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  • Aqua Voiceで何ができる?会議AIとの違いと6つのユースケース

    Aqua Voiceで何ができる?会議AIとの違いと6つのユースケース

    OS標準の音声入力でも、自動句読点や基本的な修正に対応する環境があります。それでも仕事では、長い話を短くする、メールやSlack向けに整える、ChatGPTへ伝わる指示に組み立てるといった作業が残ります。

    Aqua Voiceは、こうした「文字にした後」の負担まで減らすことを狙ったAI音声入力です。

    一方、Teams、Zoom、Google Meetの会議AIは、複数人の会話を記録し、要約や次の作業として共有することが中心です。製品によっては、会議要約を使ったメールの下書きにも対応します。

    両者の違いは、文章を作れるかどうかではありません。扱う音声と、主に使う場面が異なります。

    会議AIが「会議全体を記録し、共有できる形へ整理する」ためのAIなら、Aqua Voiceは「自分が次に使う文章や指示を作る」ためのAIです。

    この記事では、OS標準音声入力や会議AIとの違いを整理しながら、Aqua Voiceを仕事で使う6つの場面を紹介します。

    ※本図は2026年時点の公開情報をもとに、Aqua Voiceの代表的な機能、利用場面、事例を整理したものです。機能、料金、提供条件は変更される場合があります。公式が示す性能や効果は、独立検証ではなく提供元の説明を含みます。

    Aqua Voiceは何をする製品か

    Aqua Voiceは、メール、チャット、文書、AIチャット、開発ツールなど、多くの入力欄で使うAI音声入力です。

    2026年7月時点では、macOS、Windows 10/11、iPhoneに対応しています。iPhone版はiOS 17以降が必要です。12

    代表的な機能には、音声入力、デスクトップ版で使われる名称のAI Edit、iPhone版で下書きや選択中の文章を修正するVoice Edit、固有名詞を登録するCustom Dictionary、文体や整形ルールを指定するCustom Instructions、過去の入力を確認するHistoryがあります。34

    Aqua Voiceの価値は、文字起こしの精度だけではありません。入力先と目的に合わせて、そのまま使いやすい形へ整えるところにあります。

    ただし、音声認識はクラウドで処理されます。オフラインモードはなく、利用にはインターネット接続が必要です。5

    Aqua Voice、OS標準音声入力、会議AIはどう違うか

    三者は一部の機能が重なっています。どれか一つが常に優れているのではなく、何を入力したいかで使い分けます。

    比較項目OS標準音声入力Aqua VoiceTeams・Zoom・Google Meetの会議AI
    主な目的OS内で音声から文章を入力する音声入力を仕事用の文章や指示へ整える複数人の会議を記録・要約・共有する
    主な音声一人の入力一人の入力会議参加者全員
    使うタイミング入力中入力・編集時会議中と会議後
    主な成果物入力テキスト。環境によって句読点、修正、基本的な整文にも対応入力先に合わせたメール、投稿、文書、プロンプトなど文字起こし、会議要約、決定事項、共有用記録
    強み無料またはOSに内蔵され、すぐ使える辞書、継続的な文体指定、音声編集、複数アプリでの共通利用会議全体の記録と組織内共有
    注意点機能はOS、端末、言語によって異なるクラウド処理と、有料プランが前提になる機能があるプラン、管理者設定、保存・共有条件が製品ごとに異なる

    Windowsの音声入力は自動句読点や修正に対応し、Voice Accessでは文章の選択や削除もできます。Appleでも句読点や改行を指定できます。短い文章なら、OS標準機能で十分なこともあります。6

    固有名詞を辞書へ登録したい、同じ文体や整形ルールを複数の入力先で使いたい、話した内容をメールやプロンプトへまとめたい場面で、Aqua Voiceの意味が大きくなります。

    会議の正式記録にはTeams、Zoom、Google Meetが向きます。Aqua Voiceは、会議前後の文章作成や日常入力を補います。

    Aqua Voiceを理解する5つの視点

    1. 特定のアプリに閉じず、多くの入力欄で使う

    Gmail、Google Docs、Notion、Slack、ChatGPT、Claude、Gemini、VS Code、Cursorなど、普段使っている入力先で利用する発想です。

    すべてのアプリで同じ動作が保証されるわけではないため、実際の入力欄で確認します。

    2. 音声を文字にするだけでなく、整える

    話した内容を下書きにするだけでなく、短くする、要点を抜き出す、トーンを変える、翻訳するといった加工を行います。

    3. 入力先の文脈に合わせる

    同じ内容でも、顧客メール、Slackの投稿、提案書、ChatGPTへの指示では、必要な長さと文体が異なります。Custom Instructionsを使えば、好みの書き方を継続して反映できます。

    画面上の情報を参照するDeep Contextは初期状態では無効です。利用者が有効にした場合に画面の情報を参照するため、会社で使う場合は、どの画面を読ませてよいかも確認します。1

    4. 開発者以外にも使える

    開発者向け事例だけでなく、メール返信、社内連絡、文書の下書き、調査整理、移動中のメモにも使えます。

    5. 会議AIやOS標準音声入力を置き換えるのではなく補う

    会議AI、OS標準音声入力、Aqua Voiceのどれか一つに統一する必要はありません。

    短い入力はOS標準機能、会議の記録は会議AI、複数の入力先で文章や指示を整える作業はAqua Voice、という使い分けができます。

    Aqua VoiceでAIを活用する6つのユースケース

    1. メールやSlackの返信を、話しながら下書きする

    分類:文章作成・編集|始め方:最も試しやすい

    伝えたい要点を声で説明し、メールやSlackに合う長さと文体へ整えます。

    たとえば、「相手の提案には賛成だが、納期だけ一週間延ばしたい」「会議のお礼と、次回までに確認してほしい二点を送りたい」と話します。最初から完成文を読み上げる必要はありません。

    下書きした後に、「半分の長さにして」「最後の一文を柔らかくして」「箇条書きにして」と話し、文章をさらに直すこともできます。最初の音声入力で完成させるのではなく、話しながら下書きと修正を重ねる使い方です。

    顧客メール、進捗共有、会議後のお礼、依頼文に使えます。人名、数字、期限、約束した内容は送信前に確認します。

    2. 長いメモや調査内容を整理する

    分類:要約・整理|始め方:長文を扱う人向け

    考えたことを一度まとめて話し、要点、論点、次に行う作業へ整理します。

    会議後の自分用メモ、調査結果の整理、企画の論点出し、次のアクションの抽出などに向いています。

    ここで作るのは、参加者全員の正式な会議記録ではありません。自分が次の仕事へ進むためのメモです。会議全体を残したい場合は、会議システム側の文字起こしや要約を使います。

    3. ChatGPTやClaudeへの指示を音声で組み立てる

    分類:AIチャット入力|始め方:生成AIを日常的に使う人向け

    ChatGPTやClaudeへ仕事を頼む際、「何をしてほしいか」だけでなく、背景、条件、使う資料、避けたい表現まで伝える必要があります。

    声なら背景や条件を多く説明しやすくなります。話した内容を、調査依頼、記事構成、壁打ちの論点、複数条件を含む作業指示へ整えます。

    長く話すことより、AIが実行しやすい順番へ整っているかを確認します。

    4. 開発ツールやAIエージェントへ指示を出す

    分類:開発・技術作業|始め方:開発者・高度利用者向け

    開発作業では、コードを読み上げるより、修正方針、エラー状況、PR説明、AIエージェントへの指示を話す使い方が中心です。

    VS CodeやCursorへの指示、Claude Codeへの作業依頼、コードコメント、コード変更をレビューしてもらうための説明(PR説明)、ターミナルで使う指示の下書きなどに使えます。

    AIが作ったコマンドは、処理内容と対象ファイルを確認してから実行します。

    音声だけで完結するのではなく、コード周辺の説明と指示作成を速くする用途です。

    5. 会議後のフォローと社内連絡を作る

    分類:コミュニケーション|始め方:会議が多い人向け

    Teams、Zoom、Google Meetの会議要約を確認した後、自分が送る返信、依頼、進捗共有をAqua Voiceで作ります。

    会議AIにも要約の共有機能があり、製品によってはメールの下書きも作れます。Aqua Voiceの違いは、会議以外の入力先でも同じ辞書や指示を使えることです。7

    決定事項の社内共有、担当者への依頼、次回会議の確認事項、欠席者への説明など、会議から次の仕事へ移る部分を補います。

    6. iPhoneで、下書きから音声修正まで仕上げる

    分類:モバイル・音声編集|始め方:iPhone利用者向け

    iPhone版では、音声入力したメモや返信をVoice Editで短縮、言い換え、翻訳、段落分けできます。選択中の文章も音声で修正できます。3

    たとえば、移動中に考えを長めに話し、立ち止まった後に「三つの箇条書きにして」「Slack向けに短くして」と直します。単に手入力を音声へ置き換えるのではなく、スマートフォン上で下書きから編集まで進める使い方です。

    外出先でのメモ、移動中の短い返信、アイデアを忘れる前の記録などに向いています。キーボード操作が負担になる人にも役立つ可能性がありますが、特定の障害や支援ニーズへの適合性は、実際の端末と環境で確認します。App Store上では、開発元が対応するアクセシビリティ機能を申告していません。2

    公共の場所では、機密情報や顧客情報を声に出さないようにします。運転中など、周囲への注意が必要な場面では使用しません。

    まず試すなら、この5つから始める

    最初は、次のうち一つの用途に絞ります。

    1. メール返信
    2. Slackの投稿下書き
    3. ChatGPTへのプロンプト
    4. 会議後のフォロー
    5. 長いメモの要約・整理

    普段キーボードで作る文章を選び、30秒から1分程度で話します。生成文を、自分で書いた場合と比べます。

    固有名詞の誤りはCustom Dictionaryへ登録し、長さや文体の好みはCustom Instructionsへ反映します。

    意味が変わっていないか確認してから送信します。

    安全に使うために確認すること

    AIによる整文は、内容の正しさを保証しない

    文章が読みやすくなっても、数字、人名、期限、条件、依頼内容が誤って変わる可能性があります。

    顧客への送信、契約、金銭、採用、法務、医療など、影響が大きい文章は必ず元の意図と照らして確認します。

    話す場所と内容を選ぶ

    音声入力のプライバシーは、サービス側のデータ処理だけではありません。

    オフィス、電車、カフェなどでは、周囲に聞かれて困る情報を口にしないようにします。

    クラウド処理とデータ保持を確認する

    Aqua Voiceの音声認識はクラウドで処理され、オフラインモードはありません。

    公式FAQでは、通常設定で文字起こし結果を保持する場合があると説明しています。Privacy Modeを有効にすると保持されず、Teamでは組織全体へPrivacy Modeを適用できます。

    Enterpriseでは、Zero Data Retention、SSO/SAML、SCIMなどが案内されています。1

    導入時には、最新の契約、プライバシーポリシー、管理者設定を確認します。

    会社の管理端末や社内ネットワークでは条件が異なる場合があるため、実際の端末と入力先で確認します。

    Deep Contextの利用範囲を確認する

    Deep Contextは初期状態では無効です。有効にすると画面上の情報を参照します。

    会社で使う場合は、顧客情報、個人情報、機密資料など、どの画面を読ませてよいかを確認します。

    速度や精度は、自分の仕事で確かめる

    Aqua Voiceは、キーボード入力やOS標準音声入力との違いを公式サイトで説明しています。ただし、速度や精度は、話し方、マイク、周囲の音、言語、専門用語、入力する文章によって変わります。5

    具体的な数値を紹介する場合は、独立した比較試験ではなく、Aqua Voice側の公表値であることを明記します。

    会議を記録するAIではなく、仕事を進めるために話すAI

    Aqua Voiceは会議AIの代替ではありません。OS標準音声入力にも句読点や修正機能があります。Aqua Voiceの違いは、辞書や継続的な指示を使い、複数の入力先で仕事用の文章やAIへの指示へ整えることです。

    会議を記録し、参加者と共有したいなら会議AI。短い文章をすぐ入力したいならOS標準音声入力。入力先に合わせた文体や構成に整え、同じ使い方を複数のアプリで続けたいならAqua Voiceです。

    まずは次のメールかSlack返信を、音声で下書きしてみてください。

    1. Frequently Asked Questions|Aqua Voice↩1 ↩2 ↩3
    2. Aqua Voice: AI Voice Keyboard|App Store↩1 ↩2
    3. Aqua Voice for iOS|Aqua Voice↩1 ↩2
    4. Changelog|Aqua Voice
    5. Dictation Software for Windows PCs|Aqua Voice↩1 ↩2
    6. Use voice typing to talk instead of type on your PC|Microsoft SupportEdit text with voice|Microsoft SupportDictate text on iPhone|Apple Support
    7. Recap in Microsoft Teams|Microsoft SupportUsing Meeting Summary with AI Companion|Zoom SupportTake notes for me in Google Meet|Google Meet Help

  • ObsidianでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    ObsidianでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    Obsidianに会議メモを書く。調べたことを残す。考えたことをノート同士でつなぐ。長く使うほど、自分だけの知識の蓄積が増えていきます。

    一方で、ノートが増えるほど別の問題も出てきます。

    以前書いたはずなのに見つからない。似た内容を何度も調べている。会議メモは残っているものの、次にやることが整理されていない。タグやリンクを付ける作業が続かず、ノート同士の関係が見えなくなる。

    そこで役立つのが、ObsidianとAIの組み合わせです。

    ただし、Notionのように、Obsidian公式のAI機能が一式用意されているわけではありません。Obsidianでは、第三者が開発したコミュニティプラグインや外部AIを自分で選び、必要な機能を追加します。Obsidianのコア機能には、現時点でAI機能は含まれていません。1

    ObsidianでAIを使うとは、チャット画面を追加することではありません。自分がためてきたノートを、探し、つなぎ、整え、もう一度仕事に使えるようにすることです。

    この記事では、ObsidianでAIを使い始める四つの入口と、代表的な10のユースケースを紹介します。

    ※本図は2026年時点の公開情報をもとに、代表的なプラグイン、連携方法、利用例を整理したものです。コミュニティプラグインは、提供状況、機能、料金、対応するAIが変更される場合があります。件数は公開情報から抽出した利用例を本記事の基準で分類したもので、一つの利用例を複数の方法で実現できる場合があります。

    ObsidianでAIを使い始める四つの入口

    インフォグラフィックでは、ObsidianのAI活用を四つの実現方法と、実運用事例の情報源に分けて整理しています。本文では、利用者がどこから始めるかという観点から、四つの入口として紹介します。

    1. コミュニティプラグインを追加する

    最初の入口は、目的に合ったコミュニティプラグインを追加する方法です。

    たとえば、Smart Connectionsは、編集中のノートと意味が近い過去のノートを探し、関連候補を表示します。ローカルの埋め込みモデルが標準で用意されており、関連ノートの検索だけならAPIキーなしで始められます。2

    Copilot for Obsidian(以下、Copilot)は、Vaultへの質問、ノートの要約、文章編集などを一つの画面で行えるプラグインです。接続するAIはクラウド型とローカル型から選べます。Web検索やPDFなどのファイル変換、Agent Modeなど、一部の高度な機能は有料版で提供されています。利用できる機能はプランやバージョンによって異なります。3

    ローカルAIを中心に使いたい場合には、Local LLM Helperのように、OllamaやLM Studio、OpenAI互換の接続先へ対応したプラグインもあります。4

    Obsidianには全員が使う一つの標準AIがないため、製品名から選ぶより、「過去のノートを探したい」「文章を整えたい」「Vault全体へ質問したい」のように、目的から選ぶほうが分かりやすいでしょう。

    2. ノートを外部AIへ送るか、パソコン内で処理するかを決める

    AIプラグインの中には、ノートの一部をChatGPTやClaudeなどのクラウドAIへ送るものと、パソコン内で動くAIを使うものがあります。

    クラウドAIは比較的始めやすく、高性能なモデルを利用できます。一方、ローカルAIは準備やパソコン性能が必要ですが、処理をパソコン内に寄せられます。

    ただし、「ローカル対応」と書かれていても、すべての処理がパソコン内で完結するとは限りません。

    たとえば、関連ノートを探すための索引はローカルで作成し、回答の生成はクラウドAIへ送る構成もあります。Web検索を使ったときだけ外部通信するプラグインもあります。

    確認したいのは、モデル名より次の三点です。

    • どのノートや選択範囲が外部へ送られるか
    • 検索用の索引と回答生成が、それぞれどこで処理されるか
    • 外部通信が発生する機能を個別に止められるか

    仕事の機密情報を含むVaultでは、会社のルールに合う構成かも確認します。

    3. 定型作業を自動化する

    三つ目は、決まった作業を繰り返せる形にする方法です。

    たとえば、毎週の振り返りを作る、新しいノートへ決まった項目を追加する、毎朝の調査結果を保存する、といった処理です。

    Templaterは、変数やスクリプトを使った動的なテンプレートを作れます。QuickAddは、決めた場所への追記、テンプレートからのノート作成、複数操作の連結などに向いています。56

    最初から複雑な自動化を作る必要はありません。まずは人が手動で作業し、繰り返す価値があると分かった手順を、TemplaterやQuickAddで定型化します。決まった時刻の実行や外部サービスからの情報取得には、自動化ツール、スクリプト、CLIなどを組み合わせます。

    4. 外部エージェントにVaultを扱わせる

    四つ目は、Claude Code、Codex、Gemini CLIなどの外部エージェントに、Obsidianのノートを検索、読み取り、作成、更新させる方法です。

    ObsidianのVaultは、ローカルフォルダに保存されたMarkdownファイルの集まりです。そのため、外部エージェントへVaultのフォルダを直接渡すだけでも、ノートを読み書きできます。7

    ただし、エージェントやCLIがパソコン上で動いていても、利用するAIモデルがクラウド型なら、処理に必要なノート内容は外部サービスへ送信されます。「ファイルがローカルにあること」と「AI処理がローカルで完結すること」は別です。8

    2026年にはObsidian公式のCLIも提供されています。利用にはObsidian 1.12.7以降のインストーラーが必要で、原則としてObsidianアプリを起動した状態で、検索、読み取り、作成、追記、移動、削除、プロパティの更新、テンプレートの利用などを実行できます。9

    主な接続方法には、次の違いがあります。

    • Vaultフォルダを直接渡す:始めやすいが、広い範囲を変更できる
    • Obsidian CLIを使う:Obsidianの検索やテンプレートなどを利用できる
    • MCPや専用プラグインを使う:許可する操作や確認手順を設計できる場合がある

    便利ですが、最初に選ぶ入口ではありません。まず読み取り専用で試し、対象フォルダを限定してから、必要な書き込みだけを許可します。

    まず試したいObsidianのAI活用

    ObsidianでAIを初めて使うなら、現在のノートに関連する過去のノートを探すところから始めると、価値を感じやすいでしょう。

    キーワード検索だけでは、同じ内容を別の言葉で書いたノートを見落としやすくなります。意味の近さから探す機能なら、表現が違っていても、以前考えたことや関連資料を見つけられます。

    次に試しやすいのは、長いノートや選択範囲の要約です。結論、重要な根拠、次に確認することを抜き出せば、ノートを読み返す時間を減らせます。

    文章編集も身近な入口です。箇条書きを説明文にする、長い文章を短くする、言い回しを整えるといった作業なら、元の意図を人が決めたままAIを使えます。

    Vault全体への質問は、その次です。「先月、この企画について何を考えていたか」「この顧客について過去に何を書いたか」のように質問し、回答の根拠となったノートを開いて確認します。

    ローカルAI、自動化、エージェントへ進むと何が変わるか

    基本的なプラグイン利用では、人がノートや範囲を選び、その場で検索、要約、文章編集などを実行します。プラグインによっては、Vault全体の検索やバックグラウンドでの索引作成にも対応します。

    自動化へ進むと、決めた時刻や操作をきっかけに処理できます。エージェントへ進むと、複数のノートをまたいで検索、作成、更新まで任せられます。

    「読む・探す・整える」はプラグインで始めやすく、「書き戻す」「一括変更する」「自律的に処理する」ほど、権限と確認方法の設計が重要になります。

    安全に使うために確認すること

    コミュニティプラグインはパソコン上のファイルへアクセスできる

    コミュニティプラグインは、ブラウザ拡張のように、機能ごとの権限を細かく選べるとは限りません。

    Obsidian公式は、コミュニティプラグインがObsidian本体と同じ権限で動き、パソコン上のファイルへのアクセス、インターネット通信、追加プログラムの実行などが可能だと説明しています。10

    提供者、更新履歴、プライバシー説明、安全性評価を確認し、仕事の機密情報が入ったVaultへ安易に追加しないようにします。

    外部へ送信される情報を確認する

    クラウドAIを使う場合は、現在のノートだけが送信されるのか、関連ノートや添付ファイルも送られるのかを確認します。

    有料機能やファイル変換では、AIの提供会社だけでなく、プラグイン開発元のサーバーを経由する場合もあります。3

    APIキーはノート本文へ書かず、プラグインの公式手順に従って設定します。Vaultや設定ファイルを複数端末へ同期している場合は、APIキーを含む設定が同期対象にならないかも確認します。

    書き込み権限は小さく始める

    Agentには最初からVault全体の変更を許可しません。

    まずはバックアップ用のVaultや限定したフォルダで試します。読み取り専用から始め、作成、追記、既存ファイルの更新、移動、削除の順に、必要な操作だけを許可します。

    一括変更や削除は、人が内容を確認してから進めます。

    ObsidianでAIを活用する10のユースケース

    ここからは、ObsidianでAIが役立つ代表的な10の仕事場面を紹介します。すべてを試す必要はありません。自分のVaultで負担になっている作業を一つ選んでください。

    1. 書いているノートに関連する過去のノートを見つける

    分類:検索・発見|始め方:Smart Connectionsなどの関連ノート系プラグインから試せる

    編集中の内容と意味が近いノートを表示し、忘れていた考えや資料を再発見します。必要なものだけを内部リンクで現在のノートへつなぎます。

    2. Vault全体から、以前考えたことを質問して探す

    分類:検索・発見|始め方:AIプラグインとモデル設定が必要

    「このテーマについて過去にどんな結論を出したか」のように質問します。回答だけで終わらせず、根拠として使われた元のノートを確認します。

    3. 長い会議メモや資料を短くまとめる

    分類:要約・整理|始め方:AIプラグインとモデル設定が必要

    長いノートから、結論、論点、未決事項を抜き出します。詳しく読み返す場所を絞るために使います。

    4. 会議メモから担当者と次の作業を抜き出す

    分類:要約・整理|始め方:AIプラグインとモデル設定が必要

    会議メモから、担当者、期限、確認事項を整理します。AIが推測した内容を混ぜていないか、元の発言と照らして確認します。

    5. 箇条書きや下書きを読みやすい文章に整える

    分類:文章作成・編集|始め方:AIプラグインとモデル設定が必要

    自分で書いた要点をもとに、説明文や記事の下書きへ整えます。白紙から書かせるよりも、意図を保ちやすい使い方です。

    6. ノートにタグや関連リンクを付ける

    分類:リンク・構造化|始め方:関連ノート・タグ付け系プラグイン向け

    本文をもとにタグや関連ノートの候補を出し、必要なものだけを人が採用します。Vaultの構造をAIに決めさせるのではなく、整理の候補を出してもらいます。

    7. 音声、動画、PDF、画像をMarkdownノートへ変換する

    分類:取り込み・変換|始め方:用途別プラグイン・外部サービス向け

    音声を文字に起こす、動画の字幕を取り込む、PDFや画像から文章を抽出するといった処理です。必要なプラグインや外部サービスは形式ごとに異なります。何が外部へ送られるかも個別に確認します。

    8. 最近のノートから週次レビューを作る

    分類:定期処理・自動化|始め方:AIプラグインから試し、自動化へ広げる

    最近更新したノートから、進んだこと、残っていること、次に取り組むことをまとめます。最初は手動で実行し、使えると分かってから定期処理へ進めます。

    9. 外部で集めた情報をObsidianへ自動保存する

    分類:定期処理・自動化|始め方:自動化ツール・スクリプト・CLI・外部エージェント向け

    Web調査、フォーム回答、音声メモなどを、決めたフォルダと形式で保存します。自動保存されたノートが増えすぎないように、確認待ちのフォルダを用意すると管理しやすくなります。

    10. Agentに複数ノートの整理や更新を任せる

    分類:エージェント連携|始め方:公式CLI・MCP・外部エージェント向け

    複数のノートを読み、重複を探し、索引ページを作るといった作業を任せます。最初はコピーしたVaultで試し、変更内容を確認してから本番へ反映します。

    最初は「探す・まとめる・つなぐ」から始める

    ObsidianでのAI活用は、ローカルAIを動かしたり、MCPを設定したりすることだけではありません。

    関連する過去のノートを探す。長いノートを要約する。会議メモから次の作業を抜き出す。まずはそのどれか一つで十分です。

    便利だと感じたら、タグ付けや週次レビューへ広げます。同じ使い方が固まってから、TemplaterやQuickAddで定型化します。外部エージェントにVaultの更新を任せるのは、その後です。

    大切なのは、使えるAIプラグインを増やすことではありません。自分がためてきたノートを、どの仕事にもう一度使いたいのかを決めることです。

    まずは、最近書いたノートを一つ開き、関連する過去のノートを探すところから試してみてください。

    1. Core plugins|Obsidian Help
    2. Smart Connections|Obsidian Community Plugins
    3. Copilot for Obsidian|Obsidian Community Plugins
    4. Local LLM Helper|Obsidian Community Plugins
    5. Templater|Obsidian Community Plugins
    6. QuickAdd|Obsidian Community Plugins
    7. How Obsidian stores data|Obsidian Help
    8. Set up Claude Code|Anthropic
    9. Obsidian CLI|Obsidian Help
    10. Plugin security|Obsidian Help

  • NotionでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    NotionでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    Notionに会議メモを書く。プロジェクト資料をまとめる。社内ルールを残す。記事や調査資料を保存する。Notionを、情報をためる場所として使っている人は多いでしょう。

    ところが、ページが増えるほど、別の問題が出てきます。

    どこに書いたか分からない。長いページを読む時間がない。会議メモは残っているものの、決定事項や担当者が整理されていない。データベースには情報が並んでいるだけで、傾向までは見えない。

    そこで役立つのがNotionのAI機能です。

    文章の下書きや要約だけでなく、会議の記録、社内情報の検索、データベースの整理、レポート作成、ページやタスクの作成まで、AIに任せられる範囲は広がっています。

    NotionでAIを使うとは、文章を書かせることだけではありません。ためたページやデータベースを、探しやすく、整理しやすく、次の仕事に使いやすい状態へ変えることです。

    この記事では、NotionでAIを使い始める四つの入口と、代表的な10のユースケースを紹介します。

    ※本図は2026年時点の公開情報をもとに、代表的な機能と実現方法を整理したものです。複数の方法で実現できる利用例もあり、機能名、提供状況、対象プランは変更される場合があります。

    NotionでAIを使い始める四つの入口

    インフォグラフィックでは、NotionのAI活用を機能や実現方法によって五つに分類しています。一方、ここでは製品体系をそのまま説明するのではなく、利用者がどこから始めるかという観点から、四つの入口にまとめます。それぞれには重なる部分があります。

    1. ページやデータベースの中で書く・整える

    最初の入口は、開いているページやデータベースの中でAIを使う方法です。

    箇条書きから文章を作る。長いページを要約する。文章を短くする。表現を整える。翻訳する。データベースの項目に要約やタグを自動入力する。こうした作業から始められます。

    完成した文章をゼロから作らせるだけでなく、すでにNotionにあるメモや資料を、読みやすく再利用しやすい形へ整える使い方です。

    2. Notion内外の情報を質問して探す

    二つ目は、Notion AgentやEnterprise Searchを使い、Notionを社内情報への質問窓口にする方法です。

    「経費精算の申請期限はいつか」「前回の価格改定は、なぜ実施したのか」「先週の会議で、自分が担当することは何か」のように質問します。

    ページ名や保存場所を覚えていなくても、Notion内の情報から回答を探せます。AI Connectorsを設定した環境では、Slack、Google Drive、Jiraなど、接続済みのサービスも横断して検索できます。1

    3. Notion AgentやCustom Agentsに作業を任せる

    三つ目は、情報を探すだけでなく、ページやデータベースの作成・更新まで任せる方法です。

    Notion Agentには、複数の資料を読ませ、企画書を作る、PDFやCSVを整理してデータベースにする、プロジェクト情報から週次報告を作る、といった複数工程の作業を頼めます。Notion Agentは、原則として利用者本人と同じアクセス権限で動きます。2

    繰り返し発生する仕事には、Custom Agentsを使う方法もあります。決まった時間にレポートを作る、Slack上の出来事をきっかけに処理を始める、Webを調べてNotionを更新するといった動かし方ができます。3

    4. 自動化ツールや外部AIとつなぐ

    四つ目は、Zapier、Make、n8nなどの自動化ツールや、外部AI、API、MCPを使ってNotionを他のサービスとつなぐ方法です。

    フォーム回答や会議記録をNotionへ保存する。外部システムの更新に合わせてデータベースを更新する。ClaudeやCursorなどの外部エージェントをNotion上の仕事へ参加させる、といった使い方があります。

    External Agentsは、外部のAIエージェントをNotion内の共有画面で扱う仕組みです。2026年7月時点ではClaudeとCursorが対象で、ベータ版として段階的に提供されています。外部AI側からNotionを読み書きするMCPとは別の仕組みです。4

    2026年7月時点では、Notion Agent、AI Meeting Notes、Enterprise Search、主なAI Connectorsなどの本格利用はBusiness・Enterpriseプランが中心です。Free・PlusプランでもAI機能を試せますが、利用回数には限りがあります。AI Meeting Notesはベータ版です。Custom AgentsはBusiness・Enterprise向けで、継続的な実行には別途Notionクレジットを使用します。356

    今回、公開情報から整理した42の利用例では、31件をNotionの標準機能から始められる例として分類しました。一つの利用例を複数の方法で実現できる場合もありますが、まず標準機能を試し、足りない部分だけを外部連携で補う順番が現実的です。

    まず試したいNotionの標準AI機能

    NotionでAIを初めて使うなら、すでにあるページを一つ選びます。

    最も試しやすいのは要約です。長い企画書、会議メモ、調査資料を開き、結論、重要な根拠、確認が必要な点をまとめてもらいます。資料を別のAIへコピーする必要はありません。

    次は文章作成です。白紙からすべてを書かせるより、箇条書きのメモを渡し、読みやすい社内文書へ整えてもらうところから始めると使いやすいでしょう。

    会議が多い人にはAI Meeting Notesが役立ちます。会議内容を文字に起こし、要点や次の作業をまとめます。保存先のデータベースと要約形式をあらかじめ設定すれば、会議記録を同じ場所、同じ構成で残しやすくなります。6

    データベースを使っているなら、要約、重要点、分類用のタグなどをAIで自動入力する項目を追加する方法もあります。保存した記事、顧客メモ、調査資料などを、ページを開かなくても一覧から把握しやすくなります。

    Agentや外部サービスを組み合わせると何が変わるか

    ページ内の文章作成や要約、検索は、Notionの標準AIだけで始めやすい領域です。

    Notion Agentを使うと、複数の資料を読み、内容を整理し、新しいページやデータベースを作るところまで進められます。プロジェクトの状況を週次報告にまとめる。PDFやCSVから必要な情報を抜き出す。回答を受け取るだけでなく、Notion上で作業を進めてもらえます。

    外部サービスの更新をきっかけに継続して動かす場合は、Custom Agents、自動化ツール、APIやMCPなどが候補になります。

    たとえば、新しいURLが追加されたら内容を要約する。毎週決まった時間に市場情報を調べてレポートを作る。Slackに届いた要望を分類する。会議ツールで作られた記録をNotionへ保存する、といった使い方です。

    最初から技術的な仕組みを選ぶのではなく、まず「何をきっかけに、どの情報を使い、Notionで何を作りたいか」を決めます。そのうえで、Custom Agentsで足りるのか、自動化ツールやAPIが必要なのかを判断します。

    会議を文字に起こす前に参加者へ伝える

    AI Meeting Notesを使う場合は、会議を録音・文字起こしすることを参加者に伝え、全員の同意を得ます。

    社外の人が参加する会議や、個人情報、顧客情報、機密情報を扱う会議では、会社のルールも確認してください。6

    AIの回答は元のページで確認する

    AIが作った要約や検索回答は、必ず正しいとは限りません。

    重要な数値、日付、担当者、契約条件、社内ルールについては、元のページや資料を開いて確認します。AIの回答だけを結論として使うのではなく、確認すべき情報を早く見つけるために使うのが安全です。

    Notion AgentやCustom Agentsにページやデータベースを作成・更新させる場合も、最初は対象を限定します。重要なページの更新や、削除につながる操作は、人が内容を確認してから進めます。

    外部サービスを接続する場合は、そのサービスやエージェントがNotionのどのページ、データベース、外部ツールを読み書きできるのかも確認してください。

    NotionでAIを活用する10のユースケース

    ここからは、NotionでAIが役立つ代表的な10の仕事場面を紹介します。すべてを試す必要はありません。自分の仕事で時間がかかっている場面を一つ選んでください。

    1. 箇条書きのメモから社内文書を作る

    分類:文章作成・編集|始め方:ページ内のAI機能から試せる

    伝えたい内容を箇条書きで書き、案内文、会議のアジェンダ、企画の説明文などに整えます。人が要点を決めてからAIに文章化を任せると、意図から外れにくくなります。

    2. 長い企画書や調査資料の要点をつかむ

    分類:要約・整理|始め方:ページ内のAI機能から試せる

    長いページから、結論、根拠、確認が必要な点を抜き出します。すべてを読む前に全体像をつかみ、詳しく読む場所を絞るために使います。

    3. 会議後に決定事項、担当者、期限を整理する

    分類:要約・整理|始め方:AI Meeting Notesから試せる

    会議内容を文字に起こし、決まったことと次の作業を整理します。議事録を残すだけでなく、誰がいつまでに何をするのかを明確にすることが目的です。利用前には参加者の同意を得ます。

    4. 社内ルールや過去の経緯を質問して探す

    分類:検索・ナレッジ|始め方:Notion Agent・Enterprise Searchから試せる

    ページの保存場所を探し回る代わりに、「在宅勤務の申請方法は」「この仕様を変更した理由は」と質問します。回答を読んだ後は、示された参照元を開いて確認します。

    5. SlackやGoogle Driveも含めて資料を探す

    分類:検索・ナレッジ|始め方:Enterprise Search・AI Connectors向け

    必要な情報がNotion、Slack、Google Driveなどに分かれている場合に、複数のサービスをまたいで検索します。資料をNotionへ移し切れていない会社でも、Notionを情報探索の入口にできます。

    6. 保存した記事に要約、重要点、タグを付ける

    分類:データベース自動化|始め方:データベース内のAI機能から試せる

    記事や調査資料を保存したデータベースに、要約、重要点、テーマなどを自動入力します。情報をためるだけで終わらず、後から比較したり探したりできる状態にします。

    7. プロジェクト情報から週次報告を作る

    分類:分析・レポート|始め方:Notion Agent・Custom Agents向け

    プロジェクトのデータベースから、完了したこと、進行中のこと、次週の予定、問題点をまとめます。人は内容を確認し、原因の判断や優先順位の決定に集中します。

    8. 外部ニュースから営業提案や記事の切り口を作る

    分類:分析・レポート|始め方:Notion Agent・Custom Agents・外部AI向け

    ニュースや業界記事を調べ、要約だけでなく、顧客への提案にどう使えるか、どんな記事テーマに展開できるかまで整理してNotionに残します。定期的な市場調査にする場合はCustom Agentsも候補になります。

    9. 他のサービスで発生した情報をNotionへ保存する

    分類:作業実行・同期|始め方:Custom Agents・自動化ツール向け

    会議記録、問い合わせ履歴、フォームの回答などをNotionへ追加します。人がコピーして保存する作業を減らし、Notionを記録の集約先にできます。複雑な同期ではAPIやWebhookも選択肢になります。

    10. Agentにページ作成やデータベース整理をまとめて頼む

    分類:エージェント連携|始め方:Notion Agentから試せる

    複数の資料を読み、要点を整理し、新しいページやデータベースを作るところまでまとめて頼みます。最初は小さな対象で試し、作成・更新された内容を人が確認します。

    最初は「書く・まとめる・探す」から始める

    NotionでのAI活用は、複雑な自動化を作ったり、外部AIと接続したりすることだけではありません。

    箇条書きを文章にする。長いページを要約する。会議メモから担当者を抜き出す。社内情報を質問して探す。まずはそのどれか一つで十分です。

    試して便利だと感じたら、同じ作業をデータベースや決まった保存先に組み込みます。毎回AIに同じ指示をするのではなく、いつもの仕事の中で繰り返し使える形にします。

    それでも足りない場合に、Notion Agent、Custom Agents、自動化ツール、外部AIとの連携を検討します。

    大切なのは、使えるAI機能を増やすことではありません。Notionにためた情報を、どの仕事にもう一度使いたいのかを決めることです。

    まずは、最近作った長いページを一つ開き、要点を三つにまとめるところから試してみてください。

    1. Enterprise Search|NotionNotion AI Connectors|Notion
    2. Notion Agent|Notion
    3. Custom Agents|NotionMCP connections for Custom Agents|Notion
    4. Use Claude agents in Notion|Notion
    5. Notion AI complimentary responses|Notion
    6. AI Meeting Notes (beta)|Notion

  • SlackでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    SlackでAIを使うと何ができる?10のユースケースと始め方

    ChatGPTに文章を書いてもらう。分からないことを質問する。資料のたたき台を作る。生成AIを個人の相談相手として使う人は増えました。

    一方、毎日の仕事で使っているSlackでは、今も人がすべてのメッセージを読み、長いスレッドを追い、過去のやりとりを検索し、会議後の宿題を整理しているのではないでしょうか。

    SlackでAIを使うとは、AIチャットをもう一つ増やすことではありません。普段の会話やファイル、仕事の流れの近くにAIを置くことです。

    この記事では、SlackでAIを使い始める四つの入口と、代表的な10の利用場面を紹介します。高度な仕組みを最初から作る必要はありません。まずは「読む・探す・まとめる」のどれか一つから試せば十分です。

    SlackでAIを使い始める四つの入口

    厳密には重なる部分もありますが、利用者から見た始め方の違いとして、四つの入口に分けると分かりやすくなります。

    一つ目は、Slackが標準で提供しているAI機能です。チャンネルやスレッドの要約、AIによる検索回答、メッセージの翻訳や説明、ハドルの議事メモなどがあります。自分がアクセスできるSlack上の会話やファイルを使うため、新しいサービスを一から覚えるよりも始めやすいのが特徴です。

    ただし、「Slackの標準機能」は、無料プランを含むすべての利用者が使えるという意味ではありません。2026年7月時点の現行プランでは、会話の要約とハドルの議事メモはPro以上、AIによる検索回答、リキャップ、翻訳、ファイル要約などはBusiness+以上で利用できます。Enterprise SearchはEnterprise+向けです。管理者が機能を制限している場合もあり、旧契約では利用条件が異なることがあります。[^1]

    二つ目は、Slack Marketplaceから業務アプリを追加する方法です。社内検索、会議記録、FAQ、翻訳、カスタマーサポートなど、特定の仕事に強いアプリがあります。Slack標準のAIが幅広い仕事を支えるのに対し、業務アプリは一つの用途を深く支援するのが得意です。[^2]

    三つ目は、Slackとの連携機能を提供している外部AIを使う方法です。たとえばChatGPTには、Slack内で文章を作成したり、Slackの会話を検索・要約したりする公式アプリがあります。Claude Tagは、Slackのチャンネルで@Claudeと呼び出して仕事を頼める仕組みですが、現時点ではTeamとEnterprise向けのベータ版です。企業向けには、Gemini EnterpriseをSlackから利用する公式の仕組みもあります。利用できる機能、対象プラン、導入方法は製品ごとに異なります。[^3][^4][^5]

    四つ目は、自社専用のBotやワークフローを作る方法です。社内規程に答えるBot、問い合わせを分類する仕組み、申請内容を確認して担当者に回す仕組みなどを作れます。自由度は高いものの、設計や運用には専門知識が必要です。最初からここを目指す必要はありません。

    まずは自社のプランで使えるSlack標準機能を試し、必要な仕事にだけ業務アプリを加え、それでも足りない部分を外部AIや自社専用Botで補う順番が分かりやすいでしょう。

    まず試したいSlackの標準AI機能

    SlackでAIを使ったことがないなら、普段の仕事で発生している小さな負担を一つ選びます。

    最も試しやすいのは要約です。休暇明けや外出後に、未読のチャンネルを上からすべて読むのではなく、何が決まり、自分に何が関係するのかを短くまとめてもらいます。

    次は検索です。「先月の価格改定について、誰が何を決めたか」「A社向け提案で問題になった点は何か」のように、知りたい内容を質問します。正確なキーワードを思い出せなくても、質問の意味に沿った回答を探せるのがAI検索の利点です。

    翻訳やメッセージの説明も、効果を感じやすい機能です。海外拠点からの投稿を訳すだけでなく、社内略語や専門用語が多いメッセージをかみ砕いて説明してもらえます。会議が多い人なら、ハドルの要点、決まったこと、担当者をまとめる議事メモも役立ちます。

    Business+以上では、SlackbotやCanvasのAI文章作成機能を使い、Slack上の会話やファイルを材料に、告知文やプロジェクト資料の下書きを作ることもできます。[^9][^10]

    Slackは、要約・AI検索・リキャップの試験利用について、利用者1人あたり週平均97分を節約できたとする社内分析を紹介しています。すべての会社で同じ結果になるわけではありませんが、「読む」「探す」時間が積み重なることは、多くの職場に共通しています。[^6]

    アプリや外部AIを組み合わせると何が変わるか

    Slack標準の機能で物足りなくなったら、業務アプリや外部AIとの連携を検討します。

    会議が多いなら会議記録に強いアプリを加える。社内で同じ質問が繰り返されるなら、FAQに強いアプリを使う。情報が複数のサービスに散らばっているなら、企業内検索のアプリを導入する。このように、困っている仕事がはっきりしているときは専用アプリが向いています。

    ChatGPTやClaudeなどとの連携は、Slackの会話を材料にした文章作成、会議準備、調査、複数チャンネルをまたぐ整理などに向いています。さらに、社内データや業務システムとつなぎたい場合は、自社専用Botやワークフローの出番です。

    外部アプリの権限を確認する

    外部アプリはSlackとは別の会社が提供するサービスです。アプリごとに、メッセージ、ファイル、プロフィールなど、アクセスできる情報が異なります。追加する前に、要求される権限、プライバシーポリシー、データの保存と削除の条件を確認し、会社のルールと管理者の承認に従います。[^2][^7]

    AIの回答は元の情報で確かめる

    AIの要約や検索回答は、元の会話を読む時間を減らしてくれますが、必ず正しいとは限りません。重要な決定、顧客への回答、数値、担当者、期限については、表示された出典や元のメッセージを開いて確認します。

    SlackのAI検索回答には、根拠となったメッセージやファイルへの出典が表示されます。AIの回答をそのまま結論にするのではなく、確認すべき場所を早く見つけるために使うのが安全です。[^1][^8]

    SlackでAIを活用する10のユースケース

    ここからは、SlackでAIが役立つ代表的な10の仕事場面を紹介します。すべてを導入する必要はありません。自分の仕事で時間がかかっている場面を一つ選んでください。

    1. 休暇明けの未読と長いスレッドをまとめる
      • 分類:要約・整理
      • 始め方:Slack標準機能から試せる
      • 休暇中に動いた話題、決まったこと、未決事項、自分に関係する依頼をまとめます。要約を読んでから、重要なスレッドだけを開けば、すべてを最初から追う必要がありません。
    2. 過去に決まったことと、その理由を探す
      • 分類:情報収集・検索
      • 始め方:Slack標準機能から試せる
      • 「いつ決まったか」や正確なキーワードを覚えていなくても、「価格を変更した理由は何だったか」のように質問できます。回答だけで終わらせず、出典から元の会話を確認します。
    3. 海外拠点の投稿を翻訳し、返信案を作る
      • 分類:コミュニケーション支援
      • 始め方:Slack標準機能・外部AIとの連携向け
      • 投稿を翻訳し、要点をつかんだうえで返信の下書きを作ります。翻訳だけでなく、「丁寧だが簡潔に」「確認事項を二つに絞る」といった調整にも使えます。
    4. ハドル終了後に担当者と期限を整理する
      • 分類:業務効率化・自動化
      • 始め方:Slack標準機能から試せる
      • 会議の要点、決定事項、担当者、期限を整理します。議事録を作ること自体を目的にせず、次に誰が何をするのかが分かる状態を作ります。
    5. 週次報告から変化や問題点を見つける
      • 分類:分析・意思決定支援
      • 始め方:外部AI・業務アプリとの連携向け
      • 複数の週次報告をまとめ、前週からの変化、繰り返し出ている問題、確認が必要な数字を抽出します。AIには判断を任せず、人が見るべき箇所を絞るために使います。
    6. 社内制度への繰り返し質問に回答する
      • 分類:人材・組織開発
      • 始め方:業務アプリ・自社専用Bot向け
      • 入社時の案内、社内制度、研修資料などをもとに回答案を作ります。新しく入った人が、必要な情報に自分でたどり着きやすい環境を作れます。重要な制度説明は、人事や担当部門が内容を確認します。
    7. 顧客からの問い合わせに一次回答案を作る
      • 分類:カスタマーサポート
      • 始め方:業務アプリ・自社専用Bot向け
      • 問い合わせ内容を要約し、過去の回答やFAQをもとに返信案を作ります。定型的な質問は速く処理し、例外、クレーム、契約に関わる内容は担当者へ回します。
    8. 社内告知や投稿文の下書きを作る
      • 分類:クリエイティブ・コンテンツ
      • 始め方:Slack標準機能・外部AIとの連携向け
      • Slack上の議論や決定事項を材料に、社内告知、イベント案内、プロジェクト更新の下書きを作ります。背景を毎回ゼロから説明せずに済むことが、SlackとAIを組み合わせる利点です。
    9. 障害対応の経緯と次の作業をまとめる
      • 分類:開発・IT支援
      • 始め方:Slack標準機能・外部AIとの連携から試せる
      • 障害対応チャンネルから、発生時刻、影響、実施した対応、未解決事項を整理します。技術部門だけでなく、社内への状況共有や事後報告の作成にも役立ちます。
    10. セキュリティ通知を短く整理する
      • 分類:セキュリティ・コンプライアンス
      • 始め方:業務アプリ・自社専用Bot向け
      • 大量の通知から、影響範囲、緊急度、確認が必要な点を抜き出します。ただし、AIの要約だけで安全性や対応方針を決めてはいけません。元の通知を確認し、担当部門が判断します。

    最初は「読む・探す・まとめる」から始める

    SlackでのAI活用は、専用Botを作ったり、複雑なシステム連携をしたりすることだけではありません。

    長いスレッドを要約する。前に決まったことを探す。会議の宿題を整理する。まずはそのどれか一つで十分です。

    試して便利だと感じたら、同じ作業を繰り返している人へ広げます。それでも足りなければ、専用アプリや外部AIを検討します。自社専用のBotや自動化は、その後です。

    大切なのは、使えるAIを増やすことではなく、Slack上のどの仕事を少し楽にしたいのかを決めることです。

    明日の朝、未読の多いチャンネルを一つ選び、要約から試してみてください。そこが、SlackでAIを使い始める最初の一歩です。

    引用

    [^1]: Guide to AI features in Slack|Slack
    [^2]: Guide to apps in Slack|Slack
    [^3]: ChatGPT app in Slack|OpenAI Help Center
    [^4]: Introducing Claude Tag|Anthropic
    [^5]: Slack用のGemini Enterpriseアプリを構成する|Google Cloud
    [^6]: Slack AI Features & AI Assistants|Slack
    [^7]: Understand app permissions|Slack
    [^8]: Security for AI features in Slack|Slack
    [^9]: Use AI to write or edit content in a canvas|Slack
    [^10]: How to use Slackbot|Slack

  • AIに丸投げしない仕事設計——Loop Engineeringとは何か

    AIに丸投げしない仕事設計——Loop Engineeringとは何か

    毎回AIに同じことを言っていませんか——仕事の回し方を先に決める方法

    ChatGPTやClaudeに仕事をたのんでも、最初から思ってた答えが返ってくるとは限りません。。

    「もう少し短くしてください」

    「この数字も入れてください」

    「前回と同じ形式にしてください」

    「出典が足りません」

    「この部分だけ書き直してください」

    何度かやり取りすると、ようやく仕事で使えるものになります。

    ここで、一つ疑問が浮かびます。

    この確認と修正を、毎回人間が一つずつ指示し続ける必要はあるのでしょうか。

    今回解説するLoop Engineeringは、AIとのやり取りそのものをなくす考え方ではありません。人間がその都度行っている確認や修正を、最初から仕事の手順に組み込む考え方です。

    AIが作る。決めた条件と照らし合わせる。足りない部分だけを直す。それでも解決しなければ、人間に戻す。

    こうして、行き当たりばったりだったやり取りを、毎回同じ基準で進められる仕事の型に変えます。

    Loop Engineeringとは何か

    Loop Engineeringは、次のように説明できます。

    AIに一回ずつ指示する代わりに、目的、材料、確認方法、やり直す条件、終わる条件、人間が確認する場所を先に決めておく考え方です。

    もっと短く言えば、AIに毎回口頭で指示するのではなく、仕事の進め方とチェック方法を先に決めておくことです。

    ここで注意したいのが、この言葉の由来です。

    Loop Engineeringは、Anthropicが公式の新しい方法論として発表した名称ではありません。

    今回の調査で確認できた範囲では、2026年6月にソフトウェア開発者で著述家のAddy Osmaniが、この言葉を使って考え方を整理しました。その後、Business Insiderなどが取り上げ、AnthropicでClaude Codeを率いるBoris Chernyの実践とともに紹介したことで知られるようになりました。

    一方、Anthropicはそれ以前から公式資料の中で、仕事を小さく分けること、結果を評価すること、長い作業の途中経過を引き継ぐこと、使える場所を制限すること、条件を満たすまで繰り返すことなどを説明してきました。

    つまり、名前は新しいものの、中身はこれまで積み上げられてきたAIの仕事設計に近いのです。突然現れた、まったく新しい技術ではありません。

    一件の依頼票と、毎月使う業務手順書

    普通のプロンプトは、今日の一件をどう処理してほしいかを書いた依頼票です。そして、Loop Engineeringは、同じ仕事を毎回どう進め、どこで検品し、問題があればどこまで戻るかを決めた業務手順書です。

    営業報告書を例にすると、一件の依頼票は次のようになります。

    この売上表を分析して、営業報告書を書いてください。

    これでも下書きは作れます。

    ただし、数字が合っているか。根拠のない説明が混ざっていないか。前回と同じ形式になっているか。人間が一つずつ確認し、その都度AIへ伝えなければなりません。

    Loopでは、先に次の進め方を決めます。

    • 当月の売上表と前月の売上表を読む
    • 年間目標との差を確認する
    • 前月との差が大きい項目を三つ挙げる
    • 数字と文章が一致しているか確認する
    • 資料にない原因を事実のように書かない
    • 前回の報告書と同じ見出しを使う
    • 数字が違えば集計まで戻る
    • 根拠がなければ該当部分だけ書き直す
    • 二回直しても解決しなければ人間へ戻す
    • 上司への提出は人間が行う

    プロンプトは、一回の仕事を頼むものです。

    Loopは、作成、検品、手直し、打ち切り、承認までを含む仕事の決まりです。

    長いプロンプトを書くだけではLoopになりません。完成の条件と、間違ったときの戻り先が決まっていることが重要です。

    ケース1:毎週の情報収集

    営業企画やマーケティング、経営企画では、毎週のように業界ニュースを探します。

    単に毎週月曜日に同じ検索を実行するだけなら、決まった予定の実行です。

    Loopでは、出てきた結果を見て、次の行動を変えます。

    1. 新しい情報を探す
    2. 古い記事や重複を除く
    3. できるだけ元の発表や公式資料を優先する
    4. 重要な話題を三つに絞る
    5. 根拠となるリンクがあるか確認する
    6. 足りなければ追加で調べる
    7. 人間が重要度とコメントを確認する
    8. 社内共有は人間が行う

    情報が少なければ追加で探します。同じ話題が重なっていれば整理します。根拠がなければ、その項目は外すか、もう一度調べます。

    決まった時間に動くことより、結果を見て次の行動を変えることがLoopの特徴です。

    ケース2:毎月の営業報告書

    毎月の営業報告書には、次の材料を使います。

    当月の売上表、前月の売上表、年間目標、報告書のひな型、前回上司から受けた指摘です。

    AIには、集計、前月との差の発見、文章の下書き、形式の確認を任せます。

    人間には、数字の最終確認、原因の判断、来月の方針、上司への提出を残します。

    まずAIが数字を集計します。元のExcelと合わなければ、文章を直す前に集計まで戻ります。

    数字が合ったら、差が大きい項目を抜き出します。

    次に説明文を作ります。ただし、売上が落ちた理由をAIが勝手に決めてはいけません。資料に根拠がなければ「要確認」とします。

    説明に根拠がなければ、その部分だけを書き直します。

    二回直しても数字や説明が合わなければ、人間へ戻します。来月の方針は、営業現場の事情を知る人が決めます。上司への提出も人間が行います。

    ケース3:顧客アンケートから改善案を作る

    顧客アンケートの自由記述を読む仕事にも、Loopを使えます。

    1. 自由記述を似た内容ごとにまとめる
    2. 多かった意見を数える
    3. 深刻な問題を分ける
    4. 改善案を作る
    5. 改善案がどの顧客の声から出たのか確認する
    6. 元の声と結びつかない改善案は削る
    7. 採用する案は人間が決める

    AIは、もっともらしい改善案を増やすことがあります。

    そこで、「その案は、どの顧客の声から出たのか」を必ず確認します。

    元の声に戻れない改善案は、いったん削ります。AIの発想力より、元の材料とのつながりを優先します。

    Loopを作る前に決める六つのこと

    Loop Engineeringを、難しい設計手法として考える必要はありません。

    仕事を頼む前のチェック項目だと思えば十分です。

    1.何を終わらせたいか

    「売上を分析する」では曖昧です。

    「前月との差が大きい商品を三つ挙げ、理由の候補と確認すべき点を報告書にする」のように、完成の形を決めます。

    2.何を材料にするか

    Excel、過去の報告書、会議メモ、公式資料など、AIが使ってよい情報を決めます。

    使ってはいけない資料も決めておきます。

    3.どうなれば合格か

    「いい感じ」では確認できません。

    • 数字が元のExcelと一致している
    • 根拠のない説明がない
    • 指定の見出しがそろっている
    • 重要項目が三つ以内にまとまっている
    • 出典のリンクが付いている

    人が見て確かめられる条件にします。

    4.不合格なら何を直すか

    数字が違えば集計部分へ戻る。出典が足りなければ調査部分だけ追加する。見出しが違えば形式だけ直す。

    全部を最初からやり直すのではなく、足りない部分だけを直します。

    5.何回で打ち切るか

    AIが同じ失敗を繰り返すことがあります。

    二回または三回で止め、人間へ戻すと決めておきます。

    6.どこで人間が確認するか

    公開、送信、削除、購入、契約、採用、金銭、顧客対応などは、人間が最後に確認します。

    戻せない操作ほど、人間を挟む。

    これが基本です。

    Loopはどこに書けばよいのか

    最初は、WordやGoogleドキュメント、メモ帳で構いません。

    普通のチャットで仕事を一度行い、AIが間違えた場所と、人間が出した修正指示を書き留めます。

    仕事が完成したら、AIに次のように頼みます。

    今回行った仕事を、次回も同じ方法で進められるLoop設計メモにまとめてください。
    目的、使う資料、作業手順、完成条件、確認方法、修正方法、停止条件、人間が確認する場所を入れてください。

    AIが作ったメモを人間が確認し、足りない条件を加えます。

    ただし、メモを作っただけでは、次回も確実に使われるとは限りません。

    そこでProjectを使います。

    ProjectはLoopを動かす仕事場

    Projectは、同じ仕事に関係する資料や会話をまとめておく仕事場です。実際の運用では、三つに分けると分かりやすくなります。

    Projectの指示欄

    ここには、毎回必ず守る短いルールを書きます。

    たとえば月次営業報告なら、次のような内容です。

    資料にない原因を事実として書かない。
    重要項目は三つ以内にする。
    修正は二回までとする。
    上司への提出は行わず、人間の確認待ちで止める。

    仕事場の壁に貼った注意事項のようなものです。

    Projectの資料置き場

    ここには、詳しいLoop設計メモや、判断に使う資料を置きます。

    • 報告書のひな型
    • 良い完成例
    • 年間目標
    • 前回の完成版
    • 上司から受けた指摘
    • Loop設計メモ

    ChatGPTでは「情報源」、Claudeでは「プロジェクトナレッジベース」と呼ばれています。

    ChatGPTでは、会話の中で作った良い回答をProjectの資料として保存する仕組みがあります。Claudeでは、次回も確実に参照させたい内容を、会話に置いたままにせずナレッジベースへ追加する運用がより重要です。

    毎回のチャット

    毎月の仕事は、同じProjectの中に新しいチャットを作って実行します。

    たとえば「2026年7月営業報告」というチャットを作り、その月だけ使う資料を渡します。

    • 7月の売上表
    • 6月の売上表
    • 7月の会議メモ
    • 今月の特記事項

    そして、次のように頼みます。

    Projectの指示とLoop設計メモに従って、7月の営業報告を作成してください。
    まず必要な資料がそろっているか確認してください。
    条件を満たさない場合は二回まで修正し、解決しなければ人間へ戻してください。
    上司への提出は行わず、確認待ちで止めてください。

    つまりProjectでは、次のように役割を分けます。

    • 指示欄は、毎回守る注意事項
    • 資料置き場は、手順書と見本
    • 毎回のチャットは、今月の作業記録

    一つの長いチャットを延々と使うより、週別、月別に新しいチャットを作るほうが、どの資料で何を作ったのか追いやすくなります。

    改善はチャットの中だけで終わらせない

    7月分の報告書で、AIが売上高と受注額を混同したとします。

    その場で直すだけでは、翌月も同じ間違いをするかもしれません。

    仕事が終わったあと、AIに次のように頼みます。

    今回、人間が修正した内容を一覧にしてください。
    来月以降も必要なルールと、今回だけの修正を分けてください。
    恒久的に必要なルールは、Loop設計メモへの追記案にしてください。

    人間が内容を確認し、正しければLoop設計メモを更新します。

    たとえば、次の一文を加えます。

    売上高と受注額を混同しない。報告書では売上高だけを使用し、参照した列名を確認結果に記載する。

    短く、毎回必ず守らせたい内容なら、Projectの指示欄にも加えます。

    チャット履歴は実行記録であり、業務手順書ではありません。

    次回も確実に使いたい学びは、指示欄かLoop設計メモへ移します。

    Skillは、複数の仕事場で使う共通マニュアル

    Projectで同じLoopを二回、三回と使うと、毎回変わらない部分が見えてきます。

    • 必要な資料を最初に確認する
    • 数字を元の資料と照合する
    • 根拠のない説明を書かない
    • 指定のひな型に合わせる
    • 二回で止める
    • 提出前に人間へ戻す

    この共通部分を、別のProjectでも使えるようにしたものがSkillです。

    たとえば、東京、大阪、福岡の三つの営業部があるとします。

    Projectは三つ作ります。

    • 東京営業部の月次報告
    • 大阪営業部の月次報告
    • 福岡営業部の月次報告

    売上、目標、上司の指摘は、営業部ごとに違うからです。

    一方、「月次報告をどう作るか」は共通です。

    そこで、共通の手順だけを「月次営業報告Skill」にします。

    Projectには、この部署についての情報を置く。

    Skillには、月次報告をどう作るかを置く。

    毎月変わるExcelや会議メモはSkillへ入れません。変わらない手順、完成条件、確認方法、修正方法、停止条件を入れます。

    利用できるSkillの作成方法や対象プランは、ClaudeとChatGPTで異なります。

    Claudeでは、簡単なSkillなら文章中心で作成でき、個人向けを含む広いプランで利用できます。ただし、登録時には専用のファイルとしてまとめる作業が必要になる場合があります。

    ChatGPTでは、会話や編集画面からSkillを作る仕組みが案内されていますが、独自Skillの提供は現時点では組織向けプランの情報が中心です。個人利用者が全員同じように使えるとは限りません。

    そのため、最初からSkillを使う必要はありません。

    Projectの指示欄とLoop設計メモだけでも、Loopは十分に始められます。

    Skillが役立つのは、同じ進め方を別の案件、別の部署、別の担当者でも使いたくなったときです。

    PC上の作業まで任せる段階

    ProjectやSkillでは、基本的に人間が必要なファイルを選んで渡します。

    PC内のフォルダから必要なファイルを探す。複数のExcelをまとめて読む。結果を別のファイルとして保存する。そこまで任せたい場合は、Claude CodeやCodexなどを検討します。

    これらは、PC上で実際に作業する担当者に近い道具です。

    Skillが作業マニュアルなら、Claude CodeやCodexは、そのマニュアルを見ながらファイルを扱う担当者です。

    ただし、普通のチャットより設定や安全管理が難しくなります。会社員が最初に使う必要はありません。

    人間の役割はなくならない

    Loop Engineeringによって、人間が不要になるわけではありません。

    人間の役割は、毎回同じ細かな指示を出す作業から、次の仕事へ移ります。

    • 何を達成するか決める
    • どの資料を使うか選ぶ
    • 何を良い成果とするか決める
    • AIの結果を評価する
    • 重要な判断を下す
    • 外部へ出す前に承認する
    • Loopそのものを改善する

    人間は作業者から、編集長や監督に近づきます。

    ただし、責任が軽くなるわけではありません。目的や評価基準を考える責任は、むしろ重くなります。

    間違った基準を渡せば、AIはその間違いを効率よく繰り返してしまいます。

    失敗の形と安全策

    AIは自信を持って間違えることがあります。自分の成果を甘く評価することもあります。

    間違った前提を次の作業へ引き継ぐ。何度直しても同じ失敗をする。実行回数と費用だけが増える。似たような文章を大量に作る。個人情報や社内情報を誤って渡す。間違ったメールや資料を外部に送る。

    そうした問題も起こり得ます。

    安全に始めるには、次を守ります。

    • 頻度が高く、間違えても戻せる仕事を選ぶ
    • いきなり送信や公開まで任せない
    • 削除、契約、購入、採用、金銭移動は人間が確認する
    • 最大の試行回数を決める
    • 作業履歴を残す
    • 個人情報や機密情報は社内ルールを確認する
    • AIの結果を元データや別の資料と照合する
    • うまくいくまでは手動で回す

    Loop Engineeringに向かない仕事

    何でもLoopにすればよいわけではありません。

    一度しか行わない仕事、毎回条件がまったく違う仕事、良し悪しを人間も判断できない仕事には向きません。

    ミスの影響が非常に大きい仕事も慎重に扱う必要があります。

    個人情報や機密情報を多く含む仕事、法務、医療、採用、経理などで人間の確認を置けない仕事は、安易にLoopへ入れるべきではありません。

    自動化する準備のほうが、元の作業より大変になる場合もあります。

    まずはシンプルな方法で十分ではないかを考えてください。

    今日から最初のLoopを作る

    1. 毎週または毎月、繰り返している仕事を一つ選ぶ
    2. 普通のチャットで、その仕事を一度行う
    3. どこでAIが間違えたかをメモする
    4. 完成の条件を五つ以内で決める
    5. 不合格だった場合の直し方を決める
    6. 二回または三回で止めると決める
    7. 公開や送信の前に人間の確認を置く
    8. うまくいったらProjectの指示欄と資料置き場へ残す
    9. 数回使って手順が固まったら、必要に応じてSkillにする
    10. PC上の処理まで必要になったらClaude CodeやCodexを検討する

    最初に選ぶなら、毎週の情報収集、月次報告書の下書き、アンケートの整理などが向いています。

    頻度が高く、元の資料と結果を比べやすく、間違えても公開前に戻せるからです。

    よくある誤解

    プロンプトはもういらないのですか

    いいえ。指示や合格基準は必要です。

    減るのは、毎回同じ修正指示を人間が一つずつ入力する作業です。

    完全に自動化しないと意味がありませんか

    いいえ。

    人間が確認と修正を行う手動Loopから始めるのが現実的です。

    プログラムを書けなくてもできますか

    できます。

    普通のチャットとProjectを使えば、手動または半自動で始められます。

    AIが間違えるなら、Loopにする意味はありますか

    間違えるからこそ、確認方法、やり直し、停止、人間承認を先に決めます。

    Claude CodeやCodexを使わないとLoop Engineeringではありませんか

    いいえ。

    普通のチャットやProjectの中で、人間がLoopを回すところから始められます。

    何をもって完成とするか

    Loop Engineeringは、AIへ仕事を丸投げするための技術ではありません。

    AIが何を見て、何を行い、どう確認し、どこでやり直し、いつ人間へ戻るのかを決める考え方です。

    大切なのは、AIを何度も動かすことではありません。

    何をもって完成とするかを、人間が決めることです。

    最初からClaude Codeや複雑な自動化に進む必要はありません。

    まずは普通のチャットで、繰り返している仕事を一つ選びます。完成条件と確認方法を決め、二回ほど回してみます。

    うまくいけばProjectの指示欄と資料置き場へ残します。

    別の仕事でも同じやり方を使いたくなったらSkillを検討します。

    PC上のファイル処理まで必要になったら、そのときにClaude CodeやCodexへ進めば十分です。

    この記事で伝えたかったこと

    Loop Engineeringは、AIを放置して働かせる方法ではありません。目的、合格条件、やり直し方、停止、人間の承認を先に決め、確認と修正を安全に回しやすくする考え方です。

  • 【初心者向け】ChatGPTとClaudeにどこまで仕事を任せる?相談からファイル整理までの4段階

    【初心者向け】ChatGPTとClaudeにどこまで仕事を任せる?相談からファイル整理までの4段階

    旅行先を調べる。メールの文章を直してもらう。冷蔵庫にある食材から献立を考えてもらう。分からない言葉を説明してもらう。ChatGPTを、こうした相談に使っている人は多いでしょう。それだけでも十分に便利です。

    ただ、AIは質問に答えるだけではありません。求人文を作る。売上表をまとめる。研修資料を整える。毎月の報告書を作る。そんな仕事も、少しずつ預けられます。

    とはいえ、最初から難しい機能を覚える必要はありません。すべてを使う必要もありません。分かりやすいのは、「AIにどこまで任せたいか」で四段階に分けることです。

    まずは普通のチャット

    普通のチャットは、その場で相談できる相手です。

    求人募集の文章、お客様へのお詫び文、会議メモの要約、研修用の確認問題、舞台やイベントの告知文、メニューの説明文などを頼めます。ExcelやPDFなどのファイルを渡して、中身を読んでもらうこともできます。

    カフェの売上を調べてもらう

    たとえば、カフェのオーナーが先月の売上を見直したいとします。

    1. ChatGPTかClaudeのチャットを開きます。
    2. 先月の売上が入ったExcelファイルを選んで渡します。
    3. 「曜日別の売上と、よく売れた商品を教えて」と頼みます。
    4. 出てきた数字が元の表と合っているか確認します。
    5. 必要なら「店長会議用のグラフと、短い報告文も作って」と続けます。

    これだけでも、「土曜日は客数が多いが客単価は低い」「雨の日はテイクアウトが増える」といった傾向を見つける手助けになります。

    お客様への案内文を作る

    店の営業時間が変わり、お客様への案内を作る場合は、次のように進められます。

    1. 変更前と変更後の営業時間、変更日、理由をチャットに書きます。
    2. 「店頭掲示用に、やわらかく短い文章にして」と頼みます。
    3. 内容を読み、日付や時間に間違いがないか確認します。
    4. 必要なら「Instagram向けに少し短くして」と作り直してもらいます。

    看護師なら、新人研修のメモから確認問題を作る。役者なら、公演情報から告知文を作る。小売店の店長なら、スタッフへの連絡を読みやすく整える。使い方は同じです。

    文章作成、要約、ファイルの読み取り、表の整理といった基本的な仕事は、ClaudeとChatGPTのどちらでもできます。細かな違いを調べる前に、いま使っているChatGPTで、小さな仕事を一つ試してみて構いません。

    同じ仕事が続くならProject

    普通のチャットで困りやすいのは、新しい会話を始めるたびに説明が必要になることです。

    「うちの店は一人客が多い」

    「文章は親しみやすくする」

    「価格は1,000円以内」

    「前回はこの案を試した」

    こうした事情を毎回書くのは手間です。

    そこで役立つのがProjectです。Projectは、その仕事専用の部屋だと思ってください。関係する会話、資料、過去に作ったもの、AIへのお願いを一か所に置いておけます。

    新メニュー開発の部屋を作る

    カフェで新しいランチメニューを考えるなら、「秋の新メニュー」というProjectを作ります。

    そこに、過去のメニュー、原価表、試作品を食べたスタッフの感想、お客様アンケート、料理の写真、告知文の下書き、これまでAIと相談した内容をまとめます。

    最初の週に「この材料で三つ案を出して」と相談します。翌週は同じProjectを開き、「前回の試作品をもとに、価格と紹介文を考えて」と頼めます。

    前の会話や資料が同じ部屋にあるため、毎回最初から説明し直す手間が減ります。

    Projectが向くのは、新メニュー開発だけではありません。病院や介護施設の新人研修なら、研修資料、確認問題、前回の反省をまとめておけます。店舗の採用活動なら、募集条件、過去の求人文、応募者から多かった質問を置けます。役者の公演準備なら、企画書、稽古日程、プロフィール、告知文を一つにできます。

    一年間の売上改善や店舗マニュアルの作成のように、何週間、何か月も続く仕事にも向いています。

    Claude ProjectsとChatGPT Projectsは、どちらも基本的な目的は同じです。大切なのは細かな機能差ではありません。毎回同じ説明をしなくてよくなることです。

    PCの中でも作業してもらうならClaude Code/Codex

    普通のチャットでは、人がファイルを選び、AIに渡します。

    一方、Claude CodeやCodexは、先に作業するフォルダを決めると、その中から必要なファイルを探し、読んだり、名前を直したり、保存したりできます。

    Claude CodeとかCodexとか、名前だけを見ると、プログラムを作る人の道具に見えます。しかし、日常の仕事にも使えます。

    一年分の売上Excelから必要な月を探して集計する。請求書PDFを月別に分ける。ファイル名を「日付・取引先・金額」の形にそろえる。複数店舗の在庫表を一つにまとめる。Wordの研修資料をまとめて確認する。毎月の報告書を作る。古い資料を一覧にする。こうした仕事が候補です。

    普通のチャットが「相談相手」なら、Claude Code/Codexは、PC上で実際に作業する担当者です。

    請求書整理は、コピーしたフォルダから

    小さな店のオーナーが、一年分の請求書を整理するとします。最初から元のファイルを任せるのは避けます。

    1. 請求書整理用の新しいフォルダを作ります。
    2. 元の請求書をコピーして、その中に入れます。
    3. AIには、その作業用フォルダだけを見せます。
    4. 最初はファイルを動かさず、「日付、取引先、金額の一覧を作って」と頼みます。
    5. 月別の分類案と、変更後のファイル名を出してもらいます。
    6. 内容を確認し、問題がなければコピーしたファイルだけを整理させます。
    7. 最後に、人がフォルダと一覧を見比べます。

    この順番なら、間違いに気づきやすくなります。最初から削除や上書きを任せないことも大切です。変更する前に、何をどう直すのか一覧を出してもらいましょう。

    Claude CodeやCodexは、普通のチャットより導入や最初の設定が難しい道具です。スマホでは使えず、パソコンが必要です。ファイルを一つずつ渡す方法で困っていないなら、急いで使う必要はありません。扱うファイルが増え、人が探して渡すこと自体が負担になったときに検討すれば十分です。

    毎回同じ説明をしているならSkill

    Skillとは、よく頼む作業を「いつものやり方で」と頼めるようにするものです。

    毎週の売上集計を、同じExcel形式で作る。請求書を決まった名前に直して月別に分ける。会議メモを、いつもの議事録形式にする。店舗報告を、本部提出用の形に整える。公演の告知文を、決まった長さと雰囲気で作る。

    こうした作業では、毎回同じ説明を繰り返しがちです。Skillには、その説明、手順、見本、確認項目などを作業マニュアルとしてまとめておけます。

    作り方も、難しい設定から始める必要はありません。

    1. まず一度、いつもの作業をAIと一緒に行います。
    2. 完成した結果を確認します。
    3. 「今の手順を、次回も使える作業マニュアルにまとめて」と頼みます。
    4. 抜けている条件をAIと一緒に追加します。
    5. 次回から「いつもの売上集計で」と頼みます。

    実際の設定方法や使える範囲は、製品や利用環境によって異なります。「一言だけで、いつでも完全に終わる」と考えるのではなく、最初は結果を見ながら育てていくものだと考えるとよいでしょう。

    Claude Code/CodexがPC上で作業する担当者なら、Skillは、その担当者に渡す作業マニュアルです。

    ClaudeとChatGPTはどう選ぶか

    普段からChatGPTを使っているなら、まずChatGPTの普通のチャットを仕事でも試してみてください。同じ仕事が続くようになったら、ChatGPT Projectsへ進むのが自然です。

    Claudeも、全く同じことができます。最近はClaudeのほうが評判がよく、乗り換えている人も多いかもしれません。ただ、無料の枠がChatGPTより少ない印象があり、無償で使いたいならChatGPTを使い続けてもいいでしょう。

    PC内の複数ファイルを探し、まとめて扱う仕事では、Claude Code(Claudeのパソコン版)やCodex(ChatGPTのパソコン版)が候補になります。ただし、どちらを使う場合も、最初はコピーした少量のファイルで試してください。

    一つに決める必要はありません。文章や資料づくりはClaude、普段の相談や続く仕事はChatGPTというように、仕事に合わせて使い分けても構いません。反対の使い分けでも問題ありません。大切なのは製品の勝ち負けではなく、自分の仕事に合うかどうかです。

    AIに仕事を任せるときの約束

    患者、利用者、顧客、従業員の個人情報を、許可なくAIに渡してはいけません。職場や所属先にAI利用の決まりがある場合は、先に確認してください。

    AIは、氏名、金額、日付などを取り違えることがあります。医療、契約、支払いに関する内容も、必ず人が確認する必要があります。

    PC上のファイルを扱わせるときは、コピーした作業用フォルダから始めます。最初から削除や上書きを任せず、変更前に一覧や作業案を出してもらいます。そして最後は、人が結果を確認します。

    AIに仕事を任せることは、確認をやめることではありません。人が判断しやすい形まで、下ごしらえを手伝ってもらうことだと考えると安全です。

    まとめ

    • まずはチャット
    • 同じ仕事が続くならProject
    • PCのファイルも触ってほしいならClaude Code/Codex
    • 毎回同じ説明をしているならSkill

    全部を一度に覚える必要はありません。普通のチャットだけで十分な人も大勢います。いまの使い方で少し物足りなくなったときに、次の段階へ進めば十分です。

    この記事で伝えたかったこと

    AIの道具は、全部覚えるためにあるのではありません。まず相談から始め、同じ仕事が増えたら専用の部屋を作り、必要なときだけPC作業や作業マニュアルへ進む。それくらいの距離感で十分です。

  • 書評|人間と機械の利害は合致できるのか|”The Alignment Problem” by  Brian Christian

    書評|人間と機械の利害は合致できるのか|”The Alignment Problem” by Brian Christian

    グーグルで人工知能(AI)の倫理を研究していたティムニット・ゲブルが解雇されたニュースは2020年の終わりのニュースとしてはかなり衝撃的に受け止められました。なぜか。職場における差別の要素もあるのですが、AI倫理の重要性がかなり大きくなってきているからではないでしょうか。ビジネスと倫理のバランス。これはグーグルのような営利企業にとっては非常にデリケートな問題です。

    今回紹介するブライアン・クリスチャンによる”The Alignment Problem”は「人間と機械の利害は合致できるのか」という倫理を含めた幅広いAIに関する問題を扱った非常にタイムリーな書籍となりました。AIの何が問題で、どのような解決方法が模索されているのかを取材を通じて丁寧に解説しています。AIによるディストピアみたいな遠い将来の話ではなく、今現在何が起きていて、どのようなアプローチで解決が模索されているのか。

    The Alignment Problem: Machine Learning and Human Values (English Edition)

    The Alignment Problem: Machine Learning and Human Values (English Edition)

    • 作者:Christian, Brian
    • 発売日: 2020/10/06
    • メディア: Kindle版
    Algorithms to Live By: The Computer Science of Human Decisions (English Edition)

    Algorithms to Live By: The Computer Science of Human Decisions (English Edition)

    • 作者:Christian, Brian,Griffiths
    • 発売日: 2016/04/19
    • メディア: Kindle版

    本書では、まず”Alignment Problem”とは何かを解説します。三つの代表的な例が1) Word2vec、2) 保釈リスクを計算するソフトウェアCOMPAS、そして 3) Googleのイメージ検索です。それぞれ、AIが導き出す結果は必ずしも人間にとって正しくない。つまり、人間と機械の利害が合致(Align)できていない例です。

    Word2vecは非常に優れた言語解析ができると評価される一方で、人間の持つバイアスをそのまま引き継いでしまう性格もあります。例えば以下の数式。

    医者ー男性+女性=看護婦

    医者から男性の要素を抜き出し、女性の要素を加える。そうすると導き出される答えが「看護婦」となってしまう傾向にあるのです。え?正しいと思う?それがバイアスです。本来であれば……

    医者ー男性+女性=医者

    ……でなければいけないですよね。医者は職業なんだから、男性も女性も関係ない。このバイアスを取り除くのにImplicit Association Testが有力視されていますが、現時点でまだ解決できていません。Googleイメージのゴリラ問題もいまだに解決できてないですしね。

    AIは人間の言葉から女性差別や人種差別を学び取る – GIGAZINE

    分散表現とWord2vec|実践的自然言語処理入門 #3 – Liberal Art’s diary

    この他に、この書籍では公平性の問題や透明性の問題など幅広いトピックをカバーしています。例えば、「犯罪者の仮釈放の逃亡リスクをAIで判断していいのか?」という問題。2020年のアメリカ選挙で隔週で行われる投票法案でカリフォルニア州が仮釈放をAIで行う法案(Proposition 25)において住民に評決を託しました(関連記事)。結果的には否決されましたけどね。本書でも多くの専門家はまだAIがそこまで予測するのは難しいとの見解を示しています。

    同様に犯罪を未然に防ぐためにAIを活用できないのでしょうか?AIは犯罪を起こす可能性がある場所や人物を事前に特定できるのでしょうか。これもバイアスの問題と根っこは同じなのですが、公平性に問題があります。つまり、そのデータセットにバイアスがそもそもあるのではないかということです。公平性を高めるにはより多くのデータが必要になります。しかし、その場合はプライバシーの問題もより大きくなってしまいます。機械学習でプライバシーを担保する方法として「差分プライバシー(differential privacy)」が注目されています。

    AIはブラックボックスのシステムとして有名です。どうしてAIはそのように判断したのか人間には説明が難しい。例えばなのですが、コロナ禍でトリアージが必要になったとします。トリアージは「全員を救うことはできない」という前提のもとに、救う優先順位を決めることです。「命の選択」なんて日本語では言われたりもします。その「命の選択」をAIが決めたらどうですか?嫌ですよね。だって、AIがなぜAさんではなく、Bさんを優先したか、理由がわからないんですよ。実際に本書で紹介されているアメリカでの事例では肺炎のトリアージは、ルールベースのシステムが採用されています。ニューラルネットワークのシステムの方が精度が高い結果が出たにもかかわらずです。なぜか?ニューラルネットワークのシステムで出た結果は医師が説明できないからです。

    そこで注目されているのが「説明可能なAI(XAI:explainable AI)」です。XAIはDARPAをはじめとした多くの研究機関が力を入れている分野で、英語圏では一般的なテックメディアでも紹介されるくらいには注目されている分野です。

    XAIの分野で注目されているのは一般化加法モデル(GAM:Generalized Additive Model)だそうです。流石にここまで来ると私もよくわからないので、Qiitaのリンクを下に貼っておくので、興味があったら調べてみてください。

    ここまでが本書の中盤くらいです。残りはディープラーニングの歴史(主に強化学習)をおさらいした上で、「好奇心」をAIに植え付けるにはどうしたらいいのか(intrinsic novelty preference)、「不確実性」をAIが持つにはどうしたらいいのか(inverse reword designAI safety gridworlds)などこれからの課題と現在の研究結果の紹介となっています。

    ブライアン・クリスチャンは前著”Algorithms to Live By”で生活の中にあるアルゴリズムを普通の人にもわかりやすく解説してくれました。本書はそれよりもかなり技術よりの書籍ではありますが、倫理を含めたAIに関する非常にホットなトピックをわかりやすく解説してくれています。AIの知識をアップデートしたい人には強くお勧めします。

     

  • 書評|ルービック・キューブ考案者が語る創造性とデザイン|”Cubed” by Ernő Rubik

    書評|ルービック・キューブ考案者が語る創造性とデザイン|”Cubed” by Ernő Rubik

    ルービック・キューブの考案者エルノ・ルービックの初書籍が今回紹介する”Cubed”です。ルービック・キューブが世に出てから40年以上経過しています。これまでに自伝とか出ていそうなものですが、この本がエルノ・ルービックが初めて書くの書籍。自分とその発明品であるルービック・キューブについて語ります。内容はUXデザイン、成功と失敗、プロフェッショナルとアマチュアなど非常に多岐にわたります。単純な「自伝」ではなく、とても知的好奇心を刺激してくれる良書でした(オーディオブックはScribedにあります)。

    Cubed: The Puzzle of Us All

    Cubed: The Puzzle of Us All

    • 作者:Rubik, Erno
    • 発売日: 2020/09/15
    • メディア: ハードカバー

    本書の構成は「自伝的な部分」と「考察的な部分」に分かれます。時系列的に「自伝的な部分」が全体の骨格を作るのですが、その間に「考察的な部分」が挿入されます。その時点で自分が考えたこと、その時点と現代のつながり。

    エルノ・ルービックは子供の頃からパズルが好きだったのだそうです。タングラム15パズルペントミノに夢中になったそうです。立体的なパズルとの最初の出会いは立体型のペントミノだったと振り返っています。また、ルービック・キューブ以前に立方体のパズルとしてはソーマキューブがあったそうです。内向的な性格だったのでパズルのような一人遊びが合っていたそうです。チェスもやったそうですが、誰かと対戦するゲームより、ナイト・ツアーのような一人遊びの方が好きだったそうです。勝ち負けとか興味がない。

    自分は全てにおいてアマチュアだとエルノ・ルービックは振り返っています。職業としてはずっと教師ですが、発明家として、建築家として、デザイナーとしてそれぞれにおいてアマチュアだと言います。プロフェッショナルはお金や評価など「外的動機づけ」が必要だけど、アマチュアは自分のやりたいことをやりたい「内的動機づけ」が重要になるとエルノ・ルービックは言います。ただ、アマチュアとプロフェッショナルの区切りも実は曖昧でスティーブ・ジョブズのような人はお金に興味はなく「内的動機づけ」に突き動かされたプロフェッショナルなんだろうと。白黒はっきり分かれるようなものではないだろうと言います。

    教師として専門にしていたのは図法幾何学で、ルービック・キューブのアイデアもここから発展していったそうです。エルノ・ルービックがすごいのは想像力だけが創造性ではないと理解しているところです。ちゃんと作れないといけない。ルービック・キューブのプロトタイプは木で作り、輪ゴムや釣り糸で試したそうです。最終的に私たちがしるあの構造までたどり着きます。ルービック・キューブを分解したことがある人ならわかると思いますが、あの構造はすごいですよね。よく一人で考えた。

    そして、アルノ・ルービックは根っこはデザイナーなんでしょうね。お父さんがグライダーを専門にした航空デザイナーだったのと同じで。あの形、あの重さ、あの大きさに至るまで試行錯誤します。スムースに動くことも重要。UXデザイナーでもありインタラクション・デザイナーでもあるんですよ。本書でもUXデザインの重要性について言及しています。

    さらに、このパズルがちゃんと自分で解けるのかも実証します。すごく難しかったそうです、作った本人にとっても。最初は1ヶ月かかったそうです。「すごく根を詰めて必死にパズルを解いた」といろんなところで書かれているそうなのですが、実際には仕事の合間に楽しみながら取り組んだそうです。ルービック・キューブを解くアプローチとして直感派とアルゴリズム派がいるそうなのですが、アルノ・ルービックは直感的なアプローチと論理的思考で解いたそうです。さらに商用化に向けた特許申請や製造、素材をどうするかなどなど。海外で販売するときの登録商標の問題など紹介されています。 

    アルノ・ルービックはお金も地位も名誉も興味がないそうです。だから今まで本も書かなかったんでしょうね。古い車をずっと乗っている。高級な食事や衣服にも興味がない。建築家でもあるので、自分の家を作るのが好きなんだそうです。それができるだけのお金があれば十分。そして、自分の好奇心を満たすことができればいい。だから、いろんなことに興味があるんですね。本書でもルービック・キューブを軸としてAIやシステム思考について思考を巡らしています。

    自伝というよりは、様々な考えをルービック・キューブを中心に語ったエッセーのような本です。ルービック・キューブの発明者が存命で、現代の技術や考え方と関わり合いを持ち続けていることが(大変失礼ながら)単純に驚きでしたし、その考察もとてもユニークだと感じました。なぜユニークなのかと言えば、それが借り物じゃないからなんですよね。エルノ・ルービックはとてもユニークなルービック・キューブを一人で作り上げた人なんですから。

  • 書評|人間の「仕事」消滅後の世界|”A World Without Work” by Daniel Susskind

    書評|人間の「仕事」消滅後の世界|”A World Without Work” by Daniel Susskind

     人工知能によって人は仕事が奪われる!この手の話はすでにクリシェですよね。今さら真面目に語ってどうするの?今回紹介する”A World Without Work”はまさに語り尽くされた感のあるこのネタを改めて大真面目に検証する本です。

    本書を書いたダニエル・サスキンドは情報化による法律実務のパラダイムシフトなどの論文で日本でも知られるリチャード・サスキンド教授の息子さんです。”The Future of the Professions”を父親と共著で出していますが、今回が初めての単著となります。

    A World Without Work: Technology, Automation, and How We Should Respond

    A World Without Work: Technology, Automation, and How We Should Respond

    • 作者:Susskind, Daniel
    • 発売日: 2020/01/14
    • メディア: ハードカバー
    The Future of the Professions: How Technology Will Transform the Work of Human Experts

    The Future of the Professions: How Technology Will Transform the Work of Human Experts

    • 作者:Susskind, Richard,Susskind, Daniel
    • 発売日: 2017/03/02
    • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

    本書は既に多く語られた感のあるトピックを現在のトレンドに合わせて整理整頓することにより、新鮮な視点を提供することに成功していると思います。例えば、トマ・ピケティが提起しているような格差問題、GAFAの独占の問題にまで議論を広げています。風呂敷を広げすぎると、畳むのは大変。でも、ちゃんと整理整頓できていると思います。

    ダニエル・サスキンドは「テクノロジーが人から職業を奪う」という予測がハズレてきたのか、そして、なぜその予測は今度はハズレないかもしれないのかを説明していきます。まず、テクノロジーが人から職業を奪わなかった理由が以下の三点となります。

    1. テクノロジーは人を効率的にする
    2. テクノロジーはパイを大きくする
    3. テクノロジーはパイを変える

    経済学におけるスキルの定義は学歴でした。高学歴=高スキルという考え方。スキルプレミアムモデルと言います。しかし、スキルプレミアムでは説明できない事象が起きてきました。二極化です。そこで新しいタスクベースの仮説が生まれました。それがALM仮説です。「テクノロジーがルーティンなタスクをなくし、人はクリエイティブな仕事ができるようになる」という楽観的な考えはここからきています。人間とテクノロジーは補完的な関係であるというのが「1. テクノロジーは人を効率的にする」考え方で、これまではその仮説は正しいように見えます。

    また、テクノロジーは生産力が高いのでパイを大きくします。パイが大きくなるので、人の労働する余地は残されるのです。さらに農業から工業、工業からサービスへ産業が移行したようにテクノロジーはパイ自体を変える効果もあります。テクノロジーが一部の人のタスクを奪ったとしても、新しいタスクが生まれます。ALM仮説によりテクノロジーと人間の関係性はうまく説明ができたと思われました。しかし、結論を出すのはまだ早いとダニエル・サスキンドは主張します。

    これまでのテクノロジーは人間が指示をする必要がありました。AIは人間を真似ることで失敗を繰り返してきました。人間を頂点とした考え方が(間違っていたと言わないまでも)うまくいかなかったのです。しかし、現在のAIは人間を真似ることをやめました。AIは人間から学ぶことなく最適解を見つけることができるようになりました。AlphaGo Zeroのように。AGI(強いAI)は遠い将来に可能になるかもしれませんが、目先にある特定のタスクを人間よりできるようになることを目指したANI(弱いAI)が勝利しました。人間が唯一の頂点なのではなく、複数の頂点があり得るとANI(弱いAI)は証明しつつあります。そうなると、人が説明できるルーティンなタスクだけでなく、人が説明できないノンルーティンなタスクもテクノロジーで人間とは違ったやり方でできるようになることを意味しています。

    AIが進化した世界において、ALM仮説でも説明ができないようになってきたとダニエル・サスキンドはいいます。ルーティンではない仕事もできるようになってきた。もちろん、クリエイティブな作業を含めて全ての仕事がルーティン化してしまうには数十年かかるかもしれない。ひょっとしたらそれ以上かかるかもしれない。ジューディア・パールが言うように現在のAIでは因果関係を見つけることはできないと主張していますし。マーカス・デュ・ソートイもAIがアートを作れるようになる日は来ないのではないか?と示唆しています。現在は確かにそうなのですが、100年後の未来までは誰もわからないし、テクノロジーが、これまでは「ノンルーティン」だと考えられてきたタスクを「ルーティン」としてできることが多くなってきているのは確かなのですし、「ルーティン」の割合は徐々にですが大きくなり続けています。

    テクノロジーが人間の仕事を奪うと何が起きるのか?貧富の差が生まれた要因の一つがテクノロジーだとダニエル・サスキンドは解説していきます。この本の前半はAIについてなのですが、後半は経済や社会の仕組みの話になっていきます。人間の仕事がなくなった世界で、私たちはどのような社会の仕組みを作ることができるのでしょうか。ここで大きく参照されるのがトマ・ピケティです。格差をなくすには累進課税が必要だし、資産に対する税金も強化しなければいけない。この辺の主張は丸ごとピケティです。さらにベーシック・インカムにも主張を展開していきます。ただし、ダニエル・サスキンドは全員に平等なUBIは信じていなくて、範囲を決めるCBIが必要だと主張します。

    本書は現代の言論トレンドを「うまくまとめた」感があります。すごく現代の今旬なテーマをよく研究してるし、それを一つのパッケージとしてまとめたのは素晴らしい手腕だと思います。しかしながら、ダニエル・サスキンドが持つユニークな考え方が見えてこないのも欠点ですね。「よくまとめたなー」とは思うけど、新しい考え方には全く触れることがなかった。何とか自分の立ち位置を作ろうと頑張っている若い研究者の本。そう考えれば、少しはあたたかい目で応援したくもなってきますが。

  • 書評|60年前のケンブリッジ・アナリティカはダメなスタートアップの典型だった?|”If Then” by Jill Lepore

    書評|60年前のケンブリッジ・アナリティカはダメなスタートアップの典型だった?|”If Then” by Jill Lepore

    フェイスブックなどから個人情報を集め、データ分析をして、投票行動に影響を与えるキャンペーンを行ったケンブリッジ・アナリティカは多くの人にとって民主主義への脅威に映りました。しかし、ケンブリッジ・アナリティカのような会社は最初ではありませんし、おそらく最後でもないでしょう。

    ジル・ルポールによる書籍”If Then”は行動科学とコンピューターを組み合わせによる投票者の行動分析レポートでジョン・F・ケネディーの大統領選挙戦にも関わったシミュルマティックス社の歴史を振り返ります。ケンブリッジ・アナリティカが誕生するはるか前からコンピューターによる行動操作をしようと考え、実行した人たちがいたんですね。ただ、なぜ彼らは成功しなかったのでしょうか?アイデアは良さそうなんですが。それがこの本のテーマです。

    If Then: How the Simulmatics Corporation Invented the Future (English Edition)

    If Then: How the Simulmatics Corporation Invented the Future (English Edition)

    • 作者:Lepore, Jill
    • 発売日: 2020/09/15
    • メディア: Kindle版

    「シミュルマティック」とは聞きなれない言葉ですが、シミュレーションとオートマティックを組み合わせた造語だそうです。人間行動のシミュレーションと自動化。名前からして、とても不気味なのですが創業者たちは全くそんなこと思っていなかったようです。いまだったら、マーク・ザッカーバーグもラリー・ペイジも自分たちがユーザーの個人的な行動データを集めてビジネスに利用するのが「不気味」だとは思ってないと思うんですよね。それに近い感覚をシミュルマティックス社の創業者たちも持っていたようです。

    シミュルマティックス社の創業は1959年。1950年代に民主主義の根幹である「選挙」を変える二つが発展しました。ひとつは、コンピューター。1952年アメリカ合衆国大統領選挙の予測をUNIVACを使って行ったのが最初。もうひとつは行動科学です。フォード財団とランド研究所が行動科学の分野で本格的にリサーチに力を入れるのがこの時期。

    シミュルマティックス社はこの二つの大きな流れを結び付けました。コンピューターによる人間行動の予測。なんとなく、イギリスのEU離脱キャンペーンやトランプ大統領が勝利した2016年の大統領選挙戦でFacebookなどから得た個人の行動データを使った選挙キャンペーンを主導したケンブリッジ・アナリティカを彷彿させますよね。

    確かに、シミュルマティック社はスキャンダラスな面においてはケンブリッジ・アナリティカに近いです。ジョン・F・ケネディの選挙戦でアンケートをコンピューターで分析して政策と投票行動に関するレポートを出しました。そして、ケネディが選挙で勝利した後に、その事例をメディアに大々的にアピールしてケネディの立場を危うくしてしまいました。無断で自分たちの実績をPR?そりゃそうだよ、馬鹿か?お前らよく考えろ!この行動はロバート・ケネディーの逆鱗に触れて出禁になってしまいます。

    行動科学とコンピューターを組み合わせて選挙に利用する。このアイデアは確かに当時は斬新でした。いろんなことに利用できるぞ!とシミュルマティックス社の創業者たちは胸を躍らせました。広告だ!広告で大儲けできるぞ!なかなかいい目の付け所だと、グーグルやフェイスブックのビジネスモデルを知っている現在のボクらたちは思いますよね。しかし、シミュルマティックス社はグーグルでもフェイスブックでもないのです。データがない。当時、消費者の行動データを持っていたのは広告代理店です。そして、大手の広告代理店は自分たちで同じことをやりはじめ、自分たちのクライアントにサービスを提供しはじめました。

    選挙に関してはケネディー大統領の件もあって出禁状態です。そこで、ピヴォットしたのがメディアです。政党に選挙予測のデータをうることはできないけど、メディアになら売れるのでは?なんとニューヨークタイムズが契約してくれました。しかし、ここでも大チョンボをやらかしてしまいます。シミュルマティックス社にはまともなコンピューターの専門家がいなかった!

    そのあとはベトナム戦争で行動科学とコンピューター予測をベトナムの現地で実験する仕事をアメリカ軍から請け負ったりします。それも、やっぱりイマイチな結果。アイデアはいいのだけれど、スキルがついてこない。なんか、ダメなスタートアップの「あるある」ですよ。