます。

    ぺイオニアがエストニアの仮想住民に提供するもの

    口座は世界のどこからでも完全にオンラインで開設することができ、国境をまたいでビジネスをする世界の起業家に有益な多くの機能があります。

    ぺイオニアのグローバルペイメイントシステムを使えば仮想住民に複数の国の複数の貨幣でカードを含めた支払いを受け取ることができます。仮想住民にとって重要なのはぺイオニアの口座所有者が口座から資金を引き出し、個人の銀行口座に移せることです。これによりエストニアにある仮想住民の会社のために法人口座を作れない場合でも、伝統的な銀行口座の必要性がなくなります。

    これは仮想住民がEUの法人口座を持てるというだけではありません。アメリカ、イギリス、日本、中国、カナダやオーストラリアの現地銀行があるかのようにエストニアの会社がお金を受け取れるのです。

    必ず必要なわけではありませんが、ぺイオニアでお金の取引をするのに一番簡単な方法な、ぺイオニアのネットワーク内で取引をすることです。Amazon、Google、UpWork、Fiverr、Airbnb、ShutterstockやGettyImagesを含め、すでに多くのマーケットプレイスがぺイオニアを利用しています。フリーランス、アフィリエイトマーケティング、Amazonでの販売、アプリ開発、ストックフォトなど場所に縛られないビジネスを展開している企業にとってこれはとてもメリットがあります。

    仮想住民はぺイオニアの口座から国をまたいだ支払いもできます。サービス、サプライヤー、従業員や契約社員への支払いなどです。ぺイオニアのネットワーク内での支払いや、ペイメントカードでの支払いの他にもSEPA(Single Euro Payments Area 単一ユーロ決済圏)内であれば銀行への直接送金も可能です。

    バンキングの将来

    仮想住民の制度(e-Residency)を開始して場所に縛られない起業家にサービスを提供してから銀行へのアクセスは最大のチャレンジの一つでした。

    それでも大きな流れは明白でした。

    新しい技術は急激に世界中の人たちに起業の機会を広げています。会社の設立、会社の運営やバンキングなどのビジネスツールは完全にオンラインで低価格で少ない労力でできるようになっています。それでも、まだまだ改善する余地はあります。

    グローバルに生活し、どこからでもオンラインで仕事をするのは新しいスタンダードです。行政と金融機関はともに国境や官僚主義から生まれる障害を少なくするようなスマートなソリューションを提供する努力をすべきです。

    エストニアはぺイオニアが私たちのデジタル国家に参加することを歓迎します。なぜなら、私たちは世界中にとって選択肢が増えること、価格を低く抑えること、障害が少なくなることを歓迎するからです。

    エストニアの仮想住民制度もぺイオニアもそれぞれ世界で急激に広がりを見せています。特に東アジアなど私たちのスタート地点から離れた場所で顕著です。偶然ですが、今年には双方とも韓国に新しいオフィスを設立し、韓国の起業家支援に力を入れています。これにより力を合わせて現地の起業家支援を強化することができます。

    仮想住民は以下のリンクからさらにぺイオニアの提供するメリットについて学ぶことができます。

    ぺイオニアの顧客はエストニアの仮想住民制度(e-Residency)に関してe-resident.gov.eeで学ぶことができます。また、以下のブログ記事ではどのように場所に縛られない会社を設立できるのかを学ぶことができます。

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  • 書評|生物、企業、都市に共通するスケールの法則|Scale by Geoffrey West

    書評|生物、企業、都市に共通するスケールの法則|Scale by Geoffrey West

    書籍の中でもきちんと科学的に検証された題材を読むのが大好きです。科学的に検証されたというのは推測ではなく事実や多くの事例に基づいて論証されているという意味です。例えば社会経済学で様々な疑問に切り込んでいる『ヤバい経済学』とか進化生物学の観点からなぜ文明がある一定の場所から発生したのかを検証した『銃・病原菌・鉄』とか。

     

    もちろん、個人的な体験をベースとしたモノローグも悪くはないですが、個人的な経験(だけ)を一般的な法則に当てはめてしまうようなアプローチは嫌いです。「好きじゃない」ではなく、はっきりと「嫌い」です。ボク個人の主観なんで、科学的じゃないから「悪い」とまでは言いませんが、「嫌い」です。

    科学的なアプローチで真っ先に思い浮かぶのが数字を使ったアプローチ。数字を使ったアプローチにおいて物理学はその最先端をいってるのではないでしょうか。物理学は素粒子物理学のような目に見えないような小さなモノからダークマターやビッグバンのような途方もなく大きなものまで扱うのにその真ん中はあまり扱ってこなかった。例えば、生物、企業や都市。

    物理学者のGeoffrey Westが生物、企業、都市に共通するスケールの法則の研究結果がこの著作”Scale: The Universal Laws of Life and Death in Organisms, Cities, and Companie”です。このような本は大好物です。

    Scale: The Universal Laws of Life and Death in Organisms, Cities and Companies

    Scale: The Universal Laws of Life and Death in Organisms, Cities and Companies

     

    スケールというのは大きくなったり小さくなったりすることですね。ここで検証されているのはネズミはスケールダウンした人間なのか?ゾウはスケールアップしたネズミなのか?どうしてネズミはゾウより寿命が短いのか?人間はスケールの法則に従えば何年まで生きられるのか?といったことです。そして、そのスケールの法則は企業や都市にも当てはまるのか?「企業のDNA」とか「都市のエコシステム」など生物や生態系に例えられるが、それは単に比喩的なものなのか、それとも何か真理を含むものなのか?

    軽くネタバレしてしまうと、共通するスケールの法則はありそうです。そのキーワードは指数的な成長。サブリニア(100%増えても75%しか増えない)の成長、リニアの成長(100%増えたら100%増える)、スーパーリニアの成長(100%増えたら125%増える)です。しかし、同じ法則が当てはまるのなら、なぜ都市は死なないのか?企業は生物に似ているのか、それとも都市と似ているのか?そういった部分にまで踏み込んでいます。

    すごく面白かったのは(これも軽くネタバレですが)企業は都市よりも生物に似ているので不死ではないということです。日本の1000年以上続いた企業についても言及されていますが、これは統計的には外れ値で、これは別に扱う必要があるとしています。企業が都市のようなネットワークモデルをどのように持つことができるのかはホラクラシーやティール組織、自然経営などありますが、数学的にはまだ解明されていない部分です。トップダウンのピラミッド型の組織である限り、変化に対応できずに死に行く運命は変えられない。

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  • ケンブリッジ大学のインクルーシブ・デザイン・キット(多くの利用者を包括的にとらえるアプローチ)

    ケンブリッジ大学のインクルーシブ・デザイン・キット(多くの利用者を包括的にとらえるアプローチ)

    原文:”What is inclusive design?” by Engineering Design Centre, Department of Engineering, University of Cambridge

     全てのデザインにおける決定はユーザーを含むか含まないか潜在的な判断がある。インクルーシブ・デザインはユーザーの多様性を理解することにより、自らが対象となっているのかユーザーに理解できるようにすることを強調しています。それにより、できる限り多くのユーザーを包括できるようにします。ユーザーの多様性はユーザーのできること、ニーズ、動機などを含みます。

     ここではまずプロダクトパフォーマンス指標(PPIs)の例を紹介します。プロダクトやサービスが機能していることを確認する上で考慮しなければいけない指標です。ここではユーザーのニーズがどのようにこの指標に当てはまるのかをみていきます。そしてPPIを全てカバーするには対象となるユーザーの多様性の理解がどのように必要なのか、そしてその多様性にインクルーシブ・デザインを通じてどのように対応していくのかを説明していきます。また、「全てのためのデザイン」や「ユニバーサル・デザイン」との違いも提示します。

    プロダクトパフォーマンス指標(PPIs)

     インクルーシブ・デザインは人々の多様性とそのデザイン上のインパクトに着目します。しかし、パフォーマンス指標は人、利益、環境を含み幅広い側面をカバーしなければいけません。下のパフォーマンス指標フレームワークを参照してください。

     パフォーマンス指標を利用して製品のライフサイクルを通じてどのようなインパクトがあるのかを様々な側面で検証します。製品のライフサイクルは一般的に以下のステージから構成されます:

    • 開発する
    • 製造する
    • 流通販売する
    • 利用する
    • 廃棄する
    • 再生する

     多くの現行製品にとってユーザーはゴミ箱に捨てて「廃棄する」でしょうし、埋め立てて「再生する」でしょう。しかし、リサイクルや改修はその代替となる例となります。

    このパフォーマンス指標の詳細はthe Designing Our Tomorrow businessのウェブサイトで確認できます。

    訳者注

    ケンブリッジ大学の許可のもと、カタパルトスープレックスデザインのGithubでPowerPointのテンプレートの日本語版を無償で配布しています。

    ユーザーの多様性を理解する

     ユーザーを正しく理解できないとプロダクトに不必要な不満の原因となり、ユーザーを除外することとなります。そして、それは返品やカスタマーサポートの増加に繋がり、商業的に成功する可能性を低くします。。

     ユーザーの多様性を理解する上で、「健常者」や「障害者」といった偏見のある枠組みを疑うことは重要です。2003年にマイクロソフトから委託されたアクセシビリティテクノロジーに関する調査で以下のコメントを得られました:

    「障害者」というコンセプトはアクセシビリティテクノロジーのニーズを理解する足かせとなる可能性がある。 … IT業界は利益を受けるより幅広い人たちを考慮すべきだ。- マイクロソフト (2003)

     人々の多様性は「できること」を全てカバーしたピラミッドモデルがより正しく表現できます。このピラミッドでセグメントを作ります。一番下のセグメントは困難がないことを示し、上にあがると困難の度合いが高まります。具体的な例を下に示します。

     この多様性は「できること」という視点で最初に作られましたが、それ以外の観点でも利用することができます。例えば、ライフスタイル、動機、性別、過去の経験などです。要するに「違うことはあたりまえ」(引用:Lange and Becerra, 2007) なのです。

    このピラミッドモデルはユーザーの多様性を表しています。The pyramid model presents a continuum of population diversity. 普及データと困難度の定義は2003年のマイクロソフトの調査から導き出されています。

    インクルーシブ・デザインの定義

     英国規格協会(British Standards Institution)は2005年にインクルーシブ・デザインを「メインストリームの製品/サービスにおいてなるべく多くの人たちが特別なやり方やデザインなくアクセスでき、利用できるデザイン」と定義しています。

     インクルーシブ・デザインはいつも一つのプロダクトが全ての人のニーズに対応することが可能(または適切)だと示唆していません。そうではなく、以下の点を通じて人々の多様性に対応するようガイドします:

    • 一つの製品ではなく、製品ファミリーや派生製品を開発し、できるだけ多くの人々をカバーする
    • それぞれ個別の製品が明確なターゲットユーザーを持つことを確実にする
    • 様々な場面において幅広いユーザー層のユーザーエクスペリエンスを高めるために製品利用の困難度合いを減らす

    多様性のピラミッドモデルは困難度合いの高い人たちを包括しつつ、ピラミッドの頂点にある困難度合いの最も高い人たちには専門の商品の必要性があることを認めています。

    ユニバーサルデザインとの比較

    「すべての人のでためのデザイン(Design for all)」と「ユニバーサル・デザイン」は同じ文字通りの意味があります。これらの考え方は建造環境*1やウェブサイトのデザインから起因していて、当初は政府の規定を背景として活用されました(the Design for All FoundationのウェブサイトUniversal Design Handbookより)。

     プロダクトデザインにおいて「すべての人のためのデザイン」も「ユニバーサルデザイン」も一つの製品がすべての人々をカバーできないことは認めています。それでも、これらのアプローチはメインストリームの製品は技術的に可能な限りより多くの人がアクセスできるようにするべきだとしています(Universal Design Handbookより)。

     インクルーシブ・デザインはプロダクトデザインから派生して、特定の製品が特定のユーザーのニーズに合わせることにフォーカスすることで、ユーザー自身が適切な製品を選ぶことができ、その特定マーケットのプロダクトパフォーマンス指標を最大化します。インクルーシブ・デザインはメインストリームの商品のユーザー層の拡大を意図しますが、同時に対象ユーザーのニーズを満たすための商業的な制約も認識しています。

     ウェブサイトや建造環境のターゲットユーザーはほぼすべての人たちなので、この場合は三つのアプローチは同じと言えます。

    ネクストステップ

    ケンブリッジ大学ではワークショップコンサルティングを提供しています。

    訳者からの解説

     この記事はUniversity of Cambridgeによる記事”What is inclusive design?“を著者の許可のもと、日本語に翻訳しています。この記事はカタパルトスープレックスのなかむらかずやにより日本語に翻訳されました。University of Cambridgeはこの翻訳の正確さを保証してません。正確な内容については、原文による正式の文言を確認してください。

     このインクルーシブ・デザインという考え方は主にヨーロッパで普及していて、デジタルサービスが最も進んでいるとされるイギリス政府の公共サービスでもその理念が踏襲されています。デジタルが使えない人たちをどのように取り込んでいくのか。日本においてもデジタル化が期待されていますが、高齢化社会においてはインクルーシブ・デザインの考え方が役に立ちます。「高齢者」と一括りにせず、困難度のピラミッドを使ってどのようにデジタルを活用できない層を包括していくといいでしょう。高齢者だけがデジタルが苦手なわけではないですし、高齢者だからといってデジタルが苦手なわけでもないですから。

    なかむらかずや