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  • イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2012年)ベータ公開、コンテンツ移行と本番

    イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2012年)ベータ公開、コンテンツ移行と本番

    GOV.UK

    ざっくり言うと

    • データ分析大事。そのためのプラットフォームをこの時期に作る。GitHubとか使ってオープンにフィードバックを得るの大事。
    • GOV.UKではペルソナ使わない。あとで出てくるデジタルインクルージョンにもその思想は表れていると思います。公共サービスとしてはイギリスに住む人全員がユーザーであり、ペルソナのような紋切型は適さない。
    • この頃からGDSがイノベーションラボとして機能しはじめる。スケールすることが意識されはじめる。各省庁からチャンピオンを招集。イノベーションラボはトランスフォーメーションの定石。欧米では企業でも同じやり方。イノベーションラボに興味がある方はこちらまで。
    • アメリカのCode for Americaとはこの頃から付き合い。国内外でかなりコラボしてる。
    • この年の後半で戦略発表。1年くらいしかかかっていない。スタイルガイドとか基本となるものの準備も引き続き。

    原文:”A GDS Story 2012

    2010/2011年|2012年|2013年2014年|2015年

    2012年

    1月

    2012前半のスマホ版ベータ

    1月19日

    Photo: Jamie Arnold

    GOV.UKベータのデザインに関するブログ記事

    最初はうまくいかないでしょう。手探りで道を探しながら、地面に杭を指していくでしょう。うまくいきそうなアイデアをスケッチしていき、さまざまなソリューションをテストし、問題を解決する道筋を決める。これは巨大で複雑な作業です。

    1月31日

    2012年2月時点でのベータ

    GOV.UKベータの一画面

     GOV.UKのパブリックベータ版がローンチされました。それは「私たちの最初の大きなプラットフォーム」と呼ばれました。

     チームはgov.uk/tourを作っていろんな人に見せました。ベータ版はwww.gov.ukで公開されていましたが「非公式」のままでした。まだwww.direct.gov.ukを置き換えていませんでした。移行作業は2012年10月までのかかるはずです。ベータユーザーはGet Satisfactionページからフィードバックを求められました。

     エンゲージメントチームはソーシャルメディアをモニターしました。フィードバックの有用な分析をまとめました。Sotryfulの概要も含めて。

    ベータのローンチ直前のユーザー分布図

     Tom LoosemoreとMartha Lane FoxがBBCのニュースでインタビューを受けました。

     ベータ公開その日のうちにチームはユーザーのフィードバックに基づいてベータ版を反復改善しました。次の日にはより多くのフィードバック、より多くの反復改善。このような改善作業をひたすら続けました。

     この頃、GDSのメンバーは急速に増えます。Directgovの移行期日までわずか数カ月で、チームはより多くの人手を必要としました。

    2月

    ユーザーフィードバックのためのGet Satisfactionページ

     必然的に問題がたくさんありました。ベータユーザーは彼らが問題をフィードバックし、チームはそれを修正しました。この場合、火曜日のイースターがベータでは月曜日となっていました。

    2月1日

     一般市民からのGOV.UKに最初のプルリクエスト(Github)Matthew SomervilleはBank Holidaysページの間違いをフィードバックしました(スコットランドのBank Holidaysの間違った日にち)

    2月7日

     GDSとGOV.UKのブランドアイデンティティを生み出す – GOV.UKを全て大文字で表現したのがこれが初めて。これ以来ずっとこのように表現しました。

    GOV.UKのための斬新なロゴやアイデンティティはありません。これは時間とお金の節約でもあります。またGOV.UKが覚えてもらいたいURLだということもあります。単純にGOV.UKが必要な場所であること。新しい名前やアイデンティティーを発見または理解する必要はありません。しかし、名前を実際のアイデンティティーとするには(あるいは、オフィスで「何か」と言っているように)、常に大文字とすることに決めました。このようなことに多くの時間を費やしていると思われますが、私たちは約10分間でそれを決めました。

    2月10日

    シリコンバレー訪問中のMike Bracken、Liam MaxwellとFrancis Maude

     Mike Bracken、Francis MaudeLiam Maxwell(当時内閣府のIT改革グループで働いていた)はシリコンバレーのコンタクトを訪問しました。企業と公共部門の連携について視察しました。

    2月28日

     gov.uk/government内でInside Governmentのローンチ

     これはチームの構成と考え方が反映されています。GOV.UKの作業は「主流」と「Inside Government」という2つのプロジェクトと2つのチームに分かれていました。

    「メインストリーム」は市民向けのサイトでユーザーニーズに直接対応するもの。

    「Inside Government」はそれぞれの官公庁の旧来のページと似ていて、その省庁の仕事と役割について説明していました。

     このブログ記事のコメントは興味深いです。公開された翌日、誰かがアクセシビリティが貧弱だとコメントしました。数時間後チームはそれを改善するために変更を加えました。

     Neil Williamsはブログ記事を書き、Inside Governmentの「ガイド付きツアー」を紹介しました。

     そのブログ記事にある画像の1つはすべての官公庁は同じようにシングルドメインで公開されることを指しています。

    3月15日

    紙に穴を開け、その上に「ユーザー」と書きました。 穴から忙しい歩行者横断が見えました。

    Ben Terrett:

    誰かがいくつかのペルソナポスターを貼って、私はそれに対して怒りました。全ての市民が私たちのユーザーで、いい見た目のペルソナなんかじゃない。私は紙に穴を開けて窓に貼りました。

    3月23日

     Mike Brackenは2012年の予算に対応するブログ記事を書きました。彼は財務省からのこれらのコミットメントを強調しました:

     … 2014年から新しいオンラインサービスはそれに責任がある閣僚が自分自身でそのサービスを問題なく利用できることを実証できる場合にのみ公開することとします。また、2012年末までにすべての情報が「GOV.UK」シングルドメインのもとに公開され、2015年までにすべての手続きを「デフォルトでデジタル」アプローチに移行する予定です。

    3月28日

     デジタルリーダーの第1回会合。多くの異なる官公庁から集まり、知識と経験を共有するグループ。

    デジタルリーダーのRachel Neamanは次のように書いています:

    部門内のデジタルは孤独な場所です。しばしばオタクやトレンディな若いものの特殊な場所とみなされています。そのため、真の変化をもたらすための政府機関をまたがるプロフェッショナルのネットワーク作りは遅れています。厄介な問題に取り組んでいる人たちがほかにもいるということはよい発見です。今日も明らかになったことは単純で簡単な解決策はないということです。

    4月3日

    デザイン原則のアルファ

     デザイン原則アルファ版の公表。Tom Loosemoreのコメント:

    原則に従うことでチームは自律的に動くことができます。

     Head of Designのコメント

    デザイン原則がかつようされるにはシンプルで、明確で、役立ち、わかりやすくなければいけません。このデザイン原則が1ページのHTMLでまとめられ、各原則それぞれURLリンクを持っているのはそのためです。多くのデザイン原則は巨大なPDFファイルで読まれません。

    Dafydd VaughanとMazz Mosley

     その頃、GOV.UKの開発者(Dafydd VaughanMosely Melyを含む)数名がNumber 10 Downing Streetを訪れ、技術的な課題を検証しました。

    4月30日

    悪名高い出来事:Pete HerlihyはInside Governmentチームのアイスボックス(やらなければいけないけどまだ優先順位が付けられていないタスクリスト)を削除してしまいまい、多くの同僚を恐怖の底に突き落としました。

     彼はこの件についてこう書いています:

    もしそれが重要なら覚えているはず。…ある時点で、アイスボックスは50ストーリー以上になっていたため、私は全体を削除することに決めました。バックログの信頼性の問題となるので、そうするしかありませんでした。私たちチームのマントラは「覚えているのなら重要」でした。このマントラに従うことで実際にかなり自由になりました。

    5月14日

     Inside Governmentベータ終了。Ross Fergusonはそのフィードバック(いいのも悪いのも)について書きました

    5月25日

    チームは2012年5月にショー・アンド・テルを実施。チームの規模はどれくらいで、どれくらいのスペースがあったのか、そして壁がどれくらい空いていたのか注目してください

    5月30日

     新しいAssisted Digitalチームの最初のブログ記事。デジタルスキルが高くない人たちが新しいデジタル公共サービスを使えるように支援する。

    Rebecca Kemp がassisted digitalについて解説しています

     Assisted Digitalはユーザーやサービスによって異なります。ユーザー自身がデジタルサービスを利用できるようになるためにインターネットが使えるように支援することかもしれませんし、デジタルサービスの利用のために支援してくれる場所の提供かもしれません。Assisted Dugitalはそれを必要とする人々のために電話または対面サービスを提供します。

    6月26日

     Digital Performance Frameworkのアルファ版リリース。これは後にPerformance Platformの重要な部分となります。

     同じ日にChris Heathcoteは開発スピードに関してブログ記事を書きました。ユーザー中心の反復アプローチがどのように小さな変更を迅速かつ容易に行うことができるかを強調しました。

     これに続くのは正式な開発プロセスのスピードアップ版です。プロトタイプを作成し、フィードバックのためにチーム間で共有。改善されていることの確認、コードの変更、コンテンツエディタの変更点のチェック。カレンダーアプリの変更をプレビューサーバーにプッシュし、再びレビューされ、正式公開となります。これは一日で完了します。

    7月2日

     GOV.UKの編集スタイルガイドのアルファ版を公開。Sarah Richardsは次のように書いています。

     スタイルとははっきりと、簡潔に、専門用語なしで書くことです。単純さはすべての人に恩恵をもたらします。これを「バカ扱い」とする人たちもいます。しかし、オープンで誰もがアクセスできるのは「バカ」なことではありません。私たちの責務です。

    7月3日

    新しいタイポグラフィで少し引き締まる

     次のリリースの後、デザインチームはGOV.UKのタイポグラフィーの変更についてブログ記事を書きました

    7月11日

     Twitterアカウントを@govukから@gdsteamに変更。チームはGOV.UKとともに他のプロジェクトに取り組むために急速に拡大していたので、それに対応するための変更でした。Louise Kidneyは次のように書いています。

     私たちは成長、変化しました。私たちは私たちのスコープは@govukを越え、市民からの他のサービスについての問い合わせを受けています。現在の状況に対応するため、Twitterアカウントを@govukから@gdsteamに変更します。表面上はあまり大きな変更ではありませんが、私たちのルーツに立ち返った変更でもあります。

     開発チームがGOV.UKのアップデートをタイムラプスビデオにしたのがこちら。

    7月18日

    問題の多かったカルーセル

     フィードバックとユーザー調査の後、GOV.UKベータ版のフロントページにあるカルーセルが削除され、よりシンプルなテキストベースのリストに置き換えられました:

    よりシンプルなテキストバージョン

    8月10日

     GDSは貿易関税(Trade Tariff)の改良バージョンをリリースしました。これは当時の重要なビジネスリンクの一部で、チームとしてもとても重要な成果でした。小規模の民間サプライヤーと協力して以前の成功しなかった試みをわずかなコストで完成できました。

    8月24日

    さらなるイタレーション。Sarah Pragのブログでの解説

    10月2日

    2012年10月のGOV.UKベータ

    ホームページを大胆に刷新」 このリリースはブラウジングとナビゲーションの問題を解決しようとしました。

     翌日にブログ記事で解説しました

    10月4日

     当時の身分証明プログラム(Identity Assurance Programme:後にGOV.UK Verifyになる)は全国紙で報道されました。 Steve WreyfordはIDPチームの仕事を支える3つの原則についてブログに書きました。

    10月9日

     Directgovからの移行期限が近づいてきたので、Etienne Pollardはこれまでの作業をまとめました。彼はGOV.UKのスコープの「これを満たした入れる」リストを含め、ユーザーニーズを中心に置くことについて書きました

    10月10日

     コンテンツデザイナーのPadma Gillenは市民のためのWebコンテンツと顧客のためのWebコンテンツの違いについてブログ記事を書きました

    政府と関わるのはそれが必要だからです。市民として必要な部分です。できるだけ早く簡単にしたい。そうすれば人生にとって有意義な部分に時間を使える。利益となる動機がないので、行動は変えたくない。

    10月11日

    Photo credit: Paul Downey.

     Paul DowneyはDirectgovからGOV.UKへの移行に関してチームがどのように「ひとつのリンクも取り残さない」ことをどのように確認したか解説しました。

    10月16日

     2005年からDirectgovに取り組んでいるGraham Francisがその歴史をブログで振り返りました

     当時の内閣府のFrancis MaudeがブログでGOV.UKの紹介をしました。開発チームはGOV.UKの構築に使用されたソフトウェアを公開しました。

    Etienne Pollardは「ビジネス・リンクからすべてをコピーしただけではありません」と説明しました。

    これはGOV.UKから「ベータ」ラベルを削除したコード変更です。

    10月17日

    公開した!Photo: Tom Loosemore

     すごい日! GOV.UKはベータからライブに移行し、正式にDirectgovとBusiness Linkを置き換えました。

    全く問題なし

     開発者のPaul Downey:「国のウェブサイトをローンチした。問題なし」とツィート。 Mike Brackenは「なぜこれは重要なのか」という。ブログ記事書きました。そして私たちは動画をアップしました。

     ケーキを食べました。 このケーキはGDSの伝統と言えるなにか。

    10月18日

    分析ダッシュボード

     Sarah Pragは最初の日の数字を書きました:909,706人のユニークユーザーの1,129,578回の訪問。

    10月23日

     パフォーマンスプラットフォームのベータ版。

    10月26日

    開発者のJames WeinerがGDSを去るときにこれまでを簡単に振り帰りました

    おそらく、これまで働いたどの場所よりもGDSで学んだことは大きかったです。みんなが喜んでたみんなを助け合う。これはいい仕事ができる理由でもあります。お互いの意見や経験を尊重し、なおかつ建設的に批判をします。個人的な気まぐれではなく、使いやすいサービスを作ることを第一の目的としています。

    同日、私たちはチームがアジャイルでスケールすることに関する学びについてブログ記事を書きました:

    私たちは、本、ブログ記事、専門家がいう通り、より少ない作業をすることにコミットするべきでした。

    11月2日

    開発者のGareth Rushgroveによる定期的なリリースによるリスク削減について

    小さなカタマリを定期的にリリースすることで、何が変更されるのかがはるかに分かりやすくなります。何か問題が生じた場合は、そのカタマリを元に戻して、無かったことにする方がずっと簡単です。

    11月6日

     Government Digital StrategyDigital Efficiency Report発表

     この戦略には「可能な限り意味があり測定可能なアクション」のリストが含まれています。

    1. 官公庁および公共サービスに関わる行政機関のボードメンバーには活発なデジタルリーダーを含むこと
    2. 年間10万件以上のトランザクションを処理する公共サービスは経験豊富な権限のあるサービスマネージャーによって再設計、実行、改善すること
    3. すべての官公庁は人材を含め組織内に適切なデジタル機能があることを確実にする
    4. 内閣府は官公庁のデジタル機能の向上を支援する
    5. すべての官公庁は年間10万件以上を処理するサービスを再設計する
    6. 2014年4月以降、新しいまたは再設計されるすべての公共サービスはデジタルを基本とする(Digital by Default)
    7. 2013年3月までに24全ての官公庁のパブリッシングはGOV.UKに移管し、2014年7月までに関連政府機関や外郭団体のオンラインパブリッシングを移管する
    8. 官公庁はデジタルサービスの意識を高め、より多くの人々に周知、利用促進をする
    9. デジタルを活用支援するための政府間のアプローチを行う。オンラインを使ったことがない、ほとんど使わない人たちのためにオフラインでもアクセスできるサービスを提供したりデジタルを利用できる支援を行う。
    10. 内閣府はより軽量な入札プロセスを提供。規制要件が許す限り、業界でのベストプラクティスに近いレベルまで絞りこむ。
    11. 内閣府は次世代デジタルサービスの基盤となる新しい共通プラットフォームの定義と提供をリードします
    12. 内閣府は各省庁と継続的に協力し、便利なデジタルサービスの開発を不必要に妨げる立法上の障壁を取り除く
    13. 各省庁は内閣府が定める公共サービスのための一貫した管理情報を提供する
    14. 政策チームはデジタルツールと技術を駆使して一般の人々と関わりを深め対話していく
    15. 公共、営利団体および非営利団体など、セクターをまたがるパートナーと協力してオンラインサービスを人々に提供する協力関係を築く
    16. オープンデータを推進することにより、公共以外の新しいサービス構築とユーザーへの情報提供の改善を支援する

     これらのアクションはGDSにとっての今後の業務範囲の定義となります。Digital Efficiency Reportはこれらのアクションの基礎となっています。

    翌日、官僚のSir Bob Kerslakeは次のように書いています

    政府のデジタル化は幅広い利益をもたらします。政府のコスト削減と革新を推進し、国民にとって簡単で使いやすいサービスの提供を可能にします。私はデジタルが基本(Digital by default)を積極的に受け入れます。これはユーザーのニーズを満たすために行うべき正しいことというだけではなく、公共サービスに関わる人間にとって新しいやり方だからです。

    11月7日

    2012年11月時点のInside Government

    11月13日

     米国の仲間であるTim O’ReillyとJennifer PahlkaがGDSに初めて訪問*1

    11月15日

     Inside Governmentのローンチ

     これは長い移行フェーズのはじまりでもあります。各省庁で管理されていた何百もの古いウェブサイトをGOV.UKに移行させました。


    Inside Government

    11月26日

     Digital Leaders Networkが公式に発表されました。このアドバイザーグループ(政府機関の内外から構成)はシステム全体にわたって新しいガバナンスを構築して実行する上で不可欠でした。 彼らは後でGOV.UK戦略に同意し、それを元に各官公庁のデジタル戦略の開発を推進しました。Kathy Settleはその作業を指導する上で重要な役割を果たしました。

    12月10日

    Migratoratorの利用方法

     テクニカルアーキテクトのAnna ShipmanはGDSが開発したマイグレーションツール”Migratorator“について解説しました

    身元認証サービスの初期プロトタイプ

    12月13日

     改革チームについての短編映画。この時点ではまだまだ小さな規模でしたが、すぐに25の模範プロジェクトからなる組織になりました。2013年から2015年の間のGDSの新しいフォーカストなることが2013年1月のSprint 13で発表されることになります。

    12月14日

     GDSはLiam Maxwellが政府の最高技術責任者(CIO)としてGDSに参加すると発表しました。この人事に伴いIT Reform Groupが内閣府からGDSに移管されました。

    12月21日

     政府のAssisted Digitalの取り組みが発表されました

     同日18の官公庁がデジタル戦略を発表しました。Tom Loosemoreは次のように書いています:

    これまでではじめて、政府はデジタルの時代にふさわしいユーザーの期待を叶える集合的な野心を持つに至りました。

     前回に引き続き、イギリス政府のGovernment Digital Service(略称:GDS)が自らの組織とGOV.UKの成り立ちをブログ記事にした”A GDS Story“の翻訳です。

     今回は2012年の出来事。GOV.UKがベータ版から本番公開となります。繰り返し、繰り返し出てくるのが「ユーザー中心」の考え方と行動。これは本当に「言うは易く行うは難し」の代表例です。これがGOV.UKの成功のカギだと思います。単にデザインや開発技術を駆使したプロジェクトだったらこのような成功を収めていなかったでしょう。

     そしてデザイン原則、編集スタイルガイドや移行ツールなど基盤となるものを着々と準備するところがすごい。他にも読む人にとっていろんなところが参考になると思います。

    カタパルトスープレックスなかむらかずや

    関連記事

     

    *1:このエピソードはティム・オライリーの著書”WTF”にも書かれています。これがCode for Americaの話に繋がってたりする

  • アメリカ政府機関が使っているデザイン手法を集めた『18Fメソッドカード』日本語版

    アメリカ政府機関が使っているデザイン手法を集めた『18Fメソッドカード』日本語版

    大規模デザインシステムを作る:いかにしてアメリカ連邦政府のデザインシステムを作り上げたか」という記事を以前に書きました。これがカタパルトスープレックス最初の翻訳記事でした。

     この取り組みは米連邦政府一般調達局の部門の一つである18Fという組織が中心となっています。そして、その18Fが自分たちで使っているデザイン手法を集めたのが18F Method Cardsです。今回はこのアメリカ政府のデザインチームが利用しているメソッドカードの日本語版を新しくはじめた「カタパルトスープレックスデザイン」で公開しました。

     このメソッドカードを翻訳していると「あ、この場面はこのメソッドを使ってるんだなあ」というのがはっきりとわかります。改めてメソッドカードを眺めながら記事を読んでみると面白いかもしれません。

     このメソッドカードも以前の記事で紹介しているのですが、多くが英語というのが難点でした。メソッドカードに書いてあるやり方を何回かやるうちに、自分のスタイルみたいなものができてきます。あまり詳しいやり方を読んでその通りにやるよりも、これくらいの粒度で試行錯誤しながらやったほうが最終的には身につくと思います。

    ここで紹介されている『18Fメソッドカード』の日本語版はカタパルトスープレックスデザインに収録されています。

    カタパルトスープレックスデザインはデザインやイノベーションに役立つオープンソースで無償のツールを集めたツールボックスです。

  • デザインで日本を変える『デザイン+ジャパン』の第0回ミートアップを開催します

    デザインで日本を変える『デザイン+ジャパン』の第0回ミートアップを開催します

     日本はたくさん問題がある「課題先進国」だと言われています。日本にいるデザイナーはこれから世界各国で起きる課題を世界に先駆けて解決できるチャンスがあります。50日前に『デザイン+ジャパン』の呼びかけで集まったデザイナーは30名。Slackでアンケートをとったり、何を達成したいのかを理解しあいました。

     そして今月1月22日に第0回『デザイン+ジャパン』ミートアップを開催することになりました。日本の課題をデザインで解決したいデザイナー、なんかよくわからないけど覗いてみたいデザイナー、面白いことやってみたいデザイナー。みんな集まってみよう!

    designandjapan.connpass.com

     

  • イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2010/2011年)チーム立ち上げ、アルファからベータへ

    イギリス政府はどのようにデジタルサービスを展開したか(2010/2011年)チーム立ち上げ、アルファからベータへ

    ざっくり言うと

    • 偉い人のエアカバー大事。GOV.UKの場合は当時の内閣府大臣のフランシス・モード(Francis Maude)。GDSがかなり自由にやれたのはこの人のおかげ。ここには書いていないけど、当時のイギリス政府の課題の一つは増え続けるコスト。フランシス・モードはこのプロジェクトを通じて実はかなりコスト削減をしている。つまり、GDSをサポートする動機がフランシス・モードにはちゃんとあった。
    • 最初は16人のアルファチームでスモールスタート。このあとイノベーションラボ方式でスケールする。外からチームを招集して内製化。
    • アルファから一般公開。フィードバックを初期からとる。ユーザーリサーチ大事。一貫した行動を取るための原則がはっきりとあったのがGDSの強み。だからデザイン原則はかなり早い時期から形になっていた。
    • 8週間で最初のサービスをローンチ。すっごくアジャイル

    原文:”A GDS Story 2010” and “A GDS Story 2011

    2010/2011年|2012年2013年2014年|2015年

    イントロダクション

    GDSに訪れる訪問者に最もよく聞かれる質問は以下の三つ。

    • どうやってはじまったんですか?
    • どうやってここまで来たんですか?
    • どうやったら私たちの政府/チーム/組織は同じことができますか?

     これはこれらの質問に答えようとする試みです。これは慎重に組織の記憶をくみ出すことでもあります。わたしたちは常に自分たちのデザイン原則を信じています。そのひとつに「オープンにして、改善する」があります。これは私たちのスタート地点とこれまでの道のりについてのオープンな物語です。

    一つだけ注意点

     このストーリーは網羅的ではありません。物語のすべてではありません。そのためタイトルは “a story”であり “the story”ではないのです。間違いや抜け漏れなどいろいろと問題もあるでしょう。なにか不具合を見つけたら私たちに連絡してください。

    2010年

    2011年のDirectgovホームページ

     「英国デジタルチャンピオン」に任命されたMartha Lane Foxは当時の主要政府のウェブサイトであるDirectgovのレビューを行うよう依頼を受けました。彼女はTom Loosemoreを含むチームを招集しました。また、すでに独自の調査を行っていたコンサルティング会社のTransformも参加しました。

     Directgovに取り組んでいるチームは何百ものウェブサイトを閉鎖する野心的なプロジェクトにすでに取り組んでいました。数年後、Sarah Ricards(後にGOV.UKのコンテンツデザイン担当ヘッドになる)は次のように書いています

    私と素敵なチームがすべてのルールを守れば、決して何もなしえなかったでしょう。私たちは個人的な関係を使い一丸となって働き、上から跨いだり下を潜ったりしました。やれることすべて。ピカピカに光ったものができた?いいえ。素晴らしいものができた?いいえ。前よりいいものができた?はい。DirectgovがなかったらGOV.UKをローンチできなかったでしょう。

    10月14日

     Martha Lane Foxは当時の内閣官僚だったFrancis Maude宛てに手紙を書きました。その手紙で「進化ではなく革命を」と要請しました。

    私はDirectgovだけを切り出してレビューしません。政府がインターネットを活用して国民との会話ややりとりを改善すること。インターネットへシフトすることにより大幅に効率性を改善する一環と捉えています。

    この手紙がきっかけとなりGDSが設立されることとなりました。

    11月

     Martha Lane FoxsのFrancis Maude宛の手紙と彼の返信Transformによるサマリーとともに公開されました。

     官僚のChris Chantが責任者としてこの新しい組織の責任者に任命され、GOV.UKアルファ計画を立てました(この時点では、プロジェクトは「alphagov」と呼ばれていました)。 Chantの任命は翌年の2月まで正式には発表されませんでした。Tom Loosemoreはチームづくりを任されました。Chantは彼に「キミが必要とする人材を集めよう」と言いました。そして、アルファを構築するチームを探しはじめました。 早い段階で、David MannNeil Williams(後にGDSでGOV.UKのヘッドになる)に声をかけました。

    12月

    GOV.UKナビゲーションバーの初期ワイヤーフレーム

    GOV.UKにある10 Downing Streetページの初期ワイヤーフレーム

     クリスマスの直前、ホワイトホール向かいのデジタル人間達が仕事の後にランバート・ノースのパブに集まり、実際にMarthaのビジョンをどのように実装するかを議論しました。そのうちの2人、Neil WilliamsとWill Callaghanはワイヤーフレームのモックアップで考えを図案に落とし込んでいきました。

    2011年

    1月

     最初のアルファチームがウォータールー駅の近くの政府ビルHercules Houseに集められました。Tom Loosemore、Richard PopeDavid MannJamie Arnoldです。

    2月

     2月からさらに多くのメンバーが参加しました。James StewartJames WeinerPaul AnnettRelly Annett-BakerLisa ScottBen GriffithsMatt PattersonJoshua MarshallHelen LippellRussell GarnerPeter Jordanです。

    March

     アルファチームの仕事がはじまりました。Tom Loosemoreがブリーフィングをしました。「閣僚達に”この中のどれかが欲しい”と言わせるものを作る」

    初期のGOV.UKアルファのマインドマップ

     チームは壁にプロジェクトのマインドマップを描きました。

    Richard Popeによる初期スケッチ

     Richard Popeによるこの初期のスケッチはチームのアイデアが後期のものとどれほど違っているのかを表しています。そしてDirectgovとも大きく異なっていました。このスケッチでは、ページの上部にバナー広告風のCTAスペースがあると想定されていました。ページの多くのスペースは中央の検索窓が確保し「あなたのしたいことはなんですか?」という大きな見出しがありました。初期段階の名前は”ukgov.gov.uk”でした。

     リチャードはFlickrに数百点のスケッチをポストしました

    ユーザーニーズを書いた付箋紙を壁に貼り整理する Photo: Richard Pope

     数週間のアイデア出しとプロトタイプの後、チームは野心的でありすぎることを認識しはじめました。最初のアプローチはあまり適切ではなかった。Richard Popeは「もっと適切な方法を取らないといけない」と主張しました。ユーザーのニーズを優先しないといけない。そこでアルファのスコープを100人のユーザーのニーズに絞り込むことにしました。100人のユーザーニーズを付箋紙に書き、壁に分類しました。

    3月15日

     Government Digital Serviceについての公での初めての小さな告知。「Directgovとそのほかの小さなチームを統合した新組織」

    3月29日

     alphagovプロジェクトが公式に発表された。Tom Loosemoreが責任者(Foreign and Commonwealth OfficeにおけるHead of DigitalのJimmy Leachの助けを借りて)。 ブログで率直な宣言がなされました:

    通常「アルファ」は公開されません。そのあとの「ベータ」ではじめてドアが開けられます。今回はユーザーからの実際のフィードバックを得るためにとても急進的なアプローチをとります。

    4月

     5回目のスプリントに入りアルファチームは作業量と人手不足に苦しんでいました。 アルファが公開された後にJamie Arnoldはこの問題について書きました

    私たち(あるいはむしろ私)はすべてを正しくできていなかった。スプリント5が終わる頃にExcelを閉じて英国王立動物虐待防止協会に逃げ込む準備ができていました。

     チームが完全に集まってからメンバーリストを発表しました。

    4月7日

    アルファのプロトタイプ。パスポート紛失のときの報告ページ。

     これが最初に公開されたアルファの画面。The Daily Telegraphで報じられる

    4月28日

    アルファチームのオフィスに貼られたデザインルール

     Richard Popeは「少ない労力で」「すぐにやれることを見つける」「統一性ではなく一貫性」など、最初のデザインルールに関するブログ記事を書きました。これらは後にデザイン原則の基礎となりました。

    5月9日

     アルファチームのメンバーであるDavid Mannが政府横断のデジタルプロジェクトについて書きました。そしてそれはGDSがはじめての試みでないことも指摘しました

    私たちのプロジェクトは官公庁の広い支持者とともに進める文化的ムーブメントです。よりアジャイルで反復検証するユーザーのニーズに基づくデジタルプロダクトの開発を追求します。

    5月11日

    ローンチ時のGOV.UKアルファページ

     アルファのローンチ(予定より1日遅れ)

     オリンピックスタジアムの写真がのちに追加されました。「西海岸な感じ」を出すようにと言われていました。ゴールは当時の他の政府系のウェブサイトとは根本的に違ったものを作り出すこと。

     反応は概ね好意的でした。しかしいくつか批評もありました。Leisa Reichelt(後にHead of User ReserchとしてGDSに参加)はユーザーエクスペリエンスのリーダーを雇っていないと批判しました(他にもありましたが)。

    ユーザーエクスペリエンスの実践者として、残念ながらうんざりとした気持ちです。エンドユーザーを中心におくとか、政府のニーズや要望よりもユーザーニーズを優先させるとされてきましたが、口だけで実行されていません。他のプロジェクトが参考にすべき点はあまりありません。

     数週間後、Tom Loosemoreはブログで彼の考えについて書きました

     プロトタイプは12週間で261,000ポンド(約4000万円)で開発されました…従来の枠を外した実験的プロトタイプ(またはMVP: Minimum Viable Product)です。社内のチームがオープンかつアジャイルな方法で作業し、ユーザーのニーズを設計のコア プロセス。 これは新しいアプローチではありませんが、まだ政府全体では非常に斬新なアプローチです。

    初期GOV.UKアルファの財務省ホームページ

     もう一つのアルファページ。これは財務省のホームページ。 部門別のニュースはTwitterフィード風になっています。

     Paul Annet(アルファチームのデザインリード)はブログで当時考えていたビジュアル言語について説明しました。また奥付リストツールを作りました。

     アルファはその目標(プロダクトとしての完成ではなく)としていたポイントを達成しつつありました。その点で成功と言えました。数週間で次の段階がはじまります:ベータ。

    5月20日

    Mike Bracken

     内閣府のExecutive Director for DigitalとしてMike Bracken公式に発表されました

    この役割は責任範囲はDirectgovの最高責任者、政府期間をまたがるデジタル改革のリード、デジタルエンゲージメントと透明性のためのディレクターの仕事の一部が含まれます。彼は政府の最高執行責任者(COO)であるIan Watmoreを上長とし、内閣府でGovernment Digital Service(GDS)の100人以上のスタッフを統括します。

     その舞台裏ではGDSが形を作りはじめていました。ベータのスコープの定義をはじめました。

    GOV.UKベータのマインドマップ

     前回のアルファと同様に壁にマインドマップを描くことからはじめました。

    7月

    Hercules Houseの床に敷き詰められたユーザーニーズ Photo: Jamie Arnold

     GOV.UKベータはDirectgovと並行しての作業でした。それを置き換えるまでは。(GOV.UKをDirectgovと置き換えることはJames StewartとEtienne Pollardによってコーヒーを飲みながら2012年の早い時期に決められました。この日は第二候補でした。第一候補の日は政党会議のシーズンだったのです)

     すべてのユーザーのニーズをインデックスカードに書き出して床一面に広げました。それ以外にこれほど多くのニーズを広げてカテゴリー分けと優先順位付けの作業をする広さがある場所はありませんでした。

     Sarah Rishardsはコンテンツデザイナーがどうして必要で、どうやってその役割を作ったかを2016年のブログで説明しています

    デジタルコンテンツは単なる文字ではないことが私にとって熱意となりました。コンテンツが人々が許可されている以上に多くのことができることを政府は理解する必要がありました。ターゲットとするユーザーが情報として消費できることがコンテンツを絞り込むベストの方法です。そのコンテンツとはツール、電卓、カレンダーやビデオかもしれません。コンテンツは文字ではなく意味を持つコンテンツです。そして私たちは英国政府のために「コンテンツデザイナー」という役割を作ることを決めました。

    7月4日

    「オープンなコーディング」アプローチの最初の兆候が現れました。それは後にJames Stewartのブログ記事で説明されています

    7月29日

    e-Petitionsの2011年のオリジナルイメージ

     GDSは最初のプロダクトをローンチしました:オンライン嘆願サービス。これはアジャイル手法で8週間で開発されました。ちょとした使い切りのプロジェクトで自分たちの力を示すいい機会でした。この請願サービスは2015年にGDSと議会チームの協力の元にアップデート、再構築しました。

     同じ日にMike Brackenは最初のブログを書きました。それはGOV.UK Verify(認証サービス)となる仕事を示唆するものでした:

    これまでの学びの二つ目は政府のサービス全体に利用できる認証の重要性です。市民としてユーザーとしてデジタルサービスについて地方政府のものなのか国としてのものなのかはわかっていますが、その責任部門はあまり意識されません。政府をまたがるデジタルサービスの準備するにあたりこのユーザー行動を原理とすることを3週間に渡り繰り返し考え続けました。

    8月

     Mike Beavenが夏にチームに加わりました。彼の最初の仕事は再編成です。新しくなったGDSで人と役割をマッピング。ほとんどのスタッフは新しいチーム内の仕事に再就職しなければなりませんでした。

    GOV.UK初期ベータ

    GOV.UKベータ。これはStatutory Sick Pay (SSP)のページ

     8月に参加したもう一人はChris Thorpe。戦略的思考を行い閣僚への説明を担当しました。”Trust, users, delivery”というタグラインは彼によるものです。

    8月10日

     David Rennieは後にGOV.UK Verifyとなる身分証明プロジェクトを紹介しました

    デジタル時代に信頼関係を築くためのより良い方法が必要です。長いユーザーリストや映画の名前よりいいセキュリティー確保の方法が必要です。GDS身分証明プログラムを通じてこれらの問題に取り組みます。

    8月11日

    GOV.UKのベータが正式にブログで発表されました

    alpha.gov.ukからの学びに基づいて開発し、さらに積み残された多くのギャップも埋めていくつもりです。これまでになかった最も使いやすくアクセスしやすい公共のウェブサイトを作りたいと考えています。単に「アクセス可能」というボックスをチェックするだけでは不十分です。誰にとっても使いやすく、実際に使われるものではければいけません。

    ベータには3つの目標がありました:

    • 市民に対するコンテンツ配信としてのパブリックベータ(内部的に「メインストリーム」と呼ばれる)
    • 新しいパブリッシングプラットフォームとしてのプライベートベータ(各政府機関のスタッフがGOV.UKのページを追加したり管理したりする)
    • GOV.UKのビジュアルアイデンティティと明確なユーザーエクスペリエンスを提供する「グローバルなエクスペリエンス言語」を開発する

    9月19日

    Needotronは内部で使われているユーザーニーズのトラッキングツール。この画面ではタイトル、更新日、名前と優先順位を表示している。

     Richard PopeがNeedotronについて書きました。これは何百ものユーザーニーズと、それを満たすであろうページとページの形式を追跡する内部ツールです。

    10月

    Chris ChantPhoto: Paul Clarke

     Mike Brackenの任命前にGDSの暫定責任者だったChris Chantは今では有名となった「容認できない」演説を政府研究所で発表したしました。これが、その現状の公共におけるITを批判したスピーチの一部です。

    私は12ヶ月以上契約を締結するのは今の時点では全く受け入れられないと考えます。このITの世界において2年前にiPadが出ることを予測できませんでした。それでいて2年、3年、5年、7年さらに10年後まで予測できると考えているのです。まったくのナンセンスです。まったく容認できません。どのようなシステムを所有し、どれくらいコストがかかり、そもそも使うかどうかもわからないのに。

     そしてGDSのブログにこの問題をどう直していくのかを書きました

    11月

    Aviation HouseでのGDSチーム Photo: Jamie Arnold

     GDSはHolbornのAviation Houseの6階にある新しいオフィスに移りました。

     Ben TerrettとRussell Daviesがチームに加わりました。Benは小規模なデザインチームを率いて、それを拡大していきました。彼はガーター勲章を訪れ、GOV.UKで王冠を使用する許可を求めました。そして許可されました。

    11月4日

     当社は身分証明プログラム(Identity Assurance Programme)のために1,000万ポンド(約15億円)の資金を発表しました(これは後にGOV.UK Verifyとなります)

    11月10日

     Chris Chantは中小企業(SME)を招いて政府との対談の場を設けましたGDSと協力してすべてのITサプライヤーが広く競争力を高める方法について話しました。これは後にデジタルマーケットプレイスの一部となりました。

    12月1日

     Emer ColemanがDeputy Director of Digital EngagementとしてGDSに参加しました。

    12月8日

     すでに1年間ほど作業しているのですが、GDSの正式な組織としての「オープン」がこのブログで発表されました

     GDSはオープニングイベントを主催し、プレスを招待しました(イベントの写真)。記事は非常にポジティブでした:

    この記事はイギリス政府のGovernment Digital Service(略称:GDS)が自らの組織とGOV.UKの成り立ちをブログ記事にした”A GDS Story“の翻訳です。

    GDSの取り組みはこれまでいくつか取り上げてきました。日本でGOV.UKみたいなことできないよなあ……なんて思わず考えてしまうすごい取り組みの数々。でも、当然ながら一日でできることではないですよね。最初は小さな一歩でした。それを積み上げていって今があるんですよね。

    プロジェクトはここから加速的に大きくなっていきます。官公庁や政府機関のWebサイトを合わせると膨大な量のコンテンツとなります。それを彼らはどうやって変革していくのでしょうか。

    カタパルトスープレックスなかむらかずや

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  • ブロックチェーン全盛時代にデザインは終わったのか?

    ブロックチェーン全盛時代にデザインは終わったのか?

     シンガポールの友人と久しぶりにチャットをしていたのですが、シンガポールではクリプトが流行りでデザインが全く流行らなくなってしまったそうです。デザインは流行り廃りするようなものではないとは思いつつ、実際にはどうなのかを調べてみました。

    わかったこと

    • 2017年はブロックチェーンが飛躍した年でデザインは突き放された。
    • 日本とアメリカでは傾向が違う(アメリカではIoTよりブロックチェーンとか)
    • 普及はアメリカより日本が遅れる(ブロックチェーンの浸透速度やUXとデザイン思考のギャップ)

    デザイン思考 vs リーン・スタートアップ vs サービスデザイン

     まずは似た者同士ということで「デザイン思考」と「リーン・スタートアップ」と「サービスデザイン」の比較です。簡単に傾向を調べるにはGoogle Trendsが便利ですよね。

     デザイン思考とリーンスタートアップを比較した場合、リーンスタートアップは登場の時がピークでそのあとは徐々に減少しています。最近ではデザイン思考の方が検索ワードとして使われている。意外なのが「サービスデザイン」の検索が安定して多いこと。


    UXがデザイン関連キーワードでは圧勝

     ちなみに日本ではUXはさらに検索されています。ただUXも長期的にはダウントレンドなのが気になります。

     アメリカでも同様なんですが、UXと"Design Thinking"や"Lean Startup"の差は日本ほど大きくありません。意外なのは"Service Design"が"Design Thinking"より検索ワードとして使われていること。

    ブロックチェーンがUXを抜き去る

     日本ではブロックチェーンは2017年に入ってUXを検索キーワードで抜きました。

     ちなみにビットコインは2016年12月くらいから急上昇して、UXだけでなくブロックチェーンも突き放しています。

    JavaScript vs ブロックチェーン

     インターネットにおいて開発言語の王者はJavaScriptですね。ブロックチェーンは追い上げていますが日本ではまだまだJavaScriptの方がブロックチェーンより検索されています。

     ところがアメリカではブロックチェーンはJavaScriptを2018年には追い越しそうです。

    IoT vs ブロックチェーン

    日本においてIoTもブロックチェーンもともに上昇傾向にありますが、IoTの方がより関心がたかそうです。

    ところがアメリカだとIoTは大きな上昇トレンドではなく、IoTはブロックチェーン検索キーワードとしては抜かれています。

  • 子供にやさしいクルマの自動運転をデザインする

    子供にやさしいクルマの自動運転をデザインする

    ハロウィーンの仮装をした子供を認識するクルマ (Google)

    原文:”Child-Friendly Autonomous Vehicles” by Leslie Nooteboom, Nov 14, 2017

     2017年11月7日にWaymo(元Googleの自動運転プロジェクト)*1がアメリカはアリゾナ州フェニックス近郊で完全自走車の公道テストを開始したことで、クルマの自動運転が主流になることが日々現実化していきます。「トロリー問題*2」以外にも多くの課題を解決する必要があります。

     現時点で多くの自動運転システムは特殊な状況に対処するのに十分な環境認識をすることができません。通常の道路利用者に関しては学習されていますが、それでも時には自動車が「フリーズロボットの問題(何をするにもリスクがある状況における対応)」を経験します。自動運転のクルマのインタラクションが安全で効率的であることを確実にするには、業界が特定のシナリオ毎に取り組んでいく必要があります。自動運転のクルマと子供との関わりはその中でも特に重要なシナリオの一つです。

     アメリカにおける子供の死亡事故の主な原因の1つは交通事故です。クルマの自動運転はこれを大幅に改善する可能性があります。しかし、子供の認識は大人とは異なるコンピュータビジョン分析とインタラクションが必要となります。この課題はまだ解決されていません。

    一般的な認識

     道路安全、交通工学、交通システムを専門とする研究者であるEleonora Papadimitriou博士は、「渡るか、渡らないか」の判断は道路の種類、交通量、交通管制から大きく影響を受けると述べています。博士は歩行者が道路を横断する上での三つの行動要素を見出しました。「リスクを取る人と最適化」、「保守的な公共交通ユーザー」と「歩行者の喜び」です。この研究は歩行者が道路で「なぜ」「どのように」行動をするのかを理解する上でとても重要な要素です。

     子供の歩行者の交通事故を具体的にみていきましょう。UAB Youth Safety LabのディレクターDavid C. Schwebel博士は同様の要因を示す研究結果を発表しました。大部分の子供の歩行者の傷害は中央ブロックと視界の悪い道路状況で起きています。事故は一般的に「ダートアウト」の状況で起きます。ダートアウトとは子供がオモチャやペットを追いかけるために何も考えずに道路に入ることです。子供が出現することを予期できる環境です。危険ではないと判断してしまう子供の判断ミスはもう一つの事故原因です。実際には安全ではないのに道路に入ってしまう。子供の脳の知覚的および認知的経験不足がこの問題の原因です。

     子供と交通の関係を見るときに、環境だけでなく人間の行動の文脈も考慮に入れる必要があることを二つの研究は示しています。

    トロリー問題の例 (Iyad Rahwan/Popular Mechanics)

    環境

     次のシナリオを考えてみましょう。ボールが通りに転がります。人間の運転手はこの状況を把握するための目を持っています。脳の後頭葉で状況を視覚的に目の前で何が起こっているのかを処理します。その結果としてボールが道路に転がっていることを理解します。

     自動運転のクルマの場合、私たちの目の機能はビジョンセンサーの品質に依存することとなります。カメラの視覚奥行きデータは環境を識別するのに十分高い能力がある必要があります。そして基本的なビジュアル処理を行わなければいけません。視覚の範囲に人がいるか、歩道はどこか、他のクルマが来ているか、視界を妨げているものがあるか、道路に転がっているあの丸い物体はなんなのか。このようなプロセスを実際に実行するためには何年もの研究が必要で、人間が環境をどのように認識できるかに徐々に近づいていっています。

     クルマのセンサーと処理能力でボールが道路に転がっていることがわかりました。次に何が起こるでしょうか?このステップで意思決定が行われます。ボールの経路を予測し、クルマの進路に入る時間を計算します。多くの計算を迅速に行う必要があります。私たちの人間の脳はニューロンのリンクを作り、その状況から子供が飛び出して来る可能性を判断します。自動運転のクルマは予期せぬ状況に対応するために訓練されなければいけません。ボールだけでなく、フリスビー、ドローンなど様々な状況が考えられます。最初の判断は不意な事象には減速することです。そして、子供が姿を現したらクルマの歩行者検出アルゴリズムによって認識されなければいけません。

    Redball Art Project (Jeremy F/YouTube)

     道路に飛び出そうとしている人が大人なのか子供なのかを判断するのも非常に難しいです。身体のサイズとそのほかの相対的な大きさを測るのは一つの方法です。James W. Davis博士が「子供と大人の歩行スタイルの視覚的分類」で説明している別の興味深い方法があります。歩幅の長さと周期の特性から93-95%の確率で大人と子供を見分けました*3。これらの研究でクルマに関して扱っている問題は子供についてだということです。

     これらはクルマのソフトウェアにとって必要であり困難な進化です。自動運転のクルマが人間のドライバーよりも安全であるためには、人間の脳の処理スピードの3/4秒以内に状況全体を理解する必要があると考えています。クルマが街の環境を理解し、子供を認識し、子供の行動を理解する必要があります。それにはコンピューターの視覚技術だけではなく身体運動科学の観点から子供を認識するスマートな方法が必要となってきます。

    子供の行動

     子供の道路での行動は大人とは異なります。同じ研究論文で、Schwebel博士は人間が交通の理解と、その状況に対応する技能がどのように発達していくのかを説明しています。大人の歩行者の事故原因は主に視界が悪い夜に歩くこと、酔って歩くこと、歩きスマホなど集中せずに歩くことです。子供は知覚能力や認知能力は大人ほど発達していません。子供の歩行者の事故で考慮すべき要因は不注意、気性、性格と社会的影響です。 この中のいくつかの要素はコンピューターから認識できるもので、NVIDIAの「co-pilot」には「不注意」を認識する仕組みがあります。視覚センサーを利用することでいくつかの子供の特性を理解することができます。

     Hugo H. van der Molen博士は1981年に「歩行者としての子供の交通への露出:事故と行動」という論文を発表しました。そこでは行動を関数とイベントダイアグラムに分割して「ソフトウェアプログラマブル」になっているところが興味深いです。考慮すべき要因とされているのは子供の個人や社会や環境といったパラメータ、そして子供の交通と行動です。この論文は道路での子供の行動の非常に詳細に解説しています。しかし、1981年に書かれたものなので道路状況は大きく異なります。私たちは自動運転も考慮に入れたこの研究の現代版が必要だと考えています。クルマの自動運転の歩行者に対する反応を分析する研究はいくつかありますが、子供に焦点を当てた研究はまだありません。

    フォードとヴァージニア工科大学によるクルマのコミュニケーションの実験 (Wired)

    反応

     自動運転のクルマがボールが近づいてくるのを認識して速度を落とし、子供を認識できるまでに発達したとします。クルマは環境と人間を理解した後にどのような行動を取るかを決める必要があります。危険な状況では緊急停止を行う必要があります。すぐに危険はないものの、子供が何をするのか完全に理解できない場合は待たなければいけません。その子供自身も何をしていいかわからずに歩道で立ち尽くしている状況もあるでしょう。もしクルマが過度に安全性を重視した設定になっていればかなり長い時間待つことになります。Berkeley AI Lab実行委員会のAnca Dragan氏はこのようなフリーズロボットの問題を「人間が最悪の行動を取る場合クルマが何をするにも事故のリスクがある」と説明しています。クルマは子供が姿を消すまで待つしかありません。

     クルマがとるべき最初の反応はより丁重なモードの変化であり、大人と比べて子供にはより慎重な対応をすることです。例えば減速する、距離を取るといった人間のドライバーの本能的な行動です。子供のためのよりフレンドリーな運転アルゴリズムを実行することとなります。

     クルマの意思決定ツリーにレイヤーを加えることは一つの方法です。子供が大人とは違う行動を取るのであれば、クルマも違う反応をするはずです。下の図では緑色は子供の場合の反応の選択肢を表しています。子供であれば二つのアクション。より注意深く運転し、子供に関するデータベースを利用して歩行者に対処する。これでより安全な環境を作り出し、子供への対応をより正確に判断することができます。

    クルマの子供に対する対応レイヤー

    コミュニケーション

     コミュニケーションは新しいチャレンジです。大人は道路規制を学び、知覚的および認知的なシステムを訓練することで交通を理解する時間がありました。子供はまだこの経験や訓練を十分に受けていません。子供はクルマの運転手とコミュニケーションすることができます。「行っていいよ」といいう手の仕草や軽いホーンは子供でも理解できます。親が子供にいいことをしたら褒め、悪いことをしたらしつけるように。上の図で青がこのようなコミュニケーションとなります。

     たとえドライバーがいなくとも子供はクルマとコミュニケーションが取れ、理解できなければいけません。それには最も基本的なコミュニケーションに戻る必要があります。子供にとって視覚と聴覚はクルマが何をするかを最も理解しやすい合図です。おそらく、クルマには特定の感情やジェスチャーを示すための顔が必要です。もしくはクルマの外部にスピーカーを加えてAmazon Alexaのような音声制御機能を持たせる。GoogleUberは歩行者とのコミュニケーションついて特許を申請しています。まだ公開されている研究は少なく、この分野はさらなる実験が必要です。

    ほほえむクルマ (Semcon)

    まとめ

     自動運転のクルマが子供のいる環境に入るには周囲の環境や子供の行動を理解する認識力が必要です。コンピュータービジョンは交差点や視界が悪い場所といったリスクの高い環境、さらには注意が散漫な傾向のある子供について十分に学習しなければいけません。クルマの反応も様々なレベルでの学習が必要です。それが安全かつ効率的なのかだけでなく、クルマの「脳」の中で何が起こっているのかを子供に伝える必要もあります。そうすれば子供はクルマの行動を理解することができます。

     最もよい方法は子供たちとのテストとフィードバックを通じてからのみ探りあてることができます。大人の設計チームやエンジニアリングチームは子供が自動運転のクルマを見て何を考えるのかを完全に理解することはできません。子供の状況にフォーカスすることで公道でのクルマの自動運転が子供のためのより良い街の環境を作り出すことに貢献することができます。

    解説

    今年6月に神奈川県の東名高速道路で夫婦が亡くなった事故は人間が運転するクルマは本当に安全なのかを考えるきっかけにもなったとても悲しい事故でした。危険運転でヒヤっとしたドライバーも少なくないのではないでしょうか。自動運転のクルマではこのようなことは起きません。物理の法則がある限り事故が全くなくなることはないでしょう。しかし、大幅に減少することはできるはず。交通渋滞の緩和にも効果がありそうです。

    もちろん、クルマを運転する楽しみもあるのでしょう。しかし、社会インフラとしてのクルマの役割を考えると安全の方が優先順位は高い。おそらくクルマの運転を楽しむのは公道では制限される社会になるのではないでしょうか。

    この記事は子供に優しいクルマの自動運転をデザインする上で考慮すべきことをを解説した”Child-Friendly Autonomous Vehicles“の翻訳です。これを書いたのはHumanising Autonomyの共同創設者でCOOのLeslie Nooteboom氏です。

    安全なクルマの自動運転を実現するためにはどのようなことを考慮する必要があるのかを理解することができます。クルマの自動運転に不安を感じる人は多いでしょうが、まずは知ることが大事だとボクは思います。

    関連記事

     

    *1:もともとGoogleが実験していたクルマの自動運転プロジェクトを親会社のAlpabetが子会社化

    *2:ある人を助けるために他の人を犠牲にできるか?という状況判断

    *3:これは2001年の研究で、小さなデータセットが使用されていました

  • スマートマシン(IoTとAI)が顧客になる時 – マシンのためのデザイン

    スマートマシン(IoTとAI)が顧客になる時 – マシンのためのデザイン

    原文:”When a Machine is the Customer – Designing for Machines” by Dr. Carsten Stöcker and Kerstin Eichmann氏, August 27, 2017

    アメリカテキサス州にて:子供がAmazon Echoに「ドールハウスを買って私と遊んで」とお願いし、ドールハウスが送られてくる。

    イギリスにて:「OK Google、ワッパーバーガーってなに?」という言葉が、Google Homeスマートスピーカーのバーガーキングの広告トリガーとなって、かきたてるような商品の説明をはじめる。

     そしていつかすぐに、あなたの車はメンテナンスや充電のための最適な価格を選ぶだけでなく、スマートなクルマは自ら出かけて充電するでしょう *1

     ようこそ、人間ではなくスマートマシンが意思決定をする新しい世界へ。マシンが何をどの価格で買うかを決め、そのやりとりは仲介者なしにブロックチェーンの分散台帳で行われます。「スマートスピーカー」を介する市場は非常に巨大になります。Amazon Echoのようなスマートスピーカーから購入する家庭用品、スマート温度計から購入される電力、工業ロボットが購入する原材料や最適化のためのアルゴリズムの購入まで。

     このような発展を通じて「アルゴリズム利益」が誕生します。スマートマシンの売り手と買い手による取引やニーズをマッチングするサービスの手数料です。

     例えば再生可能な電力供給網では、「エネルギー供給のボラティリティー」が重要な課題です。グリッド制御システムは電力の供給と消費をリアルタイムでマッチさせる必要があります。余分なエネルギーを蓄えるためのバッテリーやエネルギーの柔軟な供給にはグリッド制御システムに「生理学的なマシンのニーズ」が求められています。柔軟性を集約するアルゴリズムはグリッド制御システムという「顧客」に対して集約され検証された柔軟性のポートフォリオへのアクセスと管理という「サービス」を販売できます。このアルゴリズムによる信頼性の高い柔軟性を最適化するサービスは自分自身のアルゴリズムや集約ボットを通じて自己収益をあげます。

    スマートマシン顧客のためのマシン中心デザイン

     先進的な企業はデザイン思考や人間中心デザインに注目しています *2。 これらのメソッドにリーンスタートアップやアジャイル開発を組む合わせてプロトタイプやユーザーテストを行います。これらの手法では人間の顧客を中心においてフォーカスします。

     企業はインサイトから人間のニーズを理解し、そのニーズを満たすためのアイデアを開発しようとします。新製品やサービスをすばやく市場投入するためにプロトタイピングMVP、ユーザーテストを活用します。

     スマートマシンのためのデザインには新しいアプローチが必要となります。スマートマシンのニーズの理解、ソフトウェアコードのライフサイクル、法的、規制上および倫理上の問題に至る全てにおいてです。

    「マシン中心デザイン」の取り組みに遅れを取ることは競合他社が2020年までに何十億ものインターネット上のデバイスのニーズと能力を活用していくことを意味します。

    Alexaを満足させる – マシンのニーズを満たすデザイン

     顧客としてのスマートマシンは無限に多様なニーズ、能力、成熟段階を形作ります。人間と同様に。アブラハム・マズローの人間の欲求段階に相当するマシンの欲求段階(図参照)はマシン顧客が何を必要とし、どのように自社の製品やサービスを売ることができるかを理解するのに役立ちます。

     人の欲求は下から空気、水、食糧などの生理的欲求から、安全の欲求、所属の欲求、承認欲求、そして自己実現の欲求に段階が上がっていきます。

     スマートマシンのニーズも人と同様に下から基本欲求(電力、コンピューティングパワー、ネットワーク接続性)、安全欲求(ファイアウォールや暗号化暗号など)、所属の欲求、そして承認欲求にまでおよびます。これらの欲求はソフトウェアによって満たされます。自律システムがお互いを見つけて識別し、信頼メカニズムによってサービスのレベルを把握することができます。

     人と同じように「自己実現」はスマートマシンによって異なるでしょう。バーチャルアシスタント(Virtual Personal Assistant:VPA)の場合、持ち主の微妙なストレス音感を検出し、落ち着くことのできる音楽を自動的にサジェスチョンすることかもしれません。自律型のナノ衛星の場合は最適な監視ターゲットを選択してコモディティトレードや農業「マシン」顧客に最高の利益をもたらすことかもしれません。

     一つの非常に本当の恐怖は意思を持ったシンギュラリティの「自己実現」スマートマシンが私たちとの共存を望むのか*3、あるいはマシンのニーズを人間より上に置いて奴隷化したり撲滅したいということです。 非営利の倫理グループから産業界の巨人まで、この問題に取り組んでいます*4*5。 今のところ問題の重要性を認識し、製品デザイン、ソフトウェアに組み込まれた倫理原則や人の顧客とのコミュニケーションにおいて意識すべきでしょう。

    innogyが考えるスマートマシンの欲求段階

    スマートマシンのライフサイクル

     物理的な製品と同様にマシン(物理的またはバーチャル)は、デザイン、利用からリサイクルまでのライフサイクルがあります。それらをデザインするときは、製品またはサービスがライフサイクルのどの段階なのかを考慮する必要があります。

     技術が急速に変化している状況で、完璧な答えを求めてはいけません。理解を深めながらマシンの要求に応え戦略を洗練させていくべきです。

    スマートマシンのライフサイクル

    スマートマシンのカスタマージャーニー

     人間のカスタマージャーニーは製品やサービスを意識することからはじまり、検討、購入、サービスの利用開始からサポートに至ります。さらに(願わくば)ロイヤリティーが高まり他の人にもオススメしてくれるように進んでいきます。

     スマートマシンの顧客もP2Pネットワーク上で同じようなカスタマージャーニーを辿ります。このジャーニーはアルゴリズムにより実行され、時間の経過とともに選択を学習して改善されていきます。このアルゴリズムはオンラインランキングなどの信用システムや評判システムによって補強されていきます。

     電気自動車が「意識すること」はバッテリーが少なくなることからはじまります。タイヤ交換や清掃が必要だと意識して、その必要性を訴えかけます。製品やサービスの提供者からの価格、在庫、納期を提示することで「検討」がはじまります。購買はブロックチェーンを介してP2Pのスマートコントラクトを介して実行されます。*6 

     デザイナーは「意識する」段階において適切なオンライン取引所にリストされ、マシンが読める適切なフォーマットで説明がされるようジャーニーをデザインすることができます。また購入段階で取引が正確で完全であることを確実にし、サービス段階では消費をするスマートマシンが適切な時期に適切な保守サービスや補充サービスが提供されるようにデザインできます。

    人とスマートマシーンのカスタマージャーニー比較

    スマートマシンのためのデザイン:何が違うのか

     人が中心の世界では市場調査、フォーカスグループ、顧客インタビュー、エスノグラフィーを通じて要件を明確にしてデザインされます。ターゲットとなるマーケットは「ペルソナ」というユーザー像として表現されます。ペルソナを通じて性別、年齢、教育、職業、役割、責任、さらには趣味など特徴を理解します。

    1. マシンのニーズと機会は主にマシン間のトランザクションのデータのマイニングと分析、場所やパフォーマンスなどの「状態」情報によって分かります。ターゲット市場は様々なクラスのマシンの異なる能力で分類されます。
    2. 人間中心デザインではインターフェースが重視され、観察によってその効果が評価されます。 マシン中心デザインではデバイスやソフトウェアの技術的ニーズに適応しているかで評価されます。コードの効率性、必要なAPIやプロトコルの遵守、トランザクションの速度や信頼性が重要になります。
    3. 人間中心デザインではSCRUM、ラピッドプロトタイピング、MVP、DevOpsなどアジャイル開発方法で製品とサービスの迅速なデリバリーを実現します。マシン中心デザインでも同じ方法が使用されていますが、データ分析、機械学習、ボットフォレンジックに大きくに依存ます。
    4. マシンのためのデザインには新しいインフラ、プロセスとスキルが必要です。マシンロジック、データマシンの種類と量に関する知識、アルゴリズムやディープラーニングから得られるインサイト。基盤となるAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)や認証およびブロックチェーンテクノロジの理解も必要になります。そして、最大限の機会「スイートスポット」を見つけて集中するビジネスコンテキストも必要です。
    5. 法律とガバナンスの面では、マシンツーマシンの売買にはスマートコントラクトの共通標準が必要となります。双方が提供している製品やサービスを理解し、カウンターオファーを行う能力、その受領や拒否のシグナルなどです。また、やり取りを標準化して管理するための新しい法律や規制も必要となります。「マシンに対する課税」領域の設定や人同士と同様に紛争解決のための仲介も必要となるでしょう。

    未来のロードマップ

    Show Me the Money

     マシンのためのデザインは単に既存の製品マーケティング(シャンプーや電気など)を人間以外の「顧客」のために微調整することだけではないと認識することは非常に重要です。実際の革命的な利点の源泉は新しいビジネスモデルの創造と開発です。それはインテリジェントで自律的なスマートマシンのニーズを満たしながら実際の人間社会との整合性を合わせることです。

     たとえば、マシン間の取引でどのように収益を上げるのでしょうか。ブロックチェーンは取引のコストを限りなくゼロにします。これは買い手や売り手には良いですが、銀行、クレジットカードプロセッサーなどの仲介業者には悪いことです。顧客が人間である場合、サービスは価値を作り出し、その価値がお金になります。それは利便性、柔軟性や容易さです。基本的なサービス(例えば輸送)がコモディティとなり価格が下がったとしましょう。人はそれでも最短ルートにお金を払い、友達をピックアップしたりお使いのため遠回りをすることにお金を払うでしょう。

     マシンが他のマシンにサービスを提供する場合、価値の創造から収益を上げる機会はひとりの人間の顧客のための取引を最適化することでは無くなります。ネットワークを通じてマシンを集約することで生まれます。例えば電気自動車がグリッドに余剰電力を売る場合に価格が最も高いピーク需要期を待つことでプレミアムを請求することができます。また、グリッドの安定アルゴリズムでバッテリ容量を柔軟に集約して売却することによってグリッドの安定に貢献することもできます。

     マシンとマシンによる取引の新しい収益機会はデータです。例えば、道路に設置されたスマートセンサーが舗装の摩耗や裂傷に関する業界データを舗装業者に提供し、舗装修繕サービスのディスカウントを受けることができます。また、スマートセンサーから交通情報を小売業者や不動産業者提供することにより建設プロジェクトに貢献することができます。

     このようにスマートマシンの欲求段階、ライフサイクル、スマートマシンのカスタマージャーニーなどのツールは、これから到来するスマートマシンの経済を理解し、その恩恵を受けるために役立ちます*7。スマートマシンの経済に置き換えられるのではなく、製品、サービス、マーケティングを一から考え直すことを積極的に導いていきます。

    この記事は人間中心デザインからマシン中心デザインを予見させる「スマートマシンが顧客になる時 – マシンのためのデザイン」”When a Machine is the Customer – Designing for Machines“の翻訳です。これを書いたのはinnogyのthe Machine Economy Innovation Lighthouse Leadに所属する部長のCarsten Stöcker博士Kerstin Eichmann氏です。あまり関係ないですが、Kerstinさんは同じマイクロソフト出身者として個人的にすごく親近感を覚えます(笑)

    Innogyはドイツ第二位の電力会社RWE AGの子会社です。IoT、ブロックチェーン、AIなどの先端技術を使ったイノベーションプロジェクトを多く手がけています。以前に紹介したブロックチェーンによるIoTの事例もInnogyのプロジェクトでしたね。

    ボク自身は人間中心のサービスデザインを専門としているので、この記事を読んだ時すごくハッとしました。カスタマージャーニーなどのデザイン手法をAIやIoTの世界に当てはめるのはとても新鮮です。

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    About the Authors:

    Dr. Carsten Stöcker is Senior Manager in the Machine Economy Innovation Lighthouse Lead at innogy SE. He is a physicist by training with a Ph.D. from the University of Aachen. He also serves as a Council Member of Global Future Network for the World Economic Forum. Prior to joining innogy SE, Dr. Stöcker worked for the German Aerospace Center (DLR) and Accenture GmbH. Carsten.Stoecker@innogy.com | Twitter: @CarstenStoecker

    Kerstin Eichmann is leading the Machine Economy lighthouse. She also worked as Manager for Microsoft Deutschland GmbH. Prior to Innogy, she worked as a manager in the developer experience unit of Microsoft Deutschland GmbH, Fidor Bank and BBDO. Kerstin.Eichmann@innogy.com| Twitter: @OriginalKed

  • デイブ・グレイが語るソースコードとしての「線の言語」とビジュアル思考

    デイブ・グレイが語るソースコードとしての「線の言語」とビジュアル思考

     デイブ・グレイさんはアメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人です。XPLANE創業者としてスタンフォード大学d.schoolでも使われている『共感マップ』の作成に携わったり、日本でも出版されている『ゲームストーミング』などの著者でもあります。スケッチでも有名でグラレコ本ではデイブ・グレイ風として紹介されたりもしています。

     そんなデイブさんにサービスデザインやイノベーションにおけるスケッチの役割とか聞いてみました。

    カタパルト式なかむら

     デイブさんはスケッチやドゥードゥルでも有名ですよね。共感マップもとてもビジュアルです。

    デイブ・グレイ

     私がやっているのは全てビジュアル思考(Visual Thinking)と言えるね。ビジュアル思考というのは最も基本的で普遍的な方法だと思うんだ。ビジュアルを使って探索し、実験し、考えを説明できる。ビジュアルを使うとアイデアを見える形にできる。そうすることによって他の人も理解しやすいし、共同作業もしやすくなる。

    スタンダード大学d.schoolでも使われている『共感マップ』

    「書く」ことは「描く」こと。「描く」ことも「書く」こと。作文、数学、音楽、チャート、スケッチ、ドゥードゥルといった表記は全て紙にアイデアを落とし込むという意味では同じなんだ。私はそれを「線の言語(line language)」と呼んでいる。「線の言語」はオリジナルの言語となる。表現のソースコードとも言える。それが文章でも、ドローイングでも、統計のチャートでも、インフォグラフィックや戦略の可視化やシステム思考も全てそう。


    Squiggle birds

     私は「線の言語」を全ての仕事で使う。いろんな人に「線の言語」をソースコードとして使うことを教えている。「線の言語」を使いこなすことによって複雑でぼやっとした構造化されていない問題に取り組むことができるようになる。

    カタパルト式なかむら

     日本企業はビジュアル思考があまり得意でないような気がします。

    デイブ・グレイ

     日本企業はたくさんのイノベーションツールを作り出したよ。それらはアメリカで研究され、広がっていった。例えばリーンマニュファクチャリングはリーンスタートアップになった。日本企業のA3思考(トヨタ自動車で資料を1枚のA3サイズの紙にまとめる方法)はサービスを通じた価値創造、特にクリエイティビティーやイノベーションに役立つ。まだアメリカではそれほど広がっていないけど、可能性は大きいと思う。リーダーたちがA3思考を使って創造性や革新性にフォーカスすることで実際にイノベーションが起きた現場にたくさん居合わせた経験からもそう思う。

    カタパルト式なかむら

     リーンマニュファクチャリングのカンバンもA3思考も日本企業というよりはトヨタ自動車の手法で、海外企業の方がよく研究して取り入れている気がします(笑)

    カタパルト式なかむら

     ところで、”Connected Company”が出版されてから自律的な組織が注目されるようになりました。20世紀の後半はサービスデザインでいうバックステージが注目を集めていました。例えばSCM、ERP、CRMなどです。自律的な組織もそうなのですが21世紀からはフロントステージにおける顧客体験が重視されています。

    デイブ・グレイ

     バックステージとフロントステージを考えるとき、レストランがいい例えになる。調理場がバックステージ。工場や企業の本社機能と同様にバックステージとしての調理場は効率性と生産性を上げることができる。でも、実際の創造性の問題はホールでの顧客体験がカギとなる。ホールでお客様にどのようにいい顧客体験をサービスとして提供できるか。

     バックステージはプロセスなのでリーンにできる。でも、顧客は一人ひとり違うから顧客体験といってもそのバリエーションは無限にある。パーソナライズすればするほど複雑になる。それに対応するにはフロントステージでの自律性を高めるしか方法がない。

     これはレストランに限ったことではなく、全ての産業で言えること。

    カタパルト式なかむら

     ”Connected Company”が出版された2012年と比較して企業がサービス企業”Connected Company”となる必要性は高まっていますか?

    デイブ・グレイ

     企業がConnected Companyとなる必要性は出版してから現代まで変わっていない。変わったとしたらその重要性がさらに高まったこと。企業文化は生きているんだ。私は企業文化を説明するときによく「庭」を比喩として使う。手入れが行き届いた庭は過ごしやすいし、美しい花が咲き果物が実る。行き届いた企業文化は働きやすいし、結果も出る。

    カタパルト式なかむら

     GEのような製造業もデジタルを活用したサービス化を進めています。しかし、GEは先進的な取り組みをしていますが、まだうまくいくには時間がかかりそうです。

    IoTの“手本” GEの見えない針路:日経ビジネスDigital

    デイブ・グレイ

     GEはジャック・ウェルチが経営していた頃にとても難し判断を力強く下した。彼の後の経営者はGEの企業文化をよく手入れしてこなかったんじゃないかな。ジャック・ウェルチは1990年代に「株主価値の最大化はこの世で一番間抜けなアイデアだ」と言った。彼が言わんとしたことは、株主の価値は逆算して考えるということ。顧客のニーズを優先して先に考える。企業が顧客の価値にフォーカスすれば株主の価値は自ずと高まる。顧客の価値が成長の要因であって、株主への価値はその結果でしかない。GEはどこかで道を誤って業績は停滞している。でも、正しいことを続け、顧客中心でいられれば偉大な企業に戻る。

    カタパルト式なかむら

     デイブさんは様々なプロジェクトに関わっています。最後にサービスデザインやイノベーションプロジェクトに関わる人に注意点と言いますか、「これは危険信号!」だから注意しないといけないこととかありますでしょうか。

    デイブ・グレイ

     以前のカンファレンスで話したやつだよね(笑)。次のことにいくつか当てはまるプロジェクトは要注意だ。

    • 強い抵抗勢力がいる
    • 本当にやりたいのかよくわからない
    • 実行する上での障害を取りのぞけない(インセンティブをつけたり、組織改編ができない)
    • 役員の支援がない
    • プロジェクトにかかわる人たちが十分な時間をコミットしてくれない
    • 現場や顧客と直接会話させてくれない

     イノベーションプロジェクトが成功する確率は決して高くない。だから、サービスデザイナーもプロジェクトを選んだほうがいい。これはクライアントにも言える。自社のイノベーションプロジェクトでこれが当てはまらないように準備をしたほうがいい。

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  • 書評|モノづくり企業から顧客体験企業への転換「Connected Company」Dave Gray

    書評|モノづくり企業から顧客体験企業への転換「Connected Company」Dave Gray

     これからは顧客体験を重視したサービス企業にならないと成長できないと言われています。現代のヨハネの黙示録の四騎士と言われるAFGA(Apple、Facebook、Google、Amazon)も全てサービス企業ですね。え?誰ですか?Appleが製造業だといってる人は?Fortune Future 50というリストがあります。将来的に爆発的に成長する可能性のある企業。ここにリストアップされている企業も純粋な製造業はほとんどありません。

     例えばFortune Future 50リーダーリストで第二位のTeslaも電気自動車を作っているけど、彼らのイノベーションはそれだけじゃない。顧客体験を非常に重視しているサービス企業といってもいい。販売店を経由しないでショールームで直接体験をさせる。彼らが力を入れているクルマの自動運転もサービスに直結しますよね。

    サービスデザイナーの描く新しい組織の形

     それでは「従来の効率を求めた大量生産型の組織から顧客のエクスペリエンスを重視したサービス型の組織に変わるにはどうしたらいいのか?」それが今回紹介する本”Connected Company“の主題です。この本を書いたのはXPlaneの創業者でアメリカで最も有名なサービスデザイナーの一人であるDave Gray氏。スタンフォード大学のd.schoolでも使われているEmpathy Map(共感マップ)はXPlaneがもともと作ったもので、彼の本『ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム』でも紹介されています。

    “Connected Company”の著者、Dave Gray氏

     新しいサービス型の組織は自律型の組織になる

     2012年に出版されたこの本は、新しい組織の形としてConnected Companyという概念を提唱しています。いわゆるピラミッドの形をした階層型の組織ではなく、自律したグループ(ポッド)が集まったポデュラー型の組織になる。この本は前回紹介した“Reinventing Organization”(2014年2月出版)の二年前に出版されているのですが、かなり共通点が多い。”Reinventing Organization”が色々な歴史的事例や新しい組織の事例から時系列に整理したものに対して、”Connected Company”は顧客体験を最適化するサービス型の組織はどのような組織なのかを事例を交えて考察しています。取り上げている事例もモーニングスターなどかぶる部分が多い。

    なぜ従来のピラミッド型の組織では顧客体験を最適化できないのか?

     Connected Company(繋がっている組織)がサービス型の組織だとしたら、従来のようなピラミッド型の組織をDivided Company(分裂した組織)と定義できます。産業革命以降、効率を高めるために分業(Division of Labor)が勧められてきたので、大量生産型の組織にとってDivided Companyは最適な形だったわけです。製造は安定していて関わる人の役割も明確。

     しかし、経済は製造業よりもサービス業が成長していった。サービスは製造と比べて決まった形がない。常に変化する。例えば自動車を作ることはどのような会社でも大きく変わることはない。働く人が持っているのはタスクとプロセス。しかし、同じクルマでもUberのようなサービスカンパニーは?顧客それぞれにルートも違えばパーソナリティーも違う。Uberがもし従来の企業のような組織体系で、ドライバーはピラミッドの底辺で、持っているのはタスクとプロセスだったら?それではうまくいかない。サービス型のConnected Companyは人が持つのは顧客体験。

    この本はオススメか?

     日本の企業が「大量生産のモノづくり企業」から「サービス型のモノづくり企業」へと転換するのにとてもいいテキストだと思います。すでに出版から時間が経過しているため、いくつかの事例はすでに旧聞に属します。それでもハッとするような事例がたくさんあります。

     例えば軍隊の事例。軍隊はピラミッド型の組織で命令は絶対。”Reinventing Organization”でも軍隊はレッドのメタファーとして使われているくらい。そういうイメージがありますよね?

     しかし、実際の戦場では自律的に動く必要がある。戦況は刻一刻と変わるし、必ずしも上長の判断を仰げるわけではない。自律的な組織は「組織の目的」を重視して、その目的が行動の規範となる。戦場における軍隊もまさに同じで、「司令官の意図(Commander’s Intent)」と呼ばれる指針が各部隊が自律的に動く基準となる。軍隊も現場ではかなりアジャイルな組織なんですよ!

     ”Reinventing Organization”はどちらかというとアカデミックで理想的な印象があるのですが、”Connected Company”は現実も理解して実質的な解決策を提示している気がします。

    The Connected Company

    The Connected Company

     

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  • アメリカのデジタル公共サービスの夜明け – オバマケア立ち上げ失敗、18F誕生の前日譚とCode for America

    アメリカのデジタル公共サービスの夜明け – オバマケア立ち上げ失敗、18F誕生の前日譚とCode for America

    Mangrum and Otter Building 1235 Mission Street

    1235 Mission Streetにあるサンフランシスコのフードスタンプオフィス(通称:1235)

    原文:”“People, Not Data – On disdain and empathy in Civic Tech” by Jake Solomon, Jan 6, 2014

     ここはサンフランシスコの大きなフードスタンプオフィスです(フードスタンプは低所得者に配給される金券。スーパーマーケットなどで食料品を買うことができる)。通称1235。1235 Mission Streetにあるから。私がはじめてここを訪れたのは2013年2月7日木曜日でした。コンクリート柱を通り抜け、二人の警備員が立っている金属探知機を通過。書類が散らかったテーブルの横を通り、ようやく待合室にたどり着きました。とても騒がしかった。天井のスピーカーの声がリノリウムの床に反響して響き渡る。サービスカウンターBと呼ばれる大きなカウンタートップに大勢が並んでいました。

     背の高い黒人男性が列の先頭にいます。彼は前かがみになって手をカウンターにおきました。厚くて曇った防弾ガラスシートが彼とワーカー(福祉サービスのソーシャルワーカーのこと)を分け隔てていました。彼らはガラスに取り付けられたひょろ長い会議用のマイクを通じて会話をしていました。彼はワーカーとのマイク越しの会話が聞き取りづらくて困っているようでした。マイクをつかんで上に向けようとしましたが、それより近づくことができません。さらに腰を曲げて頭の位置を下げ、耳をガラスにつけました。さらに膝を地に下ろし、マイクを顔に近づけ、腕をカウンターにもたれかけました。そしてひざまずいたまま会話は終わりました。

     私がいる場所。サンフランシスコ。私たちの国で最も繁栄している都市のひとつ。そこで私が見た風景。防弾ガラス越しに会話を聞き取るためにひざまずき、連邦政府からのフードスタンプを受けようとしている男性。

    何かがとてつもなく間違っている

     これが私のCode for Americaのフェローシップのはじまりでした。2013年2月の後半にサンフランシスコの4つのシェルター予約サイトの1つであるミッション・ネイバーフッド・リソースセンターを訪問しました。シェルターで一晩のベッドを予約するのに12時間以上かかることがあり、シェルターよりストリートで寝ることを選ぶ人もいます。また次の日のベッドのために朝4時にシェルターをでて列を作る人たちもいます。ベットが欲しければ早く起きなければいけません。

     私のチームメイトもフードスタンプに登録しました。メールが送られてくるようになりました。しかもたくさん。それらはこのように威圧的だったり:

    なんでこんなに叫ぶような大文字ばかり?

    文字だらけで混乱していたり:

    長〜いレター

    あるいは全く意味をなさなかったり:

    $200から$200に変更?

     7ヶ月の加入期間中、20のメールを受け取り、3回ほど打ち切られそうになりました。下のタイムラインをみてください。

    フードスタンプタイムライン

    サービスはユーザーを見下している

     これが私たちと政府とのやり取りです。私たちはひざまずき、シェルターでベットを確保すために並び、郵便で攻撃的なレターを受け取ります。本来なら困っている人に手を差しのべるサービスが助けるべき人たちを見下しています(disdain)。

    dis·dain(見下す/軽視する)

    動詞:その人を考慮する価値がないとすること

     このユーザー軽視は人生を変えるほど巨大で物議をかもす形で現れます。退役軍人が障害手当を受け取るのに260日かかります。私たちは家族が暮らす部屋を用意するためにひと月3,000ドルを費やしますが、その家族が必要なのは一人当たり900ドルの現金です。

     そして、このユーザー軽視は小さく静かに誰も気づかない形で現れます。サンフランシスコで無料の学校給食をオンラインで申請をするとウェルカム画面でこの警告が強調表示されます:

    オンラインでできるのは一つの申請だけです。何らかのエラーが発生した場合は紙で申請する必要があります。

     またはCalWinのiPhoneアプリをダウンロードしてみてください。カリフォルニアの7億5000万ドルのクライアント福祉データシステムのアプリです。そこで目にするのは:

    はい、ホームスクリーンでは文字が切れて読めません。

     このようなユーザー軽視は上から下まで徹底しています。例えばhealthcare.govで起きた問題は政府のITがいかに壊れているかという長い議論(と周辺に巻き起こる批評)をもたらしました。しかしエズラ・クラインが何が壊れているのかの本質を言い表しています。

    …一部の被保険者と裕福な人が持つ特権は貧しい人たちが日々晒されている低品質な公共サービスに対して言い訳をすることです。報道機関は大抵は見て見ぬフリをするか、全く本当に何も知らないかです。貧しい人たちが政府の官僚主義に日々どれほど打ちのめされているのか。そうして放置することで官僚主義はさらに悪くなっていきます。エズラ・クライン

     問題はWebサイトではありません。問題は1235でひざまずいている男性であり、ユーザーを軽視するマシンのような官僚主義がひざまずく彼を助けないことです。

    共感からサービスを作ろう

     だから私たちはここにいます。ユーザー軽視のマシンと格闘しています。誰もそんなことは望んでいない。ソーシャルワーカーもユーザーがひざまずくことを望んでいたりはしない。CalWinの開発者も自ら開発したアプリがiPhoneのホームスクリーンで恥をさらすことを望んでいない。誰もホームレスの人々が徹夜で並ばなければいけないことを望んでいない。それはすでに政治の域を超えています。

     できるならば、これを勇ましい言葉で終わらせられたらと思います。「私と一緒に行動を起こしませんか?私たちの壊れた政府を直しませんか?ここをクリックしていますぐ寄付を!」しかし、私にはそれはできません。私はCode for Americaのフェローシップ期間中に解決策よりも多くの問題をみてしまいました。そこで私は一つの疑問を提起したいと思います。どうしたら共感力のある公共サービスを作れるのでしょうか?

     兎にも角にもまずはユーザーのニーズ。共感力のあるサービスはリアルな人々のリアルなニーズに根ざしています。必要なのはイノベーションではありません。ビッグデータ、government-as-a-platform、透明性、クラウドファンディング、オープンデータ、Civic Techなどではないのです。大事なのは人です。人々とそのニーズを優先することを学ぶこと時間をかけて学ぶべきです。このような変化はすぐには起こりません。一人づつ、ゆっくりと。でも私たちははじめなければいけません。

     私たちは非常に多くの創造性、ツール、そして非常に多くの素晴らしい事例があります。ユーザーのニーズを特定し、文書化し、説明し、ニーズに答えるのに役に立つ様々なリソースが。それを活用していないだけです。私はSF映画に出てくる宇宙船400台全ての相対的なサイズを知っています。しかし恥ずかしい話ですが、ホームレスのシェルターや刑務所がどのように機能するかはほとんど知りません。

     healthcare.govの侮辱と怒りを感じている最中、ティム・オライリーが大きな機会を気づかせてくれました。

    healthcare.govの問題に嘆いたり、誤りや政治的な優位性をくまなく探すよりいいことがある。すべての人たちにとってシンプルで効果的で使いやすい公共サービスを創造する絶好のチャンスがいまなんだ。ティム・オライリー

     だから、穏やかにしかし根気強く意識をユーザーニーズに戻し、ひざまずく人を探して手を差し伸べられる共感力のある仕組みを作りましょう。

    追記 (2014年1月22日)

     私が2013年2月にどっぷりと浸った日々は人生で最も有意義な職業経験でした。だからこそ私はそれについて書きました。世界の人々と共有するために。これにより問題の解決に関する議論をより広範なコミュニティに広がることを期待していました。そして、それは成功しましたし、それを誇りに思います。しかし、私のいくつかの疑問やいくつかの批判もありました。ですから、私は一歩立ち返って、地方自治体、公共サービス、特にサンフランシスコのヒューマンサービスエージェンシー(HSA)で働くことになった背景をもう少し詳しく説明したいと思います。

     地方自治体は非常に制約されていると知ったのは今年の大きな学びでした。自治体は地方の政治、州法、および連邦法の複雑な絡み合いに制約されています。制約は責任を伴い下まで行き渡っています。メールの内容を変更したり、SMSを送ったりするにも州と連邦の関係者との協力が必要です。このすべてがフラストレーションとなりえます。しかし、それこそ私がCode for Americaに最初に参加した理由です。本当のの問題を解決するために必要なことを学ぶこと。

     HSAは制約を理解し、それを解決をするのに何が必要なのか学ぶのに最適な場所でした。以下は私が在籍した時に解決を間近にみたことです:

    • HSAはユーザーの対面体験を改善するためにMedi-Calのロビーをデザインし直しました。さらに1235のフードスタンプオフィスもデザインし直しました(今は防弾ガラスとマイクは撤去されています)。
    • HSAはAffordable Care Act(通称:オバマケア)をはじめとする数百の新しい規制改善を実施しました。Medi-Calを数千の新しいサンフランシスコ住民にまで拡張しました。夜間と週末にもコールセンターにアクセスできるようになりました。何百ものスタッフに新しいプログラム要件のトレーニングを提供しました。これによりサービスが「間違ったドアなし “No Wrong Door”*1」に一歩近づきました。
    • HSAはフードスタンプのための報告義務を四半期から半期に削減しました。
    • HSAはフードスタンプの再認定のための対面式インタビューを廃止し、ユーザーが電話でインタビューできるようにしました。
    • HSAはフードスタンプのユーザーを支援するために特別に作られた最初の栄養ウェブサイトであるEatFresh.orgを提案、資金提供、構築、ローンチしました。
    • 最後にTrent Rhorerのユーザーのためにリスクを取る無限の意欲に感謝します。HSAはユーザーのためのSMSシステムを構築して実装した最初のヒューマンサービス機関となりました。

     HSAは2013年にこれをすべて実施しました。これこそがユーザーを第一とするサービスに必要なことです。HSAと2,000人以上のスタッフがそのために日々働いています。サンフランシスコの暮らしと生活を豊かにする助けをしてくれている彼らに感謝します。

     AlanとCrisのメスカルを飲みながらのフィードバックに感謝します。ドラフトを読んでくれたMarcとZavainに感謝します。そして、私たちをパートナーとして共に歩み、大事なことを実行し、実行し続けてくれているサンフランシスコのHSAに感謝します。

    解説

    この記事は2013年にCode for Americaのプロジェクトに参加して実際にサンフランシスコのヘルスケアシステムの改善に参加したJake Solomon氏のブログ記事”“People, Not Data – On disdain and empathy in Civic Tech“の翻訳です。

    背景には2010年に発表され2013年にローンチしたオバマケアの一部であるhealthcare.govの不具合があります。ほとんど機能せず、大きなニュースとなりました。「問題はWebサイトではありません」という言葉が胸に突き刺さるいい記事です。

    以前にアメリカの大規模デザインシステムに関する記事を翻訳しましたが、それを実施した18Fの最初のプロジェクトがhealthcare.govの改善でした。18Fの設立が発表されたのが2014年3月のことでした。この記事はその前日譚とも言えます。さらにその前日譚はティム・オライリーの最新著書の”WTF“で紹介されています。

    アメリカ政府がhealthcare.govの失敗を乗り越えて、デジタル公共サービスへ本格的に踏み切ったのはCode for AmericaのようなNPOと地方行政の取り組みも影響があったはず。日本にもCode for Japanがあるので同じことが起きるかもしれませんよ!

    カタパルトスープレックスなかむらかずや

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    *1:サービス側がユーザーが受けられるサービスを定義するのではなく、ユーザーが受けたいサービスを受けられる状態