タグ: AI

  • 書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|”The NeuroGeneration” by Tan Le

    書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|”The NeuroGeneration” by Tan Le

     映画『アベンジャーズ』でロバート・ダウニー・ジュニア扮するトニー・スタークが浮かんでいる画面を手でササっと操作したり、やはり映画『ドクター・ストレンジ』でベネディクト・カンバーバッチが光の魔法陣をバッと手から出して防御したりカッコいいですよね!やってみたいですよね!残念ながら光ってフォトンが何かにぶつからないと出ないから、宙に浮かぶディスプレイや光の魔法陣は今の技術ではできそうにありません。残念!

    しかし、映画『X-MEN』のメインキャラクターの一人で史上最強のテレパスであるプロフェッサーXが使うセレブロのような脳の拡張装置はできてしまうかもしれません。ちなみに、セレブロはスペイン語で「脳」という意味です。

    今回紹介する書籍”The NeuroGeneration”では小型の脳波測定装置を開発するスタートアップEmotivの共同創業者であるタン・リーが様々な最新技術を紹介してくれています。

    タン・リーはまず最初にわかりやすい事例を紹介してくれています。両手、両足が麻痺して動かない四肢麻痺の男性が脳波でF1カーを運転できるようになった事例です。四肢欠損の乙武洋匡さんでも車が運転できるようになる可能性があるということです。論より証拠でYouTubeのビデオを見てもらった方が早いでしょう。

    この本では脳科学を応用した技術的進歩を「ニューロジェネレーション」として7つのケースを紹介しています。全てをここで紹介することはできませんが、面白いと思った一部を紹介します。

    まずは、ブレイン・コンピューター・インターフェイス。F1カーを運転するとか、まさにそうですね。コンピューターのインターフェースは文字のキャラクター・ユーザー・インターフェイス(CUI)から、マウスで操作するグラフィック・ユーザー・インターフェイス(GUI)に。そして、スマホでタッチ・インターフェイスに進化してきました。いま期待されているのはボイス・インターフェイスですが理想とされるのはインターフェイスがない「ノー・インターフェイス」です。おそらく、ノー・インターフェイスに一番近いのがブレイン・コンピューター・インターフェイスです。イーロン・マスクのニューラルリンクも同じコンセプトです。ニューラルリンクの場合は手術で脳に埋め込まないといけないので、ちょっと嫌ですけどね。できれば、プロフェッサーXセレブロのような脳波を使ったウェアラブルでお願いしたい。

    考えていることをコンピューターが理解できるって便利でもありますが、怖いことでもあります。この本でも紹介されていますが、脳波を使った事例としてキャンペーンの多変量テストがあります。タバコのキャンペーンでABCの3種類をテストしました。アンケートではAが一番いいスコアでしたが、脳波が一番反応を示したのはキャンペーンBでした。そして、実際のキャンペーン結果はBが一番良く、Aが一番悪かったそうです。グーグルとかフェイスブックなんて真っ先に飛びつきそうじゃないですか?VRゴーグルのオキュラスとかすごく相性良さそうだけど、自分の脳波がフェイスブックにだだ漏れとかちょっとヤダなあとか。

    また、インプランタブル・デバイスとかも面白そうです。たびたび例に出して恐縮なのですが、四肢欠損の乙武洋匡さんが義手や義足を(自分の手足と同じように)頭で考えて動かせればって思いません?この本で紹介されているアメリカのマーク・ポロックさんは四肢麻痺な上に盲目です。マーク・ポロックさんが使っているのはエクソ・バイオニックという可動式の補助器具です。『エイリアン2』でシガニー・ウィーバーが使ったパワースーツに近いですかね。

    肉体と機械の融合体をサイボーグと言います。例えば『攻殻機動隊』の草薙素子は脳と脊髄の一部を除く全身が人工物なのでサイボーグです。映画『ロボコップ』のロボコップもサイボーグです。脳が人間なので。ちなみに、脳も含めて全てが人工物の場合はアンドロイドやロボットです。わかりやすい例が『ターミネーター』でアーノルド・シュワルツネッガー演じるT-800です。あれはアンドロイド。アンドロイドやロボットの脳は人工知能(AI)ですね。映画『ブレードランナー』に登場するレプリカントはおそらくアンドロイドです。なぜなら原作のタイトルが『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』だからです。

    ブレイン・コンピューター・インターフェースやインプランタブル・デバイスのおかげで、サイボーグはだいぶ現実味が増してきています。そのため、サイボーグ・アーティストのニール・ハービソンとニール・リバスが共同でサイボーグ促進を目的としたサイボーグ基金(サイボーグ・ファウンデーション)を設立したりしています。

    人間の脳を活かしたサイボーグが可能なのであれば、人工知能を活かしたアンドロイドだって可能なんじゃないか?って考えちゃいますよね。タン・リーは人工知能は人間の脳と補完関係になると考えているようです。例えば、人間の脳をサイバースペースにアップロードしたり、さらにアンドロイドの人工知能にそれを埋め込んだり。アニメ『楽園追放』がそれに近い世界ですよね。実態のない電脳パーソナリティが器となる生身の体(マテリアルボディ)にダウンロードして動けるようになる。『エヴァンゲリオン』の綾波レイも同じ仕組みだと推測します。

    もちろん、このような世界はまだまだ先の話。人工知能(AI)がシンギュラリティまで到達した上で、意識とは何か解明する必要があります。

    そのほかにもかなり近いであろう分野もたくさん紹介されています。身体的ドーピングだけでなく、意識のドーピングとか。身体拡張だけでなく、脳拡張です。勉強ができるようになるスマートサプリとかです。

    ケトジェニック・ダイエットKeton-esterなどは元々DARPAと民間のHVMNが開発して民生利用されたニューロ医薬といえるサプリです。ニューロ医薬は薬だけでなく、Mindstrongのようなアプリも含まれるコンセプトでFDAの承認が必要になります。

    この本はどんな人にオススメか

    脳科学や将来のインターフェイスに興味がある人にはオススメです。ボク自身もここまで脳のインターフェイスが進んでいるとは知りませんでした。普通の人が身体拡張や脳拡張に使うのもそれほど遠い将来ではないと思いました。人工知能(AI)の研究も脳科学とのシナジーは大きそうです。

    これは本書でも軽く触れられていますが、脳科学の応用が進むにつれて、規制やモラルの問題も大きくなっていくことが予想されます。プライバシーの問題が脳波にまで及ぶのですから。そして、格差問題もより大きくなることが予想されます。だって、脳の拡張ができるような資産を持っている人は、より高度な仕事ができるようになるわけですよ。しかも、それはそれほど遠い将来ではないかもしれない。

  • 書評|アシモフ的なAI三原則|”Human Compatible” by Stuart Russell

    書評|アシモフ的なAI三原則|”Human Compatible” by Stuart Russell

    人工知能(AI)に関して大きく分けて二つの派閥があります。人間のに脳を超えるとき、人間にとって脅威になると主張する派閥と、人間にとって脅威にならないと主張する派閥です。スチュワート・ラッセルは人工知能は人間にとって脅威になると主張する派閥の一人です。スチュワート・ラッセルはカリフォルニア大学バークレー校の人工知能システム研究所(CIS)の所長で、英語では多くの人工知能の著書を執筆しています。

    一番新しい著書の”Human Compatible”でスチュワート・ラッセルは人工知能が人類の脅威になる可能性があるという立場から、いかに危害をなくすことができるのか(人間との共存=Human Compatible)を考察しています。

    Human Compatible: Artificial Intelligence and the Problem of Control (English Edition)

    Human Compatible: Artificial Intelligence and the Problem of Control (English Edition)

    スチュワート・ラッセルの主張を簡単にようやくすれば「AIの目的ではなく、人間の目的を達成するようにデザインすべき」です。「じゃあ、人間の目的って何?』ってなりますよね。問題は人間の目的は数億人の個人の中にあり、機械にはないこと。さらに、人間は自分自身の目的も明確ではないことです。

    まず、この本では「知能とは何か?」を考察しつつ、AIの歴史をその出発点であるダートマス会議まで遡り振り返ります。これも簡単に要約すると、「知能自体がまだよくわかっていない」ですし、「人間が理解できる範囲内での知能しか再現できていない」です。

    単細胞生物の知能は非常に単純で、1) 特定の状況において、2) 何を望み、3) 何を行動するかの三点に要約できます。しかし、単細胞生物は学習ができません。学習にはニューロンとシナプスの神経ネットワークが必要となります。現在のAIは学習できるまで「知能」レベルになってきました。でも、脳の認知レベルはあまりよくわかっていないし、意識レベルは全くわかっていない。

     

    計算スピードだけであれば、コンピューターは人間の脳をすでに凌いでいます。では、なんで現時点で人間と同等のAIが存在しないのか。それは、ハードウェアの問題ではなく、ソフトウェアの問題だとスチュワート・ラッセルは説きます。コンピューターが人間レベルの「知能」を獲得するには複数のブレイクスルーが必要なのだそうです。その代表が、1) 言葉とコモンセンス、2) 世代を超えた学習、3) メンタル行動の管理です。

    例えばなのですが、AIの自然言語処理は本を読んで理解するに至っていません。また、複雑な予測(例としてあげているのが二つのブラックホールの衝突予測)はできません。前提とする知識やデータが必要で、膨大なデータから必要な知識を人間のように効率的に取捨選択するには特徴エンジニアリングが必要ですが、まだまだ人間レベルには程遠い状況です。また、新しいコンセプトを生み出すには帰納プログラミングが期待できますが、これも相対性理論のような科学的コンセプトを生み出すには至っていません。

    つまり、現時点でAIは個別の人間の能力を凌駕する可能性はあるかもしれませんが、集合体としてのn人間をまだまだ凌駕できません。じゃあ、まだまだ先の話だし、それほど脅威を感じなくてもいいのね?とはいきません。AIが人間を凌駕するのは5年後かもしれないし、500年後かもしれない。そこでスチュワート・ラッセルが提唱するのがAI三原則です。これはTED Talkを観てもらうのが早いかもしれません。

    この本はどんな人にオススメか

    AIが現時点で何ができて、何ができないの?を知りたい人にはオススメです。どうしてできないのかをかなり詳しく専門家じゃなくてもわかるように説明してくれます。AIがすでにいろいろ誤用されているから、気をつけようね!という事例も紹介してくれています。「工業化が人間から職を奪わなかったように、AIも人間から職を奪わない」がどうして楽観的すぎて、資本家にとって都合のいい見方なのかも解説してくれています。まあ、生産性が上がるは利益が上がると同義語で、利益は労働者ではなく資本家に分配されますからね。これを「グレート・デカップリング」と言います。

    ただ、ちょっと冗長的だと感じる部分もありました。AIにある程度興味がある人であれば最初のAIの歴史とかはかなり退屈かもしれません。あと、AIの脅威も映画の中の話っぽさが拭いきれず(実際に映画の例が多い)、あまり脅威に感じませんでした。でも、まあ、すでにAIはたくさん誤用されているわけだから、研究者はちゃんと注意しないといけないんでしょうね。

  • 書評|人工知能はパロディではなくオリジナルを作れるか?|”The Creativity Code” by Marcus du Sautoy

    書評|人工知能はパロディではなくオリジナルを作れるか?|”The Creativity Code” by Marcus du Sautoy

    前回紹介した”Possible Minds”では「人工知能は人間の知能を超えるのか?(技術的にはAGIまたは強いAI)」を様々な観点から考察していました。インテリジェンス(知能)とはどういうことなのか?具体的にどのような状態になればシンギュラリティに到達したと言えるのか(紛らわしいですが厳密に言えばAGIができてもシンギュラリティに到達したとは言えません)?

    人工知能が人間と同じレベルに到達した時、人工知能は人間と同様に独立した意識を持ちます。それが人工意識です。独立した意識とは開発した開発者の意識と分離されているという意味です。人工知能が独立した人工意識を持つ時、それは善なのか悪なのか。映画『ターミネーター』みたいな人工知能スカイネットが支配する世界になってしまうのか。映画『her/世界でひとつの彼女』や『ブレードランナー』のレプリカントのように人工知能と恋をすることができるのか?そう言えば、『ブレードランナー』でロイ・バティーを演じた俳優ルトガー・ハウアー がお亡くなりになりましたが、歴史に残る名セリフ「雨の中の涙」のような状況が起きるのでしょうか。っていうか、コンピューターはルトガー・ハウアーのような映画史に残るアドリブができるようになるのか?

    そう、もう一つの興味の方向性が「機械は創造できるのか?」です。パロディやパスティーシュではなく、オリジナルを作れるか?「コナン・ドイルを超えるホームズ作品を書けるか?」ではなく、「コナン・ドイルのホームズ作品に比肩するオリジナルのクラシックを生み出せるのか?」です。「ネクスト・レンブラント」ではなく、レンブラント自身になれるか?です。この主題にどっぷりと取り組んだのが数学者マーカス・デュ・ソートイの”The Creativity Code”です。前置きが長くなりました。 

    The Creativity Code: How Ai is Learning to Write, Paint and Think

    The Creativity Code: How Ai is Learning to Write, Paint and Think

    AGI(強いAI)はチューリング・テストをパスしなければいけません。しかし、マーカス・デュ・ソートイは人工知能がオリジナルを創造するかチューリング・テストではわからないと言います。そこでデュ・ソートイが提唱するのがラブレス・テストです。ラブレス・テストはエイダ・ラブレスから名付けられました。ラブレス・テストで人工知能は全くオリジナルで価値のあるものを創造しなければいけません。そして、その人工知能を開発した開発者にとっても、その創造性はブラックボックスでなければいけません。 

    人工知能と創造性のテーマでの先駆者は認知科学者のマーガレット・ボーデンです。デュ・ソートイもボーデンの定義を踏襲しています。それは以下の三種類です。

    • 探索型(exploratory creativity)
    • 複合型(combinational creativity)
    • 変容型(transformational creativity)

    この中で探索型と複合型はコンピューターが得意とする分野です。”The Creativity Code”で扱うテーマはコンピューターが苦手とする変容型の創造性です。立花ハジメの「信用ベータ」のようにオリジナル(立花ハジメのスタイル)を模したアルゴリズムは昔からあったわけですが、人間が介在せずにコンピューターだけで自律的にアートが作れるかという話。

    The Creative Mind: Myths and Mechanisms

    The Creative Mind: Myths and Mechanisms

    そもそも、アートとはなんでしょうか?マルセル・デュシャンの『』、ジョン・ケージの『4分33秒』が人工知能からアートとして提示された時、私たちは「アート」だと認識できるのでしょうか。ボクはまったく自信が無いです。『銀河ヒッチハイク・ガイド』で世界で二番目に賢いコンピューターのディープ・ソートは「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」は「42」とはじき出しました。42?え?なにそれ?つまり、アートとは受け手の問題でもあるのです。人工知能のアートはフェイクニュースのようなフェイクアートなのか。人間とは独立した意識が生み出した真にユニークなアートなのか。

    銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

    銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

    アートとは自分以外の意識に対するの問いかけでもあります。一種のコミュニケーションですね。それは自発的な表現の欲求です。開発者がアートを作るようにプログラムしたものであれば、それは開発者が生み出したアートであり、人工知能が生み出したアートとは言えないですよね。

    この本はどんな人にオススメか

    アートに興味がある人にはオススメです。パウル・クレーの『教育スケッチブック』と敵対的生成ネットワーク(GAN)の比較はとても刺激的です。創造と観察のぶつかり合い。

    教育スケッチブック (新装版 バウハウス叢書)

    教育スケッチブック (新装版 バウハウス叢書)

    • 作者: パウル・クレー,利光功
    • 出版社/メーカー: 中央公論美術出版
    • 発売日: 2019/08/16
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
    • この商品を含むブログを見る

    ヴィルヘルム・ヴントのヴント曲線(不快と快感の境界線を表す曲線)やゲシュタルト心理学。さらに敵対的生成ネットワーク(GAN)を超える敵対的創造ネットワーク(CAN)など人工知能とアートに関する最前線が紹介されています。

    個人的にはなんですが、まずは人間が人工知能を使いこなして新しいアートの地平を広げるのが次のステップなんだと思います。チェスがそうなっていますよね。人工知能がどれだけ面白いものを作ったとしても、それは人工知能を作った人間の産物なんですよ。現在の人工知能は人工意識を持っていないですから。真の意味で人工知能がアートを自分の意思で生み出すのは、シンギュラリティーを迎えて、人工意識を持つ人工知能が生まれてからになるでしょうね。

    そして、それはブライアン・イーノのシーニアス(個人ではなく集合的な天才。シーンから生まれるジーニアスという意味)のようなモノになるんでしょうね。

  • 書評|知的好奇心を刺激する触媒としての人工知能|”Possible Minds” by John Brockman

    書評|知的好奇心を刺激する触媒としての人工知能|”Possible Minds” by John Brockman

    宇宙旅行に空飛ぶ自動車。昔から未来予想は夢がありますが、実現するかどうかはわかりません。ある種の思考実験ですよね。人口知能がどこまで人間に近づくのか、人間を超える存在になるのか。人工知能に関する議論も同じです。昔の少年雑誌の未来予想と現在の人口知能に関する議論は、「こうなったらいいな」な夢の話か、「科学的に考えるとこうなるはずだ」な論理なのか手法の違いですね。

    当然ながら人工知能に関する未来予想はたくさん出版されているのですが、今回紹介するのはエッジ財団(Edge Foundation)の創設者であるジョン・ブロックマンがまとめた”Possible Minds”です。

    POSSIBLE MINDS

    POSSIBLE MINDS

    エッジ財団は1981年からはじまったニューヨークのリアリティー・クラブ(The Reality Club)と言う知識人が集まるサロン(日本のインフルエンサーが集金マシンとして運営している「オンラインサロン」とは全く性質が違います)からはじまっています。この集まりにはダニエル・カーネマンやスティーブン・ピンカーだけでなく、アイザック・アシモフなども参加していたようです。

    ジョン・ブロックマンのイントロダクションでは前衛音楽家のジョン・ケージなどのプロジェクトの振り返りなどもあり著者の幅広さを予感させます。実際にジューディア・パールのようなAI畑の人たちだけでなく、セス・ロイドやデイヴィッド・ドイッチュのような量子コンピューターの人たちやスティーブン・ピンカーのような心理学者、ダニエル・デネットのような哲学者まで寄稿しています。面子はマーティン・フォードが編集した”Architects of Intelligence”と被る人たちも多いのですが、こちらは業界人が集まったので幅の広さはないですね。

    Architects of Intelligence: The truth about AI from the people building it (English Edition)

    Architects of Intelligence: The truth about AI from the people building it (English Edition)

     

    内容的にはとても刺激的です。実はスチーム・パンク小説が好きで、アナリティカル・エンジンとか大好物です。サイバネティックから振り返っているので、ノーバート・ウィーナーだけでなく、アラン・チューリングフォン・ノイマンなんてどの記事でもよく出てきます。科学歴史家ジョージ・ダイソンのアナログコンピューターとしての人工知能とかすごく納得してしまいました。

    ノーベル賞を受賞した物理学者のフランク・ウィルチェックも物理学の観点から人間は意識を人工的に作れると主張します。そもそも人間の意識はモノから生まれる。人間はモノを作れる。故に、人間は意識を作れる。現時点で人間の知能は人工知能を上回るが、それは一時的なリードであって、潜在的に人工知能は人間の知能を上回ると言います。

    この本はどんな人にオススメか

    知的刺激を求めている人にはオススメです。人工知能をテーマとしていますが、それを様々な方向で知的に切り込んでいく様は本当に刺激的です。日本の「知識人」の方々は感覚で話をするのでポエム的な未来予想が得意なのですが、ここで集まっている知識人は科学的なアプローチなので、その知識と論理が強力です。当たるも八卦、当たらぬも八卦は変わらないのですが、実現には明確な意思と方向性、さらに科学的なアプローチが必要です。実現は100年後なのかもしれませんが。

    無神論者でモノから生まれる意識の支持者で量子コンピューターのパイオニアであるデイヴィッド・ドイッチュが世代を超えた情報伝達であるミームやトランスミッション・フィデリティーに言及するのは、人工であろうが天然であろうが、それが知識や文明そのものだからなんですよね。そして、それこそがアナログコンピューターであると。

  • 書評|天才は回り道をしながら遅れてやってくる|”Range” by David Epstein

    書評|天才は回り道をしながら遅れてやってくる|”Range” by David Epstein

    幼年期からの英才教育。タイガー・ウッズやチェスのポルガー姉妹のように特定の分野を小さなころから徹底的にやりこんだ天才たちを例にとって、専門教育に取り組むケースがあるようです。さらに、マルコム・グラッドウェルの『天才! 成功する人々の法則(原題:Outliers)』(本当にダサい日本語訳タイトルだ!)で有名になった一万時間の法則(何かに秀でた人は、その分野で一万時間を使っている)も相まって、なるべく専門分野を決めて、それに集中する傾向に拍車がかかりました。その傾向に異議を唱え、むしろ幅広いスキルを手に入れたほうが何かを成し遂げる可能性が高いと唱えているのが今回紹介する書籍”Range”です。

    この本を書いたデヴィッド・エプスタインはローレンス・レッシグの”America, Compromised”のなかで少し触れられていたProPublicaで調査報道を務める記者ですが、もともとは雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』などスポーツ記者でした。本書のタイトルである”Range”は「幅広さ」を意味しますが、彼自身も幅広いキャリアを持っているようです。

    Range: Why Generalists Triumph in a Specialized World (English Edition)

    Range: Why Generalists Triumph in a Specialized World (English Edition)

    マルコム・グラッドウェルが紹介した一万時間ルールでは、専門的なことに時間を費やすと、その分野で頭角を現す可能性が高いと言っています。しかし、幼少期にはサンプリングピリオドという何でもやる期間が重要だとわかってきているそうです。代表的な例はW杯で優勝した2014年ドイツのサッカーチームで、22歳以降に専門的な組織サッカートレーニングを受けた選手が多かったそうです。

    このほかにもトム・ブレイディ(フットボールの前に野球でドラフト入り、野球、フットボール、バスケットボール、空手のどれを専門にするか悩んでいた)ニック・フォールズ(大学までフットボールとバスケットボールのどちらを選ぶか悩んでいた)、エステル・レデツカ(スキーとスノーボードの両方で金メダル。その前はビーチバレーボールとウィンドサーフィン)やワシル・ロマチェンコ(様々なスポーツをやって、最終的にボクサーになる)などの例を挙げています。さすがに元スポーツ記者!

    ポリマスの時代

    この傾向はスポーツに限らず、ビジネスでも同じだそうです。マーク・ザッカーバーグは「若い人たちは単純によりスマートだ」といいましたが、実際には50代の起業家は30代の企業かと比べて2倍の成功している実績があり、急成長しているスタートアップの創業者の平均年齢は45歳なのだそうです(ちなみに、日本は43歳だそうです)。ゆっくりと学ぶのが最も効果的な学習なのだそうです。それは中年でも同じで、早ければいいということではないとのこと。日本のおじさんたちも頑張りましょう。

    前回に紹介したイントラヴァートもそうですが、英語圏でここ最近注目されている単語に博学者(ポリマス:Polymath)があります。ポリマスの代表選手がレオナルド・ダ・ヴィンチですね。最近だとネイサン・ミルボルトなんかまさにポリマスのイメージです。ポリマスは知識だけじゃなくて、技量も熟練している人なので、現代ではスポーツ選手なども含めていいのだと思います。大谷翔平の二刀流も野球に限定してますがポリマスですね。

    AIに駆逐される狭い専門性とAIと補完関係にある広い専門性

    タイガー・ウッズやポルガー姉妹が若い時期からの専門トレーニングの成功例とされています。これはパターンがあるもの(ゴルフ、チェス、消火作業)は経験がスキルと比例するからです。しかし、反復的なパターンが存在するものは例外であって、多くのスキルはパターンがないために経験とスキルが比例しません。

    反復するパターンがあることはAIが得意分野だったりもします。AIがチェスで人間に勝てるのは反復するパターンがあるためです。エキスパートがあるカタマリをパターンとして学習します。カタマリの方がバラバラより覚えやすいからです。たとえば、20の単語を覚える場合、20の単語から構成される文章を覚えるほうが、ランダムな単語を個別に20個を覚えるより遥かに簡単です。

    反復したパターンのレンジが広いほど、人間が得意分野となり、反復したパターンのレンジが狭いほどAIが得意分野となります。ガン治療のような答えのない(つまりパターンがわかっていない)研究分野はAIは手が出ませんGoogleも流行り風邪のトレンド分析をあきらめました。「高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要する」というモラベックのパラドックスです。

    この本はどんな人にオススメか

    最初の方はすごく面白いのですが、途中からかなり中だるみします。あまりにも冗長なので、途中でやめてしまいました。それでも、最初の出だしはその欠点を補ってあまりある魅力があります。ボク自身も若い頃から専門分野を極めた方がいいし、若ければ若いほど輝くものだと思っていました。

    それでもボクが学ぶことを辞めないのは、実際に50歳を過ぎた今でも知識は増えていると感じるし、ギターも弾けるようになったし、自分が作る新しいオリジナルカレーは美味しいし、新しいインスピレーションが湧いてくるからです。少し落ち着いたら今度はロングボードやろうと思ってます。まあ、若い人にはかなわないかもしれないけど、自分自身が実感できているんだからいいやと。

    でも、こうやって研究結果を見せられると、なるほど、いつから学びはじめてもいいし、ゆっくりやればいいんだと励みになります。そういった意味で、ボクみたいなおじさんが読むと元気になると思います。

  • 書評|GoogleやFacebookをみる新しいレンズとしての監視資本主義|”The Age of Surveillance Capitalism” by Shoshana Zuboff

    書評|GoogleやFacebookをみる新しいレンズとしての監視資本主義|”The Age of Surveillance Capitalism” by Shoshana Zuboff

    ここ数年、AIの危険性やGAFAの過度の影響を警戒する書籍がベストセラーに増えてきました。例えばキャシー・オニールによる”Weapons of Math Destruction“(邦題『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』)は現場で実際にプロジェクトに携わっていたデータサイエンティストからの視点での警告でした。

    しかし、やはりトランプ政権の誕生やイギリスのEU離脱にまで影響を及ぼしたと言われるケンブリッジ・アナリティカのFacebookのデータ不正流用事件は大きな衝撃でした。テクノロジーを民主主義の敵として捉えたジェイミー・バートレットの”The People vs Tech“(邦題『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』)のような民主主義との対立構造はその影響下にあるでしょう。

    しかし、こういった状況をどう捉えたらいいのでしょうか?これまで私たちが経験しなかった状況です。今回紹介するショシャナ・ズボフの新著”The Age of Surveillance Capitalism“はいま起きている時代のシフトを「監視資本主義」として捉え、GoogleやFacebookをその先鋒として位置づけ、新しい見方を提供しています。今年ははじまったばかりですが、おそらく今年のベスト10に入ることは確実の力作です。

    監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い

    監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い

    • 作者:ショシャナ・ズボフ
    • 東洋経済新報社

    Amazon

    The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

    The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

    資本主義の三段階のモダン化

    ショシャナ・ズボフによれば、資本主義はこれまで三段階のモダン化が実現されています。最初のモダン化はFordによる大量生産。第二段階はAppleによるデジタル化。日本語的に言えば「モノからコトへ」が第二段階でした。そして、現在進行中なのが第三段階で、これがGoogleからはじまった「監視資本主義」です。

    • 最初のモダン化でFordは生産で革命を起こしました。
    • 次のモダン化でAppleはiPodとiTunesで物理的な制約から資本主義を解放しました。
    • 三段階目のモダン化でGoogleは抽出に革命を起こしました。

    抽出とは原材料の抽出です。そして監視資本主義における原材料とは人の行動データです。そして、抽出したデータを予測サービスに組み込み、さらにこれらのデータは市場で売買されます。さらに、ユーザーの行動にまで影響を与えます。つまり、行動データの抽出プロセスの自動化だけでなく、行動自体に影響を与えて自動化しようとします。

    監視資本主義のはじまりとしてのGoogle

    Googleで行動データはあまり利用されていませんでした。その価値に最初に気づいたのはアニット・パテルだと言われています。アニットは当時は利用されていなかったクリックパターンなどの行動データに着目し、検索結果を学習し、サービス改善できることに気づきました。

    この段階では、個人の行動データはサービス改善に役立てるだけ、監視資本主義ではありませんでした。行動データの価値はサービスに再投資されていたのです。実際に当時のGoogleはマネタイズの道を必死に探している最中でした。最初のマネタイズはYahooや日本のBiglobeとのパートナーシップやスポンサーキーワード広告でしたが、ドットコムバブルが弾けたため、投資家からのマネタイズへの圧力がさらに高まりました。

    そして、Googleは行動データがサービスの改善だけでなく、利益の改善に役立つことを発見しました。その後はみんなのよく知るGoogleです。Googleストリートビューではじまったプライバシー侵害が四つの段階を経て世の中の批判と規制を回避する術を見つけました。無線データのハッキングとかマジでタチ悪いですけどね。

    第一段階:侵入(incursion)

    第二段階:習慣(habituation)

    第三段階:適応(adaptation)

    第四段階:回避(redirection)

    このGoogleのやり方はのちにFacebookなど他の監視資本主義を代表する企業に採用されるようになります。

    失われた機会

    通信品位法230条は監視資本主義が生まれる前に成立した法律です。この法律により、多くのプラットフォーマーはコンテンツのパブリッシャーではなく、図書館のような仲介者だと位置付けられました。

    しかし、プライバシーの侵害による懸念が高まる中、その見直しの動きがはじまった矢先に起こったのが911です。プライバシーよりセキュリティが政治的な優先事項となり、GoogleとCIAなど政府機関など蜜月がはじまります。その代表例がIn-Q-Telですね。スノーデンの告発で明るみに出たNSAのプリズムのような監視プログラムなどもGoogleやFacebookをはじめとする監視資本主義の代表企業の協力があってこそです。

    GoogleやFacebookもロビー活動や献金を通じて、政府の方向が規制に向かないように投資を増やしていきました。本来規制する側の政府を抑えられてしまっては、歯止めを利かせるのはなかなか難しくなってきます。

    不可避主義の嘘

    監視資本主義の企業の常套句に「技術の進歩のためには不可避」という不可避主義があります。利便性を享受したいなら、プライバシーに関してある程度譲歩する必要があるという主張です。

    これは日本の識者からもよく聞かれる主張ですよね。利便性の向上のためなら自ら積極的に行動データを提供したい。もちろん、そういう人たちもいますし、そういう人たちは積極的にデータを提供して利便性を享受すればいい。しかし、そうでない人もいるにもかかわらず、その人たちに選択する権利がないことが「不可避主義」の問題です。

    忘れられる権利を認めることはプラットフォーム企業から人々が権利を勝ち取った事例の一つとなりました。そして、GoogleやFacebookのような行動データを集めてそれを売買することで商売にしている監視資本主義の代表的な企業が主張する「技術の進歩のためには不可避」は真実ではなかったことがわかった事例でもありました。人々は技術の権利を失ったのではなく、民主主義のルールに沿った手続きを踏めば自らの権利を主張して行使できることがわかりました。

    GDPRやクッキー法もそうですが、欧州を中心としてこのような監視資本主義に対する規制が強化されてきています。たとえば、Android端末にGoogleアプリをプレインストールを強要するのは独禁法違反ということで日本円にして約5700億円の制裁金が課せられる判決が言い渡されました。もちろん、欧州にはアメリカ企業の独占に対する政治的な意図もあるでしょう。しかし、大切なのはプラットフォーム企業だからと言って人間が持つ基本的な権利を「技術的に不可避」だという理由で放棄することを強要することはできないということです。

    人質戦略と読む気のしないくらい長く複雑な利用許諾

    「そういうものだから仕方ない」という不可避主義のほかに監視資本主義の企業が使う手口が人質戦略です。ユーザーの位置を示すロケーションデータやCookieなどの行動データの取得を無効にした場合、ほとんどの機能を使えなくすることが多い。これは不可避論にも通じるものがあります。もちろん、そもそも使いたい機能なのか?というのはありますよ。サムソンビジオのスマートテレビから会話を録音してニュアンスに売っているとか、バービー人形の家から子供の行動データを取得するとか実際に行われています。

    でも、そのような商品を購入としたとして、すべての価値を享受するには行動データのトラッキングを受け入れなければいけないというのはいかがなものかということです。

    また、そのような行動データが取得される場合は本来ならユーザーの同意が必要になるのですが、これを規定する利用許諾やプライバシー規定が読む気がなくなるくらい長く、理解しにくいという問題もあります。悪く言えばけむに巻くような戦略がとられていて、それが認められてしまっているというのが現在です。

    この本はどんな人におすすめか

    特に事情通を自任する方には読んでいただきたい書籍です。ひょっとしたらもうすでに理解されているかもしれませんが、「利便性のためには多少のプライバシーは犠牲にすべき」というのが一方的な主張だという知識はアップデートしたほうがいいでしょう。それを選択する権利はGoogleやFacebookではなく、人間にあるという考え方が広まりつつあります。

  • 世界をリードする中国のAI企業:アイフライテック

    世界をリードする中国のAI企業:アイフライテック

    MIT Technology Reviewが2017年に発表した最もスマートな企業には多くの中国企業がランクインしました。ちなみにアメリカ企業がトップのNvidiaを含む最多で31社。中国企業は7社で2位でした。残念ながら日本企業はランクインしていません。

    そして、中国企業の中でテンセントを抑えてトップになったのはアイフライテック(iFlytek|科大讯飞)でした。世界では6位で、アップルやフェイスブックより上位となりました。*1

    アイフライテックは日本ではあまり馴染みがないかもしれません。しかし、創業は1999年で、すでに20年近い歴史があります。

    大学時代:若く頭角を表す

    アイフライテックはリュウ・チンフェン(刘庆峰)と中国科学技术大学(USTC)で出会った5人の共同創業者によって設立されました。

    大学時代のリュウ・チンフェンは中国語の言語解析の分野において飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍をします。

    リュウ・チンフェンは中国のマイクロソフト・リサーチ時代のカイ=フー・リーに社員としてボイスAIに従事するよう誘われていましたが、それを固辞して1999年にアイフライテックを創業します。1992年に中国科技大学と国家人工知能研究開発センター(国家智能计算机研究开发中心)が共同で設立した「人間とコンピューターとのコミュニケーションに関する実験室(人机语音通信实验室)」に参加して以来、人工知能による人間とコンピューターの研究に従事するようになります。そして、様々な賞を受賞して、スカラシップを獲得します。

    起業当時:研究とビジネスのギャップに苦しむ

    アイフライテックは当初はコンシューマー向けの商品を開発していました。2000年に最初のプロダクトである「チェンヤン2000(畅言2000)」を発表します。これは音声認識ソフトで、パソコンで音声を取り込んでテキストに変換するというものでした。価格は2000人民元(現在のレートの日本円で約33000円)で、個人が買うには非常に高価でした。

    リュウ・チンフェンは技術者なので経営には興味がなく、CEOのポジションもどちらかといえば消極的に受け入れていました。ビジネス的にも経営的にもうまくいかず、お金はみるみるうちに無くなっていきます。人工知能からピボットすることも検討され、不動産業に変えたほうがいいのではないかという意見が出たくらいでした。

    飛躍:出会いとピボット

    財政面でのアイフライテックの危機を救ったのは中国のベンチャーキャピタルのレジェンドキャピタル(君联资本)とレノボの創業者でリュー・チュアンジー(柳传志)でした。

    ビジネスもB2CからB2Bに転換しました。ファーウェイやレノボで利用されている音声認識機能はアイフライテックが技術提供をしているものです。

    中国政府はAI大国となるための三カ年計画「促进新一代人工智能产业发展三年行动计划」を発表しましたが、その一翼を担うのがアイフライテックです。医療分野がテンセント、スマートシティーがアリババ、クルマの自動運転がバイドゥで音声認識がアイフライテックの担当分野です。中国政府のお墨付き企業というわけです。

    オバマ前大統領やトランプ大統領のスピーチではアイフライテックの技術を使った英語→中国語の音声翻訳が利用されました。中国に要人が来た時にスピーチをするときにアイフライテックの技術を使うのは定番になってきましたね。

    www.youtube.com

    実は人の手を借りているのではないか疑惑

    中国はライバル同士で足の引っ張り合いをすることで有名です。「生き馬の目を抜く」は中国のスタートアップシーンを表す表現としてとてもふさわしい気がします。飛ぶ鳥を落とす勢いのアイフライテックも例外ではなく、様々な批判にさらされます。最近ではAIだけではなく人の手も借りているのではないかという疑惑です。

    ベル・ワンが知乎に投稿した公開書簡によると、彼はアイフライテックにやとわれた同時通訳チームの一員だったそうです。同時通訳をAIでやるってスゲーと思っていたのですが、人の助けがあったのなら納得。アメリカ大統領などの要人のスピーチとなればなおのことでしょう。

    これが真実なのかライバルによる罠なのかはわからないですが。

    参考文献

    我有嘉宾之对话刘庆峰:中国最聪明公司的DNA-脱口秀-高清正版视频在线观看–爱奇艺

    科大讯飞刘庆峰9年制造3个亿万富翁 中国科学技术大学新闻网

    科大讯飞:期待语音市场高成长还要熬两三年 | 客户世界

    刘庆峰_百度百科

    畅言2000让你“畅所欲言”

    科大讯飞,你的AI同传操(qi)作(zha)能更风骚一点吗 – 知乎

    iFlytek: China’s Nuance and Siri?

    iFlytek’s journey from the bottom to the top of China’s voice AI industry · TechNode

     

    *1:ただ、WebサイトにAdobe Flashを使っているのが非常にイケてないのですが……

  • 書評|OMOの生みの親が至るAIと愛の境地|”AI Superpowers” by Kai-Fu Lee

    書評|OMOの生みの親が至るAIと愛の境地|”AI Superpowers” by Kai-Fu Lee

    頭のいい人はフレームワークで考えて整理整頓するのが非常に上手です。今回紹介する”AI Superpowers”の著者であるカイ=フー・リーもその例に漏れず、AIを中国とシリコンバレーで比較するという入り組んだ題材をうまく整理しています。OMOというキーワードが日本でも話題になりつつありますが、その考え方の生みの親です。

    また、自身のガン闘病生活を通じて「何が大切なのか」を改めて学んだ視線は無味乾燥なロジカルだけの分析とは一線を画するものです。今のところ2018年に読んだ本の中ではベストですね。

    AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order

    AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order

     

    この本は大きく分けて二つに分けることができます。前半はAIに必要な要素を一つづつ検証し、中国がいかにシリコンバレーに対して競争力があるかを分析しています。

    AIの発展に必要な4つの要素

    まず、大前提として、AIはすでにブレイクスルーはある程度出尽くして、いかに実行していくかという段階に入っているとしています。カイ=フー・リーの見立てでは次のブレイクスルーが起きるまで数十年かかるそうです。ブレイクスルーが必要な段階では基礎研究が強い欧米が強いが、既存のアイデアを実行に移す場合は中国に利があると分析しています。

    そして、実行の段階において、カイ=フー・リーはAIの発展には以下の四つの要素が必要だと説きます。

    • 起業家
    • データ
    • エンジニアリング
    • 政府のサポート

    中国の起業家

    まずは起業家。カタパルトスープレックス でも中国のスタートアップをたくさん紹介してきました。この本でもトウティアオ(头条)シャオミー(小米)メイトゥアン(美团)がどのように模倣からオリジナルにたどり着き、激しい競争を勝ち抜いてきたかを描いています。シリコンバレーがテクノユートピアンで理想主義だとしたら、中国はテクノユータリタリアンで実利主義だとします。

    理想主義はオリジナルのアイデアを大切にして、模倣は悪とします。これがシリコンバレー流。実利主義は競争に勝つことが大切で、模倣をよしとします。トウティアオもメイトゥアンも多くの模倣者を蹴散らして今の地位があるわけですものね。

    データは中国が有利

    アリババやテンセントの例を見てもわかるように、中国ではデータが急速に蓄積され、AIに絶えず供給されています。アメリカのプラットフォーマーはGAFA、中国のプラットフォーマーはBATと呼ばれています。

    カイ=フー・リーはグーグル、アマゾン、フェイスブック、(アップルではなく)マイクロソフトにアリバババイドゥテンセントの7社をAIの7人の巨人と呼んでいます。この巨人たちが発電所と送電線のようなグリッドアプローチだとしたら、スタートアップは乾電池のようなバッテリーアプローチだとしています。

    発電所と乾電池のどちらのアプローチが最終的に勝利するのかはわかりません。大量のデータでより一般的なAIを実現するのか、よりニッチなデータである分野に特化したAIを実現するのか。どちらのアプローチも正しい可能性があります。

    この辺くらいまではカタパルトスープレックス の中国系の記事を読んでいる人にとってはあまり新しい発見はないかもしれません。しかし、カイ=フー・リーの真骨頂はここからです。

    OMOとAIの4段階の進化

    日本でもOMO(Online Merge Offline)が話題になっていますが、このコンセプトはカイ=フー・リーが打ち出したものです。これまでのO2O(Online to Offline)と比べ、デジタルとリアルの境界線はOMOでは非常に曖昧になります。

    OMOを理解するためにはAIの4段階の進化を理解する必要があります。

    • インターネットAI
    • ビジネスAI
    • パーセプションAI
    • オートノマスAI

    インターネットAIとはGoogleの検索語のサジェスチョンやAmazonのレコメンデーションを指します。インターネット企業の源泉ですね。トウティアオのAI記者やフェイクニュースの検知もこの分類に含まれます。

    ビジネスAIとはAIの分析を実際のビジネスに結びつけることを指します。例えば、保険のリスク評価や銀行の貸し出しのための与信などです。AlipayやWeChat Payによる信用経済はどはここに当てはまります。

    ここまでがO2Oの世界です。

    パーセプションAIからOMOの実現が可能になります。パーセプションとは認知ですね。視覚や聴覚、味覚などです。センサー技術で取得した画像や音声などのデータをAIが高度に理解することによりパーセプションAIが実現されます。

    Amazon Goはそのいい例ですね。Amazon Goなどのレジなし店舗はこれまでのRFIDでのモノの管理ではなく、カメラによる画像データをAIで解析することにより、モノだけでなくヒトも認識します。リアルの世界をセンサーによって視覚や聴覚を持ったAIが理解することによってOMOが実現されます。

    オートノマスAIは自律化するAIです。代表例は自動運転のクルマですね。この自律化はクルマだけにとどまりません。例えば工場。工場はかなり高度に「自動化」されていますが「自律化」はされていません。現在はAIが需要を予測して自律的に生産計画を変更してラインを組み立てたりはできていません。

    また、いちごが熟して収穫に最適かどうかを判断は人の目で判断する必要がありますが、これをセンサーで感知して自律的にいちごを収穫するTrapticのようなスタートアップも出はじめています。

    人とAIの共存

    前半のロジカルなカイ=フー・リーも素晴らしいのですが、ボクは後半の人間らしい部分に特に引き込まれました。前半は中国とシリコンバレーを比べて中国の優位性を熱心に説いています。そのロジックは理解できるものの、勝ち負けで分けるようなものでもないだろうと思ってしまう部分もあります。しかし、後半は中国とかシリコンバレーとかではなく、世界のどこの国も果たすことのできる役割があると。え?本当に前半と後半は別人間が書いてる?というくらい。

    前半は台湾で生まれ、アメリカで育ち、アップル、マイクロソフト、グーグルとアメリカ企業の出世競争を勝ち抜いてきたアジア人特有のアグレッシブさが前半ににじみ出ています。アメリカ企業がいかにアジア市場を理解しようとせず、アメリカ流こそグローバル流として押し付けてきたことに反感を覚える気持ちも、同じ環境にいたものとして理解できます。

    しかし、ガンと診断され余命僅かと宣告されてから彼の物事の見方が大きく変わります。カイ=フー・リーはいわゆる「仕事人間」でした。長男誕生の時も当時のアップルCEOとのジョン・スカリーへのプレゼンが気になって仕方なかった。付き合う人間も「自分にとっての価値」を考えて選別していました。仕事の効率こそが善。機械のような考え方をしていたそうです。

    後半は前半とかなりトーンが変わります。アグレッシブで競争が大好きな面は薄れ、人間として何が大切なのか、そのためにどうやったらAIと共存できるのかを様々な側面から検討します。もちろん、現時点で答えはありません。しかし、AIと人間の違いは「愛すること、愛されること」の喜びだという慧眼はガン闘病生活を経て得るに至った境地ですよね。

  • インターネットのビジネス再入門|後編:消えるデジタルとリアルの境界線

    インターネットのビジネス再入門|後編:消えるデジタルとリアルの境界線

    これまでのおさらい

    第一回の『インターネットの広告をちゃんと理解する』ではインターネットのビジネスの側面を支える広告について改めて振り返りました。インターネットが「道」であれば、情報やサービスは「クルマ」、そして広告はその「燃料」であり「石油」だと解説しました。そして、お金を対価として支払う代わりに、インターネットでは個人情報とサービスを対価交換していることを確認しました。

    第二回の『インターネットの「石油」を規制する動き』では個人情報の取得が制限されつつあることを解説しました。個人情報の取得には二種類あって、一つはFacebookなどIDでの取得、二つ目がCookieによる行動データの取得でした。ケンブリッジ・アナリティカによるFacebookデータ流出事件は広告が悪用されるダークアドの危険性を世に知らしめるものでした。

    今回はデジタルとリアルの境界線が広告の世界でも曖昧になっていくという話です。Buzzword的にはOMO(Online Merge Offline)ですね。規制は続くでしょうが、デジタルビジネスの勢いはそう簡単に止まることはないですし、拡大は続きます。(だからこそ規制が大事なんですが)

    なくなるデジタルとリアルの境界線:プログラマティック

    デジタル広告とリアル広告の最大の違いは個人の嗜好に対応できるかどうかです。個人の嗜好に対応するためにIDやCookie情報が必要なんですものね。リアル広告は個人の嗜好には対応できませんが、不特定多数に一気に配信するためにマス広告と呼ばれたりもします。マスメディアとデジタルメディアの違いと一緒ですね。

    リアル広告をデジタル化するキーワードがプログラマティックです。

    プログラマティックテレビ

    テレビの広告はデジタルでしょうか、リアルでしょうか?昔ながらのテレビ広告はデジタルではありませんでした。デジタルではないので、計測が非常に難しかった。だからニールセンなどが特別な機器を選ばれた世帯に取り付けてもらってサンプル調査をしています。これが、いわゆる「視聴率」です。

    テレビの広告はインターネットのデジタル広告と違って、特定の視聴者の好みに合わせて特定のCMを流すことができません。同じ番組を見ていれば同じCMを見ています。これだとCMの枠は決まってしまっていて、多額の予算を持った企業しかテレビでCMを流すことができません。この問題を解決して、視聴者の嗜好に合わせて様々なCMを流せるようになる仕組みが「プログラマティック広告」です。

    テレビCMを動画広告と考えると、YouTubeの広告とあまり変わりません。Webサイトに埋め込まれた動画広告も同じです。プログラマティックではテレビが広告チャネルとして加えることができるようになります。海外ではプログラマティックの流れはかなり進んでいますが、日本のテレビ局はまだ対応できていません。それでもテレビを含む動画媒体は全てプログラマティックになるでしょう。その時にデジタルとリアルの境界線は無くなります。

    プログラマティックデジタル野外広告(DOOH)

    ブリティッシュ航空がリアルとデジタルを融合した野外広告”Look Ups”を設置して話題になりました。これは実際に見てもらうのが早いでしょう。

    ブリティッシュ航空の飛行機が広告を横切ると、子供が立ち上がり飛行機を指さします。そして、その飛行機のフライト番号までわかります。これがDOOH(Digital Out-of-home|デジタル野外広告)の代表例です。

    このようなデジタル野外広告がテレビと同様にプログラマティック(プログラマティックDOOH)になると個人の嗜好に合わせた野外広告が実現されます。例えば、目の前の人の嗜好に合わせたデジタルショーケースなどです。

  • インターネットのビジネス再入門|前編:インターネットの広告をちゃんと理解する

    インターネットのビジネス再入門|前編:インターネットの広告をちゃんと理解する

    インターネットが道路だとしたら、広告は燃料です。GoogleもFacebookもYouTubeも広告がなければ存在できません。インターネットはマグロのようなもので、動いていないと死んでしまいます。それを動かしているのが広告です。この意味においてAppleやAmazonのようなモノやサービスも広告に依存しています。インターネットという道路に交通量(トラフィック)がなければAppleもAmazonも何も売れないからです。

    インターネットのトラフィックは大きく分ければ以下の四つに分けることができます。

    1. 検索
    2. ソーシャル
    3. 広告
    4. 直接リンク

    1) 検索と2) ソーシャルは広告収入があることが前提でビジネスで提供されています。つまり、1から3まで広告なんです。インターネットという「道路」をコンテンツやサービスという「クルマ」が通るには広告という「燃料」が直接的にも間接的にも必要です。これはモバイルでもほぼ変わりません。App Storeが加わったくらいなものです。

    インターネットは常に脚光を浴びてイノベーションの象徴とされてきましたが、広告は日陰者の邪魔者で悪いニュースがほとんどでした。しかしながら、広告はインターネットの根幹の一部ですので、改めてきちんと理解しておきたいところです。

    電通、デジタル広告で”不適切取引”の裏事情 | 東洋経済オンライン

    オンライン広告の歴史

    最初のオンライン広告:バナー広告

    最初のオンライン広告はアメリカの雑誌Wiredのオンライン版であるHotWiredのローンチのために1994年10月27日に掲載されたバナー広告でした。最初に人気の出たブラウザーのMosaicがリリースされたのが1993年の1月23日ですから、ブラウザー登場から2年弱で最初のオンライン広告が生まれたことになります。

    最初のオンライン広告(クレジット:Wired)

    当時にはまだクリックごとにチャージされるPay Per Clickはなく、バナー広告の設置期間によって広告の価格が決まっていました。当時のオンライン広告は雑誌の延長線にあって、限られた紙面をどれくらい占有するかが価値の測り方だったんですね。

    検索の誕生:GoogleのAdWords

    一番はじめに検索連動型広告を発売したのはOpen Textでした。1996年のことです。しかし、一般的に検索連動型広告を世に広めたのはOvertureでしょう。GoTo.com(Overtureの最初の名前。のちにYahoo!に買収される)が検索連動型広告を発売したのが1998年です。Overtureの検索連動型広告はMSNやYahoo!といった当時の人気ポータルサイトに採用されました。そして、スーザン・ウォシッキーのガレージでGoogleが産声をあげたのが1998年9月4日です。最初のオンライン広告から4年が経過しています。

    インターネットのビジネスにとって重要なのはどれだけのコンテンツやサービスがその道を通るか。つまり交通量(トラフィック)が重要な要素となります。Googleの検索の仕組みであるPageRankは優れいていたので、結果的にオンライン広告の仕組みであるAdWordsはより多くの燃料を生み出すことになりました。

    Googleがどうやって会社を運営する資金を稼いでいるかといえば、この広告収入です。広告収入がなければGoogleという企業自体存在することができません。2017年度のGoogleの売り上げ(2017 annual report)は1110億ドル(約12兆4700億円)ですが、広告売り上げは約86%の953億ドル(約10兆円)です。5年前くらいは95%以上が広告収入だったので、これでも比率としてはだいぶ下がってきましたが、まだまだ大きな割合を占めています。

    ソーシャルの誕生:Facebook Flyer

    ソーシャルといえばFacebookですね。Facebookの売り上げの98%は広告です(2017 annual report)。Facebookは2004年の創業時から広告をビジネスモデルとしてきました。ただ、初期のFacebookは友達のニュースフィードを見ることはできませんので、見た目は随分と違ったものでした。

    Facebookの初期の広告(クレジット:collegewebeditor.com)

    その頃のFacebookの広告がFacebook Flyerでした。その間にニュースフィード(2006年)を発表したり、ソーシャルグラフをベースにしてFarmVilleのようなサードパーティーのアプリケーションにプラットフォームを解放(2007年)したり、Facebook Connect(2008年)で外のサービスと繋がるようにしたり、「いいね」(2008年)を発表してソーシャルプラットフォームとして磨きをかけてきました。2006年からFacebookがMySpaceを追い抜いたのは2009年の三年間がFacebookが一番輝いていた頃ですね。過去形にして申し訳ないですが。

    ターゲット広告:Cookieとソーシャルグラフ

    勢いは徐々に弱まりつつあるものの、ソーシャルは検索とともにトラフィックの二大巨頭です。Shareholicの調査データによると2016年まではソーシャルのトラフィックが検索を上回っていました。

    検索とソーシャルのトラフィックトレンド(クレジット:Shareholic)

    広告のプラットフォームとして考えた時に、交通量(トラフィック)以外にもう一つ大切なことがあります。それがターゲット情報です。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」ではなく、あるターゲットとなるマトを絞って広告を表示させたいですよね。インターネットのビジネスを考える上でトラフィックと並んで大切な概念がコンバージョンです。

    例えば、100回広告を出して1個売れたとします。この場合、100のトラフィックで1%のコンバージョンということになります。これが20回広告を出して、同じく1個売れたとします。この場合は20のトラフィックで5%のコンバージョンということになります。結果が同じなら5%のコンバージョンの方が効率的です。

    このコンバージョンを高める方法のひとつがターゲット広告です。

    ソーシャルメディアの場合

    ソーシャルメディアの場合は、かなり個人情報を提供していますよね。年齢、住んでいる地域、性別、好きな映画や音楽、そして交友範囲。これらが広告の出し分けに利用されています。

    この仕組みは基本的には企業のオウンドメディアでも同じです。サインアップしてプロフィールを登録すれば、それを広告やキャンペーンに利用できます。

    Facebookの場合はFacebookピクセルによってリターゲティングやダイナミック広告も可能にしています。

    バナー広告や検索連動型広告の場合

    ソーシャルメディアやオウンドメディアの場合はプロフィールを提供するから広告もターゲットできる理由がわかりますよね。それではバナー広告や検索連動型広告の場合はどうでしょうか。

    Cookieとは

    オンライン広告のかなり初期からCookieは利用されてきました。Cookieは簡単に言えば識別情報です。例えばAさんがサイトXにアクセスします。サイトXはCookieというテキスト情報をAさんのブラウザに渡します。この時に初めての訪問なので「ようこそいらっしゃいました!」と表示します。

    AさんがサイトXを2回目に訪問した時、サイトXはCookie情報を読むことでAさんが2回目の訪問だとわかります。2回目なので「お帰りなさい!」と違うメッセージを表示することができます。これは非常に単純な例ですが、もっと高度なことができます。

    例えば、なんでGoogleは訪問者の年代や性別、趣味嗜好を推測することができるのでしょうか?GoogleもCookieを使っていて、その情報を分析しているからです。AIはとっくの昔にあたりまえのように広告では使われています。広告はインターネットの燃料なんですから。

    Cookieデータが人の形になる:データをまとめるDMP

    広告をターゲットのユーザーに出し分けるために、ソーシャルのプロファイルやピクセル情報、企業のオウンドメディアの情報、それに加えてCookie情報があるのがわかりました。でも、それってバラバラですよね。じゃあ、まとめてしまいましょう!というのがデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)です。ツールとしては日本だとTreasure DataとかAudienceOneが有名でしょうか。

    ログイン情報がない場合、そのサイトに訪れるユーザーのプロフィールは推論するしかありません。その推論の方法がLook-alikeという分析方法で、データはCookieから得ることができます。例えば、同じバナー広告でもユーザーの特性によって背景や天気を変えたりできます。京都のユーザーが雨の日にサイトに訪れたら京都の背景に雨が降ってるのに、東京は晴れていたら晴れた日のスカイツリーを背景にするとか。

    ひとつのCookieデータだけだとぼんやりとして見えなかったユーザー像がいろんなデータを組み合わせることによってよりくっきりと見えてきます。世の中にはLotameSalesfoce DMP(旧Krux)、Nielsen DMP(旧Exelate)のような多くのデータ取引所があります。

    (次回はGDPRやブラウザーのCookie締め出しといった広告モデルの変革の必要性について書く予定です)