タグ: スタートアップ

  • 信用経済と健康経済|どう便利になる?個人情報は?

    信用経済と健康経済|どう便利になる?個人情報は?

    「データは新しい石油」とイギリスのデータサイエンティストで大手スーパーマーケットであるテスコのポイントシステムを作ったクライブ・ハンビー最初に言ったそうです。価値があるものだが、石油と精製しないと使い物にならない。それ以来、様々な場面で語られるフレーズとなっています。

    これまでの経済で誰が強いかといえば石油を仕切っている人たちでした。米ドルの強さの源泉も石油です。石油は米ドルでなければ取引ができません。本当に石油に相当するくらいの価値があるかは議論の余地がありますが、データは重要なビジネスの源泉です。

    データの中でも特に価値が高いのが個人データです。個人の行動データはGAFA(Google/Amazon/Facebook/Apple)のようなプラットフォーマーの強さの源泉でもあります。個人IDと紐づいた行動データから趣味嗜好を理解して広告を表示し、オススメの商品を売ります。インターネット上の行動データや購買データの他に価値が高いとされるのは信用データと健康データです。

    信用スコアと信用経済

    信用スコアによる信用経済は中国で発展しています。具体的には2015年にスタートしたアリババの芝麻信用(ジーマーシンヨン|Sesame Credit)です。金融機関にとってお金を貸すビジネスは利益の源泉となります。しかし、お金が返ってこないと利益が出ません。そこで、貸したお金が返ってくるかどうかを数値化しています。これが信用スコアです。

    信用スコアの歴史は1956年の米国FICO設立まで遡ることができます。このFICOの信用スコアは多くの金融機関で採用されることになりますが、このためにローンへのアクセスが不当に妨げらる事案が見られるようになりました。そこで消費者信用保護法(Fair Credit Reporting Act)が成立されることになり、これは現在でも続いています。

    FICOもそうですが中国の芝麻信用はクレジットの与信だけでなく、お金のやりとりが発生しないことでも利用されはじめています。例えば、FICOスコアは企業の採用で使われるケースもあるようです。芝麻信用は利用者にインセンティブを与えるために、信用スコアの高い利用者には様々な特典を用意しています。

    信用スコアの光と闇

    これが信用スコアによる信用経済です。中国の場合は金融インフラが整っていなかったため、ローンへのアクセスに制限がありました。そのような背景から、よりアクセス性の高い芝麻信用を利用したローンは広く受け入れられました。その結果、利用者も信用スコアに悪影響を与える行動を慎むようになり、経済発展に寄与したと言えます。

    しかし、利用者が見えない場面で個人の信用情報が様々な用途で活用されているのも個人情報保護の観点からあまり望ましくないという考え方もあります。キャシー・オニールの『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』では信用スコアが適切に運用されていない例が多く紹介されています。

    信用情報は誰が管理する?

    信用情報は個人情報なので、その管理は重要です。国によって異なりますが、多くの場合は法律で保護され、国に指定された指定信用情報機関が管理します。日本の場合だとCIC等です。アメリカの場合はFACT法で保護され、Equifax,Experian,TrunsUnionの大手三社が管理していて、FICOがスコアを提供しています。

    中国の場合はこれまでこのような法整備が追いついていなかったため、アリババやテンセント等の企業が独自に行ってきました。しかし、ようやく法整備が整ってきて百行征信有限公司、通称シンリエン(信联)が国から認可を受けた信用情報機関として設立されました。アリババなども信用情報機関のライセンスを受けようとしていましたが、これは認められませんでした。これまで信用スコアをとってきたアリババなどはシンリエン(信联)にスコアを提供する形になります。シンリエン(信联)がEquifqxなど信用情報機関の役割を担い、アリババの芝麻信用(ジーマーシンヨン|Sesame Credit)などはFICOと同じ位置づけですね。

    自分自身の個人情報は自分自身がチェックして、間違っていれば訂正できるようになっていなければいけません。ブラックボックスにしてはいけないというのが基本的な考え方です。

    個人の健康情報と健康経済

    お金の流れを一元的に見れるようにしたいというニーズがフィンテックの発端でした。しかし、預金口座、株式の情報、有形無形の資産情報はバラバラに管理されていました。今もそうですが、それでもフィンテックのおかげでデジタル化されてだいぶマシになりました。

    個人情報でバラバラに管理されているもう一つの代表例が健康情報です。風邪をひいて病院に行けば、自分のカルテはその病院にあります。歯医者に行けばまた別のカルテがあります。薬を飲んだ履歴は薬手帳で手元にあるかもしれません。

    病気や薬の情報以外にも、Fitbitなどを使った運動の情報もあります。Apple Watchで脈拍などとってるかもしれません。これらの健康情報は個人のファイナンス情報と共通点があります。

    • 非常に高度な個人情報
    • バラバラに管理されている
    • 新しいビジネスを創出すると考えられている

    健康情報の電子化と標準化

    しかし、ファイナンス情報と違い、健康情報はデジタル化が進んでいません。欧米でも電子カルテ(EHR)の普及は進んでいますが、複数の病院のEHRはそれぞれ個別で管理され、個別のポータルサイトでしか参照できません。日本はまだそこにすらたどり着けてないですね。

    ヘルスケア分野でAIだのビッグデータだの言う前に、まずは標準化されたデジタルデータがないとどうしようもありません。いまは自分自身の健康データすら見れないのですから。

    個々で管理されている情報をまとめるには標準化が必要です。健康情報の標準はHealthcare Interoperability Resources(FHIR|ファイア)があります。

    個人情報としての健康情報の取り扱い

    健康情報のデジタルデータはいろいろと便利に活用できるのですが、同時に高度な個人情報でもあるため、取扱は慎重に行わなければいけません。そこで、個人の信用情報がFACT法で守られているように、健康情報はHIPAA(ヒッパ)で守られています。

    HIPAAはHealth Insurance Portability and Accountability Actの略です。日本語では「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律」です。HIPAAでは診断や保険の情報へのアクセスの保証や、プライバシーやセキュリティについて規定されています。

    日本でも

    健康情報の現在

    簡単に言えばHIPAAに準拠してFHIR標準に従ってデジタル化すればいいということになります。ようやくその法整備や標準といった基盤がようやく整いました。

    そして、何と言っても健康は巨大ビジネスです。アメリカでの健康関連の支出はGDPの17.8%に相当します。MicrosoftやGoogle、Appleといった巨大企業も当然ながらこの市場を狙っています。Microsoft、Amazon、Google、IBM、OracleとSalesforce.comは共同でFHIRへの対応へのコミットメントを表明しました。

    特にAppleはFHIR対応に熱心です。iPhoneやApple Watchで収集される健康データはFHIRに準拠しています。

    電子カルテや個人ヘルスレコード(PHR)ではAllscriptsに今年になって買収されエグジットしたPractice Fusiona16zが投資しているCiitizenなどが注目を浴びています。これからデジタル化という意味では初期のフィンテックに似た状況なので、これからスタートアップが増えてきて投資も集まってくるでしょう。

    で、どうなの?

    個人の健康に関するデータがクラウドで統合されると便利になるのは確かだと思います。どのような生活習慣が病気と相関関係があるのかわかりますし、医療機関も統合されたデータにアクセスできるので、よりデータに基づいた治療ができるようになるでしょう。いろんな健康関連の新しいサービスも出てくると思います。

    しかし、これは信用データと同じなのですが、個人データです。意図しない使われ方をしたらたまったものではありません。当然ながら健康データの悪用への懸念は法整備がされているとはいえ払拭しきれるものではありません。

    中国の場合は法整備が追いついていないことからアリババやテンセントのような営利企業による信用スコアの発展につながりましたが、それ以外の国でその動きに簡単に追従しないのはそれなりに理由があるのです。

  • Amazon Goに代表されるレジなし店舗の現状|2018年リテールテック

    Amazon Goに代表されるレジなし店舗の現状|2018年リテールテック

    Amazonがレジに並ばずに自動的に支払いを完了できるAmazon Goのベータを社内にオープンしたのは2016年12月でした。そして、一般顧客を対象とした一般公開を2018年1月におこないました。2018年はレジなし店舗元年となりました。

    レジなし店舗の特徴

    チェックインとチェックアウト

    非常にざっくりと言ってしまえば、レジなし店舗の特徴は支払いの時にレジで並ばなくて済むことです。その代わり、入る時に駅の改札のようなゲートでチェックインする必要があります。レジでの支払い(チェックアウト)の方が時間がかかるので、チェックインが少し手間でも全体的には効率的になっています。

    • レジがない(自動チェックアウト)
    • 入り口でアプリを使ってチェックイン

    チェックインをするのは入店する個人を認識するためです。チェックインすることで個人の買い物カゴが開かれます。棚からとった商品が買い物カゴに移動します。家族で買い物をする場合、一人のアカウントでチェックインすることもできます。その場合、複数の人がチェックインした人の買い物カゴを開いている状態になっています。

    子供もチェックインしなければいけないので、小さな子供の場合は少し面倒かもしれませんね。

    商品ラインアップ

    スーパーマーケットで扱う商品は大きく分けて「ウェット」と「ドライ」があります。「ウェット」は生鮮食料品です。野菜、肉や魚ですね。「ドライ」はグローサリーのようなパッケージ商品です。日本やアジアのスーパーマーケットはウェットの取り扱いが多いという特徴があります。

    レジなし店舗ではグローサリーのようなパッケージ商品が対象になります。生鮮食料品は取り扱っていません。生鮮食料品の場合は量り売りだったりするので、センサーでのトラッキングが難しいのかもしれません。生鮮食料品を家庭で調理をするような人たちはパッケージ商品を消費する人たちよりも効率性を求めていないのかもしれません。

    いずれにせよ、チェックインした人が手に取った商品は買い物カゴに入ります。人と商品を結びつけるわけですね。気が変わって商品を棚に戻せば買い物カゴからもなくなります。

    買い物の不便なルール

    レジなし店舗は新しい技術なので、技術やUXがまだ成熟していない部分があります。そのため、レジなし店舗にはレジあり店舗にはないルールがあります。

    まず、店舗の中では買い物カゴの中身を見ることができません。どの商品が買い物カゴに入っているか確認することができないんです。これは不便というより不安ですよね。

    次に店舗内ではチェックインした人同士で商品の受け渡しができません。例えば、AさんがBさんに「あの商品を取ってきて」とお願いしたとします。商品を手に取ったのがBさんなので、この時点でその商品はBさんの買い物カゴに入っています。商品自体はAさんに渡すことはできますが、Bさんの買い物カゴに入っているので、Bさんに課金されます。

    家族や友達と一緒に行く場合はAmazon Goのアプリを持っている人が持ってない人をチェックインすることができます。例えばお父さんとお母さんと子供が買い物に行くとします。お父さんとお母さんはアプリを持っていますが、子供はアプリを持っていません。そこで、お父さんかお母さんのアプリで子供をチェックインして店舗に入れるのです。これはこれで面倒ですよね。

    2018年10月現在ではこんな感じなのですが、これは徐々に改善されるだろうと予想します。

    利用されている技術

    Amazon Goを含め、多くのレジなし店舗で使われている技術の詳細は公開されていません。センサーとカメラで情報収集をして、センサーフュージョンで統合されます。データ分析にはAIが利用され、裏では人間がAIを学習させています。

    現時点での注力は実際に店舗から持ち出された商品がチェックインした人に正しく紐付けされているかでしょう。それがある程度できるようになったら現時点では技術的に実現できていないUXの問題を解決していくと予想します。

    レジなし店舗のプレーヤー

    Amazon Goは間違いなく先頭を走っていますが、まだまだ新しい取り組みです。追いつけると考えるスタートアップも投資家もたくさん現れています。Amazon Goを含めて全てのレジなし店舗の取り組みに言えることですが、技術やUXはまだ成熟していないので、現時点でどれが有力だと言い切ることはできないと思います。

    BingoBox

    中国のBingoBox(缤果盒子|ビングオフーズ)はすでに300店舗を運営しています。Amazon Goとは若干違う技術構成でRFID(無線タグ)を利用しています。チェックアウトも自動ではなく、キオスクで行われます。技術的にはユニクロやGUと同じです。

    これはBingoBoxの起業が2016年で、Amazon Goの発表前だったことが起因しています。Amazon Goの登場以前はRFIDがバーコードに置き換わる商品トラッキングと見られていましたが、コストが高いことがネックとなっていました。

    クレジットカードではなくAlipayとWeChatをサポートしているところが中国ならではですね。AlipayとWeChatの特性を活かして、ミニプログラムになっています。

    現在ではRFIDよりもカメラによる画像解析が有望だと考えられていて、BingoBoxも画像解析を含めたセンサーフュージョンに力を入れ、Fan AI(小范|シャオファン)を開発しました。

    Standard Cognition

    日本でも事業展開を発表したStandard CognitionはAmazon Goの競合の中ではビジネス的に先行していると言えます。2017年に創業ですが、無人店舗の研究自体は2016年から行っていたそうです。1000万ドルの資金調達をしています。

    基本的な技術構成はAmazon Goと同じでカメラとセンサーで収集したセンサーフュージョンのデータをAIで分析します。違いはStandard Cognitionはセンサーの設置場所がAmazon Goより少ないことだそうです。Amazon Goでは棚に重量センサーなどが付いていますが、Standard Cognitionは天井だけなので複雑さを解消しているそうです。

    Standard Cognitionは独自店舗のStandard Marketをサンフランシスコでオープンしています。これはAmazon Goのシアトル店舗よりも若干大きい店舗のようです。下のイメージビデオでは店員が商品とり顧客に渡していますが、店舗内での人から人への商品引き渡しの問題をStandard Cognitionは解決しているのでしょうか?

    Zippin

    Zippinもサンフランシスコでレジなしの実店舗を運営しています。元々は商品と追跡システムを2014年から開発していたようですが、その経験を活かしてレジなし店舗のマーケットに2018年に参入しました。

    基本的な技術構成はAmazon Goと同じでカメラとセンサーで収集したセンサーフュージョンのデータをAIで分析します。棚の重量センサーにより重きを置いているようで、アパレルなど重量の軽い商品には向いていないようです。

    Inokyo

    Standard Cognitionと同様のY Combinator卒業生であるInokyoもサンフランシスコでレジなしの実店舗を運営しています。Inokyoの場合は画像解析により重きを置いているようで、棚にもカメラがついています。

    InokyoはUXに力を入れていて、技術的な問題ではなくUXの問題を解決するためにあえてチェックアウトゲートを設けて明示的にユーザーがチェックアウトできるようにしています。

     

    参考文献

    Examining the User Experience of Amazon Go Shopping — Just Walk Out

  • 書評|Googleも超えられない男性天国シリコンバレーの闇|”Brotopia” by Emily Chang

    書評|Googleも超えられない男性天国シリコンバレーの闇|”Brotopia” by Emily Chang

    シリコンバレーというとイノベーションの中心地というイメージがありますし、実際にその役割を担っている部分もあります。しかし、全てパーフェクトなものはありませんし、それはシリコンバレーとて例外ではありません。

    シリコンバレーは特に白人男性社会と批判されることが多く、エミリー・チャンによる“Brotopia”はその流れの代表です。「ブロ」は男性同士で親友を意味します。「あいつは俺のブロだ」みたいな感じ。それにユートピアをかけて「ブロトピア」なんですね。

    シリコンバレーがどうしてブロトピアになってしまったかという考察は男女平等の度合いを示す「ガラスの天井指標(GLASS-CEILING INDEX)」でOECD加盟国の中で二番目に低くい日本にとっても参考になるところが多いでしょう。

    Brotopia: Breaking Up the Boys' Club of Silicon Valley

    Brotopia: Breaking Up the Boys’ Club of Silicon Valley

     

    ブロトピアが生まれる背景:小さな積み重ねが文化をつくる

    コンピューター業界も小さな積み重ねが今のブロトピアにつながりました。ENIACの六人のプログラマーたちやプログラム言語COBOLを開発したグレース・ホッパーなど、ソフトウェア開発は元々は女性が多かった職業なのですが、80年代にソフトウェア開発に注目が集まると徐々に男性中心になっていきました。その象徴的な事象としてデジタル画像処理の基準として使われてきた雑誌『プレイボーイ』のヌードグラビアを挙げています。そんな研究現場や職場に女性は居づらいですよね。

    徐々にプログラマー=白人男性というステレオタイプが出来上がり、採用試験のためのテストなども徐々にそのステレオタイプに合うような候補者を見つけるような設問になっていきました。

    Googleですら失敗した男女平等

    “Brotopia”では様々な事例が紹介されています。特にPayPalマフィアはシリコンバレーをブロトピアにすることに加担したグループとして詳しく描かれています。当たり前ですが、ビジネスで成功したからといって、人間的に素晴らしいわけではないんですね。最初からまともなのはLinkedInを起業したリード・ホフマンくらいで、それ以外はほぼクソ野郎として描かれています(特にピーター・ティール)。

    まあ、彼らは「ブロ」の集まりですし、友達を採用することで有名でしたから。そのやり方が常に成功するならいいのですが、PayPalマフィアのマックス・レフチンはブロトピアな企業文化で自分のスタートアップを失敗して、過ちに気づいた一人です。

     Googleの場合は最初から女性の採用に積極的でした。Googleの広告ビジネスを確立させたスーザン・ウォシッキー(現YouTube CEO)、シェリル・サンドバーグ(現Facebook COO)、マリッサ・メイヤー(元Yahoo! CEO)が代表例です。初期には男女の機会均等に大いに努力をしてきたGoogleですが、女性の役員やリーダーの割合はシリコンバレーの平均に落ち着いてしまっています。

    当時Googleのエンジニアだったジェームズ・ダモアが公開した「反多様性メモ」はGoogleもブロトピアになってしまったことを示すものでした。そして、GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイが公開したこの件に関するメモは色々と示唆に満ちたものでした。

    まずはじめに、Google社員の表現の自由を尊重します。そして、件のメモはたとえ多くのGoogle社員が賛同しないとしても公正に議論をする内容を含むものでした。しかし、メモの一部はGoogleの行動規範に反するものですし、私たちの職場の性別の多様性に悪影響を与える内容を含んでいました。私たちの仕事はユーザーの生活にインパクトを与える素晴らしい製品を作ることです。私たちの職場仲間の一部が生物的に仕事に適していない傾向があるとするのは不快ですし、認められません。全てのGoogle社員はハラスメント、威嚇、バイアス、不法な差別のない職場文化を築くために最善の努力を尽くすという私たちの基本的な価値観と行動規範に反するものです。

     

    “First, let me say that we strongly support the right of Googlers to express themselves, and much of what was in that memo is fair to debate, regardless of whether a vast majority of Googlers disagree with it. However, portions of the memo violate our Code of Conduct and cross the line by advancing harmful gender stereotypes in our workplace. Our job is to build great products for users that make a difference in their lives. To suggest a group of our colleagues have traits that make them less biologically suited to that work is offensive and not OK. It is contrary to our basic values and our Code of Conduct, which expects ‘each Googler to do their utmost to create a workplace culture that is free of harassment, intimidation, bias and unlawful discrimination.’”

     この本は誰にオススメか

    企業文化に興味を持っている人にはオススメです。PayPalでの採用の進め方とGoogleでの採用の進め方の比較はジェンダー論だけではなく色々な示唆に富んでいます。

    ただ、一番読んで欲しいのは飲み会で風俗の話をするような人たちなんですけどね。そうすれば「ガラスの天井指標」で日本の数字も多少は上がるのではないでしょうか。

  • イノベーションとディスラプションの違い|アメリカの有名ベンチャーキャピタリストの考えるトレンド

    イノベーションとディスラプションの違い|アメリカの有名ベンチャーキャピタリストの考えるトレンド

    アメリカには多くのベンチャーキャピタルがあり、有望なスタートアップに投資をして、IPOやM&Aなどで投資で得た株式などを売却することで多くの利益を出しています。ベンチャーキャピタル自身が大きな資金を持っているわけではなく、機関投資家などから資金を集め、それをスタートアップに投資をします。実際に株式を売却できるほど大きくなるスタートアップの数は少なく、ベンチャーキャピタルのクライアントにとってはハイリスク/ハイリターンの投資です。

    投資を回収するには有望な技術やトレンドについて常にアンテナを張り巡らせてなければいけません。ベンチャーキャピタルにとっては信頼性が大切ですし、信頼されるためには投資の回収実績を上げなければいけません。マーク・アンドリーセンとベン・ホロヴィッツによるアンドリーセン・ホロウィッツ(最初のAと最後のZの間に16のアルファベットがあるためにa16zとして知られる)は、クライアントからもスタートアップからも信頼されているベンチャーキャピタルの一つです。

    a16zは技術トレンドやスタートアップに関するポッドキャストを配信しています。ベンチャーキャピタルのユニオン・スクエア・ヴェンチャーズの共同創業者であり有名ブロガーでもあるフレッド・ウィルソン(画像の写真右)とのインタビューが興味深かったので、そのサマリーを抄訳として紹介します。インタビューの相手は暗号化通貨に強いa16zのクリス・ディクソン(画像の写真左)です。

    イノベーションとディスラプションの違い

    • 技術的なイノベーションは常に出てきているが、イノベーションがディスラプションに繋がっていない
    • 例えばモバイル前とモバイル後では人気のあるWebサイトはそれほど変わっていない。Facebookがいい例。モバイルというイノベーションはFacebookを破壊せず、モバイルを取り入れたFacebookはより強固になった。
    • ディスラプションは既存のビジネスモデルを破壊することによって起きる。Googleは広告をビジネスモデルにした。それまではライセンスで課金されていたのが、広告で無料になった。
    • ビジネスモデルが変わると全てが変わる。それまでの強みが弱みになり、新規参入がしやすくなる。
    • 暗号化通貨(クリプト)など暗号化技術はディスラプションを起こす可能性がある。それは単に技術の変革ではなく、ビジネスモデルの変革だから。これまでの広告やサブスクリプションのような既存のビジネスモデルではなく、トークンのビジネスモデルになる。

    革新的なイノベーションとディスラプションの要素

    • 革命的なことが起きるには重要な要素が揃っていることが必要。インターネットの場合はブロードバンドだった。モバイルの場合はiPhoneだった。暗号化通貨(クリプト)にはまだ重要な要素が揃っていない。
    • クリプトが本当に利用されるには本当の意味での分散化を実現しなければならないし、セキュリティーも高めないといけない。そして、ATMネットワーク程度の処理能力を持たないといけない。これはインターネットにはブロードバンドが必要だったのと同じ。
    • その理由でNFT(代替不可能なトークン)には投資しているが、DEX(分散化した取引所)にはあまり投資していない。長期的にクリプトは有望だが短期的にはクラウド(特に開発者とエンタープライズむけのSaaS)の方が投資先としては有望。

    暗号化通貨(クリプト)に期待すること

    • 暗号化通貨の世界はもっと新しい資金の市場が生まれることを期待している。もちろん、詐欺の横行など問題になってるのは理解している。それでも、これまでベンチャーキャピタルの市場の中に入れなかった普通の人たちが投資家として参加できるのは素晴らしいこと。これはスタートアップにとってもにとっても良いこと。
    • 多くの人は投資としてのクリプトと利用としてのクリプトを二つに分けているが、これには反対。投資するにはユーザーである必要がある。FacebookのユーザーがFacebookを作り、YouTubeのユーザーがYouTubeを作っているのに、投資に参加できない。これはおかしい。
    • Twitterが大きくなるときにクリプトがあったら、きっと取り入れてただろう(フレッド・ウィルソンはTwitterの初期からの投資家で『ツイッター創業物語』にも登場します)。

    • インターネットの初期の頃はインターネットで置き換えるオフラインのものに投資していた。オンラインニュースとか、オンラインショップとか。オンラインほにゃらら。これはあまり賢いやり方ではなかった。インターネットネイティブなものに投資しなければいけない。クリプトの場合はクリプトネイティブなやり方を見つけないといけない。

    クラウドはまだまだいける(特に開発者向けとエンタープライズ)

    • 開発がさらに楽になるようなSaaSは多くの余地が残されている。例えばStripeのおかげで決済を組み込むのが簡単になった。Twilioのおかげでテキストを組み込むのが簡単になった。もっとあると思う。
    • 投資が活発なのはエンタープライズSaaSの分野。FacebookやYouTubeのようなB2Cは当たれば何百倍にもなって派手だけど、その数は多くない。B2Cの場合は勝者総取りで、トップと二番手の間には10倍以上の差がある。B2Bも同じだけど、トップと二番手の差は3倍くらい。
    • AIが仕事を奪うというけど、クラウドの方がもっと奪う可能性がある。例えば、給与支払いのクラウドはこれまでの社内システムの開発者や給与に関わっていた人たちの職を奪う。すぐに目に見える形ではないけど、気づかないうちに必要なくなっている。

  • スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

    スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

    スタートアップでよく言われるのは地味な産業の地味な問題を解決しろです。競争相手が少ないのが一つ、本当に困っているからお金を払ってもらえるのが二つ目の理由です。以前に通っていた歯医者さんに「歯科向けのソフト開発しなよ、絶対売れるから」と言われていました。作らなかったけど、作ってたら売れたのかなあ。

    建設は地味だけど大きな市場で無駄がたくさんある産業の代表例です。アメリカでは600万人が建設業界に携わっていて、毎年1兆円規模のプロジェクトを行なっています。

     

     

    建設業界の課題

    建設業界は金融業界と並び、スタートアップにとってはロマンあふれる市場です。いや、本当ですよ。マッキンゼーによると2030年までに57億ドル(約6400兆円)のインフラ投資が必要になります。また、建設業界は非効率的な産業で納期の遅れと予算オーバーが常態化しています。デジタル化が遅れていて、「紙が一番の競合」と言われたりしています。世界の生産性の平均は35ドル/時間ですが、建設業界の平均は25ドル/時間です。これにより1兆6000万ドル(約180兆円!)の生産性のギャップが一年間で発生しています。

    じゃあ、具体的にどれくらいの資料の量なのかというと、平成29年度の国土交通白書によると、約14ヶ月の橋梁下部工事の場合、資料の厚みが3メートル以上(360cm)だったそうです。それを削減してもまだ1メートル以上(納品資料:53cm/提示資料:112cm)あるんだからすごいですね。それでもこれまで半分以上削減したのだから大したものです。

    国土交通省 i-Constructionの推進状況 2018年6月1日 第3回企画委員会 資料-1

    多くの資料や検査が必要なのは仕方がない部分があります。建物や道路など公共のインフラを作るのには安全が第一です。長く使うものですしね。しかも、設計、調達、施工、管理のそれぞれの段階で多くの関係企業や省庁がかかわってきます。プレーヤーが多いのです。

    建設業界デジタル化の潮流

    コンストラクションテックはAutodeskの主戦場です。設計はまずAutoCADですからね。そして、今は設計情報のデータベースとも言えるビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)の時代ですね。建設データのデジタル化が全体的なトレンドです。この分野で大きなシェアを持っているのはArchiCADとAutodeskのBIM 360です。

    しかし、当然ながら大手だけでどうにかなる市場ではないので、多くのスタートアップがシェアを求めて挑戦してきています。日本でも富士通とかNECとか日立とか大きなところが幅を利かせている市場ですが、スタートアップが寄り付かないのが海外との違いです、残念ながら。

    建設市場へのテックの挑戦

    建設市場は成長が見込まれる市場なので投資も集まっています。投資が集まるということはスタートアップも参入しますし、ユニコーン(10億ドル以上の資産評価される未公開企業)も生まれます。

    サービスとしての建設:Katerra

    ここ最近、大きな資金調達をして話題を集めているのがKaterraです。シリーズDでSoftBank Vision Fundから8億6500万ドルを調達しました。30億ドルの資産評価でユニコーンの仲間入りをしました。中国の自転車レンタルサービスのOfoがそれくらいの資産評価だったと思います。

    Katerraはソフトウェア会社というよりは建設業界に特化したサービスプロバイダーです。自社工場で部品を製造し、組み立てを行い、建設現場に資材を届け、施工まで行います。全てのプロセスを一社で行うのです。

    ソフトウェアを使いこなすには時間がかかりますし、プレーヤーが多いとなおのことです。だったら、自分たちでソフトウェアを使いこなして、全部やっちゃえ!というアプローチですね。建設業界でもモノからサービス、ソフトウェアからサービスへの移行が進む可能性がありますね。

    コンストラクションテックのパイオニア:Procore

    この市場の可能性に早くから気づいて、2002年に創業したのが建設に特化したプロジェクト管理のProcoreです。シリーズGまで進んでいて、10億ドルの資産評価を受けたユニコーンでもあります。CDNのCloudflareやアドテックのInMobiと同じくらいの資産評価ですね。

    BIMがデータの管理だとしたら、Procoreコラボレーションソフトですね。創業者でCEOのトゥーイ・コートマンチは自宅の建設中に設計チームとコミュニケーションをするのが大変だった経験から創業のアイデアを得たそうです。

    Procoreくらい存在感が出てくると、Autodeskとしても無視できないようで、色々とぶつかっているようです。一方でRhumbixには投資してるので、組めるところは組む、組めないところは徹底的に戦うということなんでしょう。

    Y Combinator卒業のエリート:PlanGrid

    コンストラクションテックに一番投資をしているのが何を隠そうY Combinatorです。そしてその卒業生の代表選手がPlanGridです。その名が示す通り、ブループリント(設計図)を共有するサービスです。ブループリントは変更が多いデータで、紙で全てをトラッキングするのは非常に困難でした。全部をやろうとせず、一番困っているニッチな部分を探すのって大事ですよね。

    PlanGridも2015年にシリーズBで5000万ドルの資金調達に成功しています。

    建設業界でのAR/AR活用:Scope AR/Yulio VR

    AR/VRって建設業界で活かせそうですよね。実際にそう考えるスタートアップは多くて、スタートアップがたくさん参入しています。主なユースケースはトレーニングとデザインです。

    Scope ARはARを使って現場のスタッフに適切な情報や指示を送ることができます。マイクロソフトのHoloLensを使っています。こちらもY Combinator卒業生。

    YulioはVRを使ったショールーミング。CADのデータを取り入れてVR環境を作ります。Webやアプリの開発ではInVisionのようなプロトタイプツールで開発前にどのようなUXなのかをデザイナーと開発者で共有することができますし、クライアントにプレゼンテーションもできます。Yulioはその3D版という感じですね。同様のサービスにIris VRもあります。

    建設業界での人工知能(AI)活用:Smartvid.io/Doxel

    BIMで建設データをデジタル化したら、それを分析したくなりますよね。そして、分析できるということは人工知能を使える場面も増えるということです。

    Smartvid.ioは建設業界に特化した画像解析のAIです。現場で撮影され、BIMに登録された写真や動画に自動的にタグ付けをして管理を容易にします。Adobe SenseiがストックフォトサービスのAdobe Stockでやっていることの建設特化版ですね。シリーズAで1000万ドルの資金調達に成功しています。

    Doxelも同様に建設業界に特化した画像解析AIですが、自律走行ロボットを活用して画像を収集するというところが新しいアプローチになっています。

    ただ、ドローンを使った画像解析サービスのAirware130億円を溶かして壮大に破綻したので、独自のハードウェアはちょっと注意が必要ですかね。どこまで汎用品を使い、どこまで専用のものを開発するかの見極めは大事です。

  • PayPalマフィアとユニコーンの系譜

    PayPalマフィアとユニコーンの系譜

    スタートアップの歴史を語る上で避けて通ることができないのがPayPalです。2002年のeBayによるPalPayの1億5000万ドルの買収は、創業者や社員に大きな富をもたらしました。それがPayPalマフィアと呼ばれる創業者たちになっていきます。PayPalがなければテスラはもちろんのこと、YelpもYouTubeもありませんでした。

     

    PayPalマフィア

    まず、PayPalマフィアについて。PayPalの初期メンバーはその後にさらにスタートアップで成功させています。イーロン・マスク やピーター・ティールといった創業者だけでなく、チャド・ハーリ/スティーブ・チェン/ジョード・カリム(YouTube)、ジェリミー・ストッペルマン(Yelp)、リード・ホフマン(LinkedIn)など錚々たる顔ぶれです。

    PayPalマフィアの系譜

    PayPalはインターネットが伸びるドットコムバブルの初期に設立され、ドットコムバブルが崩壊した後にeBayに買収され無事にエグジットしました。少なくとも、eBayに買収される前まではとても革新的な会社でした。グロースハックのパイオニアでしたし、アリババのビジネスモデルはPayPalのそのままパクリだったりもします(PayPalが失敗したモデルを成功させたアリババもすごい)。

    ピーター・ティール(CFO > Chairman)とマックス・レフチン(CTO)

    ピーター・ティールとマックス・レフチンはPalm Pilot向けのセキュリティーソフトを開発するConfinityを立ち上げます。しかし、これはあまりうまく行かず、Palm Pilot向けのウォレットを開発し、これがPayPalとなります。PayPalは最初はモバイルペイメントのサービスだったんですね。

    Palm Pilot

    しかし、Palm Pilotという特定のプラットフォームだけではマーケットも限られているため、Webのプラットフォームに移行しました。

    イーロン・マスク(Chairman > CEO)

    イーロン・マスクが最初に立ち上げたのは街のローカル情報を提供するZip2でした。Zip2はコンパックに買収されます。イーロン・マスクは2200万ドルを手に入れ、この資金を元手にX.comを立ち上げます。

    X.comはピーター・ティールとマックス・レフチンのConfinityが提供するPayPalに競合するサービスで、さらに銀行として営業をする認可を受けていました。少なくともアメリカでははじめてのオンライン専業銀行でした。最初は競合だったんですね。

    ConfinityとX.comのグロースハック

    eBayは当時伸び盛りのコマースサイトでした。B2CコマースのAmazonと違い、eBayはC2Cコマースなのでユーザー同士による金銭のやりとりが必要でした。そこでよく使われたペイメントプラットフォームがPayPalとX.comでした。

    当時のPayPalのグロースハックはマーケティング責任者だったリード・ホフマン(LinkedInの創業者)が詳しく解説してくれています。

    グロースハック1:インセンティブとリファーラル

    両社はeBay上で顧客獲得のために激しく競争をしました。新規顧客には10ドルを支払い、さらに他の人を紹介してくれた場合は紹介料として10ドルを支払いました。今だとCPA(新規顧客一人当たりの獲得コスト)が高すぎてなかなか取れない戦略ですが、ドットコムバブルがはじける前なのでこのようなバブリーな成長戦略が取れたんですね。

    グロースハック2:埋め込みHTML

    PayPalのようなサービスにとって最終的なコンバージョンはお金の支払いです。では、eBayでのお金の支払いのためにPayPalを使ってもらうにはどうしたらいいか?まずはeBayで目立つようにしないといけませんよね。そこで、出店者がConfinityやX.comのロゴをつけられるように埋め込み用のHTMLコードを用意しました。

    グロースハック3:クローラーと電子メールによるハック

    eBayのWebサイトで目立つだけではまだ足りません。最終的な落札の連絡は電子メールだからです。そこでConfinityはeBayのサイトをクロール(ロボットによる検索)してターゲットとなるオークションを特定し、eBayより早く落札者を特定してメールを送れるようにしました。これぞグロースハックですよね。

    ビジネスモデルの創出

    オンラインペイメントのスタートアップは同時期にたくさん生まれましたが、PayPalはビジネスを成功させることで新しいビジネスモデルを生み出しました。

    また、あまり知られていませんが、マネーリザーブファンド(余额宝)によるアリババのビジネスモデルはPayPalが最初にはじめました。PayPalはMoney Market Fundを立ち上げ、2000年には5.56%の金利を提供していました。ちなみに、アリババの余额宝の2018年の金利は3.6%です。

    しかし、PayPalのMoney Market Fundの金利は2009年には0.23%まで落ち、2011年にはサービス終了しました。リーマンショックは2008年だったので、そこでかなり損が出てしまったのでしょうか。アリババのすごいところはPayPalが失敗したこのモデルを成功させたことです。きっと、なぜPayPalが失敗したのか研究したんでしょうね。失敗を避けるのではなく、学べる組織は強い。

    eBayによる買収

    コマースサイトとオンラインペイメントは切ってもきれない関係です。eBayとしても他人に自分の庭を荒らされるより、自分でペイメントも仕切りたい。そこで、eBayはConfinityとX.comにとっての競合となるBillpointを買収します。そして、ConfinityやX.comの使っていたグロースハックの手法を無効にしたり、色々な対抗策を講じます。

    Confinityにとっての問題は顧客は多いが、キャッシュが少ないこと。X.comにとっての問題はキャッシュは多いが、顧客が少ないこと。お互いの持ってるものと持っていないものが補完関係で、Billpointという共通の敵が生まれたことでConfinityとX.comは合併することにします。これがPayPalとなります。

    お金を持っているイーロン・マスク が大株主で会長(Chairman)、ファイナンスのバックグラウンドを持つピーター・ティールがCFOとなります。ちなみに、ビル・ハリスがCEOになりますが、すぐにクビになります。

    しかし、BillpointというeBayネイティブのペイメントがあるにも関わらず、PayPalのeBayでのシェアは70%まで高まります。そして、eBayはPayPalの競合サービスを独自で展開することを諦め、PayPalを1億5000万ドルで買収することにします。

    PayPalマフィアたち

    2002年のeBayによるPayPal買収によりPayPalで活躍していた人材が自分たちでスタートアップをはじめます。また、エンジェル投資家になったり、ベンチャーキャピタルのパートナーになる人たちもいました。創業者と投資家が同時に生まれたのです。

    多くの元PayPal従業員がスタートアップで成功し、それを支援した元PayPal従業員の投資家とともに彼らはPayPalマフィアと呼ばれるようになりました。

    イーロン・マスクやピーター・ティールはすでに日本でも有名ですので、それ以外の人たちを見ていきましょう。

    リード・ホフマン(COO > LinkedIn創業者)

    PayPalに参加する前にリード・ホフマンはSocialNet.comというマッチングサイトを創業しました。PayPal当時にホフマンの上司だったピーター・ティールによると、SocialNet.comはソーシャルメディアの先駆けとなるようなサイトだったそうです。PayPalではCOOとして外部との関係すべてに責任を持ちました。

    eBayの買収後、リード・ホフマンはLinkedInを立ち上げます。そして、LinkedInは2016年にマイクロソフトに262億ドルで買収され、エグジットします。

    ジェリミー・ストッペルマン(エンジニアリング担当副社長 > Yelp創業者)

    イーロン・マスク の立ち上げたX.comに参加して、Confinityとの合併でPayPalにそのまま参加します。eBayの買収後はハーバード大学のビジネススクールに通いますが、PayPal当時にストッペルマンの上司だったマックス・レフチンに勧められMRL venturesに参加します。そこで再開したPayPalの元エンジニアだったラッセル・シモンズとYelpを立ち上げます。

    元PayPalのCTOでYelp創業者たちの上司だったマックス・レフチンはYelpに投資しました。

    チャド・ハーリー/スティーブ・チェン/ジョード・カリム(エンジニア > YouTube創業者)

    YouTubeの創業者たちもPayPalのエンジニアでした。YouTubeの創業の歴史はいろんな文献があるので各自でチェックお願いします。(そのうち書くかも)

    ルロフ・ボサはピーター・ティールの後にPayPalのCFOになり、eBay買収後はベンチャーキャピタルのSequoia Capitalに参加します。Sequoia CapitalからのYouTubeへの投資担当はルロフ・ボサでした。

    ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

    ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

     

    参考文献

    The History Of PayPal: Important Company Dates | PYMNTS.com

    The Story of PayPal – Bharath Kumar J – Medium

    Reid Hoffman on best strategies, valuable lessons, the PayPal mafia & creating early social networks – YouTube

    How Does a PayPal Money Market Fund Work? | Pocket Sense

    The YouTube Gurus – TIME

  • 書評|Amazonから学ぶ4つのビジネスの成功要素|”Be Like Amazon” by Jeffrey Eisenberg

    書評|Amazonから学ぶ4つのビジネスの成功要素|”Be Like Amazon” by Jeffrey Eisenberg

    実証されていないイノベーションやビジネスモデルはワクワクします。将来のことだから。株価も将来の期待によって上下します。顧客や従業員を中心に考える企業は投資家からみれば、利益という自分の分前を取られていると感じますし、ワクワクしないのであまりニュースにもなりません。

    ジェフリー・アイゼンバーグの”Be Like Amazon“は「もちろん、イノベーションやオペレーションの最適化は大事なのだけれど、顧客やパートナーも大事だよ」と事例を示しながら解説しています。

    本の内容

    ジェフリー・アイゼンバーグの”Be Like Amazon”はビジネス書なのだけれど、投資家である師匠と起業家である弟子が車でどこかへ向かう途中の会話という形式になっています。会話形式ですが、フレームワークははっきりしているので、要点がぶれることもなく非常にわかりやすいです。タイトルにAmazonとありますが、Amazon以外の事例を紹介しながら独自の事業フレームワークを解説しています。

    この本では以下の四つが成功の要素としています。

    1. 顧客中心主義(Customer Centricity)
    2. 継続的改善(Continuous Optimization)
    3. イノベーション文化(Culture of Innovation)
    4. 企業としての迅速さ(Corporate Agility)

    メディアで「これはイノベーションだ!すごい!」とか「こんなオペレーションよく考えた!天才!」のような記事をよく見かけます。それはこの四つの中の2. 継続的改善と 3. イノベーション文化の表れではあります。しかし、「この取り組みは顧客中心主義ですごい!」という記事はあまり見かけません。顧客中心主義はイノベーションやオペレーションに比べて記事になりにくいからでしょうが、1. 顧客中心主義がなければ「結局そのイノベーションは誰のため?」となってしまいます。

    顧客にとっては安く便利に買い物ができて、早く届けばいい。それがどんな仕組みだろうと関係ありません。Amazonが矢継ぎ早に繰り出すドローンによる配達、Amazon Dash、Amazon Goも「安く便利に買い物ができて、早く届ける」ことを実現することですよね。上記の成功要素四つが全て満たされています。

    顧客を失うと改善もイノベーションも意味がなくなる

    シアーズはジュリアス・ローゼンウォルドの時代、1906年にIPOします。シアーズはカタログ販売という当時としては革新的なビジネスモデルを成功させましたが、その成功の裏にあった理念は良いものを安く届けるです。顧客が満足しなければ返金する「満足保証」はその表れでした。

    長年シアーズがアメリカ小売りのトップでしたが、1980年代にサム・ウォルトンのウォルマートにチャンピオンの座を譲ります。シアーズはディスカバリーカードを作ってクレジットカード領域に参入したり、オペレーションの改善をしましたが、顧客中心の視点は失っていきました。

    そのイノベーションは誰のため?

    現金お断りは顧客のため?

    様々なニュースでイノベーションが取り上げられ賞賛されています。しかし、「そのイノベーションは誰のため?」と思ってしまうような事例も少なくないです。例えば、天丼てんやが現金お断りのキャッシュレス店舗をはじめるという話。

    ヨーロッパでは確かに現金を受け付けないキャッシュレススーパーマーケット(Marqt)など一部あります。アメリカではAmazon Goが代表例です。しかし、これは例外的です。ヨーロッパではデビットカードでの支払い、アメリカではクレジットカードでの支払いが一般化していて、キャッシュレスでの支払い行動が現金より多いという背景もあり、それほど困ったことにはなりません。

    企業として2. 継続的改善(Continuous Optimization)は大事ですし、イノベーション文化(Culture of Innovation)や企業としての迅速さ(Corporate Agility)は賞賛されるべきことです。しかし、1. 顧客中心主義(Customer Centricity)の視点で考えるとどうでしょうか?

    このような疑問は英国The Gurdianでも提起されています。キャッシュレスで支払えないという理由だけで顧客を拒絶するのが正しい姿勢なのでしょうかと。もちろん、テスト運用だったら理解できます。やってみないとわかりませんから。しかし、現金拒否があたかも既定路線であるかのような姿勢には、顧客中心主義の観点で大きな疑問となります。

    デリバリープロバイダは顧客のため?

    この本では大絶賛さているAmazonですが、日本ではどうでしょうか。例えばAmazon Japanのデリバリープロバイダは早くも安くもなっていないので1. 顧客中心主義の欠けた2. 継続的改善となってしまっています。なかなか日本では徹底できないのかもしれません。Amazonは小売だけではなく物流も支配するかもしれないと予想する人たちもいますが、それが顧客のためにならないのであれば支持もされないでしょう。

  • 人工知能で裁判できる?|2018年法律関連リーガルテック

    人工知能で裁判できる?|2018年法律関連リーガルテック

    法律関連は資料や書類が多くて大変なイメージがありますよね。すごく紙が多いイメージ。実際に多いんですけどね。そういう分野こそ本来ならテクノロジーが解決できる課題が多いはず。そう考えるう人はやはり多く、法律に関するスタートアップも少なくありません。老舗だとLegalZoomRocketLawyerが有名です。

    スタンフォード大学のCodeX Techindexでは法律関連のテクノロジーをカタログ化していて、2018年9月現在で1061のスタートアップが登録されています。今回はそんなリーガルテックで注目のスタートアップを集めてみました。

    人工知能で裁判できちゃったりするんでしょうか?

     

     

    リーガルテックの分類と特徴

    リーガルテックは大きくは以下の三つに分類することができます。

    業務のデジタル化:法律関連データのデジタル化

    プロセス改善:業務管理や文書管理など、既存の法務業務のプロセスを効率化する

    既存のサービスのオンライン化:既存の法務サービスをオンラインサービスへ置き換え

    そうはいっても、法律はとても大きな範囲で、スケールしにくい分野です。第一に、国によって法律が異なります。アメリカのリーガルテックが日本やヨーロッパに展開するのは相当難しいでしょう。

    次に、専門分野がたくさんあります。個人で必要になる法律と法人で必要となる法律も違います。慰謝料請求や離婚調停も法律関連ですし、セクハラで訴えるのだって法律関連です。民間の文書を公証人が認める公証もそうですね。

    最後に、業務範囲も広いです。例えば、ユーザーが法律の専門家を見つけるマーケットプレイスはB2BとB2Cで違います。弁護士だって業務管理や文書管理が必要ですよね。そういうわけで、様々なニッチ分野に様々なスタートアップが存在しているというのがリーガルテックの特徴でしょう。

    テクノロジースタートアップとしての法律事務所

    Atriumは法務文書をデータに変換して資金調達、契約書作成や株式分配といった法務プロセスを効率的にすることを掲げるスタートアップ。テクノロジー企業というより、テクノロジーを基盤とした法律事務所です。最近、a16zから6500万ドルの資金調達をして話題になりました。

    Y Combinatorの卒業生なんですが、法律事務所もY Combinatorに選ばれるんですね。確かに、テックカンパニーだけがスタートアップじゃないですからね。

    注目されるe-Discovery

    e-Discoveryは裁判や捜査に必要な電子情報を発見、収集してドキュメントとしてまとめる仕組みです。電子情報は電子メールや文書ファイル、データベースにボイスメールなど多岐に渡ります。また、タイムスタンプなどのメタデータも扱います。これらを人の手で管理するのは非常に大変なのは想像に難しくないですよね。

    収取されたデータはデータベースに格納されます。証拠として扱うので、改変ができないようにしないといけません。そして、弁護士やパラリーガルがレビューできる状態にします。ドキュメントの量は膨大になるので、CAR / TAR (Computer Assisted Review / Technology Assisted Review) のようなレビューを支援する仕組みがあります。

    このe-Discoveryは年間で70から100億円の市場と言われていて、関連スタートアップに投資が集まっています。代表的なe-DiscoveryのスタートアップはCS Disco2000万ドルをシリーズDで調達)、Everlaw2500万ドルをシリーズBで調達)、Logikcull2500万ドルをシリーズBで調達)が今年に入って大きな資金調達をしました。

    法律分野での人工知能活用

    AIも法律での活用が期待されている技術です。将来的には裁判もAIでできてしまうのではないかと言われたりしますよね。しかし、法律分野でのAIの利用はまだはじまったばかりです。

    リーガルリサーチ

    法律分野でのAIの活用で有名なのは最近(2017年10月)にシリーズAで870万ドルを調達したROSSでしょうね。分野としては現在取り掛かっている裁判に近い判例を探すリーガルサーチですが、この分野はLexisNexisThomson Reutersが既存の主なプレーヤーです。自然言語解析にAIを使うことで判例を探すスピードを早くするそうです。結果的に法律のサービスのコストを下げることになり、これまで弁護士を雇うことができなかった層の人たちにも法律サービスが提供できるようになるというのがビジョンだそうです。IBMワトソンを使っているからか、TEDのIBM枠でプレゼンしています。

    ドキュメント管理

    Kiraは契約書のデータを収集して分析してレポートを出すツールです。創業者のノア・ワイスバーグは元々M&Aに携わっていた弁護士で、AIを使うことでまだ慣れていない弁護士がデューデリジェンスで間違いを犯すことを防げると考えているそうです。ドイツのLevertonも文書をAIを使って構造化データに変換するサービスです。e-Discoveryの延長線上としてのAIなんですかね。

    リーガルアシスタント

    ユーザーに直接的に法律サービスを提供するAIも出はじめています。簡単に言えば法律サービスを提供するチャットボットです。AIはチャットボットによく使われていますからね。

    DoNotPayはAIを使った法律サービスの代表例です。駐車違反の異議申し立てを手伝ってくれたり、予約した旅行料金より安いサービスを見つけた時の返金申請を手伝ってくれたりします。こちらは機械学習というよりはルールベースっぽいですね。

    Lee & Alleyもチャットを使ったリーガルアシスタントで、こちらは自然言語で応対してくれるようです。まだサービスははじまってないので、実際どこまでAIなのかはわからないですが。

  • ネットイース(网易)から学ぶ、我が道を行きながら事業ポートフォリオを増やす方法

    ネットイース(网易)から学ぶ、我が道を行きながら事業ポートフォリオを増やす方法

    中国のネットイース(NetEase|网易)といえばゲーム会社のイメージが強いかもしれません。陰陽師Rules of Survival荒野行動が人気ですね。実際に中国のゲーム売上ではテンセント(Tencent|腾讯)に次いで第二位、世界のモバイルゲームパブリッシャーとしてもテンセントについで第二位です。っていうか、テンセント強すぎですね。PUBG Mobileも調子いいですし。

    ネットイースは中国のプラットフォーマーである(BAT|バイドゥアリババテンセント)には及ばないですし、それを追いかける若いユニコーンたち(メイトゥアントウティアオJD.comなど)と比べると目立った存在ではないかもしれません。

    テンセントがゲームを収益の柱としつつ、ペイメントやソーシャルに事業ポートフォリオを伸ばしているのと同様に、ネットイースも音楽やコマースといったゲーム以外の事業ポートフォリオで成功を収めつつあります。ユニークなのはその事業の方向性です。

     

     

    ネットイースの特徴

    中国のBATはそれぞれに事業の特徴があり、長期的なビジョンやそこへ進む道も明確です。ネットイースは他の中国企業と比べて表面的には一貫性がありません。養豚事業のウェイヤン(网易味央)とか象徴的ですよね。なんでゲーム会社が養豚?

    でも、これら表面的には一貫性のない多角化がうまくいっているのが面白いところです。音楽ストリーミング(网易云音乐)も越境コマースのカオラ(考拉)も順調です。

    ネットイースの主要事業(2017年度のAnnual Reportより)

    • ゲーム:言わずもがなのネットイース の主力事業で67%の売り上げを占めるます。2015年度には76%だったので、相対的に他の事業(Eコマース)が順調に伸びていることがわかります。
    • Eコマース:ネットイースの2本目の柱となることが期待されている事業。越境コマースのカオラ(考拉)とプライベートブランドを展開するB2Cコマースのヤンシュアン(严选)が軸。2015年度は5.1%でしたが、2017年度は21.6%にまで成長しています。
    • インターネットメディア:元々のメイン事業だったポータルサイト(www.163.com)を中心としたコンテンツとコミュニケーションのビジネス。広告収入がメイン。2017年度の売り上げは全体の4.5%なのであまり大きくないですね。
    • その他、Eメールなど:ネットイースは中国の無料eメールの先駆けで、ボクの中国人の友人はほぼ163のメールアドレスを持っていました。その他、音楽ストリーミング(网易云音乐)やチャットのようなインキュベーション的な事業は全て一括りにされています。養豚事業も恐らくこの分類かと。こちらも6.9%とまだ大きくありません。

    網易(ネットイース)、第2四半期営業収入は約2730億円:ゲーム復調、純利益減少に歯止め | 36Kr Japan

    ネットイース創業前

    ネットイースの創業者はウィリアム・ディン(丁磊)です。ネットイース創業前のウィリアムのキャリアは順風満帆とはいえませんでした。大学卒業後に上海市近くのニンボー市(宁波)の電信局に1993年に就職しますが、しばらくして退職します。そして広州に移りデータベース企業のSybaseで働きはじめますが、これも一年しか続きませんでした。さらに、広州のISPに転職してFirebird BBSを使ったフォーラムを立ち上げますが、この会社もすぐに辞めてしまいます。

    ネットイース創業と163の意味

    大学を卒業してからどこも長く続きませんでした。そこでウィリアムは起業することにします。何かアイデアがあったわけではなく、ソフトウェアを作ってシステム開発すればいいだろうと考えていたそうです。50万人民元(いまの日本円で800万円くらい)の資本金の一部は自己資金で、あとは友達に借りたそうです。とにかく自分のやりたいことをやりたかった。これがネットイースの原点なんですね。1997年のことでした。大学を卒業して4年ですね。テンセント(1998年)やアリババ、バイドゥ(1999年)より早かったんですね。

    中国ではドメイン名に数字が使われることが多いです。例えば中国電信の場合は10086.cnですが、これは中国電信のカスタマーサービスの電話番号が由来です。ネットイースの場合は163.comですが、これはインターネットに接続するときにダイアルアップ接続していた頃の名残です。中国ではインターネットに接続するときにダイアルする番号が163でした。

    ネットイースの初期のビジネスはポータルと無料電子メールによる広告モデルでした。

    IPOと業績不振とゲームビジネス参入

    ネットイースは2000年6月にNASDAQに一株$15.50で上場します。創業からたった三年です。すごいですね。しかし、ポータル事業を中心とした広告収入は伸び悩んでいました。その上で経営陣の不正の疑いや香港の企業の買収取りやめなどが重なり、株価が急落します。最低の時は$0.64で、価値は120億ドルから3億ドルまで下がりました。このために一時的にNASDAQでの取引を停止します。ウィリアムは30歳でした。すごいジェットコースターですね。

    そこでウィリアムスが決断したのがゲーム業界への参入でした。ポータルからのトラフィックをゲームにつなげるという理屈はわからないでもないですが、Webの開発とゲームの開発は全然違うので、すごいピボットだなと思います。

    そしてリリースしたのが『夢幻西遊』というWindowsプラットフォーム向けのMMORPGで、これが大ヒットします。ゲーム会社としてのネットイースの原点がここです。このピボットが成功してネットイースの株価は再び上昇します。なんとなく日本人のボクたちにはミクシーを想起させますね。

    ウィリアム・ディンのやりたいこと

    スタートアップは創業者のビジョンを具現化したものです。ウィリアム・ディンの場合は「自分のやりたいことをやりたい」が初期衝動でした。ビジョンというよりは初期衝動がネットイース を突き動かしているんじゃないかという気がします。

    ネットイースは創業がアリババやテンセントより早いにもかかわらず、バイドゥーの半分の資産価値なのはマーケットに動かされているというより、「自分のやりたいことをやりたい」が優先しているからなのではないかなと。ウィリアム・ディンはテンセントのポニー・マーやアレン・ジャンに輪をかけてメディアシャイでなかなか公の場に現れないので想像でしかないですが。

    BATにネットイースが加わってBANT(Baidu/Alibaba/NetEase/Tencent)になれればいいけど、それがゴールじゃない。そうじゃなければ養豚ビジネスに参入なんてしないでしょう。ボクはそんなネットイース が嫌いじゃないです。

    参考文献

    网易老总丁磊的创业故事-成功创业网

    Tencent unseats NetEase in battle for global mobile app leadership | South China Morning Post

    Sky Is Limit For NetEase’s Pig Farm Business

    Chinese Number Websites: The Secret Meaning of URLs | The New Republic

    Lost 3 billion to earn 110 billion, 32 year old became the richest man Chinese – china news

     

  • 書評|Twitter創業者たちのエゴと魅力『ツイッター創業物語』|”Hatching Twitter” by Nick Bilton【2018年夏休み読書週間】

    書評|Twitter創業者たちのエゴと魅力『ツイッター創業物語』|”Hatching Twitter” by Nick Bilton【2018年夏休み読書週間】

    いろいろなスタートアップの成り立ちを調べてブログで書いていると、企業や人となりには(当然ながら)裏と表があると気がつきます。完璧なんてない。どれだけ素晴らしい業績を残した起業家も成人君主ではなく普通の人間です。

    いわゆる会社公認の「創業史」には人間的なドロドロした部分を拭き取って、磨いてピカピカになったものです。しかし、この『ツイッター創業物語』はニック・ビルトンが創業者たちだけでなく、当時の関係者に徹底的に聞き取り調査をした結果、非常に人間らしいツイッターの生い立ちを伝えています。

    Hatching Twitter (English Edition)

    Hatching Twitter (English Edition)

     
    ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

    ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

     

     

     

    成功者は聖人君主じゃない

    Appleのスティーブ・ジョブズやFacebookのマーク・ザッカーバーグの成し遂げたことはスゴイです。日本だと松下幸之助や本田宗一郎は伝説ですよね。彼らの人となりが理解できるほど近しい人は限られていて、多くの人は想像するしかありません。そして想像する彼らは素晴らしいリーダー。想像の産物です。リーダーは人格者であってほしいという潜在的な期待もあるでしょう。でも、実際には完璧な人間なんていません。

    『ツイッター創業物語』に登場するエヴァン・ウィリアムズ、ジャック・ドーシー、ビズ・ストーン、ノア・グラスの四人(公式には三人)の創業者たちも完璧とは程遠い人間らしい人たちとして描かれています。マーク・ザッカーバーグも登場しますが、彼も(当然ながら)慈善事業としてFacebookを運営しているわけではないので、ライバルであるTwitterをしたたかに追い詰めようとします。でも、それが人間ですよね。

    三人いれば「社内政治」が生まれる

    スタートアップは大企業と違って社内政治がないというイメージがあると思います。これは実際とは随分違うかなと思います。欧米のビジネスの世界では「三人いれば社内政治が生まれる」と言われています。ボクが手伝っていたスタートアップが海外支社を作った時、その国は三人ではじめました。三人なんだから密接に連携してやると思いますよね?そんなことないんです。人間にはエゴがありプライドがあり、相性があります。英語では人間の相性を化学反応(Chemistry)と言います。Wikipediaにもあるくらい頻繁に使われるビジネス用語です。

    エヴァン・ウィリアムズ、ジャック・ドーシー、ビズ・ストーン、ノア・グラスの四人は簡単に言えばChemistryが合わなかったのかなと。完璧な聖人君主がいないように、完璧な悪魔もいません。人と人との化学反応がよく作用することもあれば、悪く作用することもある。それだけです。この本では創業者同士の化学反応がどのように起きたのかを追うことができます。

    ジャーナリズムの凄さ

    インターネットのおかげで創業者が会社の成り立ちをPRというフィルター無しで見ることができるようになりました。ボクのようなブロガーはそのようなネット上のインタビューを整理整頓して記事にすることができます。創業初期にはPRエージェンシーは付いていないので、創業者の率直な考えや出来事を知ることができます。PRエージェンシーがキレイにした会社公認の「創業史」よりは少し人間っぽさが出ているかと思います。それでも、そこが限界です。

    報道には会社からの「発表報道」と記者の「調査報道」があります。セラノスを追求したジョン・カレイロウの”Bad Blood”もそうですが、ニック・ビルトンによるこの『ツイッター創業物語』を読んでいるとやっぱりジャーナリズムってスゴイと思います。

    不満点

    Twitterの発展には日本のユーザーがかなり貢献しているのですが、その点については全く触れられていません。Pride ParadeやSXSW、大統領選などのイベントについては触れられているのですが、「バルス」については触れられていません。この本は関係者へのインタビューをもとに書かれているので、ひょっとしたらTwitterの関係者は何が日本で起きていたのか、実はあまり理解できていなかったのかもしれません。

    Twitter’s Top 5 Accounts Are All in Japan — Here’s Why