タグ: 開発

  • ビットコインを使うUXプロセス(暗号化通貨の支払いシステムを開発から学ぶ)

    ビットコインを使うUXプロセス(暗号化通貨の支払いシステムを開発から学ぶ)

    原文:”Cryptocurrency payment UX process” by Samantha Shaibani

    暗号化通貨は技術コミュニティーの中でも外でもとてもアツいトピックです。興味と意識が高まる中で、暗号化通貨に多くの人が引き寄せられています。

    多くの人がウォレットをダウンロードして、ビットコインやイーサリアムなど暗号化通貨を購入しています。多くの人は投資と考えていますが、実際に暗号化通貨を使って何か買うことができるのでしょうか?結局のところ、暗号化通貨は通貨で、それを使って何か買うことをできるのでしょうか。

    この記事は以前に書いた記事”crypto wallet MVP“での私たち(Joseph Guerra, Brandon Fancher, Garren DiPasquale, Sam Shaibani) の活動の続きです。私たちはデジタル通貨のウォレットから支払いシステムにピボットして、開発することにしました。そこから学んでいきます。開発するシステムの名前はマルシェ(Marché)です。フランス語で商人という意味です。いいでしょ、ウィ(oui)?

    マルシェはWebサイトで簡単なものを買うことができます。ブロックチェーンのはじまり「ジェネシスブロック」のコーヒーマグとか。私たちの目的は使いやすくて満足のいくユーザーエクスペリエンスのデジタル通貨支払いシステムです。私たちは自分たちが経験した三つのプロセスを共有したいと思います。

    パート1:学ぶ

    私たちの仮説は「デジタル通貨をすでに持っている人はそれを使いたい」でした。すでに似たようなシステムはありますが、それがうまく活用されているのか、実際に利用しているのかがわかりませんでした。

    Earnで調査

    Joeは Earn.com を利用してデジタル通貨の利用と動機について調べました。Earnは回答者に現金またはビットコインで受け取ることができるので、私たちにとって素晴らしいツールでした。

    過半数以上の人 (93%) はデジタル通貨を投資目的で所有していました。そして、多くの人 (83%) はデジタル通貨で何か買うことに前向きでしたが、半分の人 (49%) が実際にデジタル通貨で何かを飼った経験があるだけでした。最後の質問は「どうしたらデジタル通貨を使いますか?」というオープンな質問で、詳細なフィードバックを得ました。 Joeは回答を以下のように分類しました:

    この調査では「利便性」(28%) が最も重要だとわかりました。次が割安感、価格の安定、売り手が受け付けること、暗号化通貨でしか買えないものと続きます。これらの結果からさらなる疑問が生まれました。

    どうすればモノを買いやすくなる(利便性が高まる)?スクリーンの数を少なくすればいい?QRコード?満足いくアニメーション?ステータスの可視化?

    利便性はユーザーエクスペリエンスにフォーカスすることで解決できそうな問題のようです

     手数料、税金、個人情報、最先端な感じと答える人はあまり多くなかったのには少し驚きました。おそらく、利便性に比べるとニーズとしては高くないのでしょう。暗号化通貨の特徴を強調することでデジタル通貨での買い物における使いやすさ、セキュリティー、利便性を改善することができるかもしれません。

     これらの調査の結果はマルシェの開発をするための調査を継続する正当性となりました。

     もし興味があれば、オリジナルのデータはこちらにあります。

    競合調査

     競合調査では暗号化通貨を支払い方法として採用しているeコマースサイトのチェックアウトのプロセスを研究しました。実際には Coinbase CommercePursePayBearそしてEtsyです。

     このチェックアウトプロセスのデザインの調査でEtsyのショップの一つがデジタル通貨を扱って支払いをシミュレートするのを見つけました。そこで、イーサリアムのパーカーをカートに入れ、いくつかのステップののちにチェックアウトすることができました。確認画面が表示され、メールが送られてきましたが、支払いの情報は全く入力していません。特にやることはなさそうだったので、そのまま普通に暮らしていました。

     数日後にイーサリアムのパーカーが出荷されたという出荷確認がメールで送られてきました。特に売り手から連絡はなく、私が実際に支払いしてないことを知らないのかもわかりません?わお。

     私たちは売り手はデジタル通貨を受け取るオプトインをしなければいけないことを知っていました。しかし、それは支払いを回収するのには十分な情報ではありませんでした。

     悪のデザイン反対運動の推進者として私たちは売り手にコンタクトをして状況の説明しました。予想通り、売り手は何も状況を理解していませんでした。売り手は支払いがされたかわかりませんし、無償で商品を送っているかもわかりません。ウォレットのアドレスをメッセージで送ってくれたので、BitPay を使って支払いを完了しました。

     私たちはこの得られた知識を善意と適切なデザインを議論する目的で共有しています。支払いシステムを悪用しないようお願いします。善良であってください。

    EtsyのショップオーナーにGoogle Formを使ってアンケート

     この経験をしてEtsyの他の売り手にもデジタル通貨を受け入れるエクスペリエンスのフィードバックをもらいたいと考えました。私たちは5つの質問で構成されるシンプルなアンケートをショップのオーナーに送りました。

     調査で分かったのはネイティブでデジタル通貨をサポートしていない貧弱な支払いシステムがチェックアウトで使われているということでしたが、それでも売り手は引き続きデジタル通貨を受け付けていく意向があるということでした。

     これによりマルシェの方向性を検証することができました。これこそまさに私たちが提供しようとしていたものですから。チェックアウトの間にスキャンして支払いを直接サイトに送ることです。

    売り手と会話する

     言葉を広めて支払いの受け入れについてフィードバックをもらう素早い方法として、近くのコーヒーショップやファーマーマーケットに行って売り手と直接話をしました。デジタル通貨は真のピアツーピアの支払い方法なので、ファーマーマーケットで試してみる価値はとても大きいです。人と人の取引で、中間業者がいません。

     私たちが話をしたほとんどの人は Square のPOSを使ってApple PayとGoogle Payを受け付けていました。そこで「ビットコインは扱ってないんですか?」と聞いたところ、回答は「いや」か「それってApple Payで扱ってるの?」か「ビットコインって何?」でした。そこで、デジタル通貨のことを説明して、売り手と買い手のメリットについても説明しました。

     Earnでの調査を振り返って考えると、売り手の受け入れについてどう考えればいいでしょうか?もっと見えるようにする必要があるし、市場での加速も必要そうです。改善の余地は大いにありそうです。でも、どうやってメリットについて伝えればいいでしょうか?

    パート2:開発してみる

     私たちは取引のプロセスがどのようになるのかを理解したいと考えました。そこで、機能するプロトタイプの開発をはじめました。これは自分たちで支払いシステムのプラットフォームが開発できるという技術的な仮説検証でもありました。

     これはブロックチェーンのユニコーンがチームにいることで初めて可能になることがわかりました。例えばBrandon Fancherのように。彼が機能するバージョンのマルシェを作り、ユーザーテストをすることが可能になりました。

     マルシェはReact *1ベースのWebアプリケーションでHeroku *2上のNode.js *3Express *4でホストされています。Bitcore-wallet-service *5、階層的決定性ウォレット(HD wallet:hierarchical deterministic wallet)とBIP39の暗号を解読するBIP39ニューモニック(BIP39 mnemonics)を使ってビットコインキャッシュ(BCH)での支払いを処理します。ビットコイン(BTC)は手数料が安いので選びました。そして技術スタックによってビットコインキャッシュ(BCH)に簡単に変換できるからです。

    フローチャート

     JoeとBrandonはユーザーとの接点の鍵となるユーザーとテクニカルのフローを作りました。この俯瞰的な視点はUXの改善点の発見に役立ちました。特にプロセスをもっと便利にできる部分です。これは時間が経つにつれて変わることを意識しています。

    パート3:実際の人(と猫)で試してみるニャー

     私たちはマルシェをデジタル通貨とビットコインの取引について知識がある人(と)で試してみました。

     私たちの究極的なゴールはパパやママが使えるくらい簡単なものをデザインすることだったので、(最初は)その複雑さを十分理解していてデジタル通貨のタッチポイントを理解している人からフィードバックをもらうことにしました。ハイテク好きのペルソナで私たちのMVPの最初のアーリーアダプター層です。

     これが意図的に「ジェネシスブロック」のマグカップを選んだ理由です。そうすることでクリプト信奉者を集めることができると考えました。

     この機能するプロトタイプでマルシェを試すために朝のコーヒーセッションを開催しました。完全に機能するわけではないですが、これは学びの実験で、多くの面白いことを学ぶつもりでした。

    The Workarounds

     デザイナーの観点で見るとデジタル通貨のユーザービリティテストは全く異なったものでした。理想的には単にユーザーにプロダクトを渡してそれを観察したいところでしたが、今回はもう少し手助けが必要でした。

     テストしてくれる人たちに実際のお金を使ってもらうわけにはいかないので、取引をするのに十分なビットコインキャッシュがあるBitPayウォレットが入った私のスマホを渡しました。BitPayのユーザービリティーをテストしていないので、これは完璧なシナリオとは言えませんでした。BitPayを使っていない人には、少し慣れが必要でした。

     少し歪曲された結果になることはわかっていましたが、私たちは完全な取引をするためにこのようなやり方をする必要がありました。それでも最初期にこれほど多くのことが学べたので、これはこれでいいのです。

    チェックアウトのフロー

     チェックアウトのプロセスをテストしている時、どの個人情報をマルシェが求めているのか、いないのかで混乱があることに気がつきました。

     現実の世界では送り先の住所を入力して、支払いの住所が同じか違うか確認をします。支払いの住所の確認のステップがないことに気がついたユーザーは私たちがこのステップを入れるのを忘れたのだと考えました。

     もちろん、忘れていません。暗号化通貨で支払い処理をする場合、支払い住所は必要ないのです。なぜなら、支払い住所などないのですから。ウォレットに住所はリンクされていません。

     これはユーザー教育とステップを通じての明確さがさらに必要だということです。情報がないこと、どうしてないのか。これらはユーザーのセキュリティーに関する見方を軽減します。ね、おもしろいでしょ?

    ビットコイン(BCH)からアメリカドル(USD)に

     そして、ユーザーがビットコインキャッシュの額とそれに対するアメリカドルの価値を見たときに混乱することが観察できました。マルシェはユーザーが考えるようにデザインされています。これはいい取引レートなのか?なんで二つのコストがあるのか?もっといい取引レートになるまで待ったほうがいい?Amazonのような伝統的な取引ではアメリカドルの額を見て特に考えることなく続けます。

     たとえデジタル通貨の考え方を理解した人であっても、テストセッションでは混乱しました。知らないわけではないのです。単にクレジットカードを使ういつもの慣れたやり方と違うからです。つまり、この分野に慣れた人でも使い勝手の問題に遭遇することを学ぶことができました。まだまだ改善の余地があります。

    次のステップ

     私たちはアンケートをたくさん送って、動くプロトタイプを作って、人とユーザビリティーテストをすることによって多くを学びました。これがMVPの目的であり、UXのプロセスです。

     私たちはマルシェを立ち上げ、プロモーションをして、実際のユーザーで試す計画です。そしてもちろん、オーダーしてくれた人にはマグカップを送ります!

    関連記事

     

    *1:JavaScriptのフロントエンドライブラリー

    *2:PaaS(Platform as a Service)と呼ばれるサービスで、アプリケーションを実行するためのプラットフォーム

    *3:環境非同期型のイベント駆動のJavaScript環境

    *4:Node.js向けのMVCフレームワーク

    *5:BitPayのライブラリ

  • 書評|バーチャルリアリティーの歴史|Dawn of the New Everything by Jaron Lanier

    書評|バーチャルリアリティーの歴史|Dawn of the New Everything by Jaron Lanier

    ジャロン・ラニアーはヴァーチャルリアリティーを商用製品としてはじめて世に送り出したVPL Researchの共同創業者で「VRの父」と呼ばれる人です。VR自体はずっと前に生み出されているので、彼自身はその称号にあまり心地よさを感じてはいないようですが、間違いなくVRのパイオニアの一人です。

    日本でも彼の著作が翻訳されていますが、ボクはこの本がはじめて。内容的にはジャロン・ラニアーの生い立ちとヴァーチャルリアリティーの解説の二つの軸が入れ替わるように進んでいきます。トマス・ピンチョンがたまに出てきますが、「ああ、こういうのが好きなんだなあ」感がひしひし伝わってきます。つまり、読みづらいけど面白い。

     

    Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality

    Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality

     

     

    ジャロン・ラニアーの生い立ち

    まず、ジャロン・ラニアーの生い立ちが面白い。家庭の大黒柱で彼にとっても精神的な支柱であった母親を若くして亡くしたことが彼の人生に大きな影響を与えます。母親が家計を支えていたので、父親が働くことに。母親が残してくれたお金で買った家が完成前に放火で焼失。数年間父親とテント暮らしをします。

    ジオデシック・ドームの家

    いろんなことに興味があって、オシロスコープを家に照射してハロウィーンの演出をしたりしていたそうです。テント暮らしで少しづつお金がたまり、それで徐々に家を建てました。父親はジャロンに家を設計させてくれました。そこでジオデシック・ドームを設計して二年かけて完成させます。普通の子供はオシロスコープで遊んだりジオでシック・ドームの家を作ったりしませんよね。

    権威も学位も何もないアヴァンギャルドサイケデリックヒッピー

    高校はあまりいかず、ニューメキシコ州立大学でなんとなく講義を受けます。そして、そのままニューメキシコ州立大学に入ってしまったそうです。プログラミングはここで覚えます。そのあとはニューヨークに行ってミュージシャンをしたり、恋人についてロサンジェルスまで行ったりします。基本的に無職の放浪生活。なんとなくジャック・ケルアックの『路上』を彷彿させます。ビートではなく、アヴァンギャルドサイケデリックヒッピー風ではありますが。ジョン・ケージとか出てきます。

    ふとしたきっかけで国境の川べりに沈んでいたクルマをもらい、それでシリコンバレーに行きます。スクリュードライバーでエンジンスタート。最初はミートアップのスピーカーとして呼ばれたそうです。そこでヴァーチャルリアリティーの話をしたのがシリコンバレーにきたきっかけ。ストリートミュージシャンをしながら生計を立てていたそうですが、ゲーム会社に就職してようやく社会人デビュー。アラン・ケイやスティーブ・ジョブズなどいろんな人が登場してきます。また、Suicide ClubとかSurvival Researchとか失われた当時のシリコンバレー文化についても触れられています。

    シリコンバレーでビデオゲームのプログラミング。そのお金でVRの会社を立ち上げ。ビジュアルを操作できるコンピュータはまだなかったので、最初はプログラム言語の開発。これがバーチャルリアリティーとしては初めての商用セットRB2 (reality built for two)を開発するVPL Researchとなります。でも、一番売れたのはEyePhoneとDataGloveだそうです。

    バーチャルリアリティとは

    この本では50以上のバーチャルリアリティーの定義が紹介されています。つまり、バーチャルリアリティーはいろんな意味に捉えることができる。それがこの本のタイトル”Dawn of the New Everything”の由来となっているのでしょう。バーチャルリアリティの定義の一つが「脳と感覚のシミュレーション」です。人間の脳は直接風景を見ることはできませんよね。目というセンサーを通じて見ることができる。これをジャロン・ラニアーは潜水艦と潜望鏡の関係に例えています。

    人間にはたくさんのセンサーがあります。皮膚にもたくさんのセンサーがある。熱を感じるセンサー、痛みを感じるセンサー、摩擦を感じるセンサー。パブリックイメージではゴーグルがバーチャルリアリティーですが、バーチャルリアリティーは視覚だけではないんですね。ポケモンGOもそういう意味ではバーチャルリアリティーなんです。

    バーチャルリアリティーに関する素朴な疑問への回答

    アベンジャーズみたいに画面操作できるようになる?

    ハリウッド映画とかで目の前にスクリーンが出てきてそれを操作するシーンとかありますよね。アヴェンジャーズとか。 ジャロン・ラニアーによるとあれは無理なんだそうです。フォトンが物質にあたる必要がある。そうしないと光は発生しない。でも、ナノロボットでそういう操作はできるようになるかもしれない。ナノロボットもバーチャルリアリティーを構成する要素なんです。

    ナノロボットもバーチャルリアリティー?

    例えば、ゴーグルで風景を見たとしても、実際に触れることはできない。でも、ナノロボットでバーチャルな物質を作ればそれを触れることでバーチャルに触れることができる。人間の視覚と触覚を騙すことができる。

    この人間のセンサーを騙すのがバーチャルリアリティーなんですね。少なくともその定義の一つ。

    なんで3D酔いするの?

    あまり長い間、バーチャルリアリティーの世界にいると3D酔いします。バーチャルリアリティーは人間のセンサーを騙す仕組みなので、これがうまくいかないと酔ってしまうわけです。そして視覚を騙すにはトラッキングが重要なのだそうです。このトラッキングの問題は徐々に改善されてきてはいるものの、完全に無くすことは難しいとのことです。まず、個人差が大きい。そして、人間はすぐに慣れて、騙されていることに気づいてしまうんですって。人間ってすごいですね。

    この他にも、LSDとバーチャルリアリティーの違いや明晰夢(Lucid Dream)とバーチャルリアリティーの違いなども解説してくれています。Kinect Hackなど最近のバーチャルリアリティー文化についても触れられています。

    関連記事

     

  • スロースタートアップ|第二回:dribbble|おじさんたちのサイドプロジェクト

    スロースタートアップ|第二回:dribbble|おじさんたちのサイドプロジェクト

    スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だとサイバーエージェントがそうですよね。そういうブートストラップなスタートアップをスロースタートアップと呼びたいと思います。

    「スロースタートアップ」の第二回目はデザイナーならみんな大好きdribbble *2 です。どういうわけか、デザイナー御用達ツールはブートストラップが多いんですよね。ShutterStockとかBalsamiqとか。次回紹介するMailChimpもデザイナーのスタートアップですし。今回は若者スタートアップのヒリヒリした話ではなく、おじさんスタートアップのほんわかした話です。

    dribbbleってなに?

    まず、簡単にdribbbleについて。dribbbleはデザイナーが自分の作品をシェアできるWebサービスです。非常にコミュニティー色が強く、多くの場所でボランティアがdribbbleミートアップを開催しています。そういう意味では、世界で最も大きなデザイナーコミュニティーの一つだとも言えます。ボク自身はグラフィックデザイナーではないのでdribbbleは使ってなかったですが、シンガポールやアムステルダムにいた時代にUX関連のトピックではよく参加していました。dribbbleは招待制で、既存のユーザーから招待がないと正式なメンバーになれません。これがスノッブな感じがして、一部にはアンチも存在します。あとで説明しますが、招待制にしたのは理由があって、彼らが外部から資金調達をしないブートストラップのスタートアップであるのが影響しています。

    創業者はおじさんヒップスターとハッカー

    dribbbleの創業者であるリック・ソーネットとダン・シーダーホルムがユニークなのは、かなりおじさんだということですね。スタートした当時には結婚して子供もいた。それなりに安定した仕事もあった。Webの黎明期にインスパイアされてダンはデザイナーに、リックはデベロッパーになります。普通に考えれば、わざわざ大変なスタートアップなんてやる必要ありません。

    リック・ソーネットはリサーチャーだったそうです。でも、黎明期のWebの魅力にとりつかれ、プログラミングを再び学ぶために大学の修士課程に戻り、デベロッパーになりました。IBMやFideltyなどの大企業のほか、スタートアップでも働いていました。

    ダン・シーダーホルムはもともとWebデザインの世界では超有名人で、CSSの可能性を広げた人で、たくさんの著書があります。日本でも『Web標準デザインテクニック即戦ワークブック』が翻訳されていますね。元々はスケートボードのロゴやデザインが好きで、ミュージシャンとして働いていた時にアルバムのデザインなどをしていたそうです。自分がデザイナーだと認識しはじめたのは黎明期のWebの影響が大きかったそうです。タイポグラフィーなどいろんな要素が必要で、多くの人に見られることでデザイナーであることを意識したそうです。

    おじさん達の出会い

    この二人はどうやって出会ったのでしょうか。ダンとリックはボストンで近所に住んでいて、同じ年代の子供がいました。そこでおくさん同士が知り合いになり、二人は出会います。リックは「ダン・シーダーホルムってなんか聞いた名前だな?本とか出してなかったっけ?」と調べました。あ、やっぱり有名な人だ!

    最初は有名人とは釣り合わないんじゃないかと遠慮していたそうですが、そのうちに友達になります。リックは週二日ダンのオフィスを使わせてもらい、残りは家で仕事をしていました。当時はヘルスケアスタートアップのPatientsLikeMeというプロジェクトに関わっていました。リックがダンのオフィスにいるときに二人でサイドプロジェクトができたらいいねという話になりました。デザイナーとデベロッパー。ヒップスターとハッカーはいつの時代も黄金のコンビですよね。

    サイドプロジェクトとしてのdribbble

    ダンが考えていたのはデザイナーが自分たちの仕事を共有できて、「ドリブル」できる場所。2007年くらいからアイデアを温めていました。当時は写真共有サイトのFlickrがとても人気があり、Twitterも人気がではじめた頃でした。その二つを組み合わせたらどうだろうというのが最初のアイデアでした。そして、それは紫でなければいけない!と最初から決まっていたそうです(笑)

    ダンとリックの二人はプロトタイプを徐々に磨き上げ、ベータテストを始めます。手書きの招待状に招待コードを書いて、dribbbleのTシャツを同梱してデザイナーの友人たちに送りました。eメールではなく、創業者による手書きの招待状と手作りのTシャツ。これは最初のベータテスターに参加してもらうのにとても大事だったそうです。ダンのネットワークもあり初期の段階から30人のデザイナーが作品をアップするようになりました。

    dribbbleにとってプロダクトとは

    リックはベータの段階では最初は自分の家の猫の写真などをアップしていたそうです。本物のデザイナーが実際に作品をシェアするまで自分でも確信を持てなかったようです。つまり、Flicker+Twitterというコンセプトはあったものの、デザイナーのコミュニティーというアイデアが最初からあったわけではなかったのです。

    デザイナーたちが作品をアップしはじめると、彼らがどのような意図で、どのようなプロセスでデザインをしているのかがわかるようになりました。普段は最終的なデザインだけではわからなかったものが見えてくる。これ自体がエクスペリエンス(体験)だということがわかりました。

    当初はPixelの交換やゲーミフィケーションなど様々なアイデアがあったり、実際に実装したものもありましたが、ベータテストで方向性がクリアになると不必要な実装やアイデアは全て捨てたそうです。

    長いベータと最初の危機

    ダンもリックもフルタイムの仕事があって、家庭があって子供もいました。dribbbleはかなり長い間サイドプロジェクトでベータでした。招待制はあまり大きなサービスをサイドプロジェクトで続けることができないという理由からでした。多くの機能追加のリクエストもありましたが、優先順位をきちんとつける必要がありました。

    この長いベータ期間のため、デザイナーにとってdribbbleは知り合いが気兼ねなく作品をシェアできる場所でした。そしてこれが正式版のローンチになると問題になりました。デザイナーとしては自分の初期のアイデアをあまり共有したくない。ベータで少ない人だけに共有されていたからよかったが、一般公開になると話が違う。当然ながらプライベートモードなど多くのリクエストがありました。

    しかし、ダンと(特に)リックはプライベートモードの実装には反対しました。一部しか見れないのであればエクスペリエンスは失われてしまう。ユーザーがそれで離れていってしまうのだったら直さなければいけないが、まずはプライベートモード無しでいくと決めます。数週間はクレームの嵐だったそうですが、それでも作品の投稿が減ることはなかったそうです。ここでの学びは「目に見えた変更を行えばネガティブな反応がある。ネガティブな反応があったからといって、その変更が悪いかどうかはわからない。ユーザーの行動を見ていいか悪いかの判断をする必要がある」だそうです。

    ブートストラップとフルタイム

    一般的な若いスタートアップは資金調達をして必死に働いて急速に成長させようとします。その間、仕事に100%コミットする必要があります。ダンとリックの場合は違いました。ダンとリックにとっては家庭が最優先でした。これは他の若いスタートアップの起業家と大きく異なるところです。子供がいて家族を養うとなると「ラーメン利益 (Ramen Profitable)」ではやっていけません。

    最初は大きな宣伝はせずにゆっくりと育てる。これは前回紹介したGithubも同じことが言えます。Githubは最初の二年間で一回しかTechCrunchに取り上げられていません。外部から資金調達する一般的なスタートアップがファストスタートアップだとしたら、ブートストラップの場合はスロースタートアップですね。

    最初にdribbbleでフルタイムとして働きはじめたのはリックでした。2010年5月です。dribbbleの広告でリックの半分のサラリーが賄えるくらいの売り上げがありました。当時のdribbbleはデザインよりもエンジニアリングでやることが多かったので、まずはデベロッパーのリックから。二人一緒にフルタイムの必要はない。リックとしては一時的に収入が減ったとしてもdribbbleをフルタイムでやってみようと決意します。ダメだったらまたスタートアップでデベロッパーとして働けばいいじゃない。

    普通の(でもリッチな)おじさんに戻る

    dribbbleはInstagramと同様に少人数のチームで続けました。2017年1月にTinyに買収された時、従業員は8人でした。7年のスロースタートアップの後、ダンとリックは元の場所に戻っていきます。前よりお金に余裕をもって。

    参考資料

    Rich Thornett on bootstrapping Dribbble – DNSimple Blog

    Interview with Dribbble’s co-founder Dan Cederholm | Webdesigner Depot

    What Drives Dribbble Founder Dan Cederholm? – Envato

    Dribbble Founders on Design, Entrepreneurship, & Community – YouTube

    Dribbble 2.0 – Andrew Wilkinson – Medium

    関連記事

     

    *1:自己資金で事業をするという意味。コンピューター用語としてコンピューターを起動することをブートと言います。ブートストラップは外部からの助けがなくプロセス実行できることを言います。それがスタートアップの世界でもそのまま使われるようになりました。ちなみに、本来的な意味はブーツの後ろにつく輪っかの部分です。ブーツをかける輪っか。

    *2:ドリブルと読みます。ロゴはバスケットボール。

  • スロースタートアップ|第一回:Github|スポーツバーとラーメン利益

    スロースタートアップ|第一回:Github|スポーツバーとラーメン利益

    スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だとサイバーエージェントがそうですよね。そういうブートストラップなスタートアップをスロースタートアップと呼びたいと思います。

    これから何回かにわたってブートストラップで大きくなった「スロースタートアップ」をいくつか紹介していきます。まずは先日、マイクロソフトに買収されたGithubから。Githubは2008年に創業して、2012年までブートストラップでした。創業者たちはどのように生活費を稼ぎながらGithubをブートストラップしたのかみていきましょう。

    スポーツバーとサイドプロジェクト

    Githubはスポーツバーで生まれました。創業者のトム・プレストン・ワーナーとクリス・ワンストラスは夜遅くにバーで開催されるRuby開発者のミートアップに参加していました。何杯か飲んで休んでいるときにトムがクリスを見かけました。なぜかは覚えていないそうですが、その時にトムがやっていたプロジェクトだったGritをクリスに見せたそうです。GritはRubyで開発したGitレポジトリにアクセスするプログラムでした。トムはすでにWebでGitレポジトリを共有できるプラットフォームのアイデアを持っていました。そして、クリスが言います。「よし、一緒にやろう (I’m in. Let’s do it.)」このスピード感がいいですね。

    そして、翌日の2007年10月19日午後10時24分にクリスが最初のコードをGithubにコミットします。これがGithubのはじまりです。企業立ち上げの公式な手続きがあったわけではなく、二人のプログラマーがクールなことをやろうとした結果でした。

    次の三ヶ月、二人はGithubのプログラミングを行います。トムはGritを開発し続け、UIをデザインし、クリスはRailsのアプリケーションを作りました。毎週土曜日に会って、方向性を話し合いました。この頃、二人ともフルタイムで働いていてGithubはサイドプロジェクトでした。Githubはほぼ全てRubyで開発され、一部だけErlangのgit daemonを使いました。

    ローンチとマイクロソフトと「生かすか殺すか」の決断

    最初のプライベートベータは2008年1月。最初のコミットから三ヶ月後でした。そして、三人目の創業者となるPJハイアットが加わって4月に正式なローンチをします。この時のユーザー数は300人強。自分たちが素晴らしいことをしているという意識はあったそうですが、すごく大きくなるとは想像していませんでした。ローンチもメディアを招待して壮大にやったわけではありません。

    そして、その年の7月にトムは人生の岐路に立ちます。フルタイムで勤めていたPowersetがマイクロソフトに買収されたのです。29歳でした。トムはWordpressなどで使われるアバターのアドインとして有名なGravitorの開発者で前年にAutomatticに売却してからPowersetに勤めています。そのせいなのか、贅沢な暮らしが板についてしまっていて、この頃にはそれなりの額の借金があったそうです。しかも、マイクロソフトの条件はすごくいい。クリスとPJはトムより年下で、すでにフルタイムでGithubにコミットしていたそうです。フリーランスをしながら食いつないでいた。クリスなんてCNETで働いていたんですけどね。トムがマイクロソフトに移ったらGithubはお終い。そして、結局は期限ギリギリにPowersetを退職してGithubにフルタイムでコミットすることに決めたそうです。

    ブートストラップと「ラーメン利益」

    さて、三人は安定した収入を絶ってフルタイムでGithubにコミットします。そして、結果的に5年近く外部から資金調達をせずに自己資金だけで運営していくことになります。

    トムはGravitorで起業の経験があるので、無償で大きなサービスを提供するのは危険だと理解していました。Githubは大きなデータベースなのでサーバーコストの問題を解決する必要がありました。そうした理由でプライベートベータの段階では友人しか招待しませんでした。しかし、徐々にプライベートなレポジトリにお金を払っていいという人たちが出てきました。このプライベートリポジトリによるビジネスモデルが見えていたので三人はそれにかけてフルタイムでコミットできたんですね。

    サーバーコストはSlicehostのドメインとストックフォトくらいで、あまり大したことありませんでした。一番の問題は創業者たちの生活費。これが一番大きかったそうです。おそらくこれはどのスタートアップでも言えることだと思います。だからY Combinatorのポール・グレアムは「ラーメン利益 (Ramen Profitable)」が大事だと言ってるんですね。スタートアップの創業者がどれだけすごくても人間なんで、毎日カップラーメンが食べれるくらいの生活費は必要なんです。

    最初の頃は少額の給料をGithubから受け取り、設定したゴールを達成したら翌月からその額を少し上げていったそうです。足りない生活費はフリーランスの仕事などアルバイトで稼ぎました。ゴールを達成できなかった月もあったそうですが、最終的には三人とも生活費が稼げるくらいの収入になったそうです。約5年後の2012年に外部から資金調達をしますが、それまではこんな感じでブートストラップしてきたそうです。

    あとはご存知の通り、Githubはとても人気のあるサイトになり、マイクロソフトに買収されました。しかし、残念ながらトム・プレストン・ワーナーはマイクロソフトに買収される前にハラスメント問題でGithubを去ることになってしまいます。なんか、マイクロソフトと縁がない人なんですね……

    参考文献

    Bootstrapped, Profitable, & Proud: GitHub – Signal v. Noise

    Tom Preston-Werner on Powerset, GitHub, Ruby and Erlang

    How I Turned Down $300,000 from Microsoft to go Full-Time on GitHub

    GitHub co-founder Chris Wanstrath shares his story, University of Cincinnati

    関連記事

     

    *1:自己資金で事業をするという意味。コンピューター用語としてコンピューターを起動することをブートと言います。ブートストラップは外部からの助けがなくプロセス実行できることを言います。それがスタートアップの世界でもそのまま使われるようになりました。ちなみに、本来的な意味はブーツの後ろにつく輪っかの部分です。ブーツをかける輪っか。

  • バイドゥ(百度)のロビン・リー|Googleに勝った男が苦しんでいる理由

    バイドゥ(百度)のロビン・リー|Googleに勝った男が苦しんでいる理由

    バイドゥ(百度)は中国のプラットフォーマーであるBAT(バイドゥ/アリババ/テンセント)の一角にも関わらず、アリババやテンセントほど話題に上がりません。

    アリババやテンセントといったライバルに大きく後れを取っているというのが現在の評価です。どうしてそんなことになってしまったのでしょうか?創業のきっかけから現在に至るまでを見ていきましょう。

    BATの規模とそれぞれのポジション

    まず、バイドゥが置かれている現在の立場を理解する必要があります。アメリカのGAFA(Google/Apple/Facebook/Amazon)と中国のBATを比較してみましょう。また、より身近に数字を感じるために、日本企業もその中に入れてみましょう。単位は米ドルでBillion(10億)です。日本円だと1000億円。つまり、アップルの時価総額は約92兆円ということですね。すごいですね!

    アップル:$926.9

    アマゾン:$777.8

    アルファベット:$766.4 (Googleの親会社)

    フェイスブック:$541.5

    アリババ:$499.4

    テンセント:$491.3

    トヨタ自動車:$200.7

    バイドゥ$94.1

    ソフトバンク:$84.9

    ソニー:$59.9

    パナソニック:$34.9

    さて、アリババはFacebookに肉薄してきていますが、まだ届きません。そしてバイドゥはBATの中ではかなり低いポジションでアリババとテンセントと比べて時価総額は1/5ですね。それでも日本のソフトバンクより大きいのだから大したものですが。アリババとテンセントはそれぞれのコアビジネスに加えてモバイルペイメントとそれに付随するエコシステムの構築に成功しました。そして、それぞれトヨタ自動車の二倍以上の時価総額となっています。ちなみにパナソニックとWeWorkが同じくらいですかね。

    中国アリペイが2017年のデータを発表:中国の最新モバイル決済最新事情

    支付宝と微信のミニプログラムの違い

    経済的に恵まれない家庭からアメリカ留学まで

    バイドゥの創業者のロビン・リー(李彦宏)は1968年生まれ。陽泉市の工場で働いている夫婦の間で生まれました。中国は長らく「一人っ子政策」を実施してきましたが、なんとロビン・リーは五人兄弟の四番め。三人のお姉さんと一人の妹。ちなみに、彼自身も子供を四人授かります。

    ロビン・リーの生まれた家庭は経済的にはあまり恵まれていませんでした。そのため、母親は彼に勉強の大切さを教えます。裕福な家庭ならいろいろなコネがありますが、貧しい家庭だと中国で成功するために大切なコネがないんですね。勉強するしかないわけです。そして、北京大学を卒業後、一時期は企業で働きます。一年半後にニューヨーク州立大学のフェローシッププログラム *1 に合格してアメリカに留学します。頑張ればいいことあるわけですよ!

    バイドゥ前夜:検索エンジンで解決しようとしたインターネットの課題

    ニューヨーク州立大学の修士課程を卒業後(1994年)、ダウ・ジョーンズの子会社であるIDD Information Servicesに就職し、金融情報のデータベースとシステム化に取り組みます。また、The Wall Street Journalのオンライン版を作成します。この頃に奥さんと出会ってアメリカで結婚もしています。ここまで意外と普通ですよね。

    しかし、普通とちょっと違うのがIDDに務めていたときに独自に検索アルゴリズムを開発して、アメリカでその特許を取得したことです。当時はまだインターネットは成熟しておらず、登録されているドメイン数は1995年時点で18万ありました。AltaVistaなどの初期の検索エンジンはすでにありましたが、インターネット上にある情報を効率的に探し出すことはまだできませんでした。

    ロビン・リーはこの問題に取り組み、Webサイトから貼られたハイパーリンクの数を元に検索結果の優先度を決めるリンク分析の手法を開発します。このRankdexがバイドゥの技術的な基盤となります。これはほぼ同時期にスタンダード大学でセルゲイ・ブリン(当時の個人ページ)とラリー・ペイジ(当時の個人ページ)が開発していたBackRub(Googleの前身:当時のサイト)で使われるPageRankに近いものです。実はGoogleのPageRankより先にバイドゥのRankdexの方が先に実運用されて、特許もとってたんですね。

    しかし、このRankdexの開発はIDDではあまり評価されなかったようで、ロビン・リーは検索技術を活かせる企業への転職を模索します。そして、西海岸に拠点を持つInfoseekにソフトウェアエンジニアとして転職ます。のちにバイドゥの共同設立者となるエリック・シュー(徐勇)と出会うのもInfoseek時代です。エリック・シューは”A Journey to Silicon Valley”というテレビ番組のプロデューサーでした。

    Infoseekも初期のインターネット検索サイトの一つで、基盤技術としてはInktomiを使ってました。また、Infoseekは初めてインプレッションによるオンライン広告の評価であるCPM(Cost Per Thousand Impressions)で広告を販売した企業としても知られています。

    ロビン・リーは検索技術に集中するために転職したのですが、Infoseekは1999年にディズニーに買収され、検索企業からコンテンツ企業への転身することになります。この結果、検索エンジンに取り組んでいたエンジニアは職を失いました。ロビン・リーもその一人でした。1998年9月にはGoogleが最初の資金調達をします。検索エンジンがビジネスとして成り立つのかどうか、まだビジネスが判断しきれていない時期でした。

    バイドゥの立ち上げ:最初のビジネスモデルとピボット

    このような背景もあり、ロビン・リーは1999年に北京に戻ります。この年はジャック・マーが再起をかけてアリババ(阿里巴巴)を立ち上げた年でもありますね。当時は中国共産党50周年で、国としても盛り上がっていましたし、中国インターネットの黎明期となります。ロビン・リーとエリック・シューはシリコンバレーでのスタートアップ文化を直接体験してきました。どのように資金調達をしてスクラッチからビジネスを立ち上げるのかを見てきました。

    そして、ロビン・リーとエリック・シューはシリコンバレーのベンチャーキャピタルから120万ドルを資金調達して、1999年にバイドゥ(百度)を立ち上げます。最初のビジネスモデルはポータル向けの有償サービスとしての検索エンジンでした。独自のサイトは持っていませんでした。最初の顧客は当時から人気のあったシンラン(新浪)とソウフ(搜狗)で、独自のサイトを持たなくてもトラフィックは確保できていたからです。

    なぜ中国でGoogleが検索シェアを取れなかった?日本と中国の違い

    バイドゥが検索エンジンとして中国で確固としたポジションを築けたのもこの初期のシンランとソウフとのパートナーシップによるものが大きいと思います。中国のYahoo!は日本と比べてあまりうまく機能していませんでした。そのため、Yahoo!本社はアリババに投資をするのと引き換えに、中国Yahoo!の運営をアリババに任せることにしました。これもあまりうまくいきませんでしたが。

    日本の場合はYahoo!が最大のポータルサイトでしたよね。そして、検索パートナーとして選んだのはGoogleでした。日本の場合は中国と違って独自の検索エンジンがありませんでしたから。さらに日本にはYahoo!より人気のあるシンランやソウフのような独自のポータルもありませんでした。そのポジションに一番近かったのがLivedoorですかね。

    初期のGoogleが日本でのポジションを確立するのに日本のYahoo!が果たした役割は非常に大きなものがありました。日本にバイドゥのような独自の検索エンジンがあったら今とは全く状況が違っていたと思います。

    ビジネスモデルの転換

    閑話休題。しかし、この有償サービスとしての検索はビジネスモデルはあまり利益を生みませんでした。そこでロビン・リーが目をつけたのはOvertureがはじめた検索連動型広告 *2 でした。これはGoogleも直面する問題でしたが、独自のWebサイトでトラフィックを生んでそれを主体にビジネスをする判断って勇気が必要ですよね。大手のポータルサイトのトラフィックはあるものの、利益が低い。もちろん、自分でトラフィックを稼げば利益は高い。結局はロビン・リーは後者を選び、投資家やバイドゥの役員を説得します。そして2001年に独自のWebサイトであるbaidu.comをローンチします。Googleが独自の検索連動型広告をはじめるのが2002年です。

    Googleの中国上陸とダークサイドの時代

    ページランクと検索連動型広告の組み合わせは(Googleと同様に)ビジネスモデルとしては機能して、2004年には利益を出すようになりました。しかし、2006年にGoogleが中国に現地法人を設立して正式にローンチします。

    当時のバイドゥの検索シェアは80%でした。しかし、独自サイトを立ち上げるというバイドゥの決断を快く思わない一部のパートナーはGoogleにスイッチしたり、自ら検索エンジンを立ち上げるなどバイドゥから離れていきました。このため、2009年には検索シェアは60%まで落ち込み、Googleのシェアは33%まで追いつきます。悪いことは続くもので、アリババのショッピングサイトであるタオバオ(淘宝网)がバイドゥの検索からサイトをブロックします。

    そして、ならず者国家の中国とその手先のバイドゥというイメージがついてしまう一連の事件が起きるのもこの時期です。

    仁義なき戦いと政府の干渉

    バイドゥが中国政府と検索ワードのフィルタリングに合意するのがこの頃です。例えば、天安門やダライ=ラマといった中国政府が国民に触れて欲しくない情報を検索しようとすると以下のメッセージが表示されるようになりました *3

    捜索结果可能不符合相关法律和政策
    (法律法規や政策に合致しない恐れがあるため、検索結果を表示できません。)

    中国政府は1998年にジンジュン(金盾)というネットワークセキュリティーのプロジェクトを立ち上げています。このプロジェクトは電子マネーに関する取り組みのジンカー(金卡)や農業に関する取り組みのジンノン(金农)など12のサブプロジェクトから構成されています。これらの取り組みの中で特に有名なのがグレートファイヤーウォール(GFW:防火长城)という中国政府から見て有害な海外サイトを遮断する仕組みです。

    バイドゥが中国政府と合意したフィルタリングはGoogleにはその信念において合意できないものでした。リンクはGFWで遮断され、2009年にはGmailが攻撃を受けます。そして、Googleは2010年に中国からの撤退を決めます。この頃にはGoogleの検索シェアは17%まで落ち込んでいました。

    著作権問題やプライバシー問題、そして粉ミルク事件

    Googleの撤退は直接的には政治の問題ですが、この時期のバイドゥ自身も批判を集めることを多くしています。

    例えば、音楽の検索はバイドゥの検索トラフィックに大きく寄与していました。MP3の音楽ファイルを検索して、ダウンロードできたからです。このことにより、ワーナーミュージックやソニーBMGといったメジャーな音楽レーベルに訴訟を起こされていました。

    日本だと記憶に新しいのは日本語変換ソフトの情報漏洩ですね。

    しかし、バイドゥの企業イメージに国内外で大きくダメージを与えたのは粉ミルク事件に関連した検索結果の操作です。2008年にサンルー(三鹿)が製造した粉ミルクに化学物質メラミンが混入されていることが見つかりました。そして、新生児を含む多くの被害者が出ました。

    バイドゥはこの粉ミルクを製造していたサンルーから300万中国元を受け取り、検索結果を操作することを受け入れたというニュースが話題となり、中国国営テレビでも特集が組まれました。

    メラミン粉ミルク事件を呼び込んだ「免検制度」:日経ビジネスオンライン

    検索サイト「百度」がえらいことになっている – ITmedia PC USER

    このことが原因でバイドゥの企業イメージが大きく低下して、株価の下落や従業員のレイオフにつながりました。

    AIでアリババ、テンセントに追いつけるか?

    バイドゥは検索に依存したビジネスモデルからの脱却を図っています。そのカギとなるのがAIで、2013年にディープラーニングの研究所である百度深度学习研究院IDL(Institute of Deep Learning)をシリコンバレーに設立しています。

    そして、その研究成果が60のAIサービスから構築されるBaidu Brain(百度大脑)というAIプラットフォームです。この中で特に二つの技術にフォーカスしています。

    ひとつは音声認識技術のDuerOSで、AmazonのAlexaやAppleのSiriに近いものです。もうひとつはクルマの自動運転のApolloです。

    なお、中国を撤退したGoogleは2017年にGoogle AI China Centerを設立してAIを中心に中国ビジネスを再構築しようとしています。検索で受けた仕打ちをAIで返すことができるのでしょうか。ちなみに、初任給だけをみれば、中国でAI人材に一番投資しているのがGoogleとMicrosoftなんですよね。中国国内企業だとテンセントが高い。

    参考文献

    百度创业史_力成文学_励志的句子_励志名人名言大全_励志语录_励志小故事

    百度的创业过程_百度知道

    百度大脑_百度百科

    What investors need to know about China’s big trio: Baidu, Alibaba and Tencent | afr.com

    To find $13.5 billion: how rich is the Creator of the search engine Baidu Robin Li – FreeNews English – FreeNews-en.tk

    10 Things You Didn’t Know About Baidu Founder Robin Li

    The Rise of Baidu (That’s Chinese for Google) – The New York Times

    How Baidu Will Win China’s AI Race—and, Maybe, the World’s | WIRED

    関連記事

     

    *1:アメリカの大学にはスカラシップとフェローシップがあります。スカラシップは奨学金で、日本の学資ローンのような「奨学金」と異なり返す必要はありません。フェローシップはフェローというステータスを指しますが、スカラシップと同様に金銭的な補助を含むことがあります。貧しい家庭のロビン・リーがアメリカへ留学できた背景にはこのようなアメリカの制度があります。

    *2:入札価格で広告掲載順位が決定される完全オークション形式。源泉を辿ればIdeaLabのスピンオフプロジェクトだったGoTo.comです。

    *3:今では緩和されてるんですけどね。

  • 蘇りつつあるシャオミー(小米)から学ぶ「モノづくり」から「コトづくり」への変革

    蘇りつつあるシャオミー(小米)から学ぶ「モノづくり」から「コトづくり」への変革

    日本は製造業が強く、「モノづくり」が得意でした。これが過去形になってしまうのはアメリカ(アップルなど)や台湾(シャープを買収したホンハイなど)、韓国(サムソンなど)が日本の製造業を追い越してしまったからです。おそらく作るモノの品質自体はまだまだ追い越されていないのかもしれません。しかし、消費者が求めるものは「品質」から「体験」に変化してしまいました。これが「モノづくり」から体験という「コトづくり」へ変革しなければいけない理由です。

    シャオミー(小米) *1 はスマホのメーカーとして有名ですが、今はその枠にとらわれません。中国で三番目に大きな流通小売ですし、スマートホームやモビリティーでも存在感を示しています。つい最近まで凋落した企業とされていたのにです。今回はシャオミーがどのように「モノづくり」から「コトづくり」に変革したのかを見ていきましょう。ちなみに、今回はスタートアップよりも既存の日本企業に参考になる話かと思います。シャオミーを一般的なスタートアップと捉えると見誤ります。

    スタートアップというには恵まれたスタート

    シャオミーをスタートアップとするのは少し躊躇してしまいます。シャオミーの創業者のレイ・ジュン(雷军)は元々はキングソフトの社長です。そして、キングソフトの経営を退いてからエンジェル投資家として二十以上の企業に投資しています。

    2010年に元Google、MicrosoftやMotorolaのディレクタークラスの人たちとシャオミーを立ち上げます。最初から5億円の資金。ね、スタートアップというには豊富すぎる資金力と経験値でしょ?PayPalで成功してすでに大金持ちだったイーロン・マスクが立ち上げたスペースXやテスラと同じクラスですね。日本だと堀江貴文さんのロケット事業が近いでしょうかね。お金持ちにしかできないスタートアップってやっぱりあるんです。それでも成功したらすごい。スタートアップに貴賎なし。

    資金力も経験もあまりない若いスタートアップは一つのプロダクトに集中しますが、シャオミーの場合は豊富な資金力と経験値によって三方面から事業展開を同時に行いました。ソフトウェア、ハードウェア、サービスです。

    ソフトウェア

    シャオミーを有名にしたのはスマホですが、最初に出したのはハードウェアではなくソフトウェア。最初のプロダクトはAndroidのカスタムUIであるMIUI(ミーユーアイ)でした。これはカスタムROMとして組み込むこともできましたし、自分のAndroidのスマホに入れることもできました。ターゲットは既存のAndroidに満足できていないギークなコアユーザー。

    このコアユーザーにアピールするために既存のオンラインフォーラムを使ってMIUIの宣伝を人海戦術で行います。ポール・ブックハイトのディープアピールの法則と同じで熱狂的な100人のユーザーを育てます。このほかにもウェイボ(微博) *2 やウェイシン(微信:英語名WeChat) *3 を使ってユーザーと積極的に直接コンタクトを取り、フィードバックを受けます。

    メーカーが直接ユーザーの意見を聞いて、その意見がプロダクトに反映される。この当たり前のことができるメーカーってあまりないんですね。それを愚直にやったのがシャオミーでした。のちにシャオミーは独自のオンラインフォーラムを立ち上げますが、そのメンバー数は急速に膨れ上がりました。

    ここで育った熱狂的なシャオミーのファンはミーファン(米粉:ビーフンの意味)と呼ばれ、シャオミー成長の原動力となります。

    サービス

    シャオミーが次に出したのがメッセンジャーアプリである米聊(ミーリャオ)でした。シャオミーに関する書籍を何冊か読んだのですが、シャオミーの成長はこのサービスが支えることになっていました。中国で最初に出たチャットアプリとして実際にミーリャオはそこそこ人気が出ましたが、後発のWeChat(微信)に追い越されてしまいます。結果的に2016年からアップデートされずに仮死状態です。

    また、レイ・ジュンがエンジェル投資家として投資してきたスタートアップを雷军派と呼ぶのだそうですが、これがサービスのエコシステムを形成するはずだというのがシャオミーの書籍で喧伝されていることでした。中国ではGoogleのアプリストアであるGoogle Playがありません。そのために百度手机(検索サイトのバイドゥが運営)や应用宝(チャットアプリの微信の腾讯が運営)など様々なアプリストアがあります。シャオミーも独自のアプリストア小米应用商店を運営しています。

    ハードウェア

    シャオミーが満を持して最後に出したのがハードウェアであるスマホの『小米1』でした。創業から1年目ですね。クドイようですが一般的な若いスタートアップなら一年でスマホは出せないですよ。テスラのように電気自動車も出せないですけどね!

    小米1(クレジット:百度百科)

    シャオミーはオンラインの直販モデルに注力しました。当時はシンガポールに住んでいたので、友人たちも話題にしていました。最新のスマホと遜色ないのに安い。もちろん、各社のフラッグシップモデルと比べれば若干スペックは落ちますよ。でも、値段を考えればお買い得。そして、フラッシュセールという限定発売の手法を取っていたので、レア感がありました。インドで人気があったので、インド人の友人からフラッシュセールのタイミングを教えてもらって実際に買おうとしましたが、すぐに売り切れてしまうので買えませんでした。

    そして、2013年には中国ではスマホのシェア1位、世界でもアップルとサムソンに次ぐ3位まで登り詰めます。海外進出も加速させ、スマートTVなど他のハードウェアにも手を広げます。

    事業不振:飽きられた「モノづくり」

    好調なスタートを切ったシャオミーですが、2015年からあまりビジネスがうまく回らなくなってきます。レイ・ジュンはサプライチェーンの問題とオンラインチャネルへの過度な依存としていました。多くのメディアの分析は上位機種ではアップルとサムソン、下位機種ではファーウェイやOPPOとの競争の激化と説明することが多かったように思います。実際にファーウェイとOPPOにシェアを抜かれてしまいます

    いろいろと原因は考えられますが、根本的な原因は当時のシャオミーのプロダクトに十分な魅力がなかった。これに尽きるのではないでしょうか。求められる価格帯にそれなりのクオリティーのプロダクト。それをフラッシュセールというグロースハックの手法で売っていた。単にそれが飽きられてしまった。シャオミーの考えていたソフトウェア、サービス、ハードウェアによる三位一体の「コトづくり」は実現できていませんでした。

    ソフトウェアに関してはAndroidがアップグレードする毎にMIUIとの差が縮まってきました。例えば、MIUI 9とAndroid Oneでは評価が逆転します。Android Oneは発展途上国向けにシンプルに設計されたAndroidスマホで、ハードウェア設計から部品の調達までGoogleが行います。日本だとワイモバイルから出ていますね。

    www.youtube.com

    サービスに関してもメッセージングアプリのミーリャオは思ったようには立ち上がりませんでしたし、「雷军派」のエコシステムも形になりませんでした。ソフトウェアとサービスによる「コトづくり」が目指すことのはずだったのですが、結局は安くてそこそこのスペックのスマホというモノづくりに終始してしまったというのが飽きられてしまった原因ではないでしょうか。

    復活の兆し:シャオミーにとっての「コトづくり」とは?

    シャオミーは業績が悪化してからあまりメディアに注目されることがなくなりました。テレビだけでなく、炊飯器などの白物家電にも手を出しました。このような様々な取り組みはメディアには迷走に映りました。ただ、「迷走」は半分は正解で半分は誤解です。試行錯誤をしながら方向性を探していたと言った方が正しいでしょう。

    いまシャオミーは復活を遂げつつありますが、レイ・ジュンはシャオミーの復活のカギとして二つ挙げています一つはシャオミーシーチャン(小米市场:販売網)、もう一つはシャオミーインイェ(小米影业:Netflixのような動画サービス)のようなサービス強化です。これにスタートアップへの投資を通じたIoTエコシステムの強化を合わせた三つがシャオミー復活の原動力と言えるでしょう。

    販売網の強化

    オンラインの販売にこだわっていたのに『小米之家(シャオミーのいえ)』という直販店の展開もはじめました。かなりアップルストアを意識しているのがわかりますが、シャオミーのラインアップは家電まで広がっているので、おしゃれなヨドバシカメラな感じがしますね。

    小米之家の店内(クレジット:小米)

    シャオミーは流通小売の側面があります。そして、その販売力はシャオミーの強さの一つです。オンライン、オフラインを合わせた販売能力では中国国内ではアリババ(阿里巴巴)、ジンドン(京东:JD.com)に続き、シャオミーは第3位につけています。ちなみにアップルは第4位。もともとオンラインは強かったのですが、実店舗を加えて販売力を更に増強しました。

    サービスのリブート

    その動画サービスであるシャオミーインイェの立ち上げの時にレイ・ジュンは中国人らしい熱い口調で「心の中で再出発を誓う、この流れる熱い涙のために!2016年を起業の道を歩むすべての仲間と祝おう、永遠に若く、永遠に熱い涙を。*4」と言っています。サービスでシャオミーを作り直す宣言ですね。

    実際にシャオミーのサービス事業は昨年は三倍に増えて2億ドル近く利益を出し、60%の粗利により営業利益を押し上げています。

    スタートアップのIoTエコシステム

    シャオミーは基本的にはスマホの会社です。しかし、炊飯器や空気清浄機までシャオミーブランドで出しています。これはどうしたコトでしょうか?

    シャオミーは2013年に5年で100のスタートアップに投資する宣言をしました。そして、それらのスタートアップはすでにユニコーンとして10億ドル以上の資産評価を受けている企業(ZMINinebot智米(ジーミー))もあれば、すでにIPOしてエグジットした企業(青米(チンミー)Huami)もあります。シャオミー本体がまだIPOしていないのに!この中で特に有名なのはMi Bandを作っているHuamiとセグウェイを買収したNinebotですかね。そう、セグウェイって今はシャオミーなんですよ!

    セグウェイの血を引き継ぐ電子スクーター(クレジット:Ninebot)

    この他にも電子ウクレレのPoputarとか電気歯ブラシのSoocareなどがあります。これらすべてシャオミーが投資をしている会社です。

    電子ウクレレのPopulele(クレジット:Poputar)

    シャオミーが戦略的に投資しているのは以下の5分野です。シャオミーの強みである「高品質な製品を低価格」で提供できるスタートアップに投資します。

    1. スマホ関連周辺機器(スピーカーやヘッドフォンなど:手机周边的智能设备)
    2. スマートホーム(スマートな炊飯器や空気清浄機など:智能白电)
    3. モビリティ(スクーターなど:个人短途交通产品)
    4. ギーク向けノクールなガジェット(ドローンやVRなど:极客酷玩产品)
    5. ライフスタイル(ウクレレなど:关系到人们生活方式类的产品)

    シャオミーはこれらのスタートアップに投資をして自らの強みである販売網を活かして成長させます。シャオミーが投資するのは株式の50%以下。スタートアップ側に議決権を残します。

    更に製造の分野に関してもシャオミーのエンジニアを派遣して品質面での指導をします。ハードウェアの分野であればシャオミーの投資を受けてエコシステムに参加することが成功の条件と言われるくらいです。

    今後の展開

    シャオミーは2018年7月9日に香港証券取引所でIPOしました。当初の調達額は最大6700億円を予定していましたが、それより2割低い約5200億円で落ち着きました。元々の設定額がAppleなどと比べても高すぎた気がします。これからIoTのエコシステムでどこまで市場の予測を裏切って成長するかが楽しみですね。

    参考文献

    シャオミ(Xiaomi) 世界最速1兆円IT企業の戦略

    小米手机_百度百科

    雷军真的会复活米聊吗?_搜狐科技_搜狐网

    小米影业_百度百科

    深度| 小米联合创始人刘德:小米生态链管理的七大逻辑

    销量大跌36%之后今年成功逆袭,在雷军看来,小米做对了什么?_凤凰科技

    A brief history of Xiaomi – China’s tech success story! – Gizchina.com

    Behind the Fall and Rise of China’s Xiaomi | WIRED

    Who Owns Xiaomi Technology, and What Does It Own? — The Motley Fool

    Tech in Asia – Connecting Asia’s startup ecosystem

    Inside Xiaomi’s plan to dominate the connected world

    関連記事

     

    *1:小米に「シャオミ」とふりがなをふるケースを見受けますが、中国語の発音的には間違いです。ご飯は「米饭(ミーファン)」ですがミファンとは言いません。ミファンってなんやねん?また、青米(チンミー)というシャオミー関連企業がありますが、チンミと発音しません。そりゃ珍味。チンミーですね。

    *2:中国のTwitter

    *3:中国のLINE

    *4:中国語では「在我心中,重新出发,还是为了那些热泪盈眶!2016,祝福所有在创业路上的小伙伴们,永远年轻,永远热泪盈眶!」です。

  • Tik Tokのトウティアオ(头条)から学ぶ中国コンテンツビジネス

    Tik Tokのトウティアオ(头条)から学ぶ中国コンテンツビジネス

    アメリカの影響力のある大手テクノロジー会社をまとめてGAFA (Google/Apple/Facebook/Amazon)と言います。ドットコムバブルを生き残ってプラットフォーマーとなった世代ですね。これに続くのがリーマンショック以降に生まれたUber、Airbnb、WeWorkなどのユニコーン *1 です。中国の場合、GAFAにあたるのがBAT (Baidu:百度/Alibaba:阿里巴巴/Tencent:腾讯)です。中国のプラットフォーマーですね。そして、それに続く中国ユニコーンがTMD (Toutiao:头条/Meituan-Dianping:美团点评/ Didi:滴滴出行) です。これに小米(Xiaomi)も加わります。

    中国ユニコーンの中でも美团点评と滴滴出行は比較的わかりやすいかと思います。美团点评はGrouponとYelp(日本だと食べログ)を組み合わせたようなもので、滴滴出行はUberですね。日本と同じで欧米の成功したスタートアップのモデルをその国独自にアレンジして展開しています。そして、头条(以下、トウティアオ)と小米は中国で生まれたユニークなモデルだと言えます。今回はトウティアオの歴史から中国のコンテンツビジネスを学んでいきましょう。

    トウティアオとは

    まず、そもそもトウティアオって何?ってところから。口パクに合わせてかっこいいショートビデオが作れるTik Tokが日本でも10代に人気がありますが、これを作っているのがトウティアオです。同様のストリーミングサービスのMusical.lyもトウティアオが買収しています。昔は中国スタートアップが欧米のスタートアップをパクっていましたが、いまではFacebookがTik Tokをパクるようになるのですから時代は変わりました。ちなみに中国での企業名は北京字节跳动科技有限公司(英語名:Bytedance Technology)です。

    トウティアオの作っている人気アプリ(クレジット:GGVCapital)

    一番多く利用されているアプリはジンリトウティアオ(今日头条)。日本で近いサービスはグノシーとスマートニュース。ディープラーニングを使っている点も類似性があります。日本でもTopBuzzやBuzzVideoというアプリが使えるので試してみてください。

    トウティアオと他の中国ユニコーンの最大の違いは創業者の失敗歴でしょうね。メイトゥアンにしてもシャオミーにしても創業者は前の事業で成功しています。はじめての成功じゃないのです。しかしトウティアオは長い失敗の繰り返しから生まれました。

    トウティアオ創業前:転職と失敗の繰り返し

    トウティアオの創業者はジャン・イーミン(张一鸣)です。トウティアオを創業する前のジャン・イーミンを一言で表せば転職を繰り返す「ジョブホッパー」でした。彼自身は毎日夜中の1時まで働くハードワーカーでしたが、当時は運がなかったんでしょうね。

    ジャン・イーミンは2005年に天津の南开大学 *2 を卒業して企業向けのシステムを開発する会社を起業しますがこれは失敗します。次にクーシュン(酷讯)という後にTrip Adviserに買収されるスタートアップに最初期のエンジニアとして入社します。ここではすぐに頭角を現し、二年目にして40人以上のバックエンド開発者のマネージャーに昇格したそうです。

    次に中国マイクロソフトに転職しますが、すぐに辞めて中国版Twitterのファンフォウ(饭否)に参加します。このファンホウは中国版Facebookであるレンレンワン(人人网)ですでに成功し、後にメイテュエン(美团)を創業するワン・シン(王兴)が作ったスタートアップでした。

    しかし、2009年ウイグル騒乱での言論統制に巻き込まれてファンフォウは政府の命令で強制終了。政府に協力的なライバルのウェイボ(微博)が躍進します。ワン・シンも「スタートアップは政治的に敏感な部分に触れてはいけない(创业公司不该碰政府敏感领域)」という教訓を学びました。ジャン・イーミンはなかなか運に恵まれませんね。ファンフォウがシャットダウンしてから、不動産テックのジウジウファン(九九房)を自ら起業しますがこれも失敗。

    2012年5月に5度目の挑戦としてネイハンドゥアンズ(内涵段子)を開発してリリースします。このサービスの評判に手応えを感じ、同年8月に北京字节跳动科技有限公司を創業してジンリトウティアオ(今日头条)をリリースします。ジャン・イーミンが大学を卒業して7年目のことでした。長かった!

    トウティアオの成功

    当時はスタートアップの投資は中国に集中していました。成功しているアプリであれば資金調達はそれほど難しくなく、ジャン・イーミンもジンリトウティアオをリリースしてすぐに500万ドル(約5億円)をシリーズAで調達します。

    初期のジンリトウティアオはインターネットから記事を探して機械学習でユーザーが好むコンテンツを表示する比較的単純なアプリでした。パーソナライズもありませんし、画像の表示もありません。モバイルに特化したニュースアプリの先駆けはFlipboardで、表示の美しさに重点を置いていました。ジンリトウティアオが重視したのは見た目の美しさではなく、コンテンツの消費しやすさだったそうです。

    初期のジンリトウティアオの画面(クレジット:百度)

    当時の中国メディアはまだモバイルに最適化したコンテンツを独自で作っておらず、ジンリトウティアオがそのギャップを埋めることになりました。その結果、リリースから四ヶ月で1日のアクティブユーザー(DAU)が百万人になります。

    コンテンツプラットフォームとAI

    アプリにとって大事なのは使い続けてもらうこと。そのためにジンリトウティアオは継続して頻繁にアップデートを行います。機械学習による レコメンデーションやパーソナライゼーションなど次々に実装していきました。当然ながらジンリトウティアオの成功をみて多くの競合が立ち上がりました。しかし、機械学習やディープラーニングはデータ量が重要となります。初期に多くのユーザーを獲得したジンリトウティアオに追いつくのはなかなか至難の技でした。

    Tik Tokを含め、トウティアオの様々なサービスはコンテンツプラットフォームです。しかし、そのコアとなる技術はディープラーニングなどAIです。トウティアオではコンテンツのキュレーションだけでなく、作成もAIで行なっています。2016年のリオオリンピックではAI記者のXiaomingbotで約2週間のオリンピック期間中に、AIが作成した記事を450本配信しました。

    Xiaomingbotのスクリーンショット(ソース:百度)

    AIの記事自動作成はイスラエルのArticooloが有名ですが、これほど大規模に実運用したのはトウティアオがはじめてではないでしょうか。次の東京オリンピックでは日本のスタートアップに頑張ってもらいたいところです。

    このような努力の甲斐もあり、トウティアオの売上は急速に伸びました。立上げから4年の売り上げではGoogleやFacebookだけでなく、同じ中国のテンセントやバイドゥより早いことがわかります。

    トウティアオの立上げから4年の売上の伸びはGoogleやFacebookより早い
    (ソース:Y Combinator)

    C2Cプラットフォームと動画への注力

    最近のトウティアオは特に動画コンテンツに力を入れています。ニュースアプリのジンリトウティアオもかなり動画コンテンツが多いですし、Tik Tokなど新しいアプリは全て動画に注力しています。リップシンクもAIが活躍する分野ですよね。最近の評価はグノシーやスマートニュースのようなAIを使ったニュースアプリではなく「動画+人工知能」だと思います。

    参考文献

    张一鸣:今日头条不模拟人性,也不引导人性,你们文化人给了我们太多深刻的命题-虎嗅网

    张一鸣:我遇到的优秀年轻人的5个特质

    如何评价「字节跳动」创始人张一鸣? – 知乎

    “饭否”创业失败的教训 – 【人人分享-人人网】

    拿下中国人工智能最高奖 今日头条写稿机器人有哪些黑

    The Hidden Forces Behind Toutiao: China’s Content King

    My conversation with Zhang Yiming, founder of Toutiao · TechNode

    関連記事

     

    *1:10億ドル以上の資産評価がされている非上場企業

    *2:中国の六大学である国家重点大学のひとつ

  • Oculusから学ぶハードウェアスタートアップのはじめ方

    Oculusから学ぶハードウェアスタートアップのはじめ方

    20世紀のスタートアップ(AmazonやGoogle)と21世紀のスタートアップ(UberやAirbnb)にはいくつか違いがあります。

    1. ドットコムバブルやリーマンショック以降の成熟(リーンスタートアップやグロースハックなどの方法論の確立)
    2. サービスのスタートアップの誕生(Airbnb、UberやWeWorkなど)
    3. ハードウェアのスタートアップの本格化(ドローンのDJIやウェアラブルのFitbitなど)

    すでにソフトウェアとサービスの事例は見たので、今回はハードウェアのスタートアップです。Oculusはなんと最初の資金調達から一年未満でエグジット *1 しています。Instagramもかなり早いエグジットですが、Oculusはアメリカでは三番目に早いエグジットなので尋常ではありません。まあ、エグジットというのは企業としてはスタート地点でもあるのですけどね。今回はOculusの歴史を見ながら彼らがどのようにハードウェアスタートアップを立ち上げたか見ていきましょう。

    バーチャルリアリティーとOculusの歴史

    バーチャルリアリティーの商用ヘッドセットを最初に作ったのはジャロン・ラニアーとトーマス・ジマーマンが1985年に創業したVPL ResearchのPower GloveとNASAのヘッドセット(HMD:Head Mount Display)を組み合わせたものです。ちなみにジャロン・ラニアーは「VRの父」と言われています。

    この最初の商用VR製品が発売されてから30年もたって、多くのヘッドセットが世に出ていました。更に自作のヘッドセットを作るオンラインコミュニティー(stereo3d.comMTBS)もあり、Oculus共同創業者の一人のラッキー・パーマーもそのメンバーの一人でした。2009年頃、16歳には壊れたiPhoneを集め、それを直して売ってました。この売り上げで3Dのヘッドセットを買い集め、分解して研究しました。つまり、最初は自己資金でははじめました。また、学生としてUSCのMixed Reality Labに在籍していました。『遊戯王』が好きなコスプレオタクでもありました。

    自作文化とオンラインコミュニティー

    彼の自作のヘッドセットに関してもMTBSコミュニティーに投稿しています。そして、最初のプロトタイプが下の写真。同時にラッキー・パーマーは3D表示用のUnity3Dプラグインも開発していました。ハードウェアとソフトウェア両方の素養があったんですね。

    Oculus共同創業者ラッキー・パーマーのVRヘッドセット試作一号機(クレジット:Palmertech)

    偶然の出会いから爆発的な注目を浴びる

    そして、MTBSのコミュニティーで出会うのが大ヒットゲーム『DOOM』や『QUAKE』の作者でゲーム界のレジェンドとも言えるジョン・カーマックでした。ラッキー・パーマーが自主制作したヘッドセットに興味を持ち、一つ送ってもらうように頼みます。そして送られてきたのが六番目のプロトタイプであるPR6でした。そしてこれをOculus Riftと名付けました。

    送られてきたプロトタイプを元にジョン・カーマックは『DOOM3』の3D版を作成して国際的なゲームカンファレンスのE3でデモをします。これが2012年6月の出来事。そしてE3の会場でOculus Riftのデモを見ていたのがラッキー・パーマーとともにOculus VRを立ち上げるブレンダン・イリーベ、マイケル・アントノフとネイト・ミッシェルです。すごい偶然というか、運命ですよね。

    ちなみに、ジョン・カーマックは一年後にOculusにCTOとして参加しますが、この時はまだ会社自体が存在していません。当時のインタビューがYouTubeにも残っています。

    起業とクラウドファンディング

    E3の熱狂の冷めやらぬうち、ラッキー・パーマーはカレッジを中退して2012年7月にOculusを起業します。E3から数週間です。そしてKickstarterでクラウドファンディングの準備に取り掛かります。このクラウドファンディングの目的はゲームデベロッパーやゲームスタジオなどに実際に使ってもらうための開発車向けキット(DK1)の開発でした。

    数週間の準備期間を経て2012年8月にクラウドファンディングのキャンペーンを開始します。E3から二ヶ月ですね。すごいスピード感。キャンペーンのゴールは25万ドル(約2500万円)でした。そして、最終的には243万ドル(約2億4300万円)を9522人から調達します。このキャンペーンの終わりには従業員は10人に増えていました。

    DK1(クレジット:Oculus)

    この後、Oculusは開発者向けキットを二つ出荷(DK1とDK2)、ベンチャーキャピタルから資金調達を経て2014年に30億ドル(約3000億円!)でFacebookに買収され、めでたくエグジットとなりました。ただ、ラッキー・パーマーはFacebookから追い出されてしまうんですけどね。Facebookはこれから投資を回収しないといけないので大変です。

    ハードウェアスタートアップの三つの基盤

    以前はハードウェアはもっと成熟した企業がやるものとされ、スタートアップはインターネット関連のソフトウェアやサービスに限られていました。しかし、Oculusは最初はラッキー・パーマーの個人的なプロジェクトでした。個人的なプロジェクトをここまで大きくできた要因はな三つあります。

    1. 知識:個人で学べる情報サイトとコミュニティー
    2. 制作:個人でもプロトタイプが作れるようになった
    3. 資金:クラウドファンディング

    情報:個人で学べる情報サイトとコミュニティー

    ラッキー・パーマーはVRのオンラインコミュニティーに参加して、そこから様々なフィードバックやアドバイスを受けていました。専門家が集まるオンラインコミュニティーはラッキー・パーマーのようにすでに知識がある人にとってはとてもいい場所です。オンラインだけでなく、ハッカースペースと呼ばれるオフラインのコミュニティーもたくさんあります。東京だとTokyo Hackerspaceが有名ですね。

    これから知識を得たい人もインターネットに様々な情報があります。ハードウェアの場合だとAppropediaというハードウェアのWikipediaが有名です。また、動画や画像を使って説明してくれるInstructablesのようなものもあります。YouTubeでも「#作ってみた」動画は人気がありますよね。

    制作:個人でもプロトタイプが作れるようになった

    シンガポールやオランダのハードウェアスタートアップの友人のオフィスには必ず3Dプリンターがありました。当然ながら様々な部品とハンダゴテも。ハードウェアスタートアップにとってプロトタイプとは自分で作るものです。量産は工場でやってもらうにしても、自分で作れないものを他人が作れるはずがありません。深センに行っても無理です。Hotaxに作ってもらったGoProのような例外はありますが。日本の家電スタートアップのUPQCerevoみたいなしっかりした技術集団がついているからできる。

    昔だと秋葉原にたくさん部品やがありましたが、今だとオンラインで調達するのが簡単です。代表的なのがMouserDigikeyですね。両方とも日本語のサイトがあるってのが素晴らしい。Alibabaとかだとある程度の量を発注しないといけませんが、この二つのサイトなら一個から発注できます。ハードウェア側でのプログラミングもラズパイやArduinoのおかげで随分と楽になりました。

    筐体作成に関しても3DプリンターやCNC加工機などありますし、モデリングも熱溶融樹脂法や光造形法で比較的簡単に作れるようになっています。CADデータさえあれば個人でもデジタルモデリングができます。個人で3Dプリンターを所有する必要はありません。ハッカースペースに行けばありますし。

    資金:クラウドファンディング

    プロトタイプは自己資金で自作する必要がありますが、量産にはそれなりの資金が必要です。そして、最近ではOculusのように最初の開発者向けプレビューはクラウドファンディングで調達することができます。スマートウォッチのPebbleもクラウドファンディングでしたよね。

    ただし、ハードウェアスタートアップは立ち上げるのこそ昔より簡単になりましたが、続けることは相変わらず難しいものがあります。ソフトウェアと違い、在庫を持つ必要がありますし、アップデートも頻繁にできません。品質管理も重要です。それは失敗した数多のクラウドファンディングのハードウェアプロジェクトでもわかりますし、成功したPebbleやJawboneも企業としては生き残ることができませんでした。Oculusもまだ商業的には成功してないですしね。

    ハードウェアスタートアップの未来

    ソフトウェアスタートアップも最初から成功の方程式があったわけではありません。ドットコムバブルでたくさん潰れましたし、リーマンショックでもたくさん潰れました。多くの失敗と積み上がった残骸からリーンスタートアップやグロースハックのような手法が生まれたのです。

    ハードウェアスタートアップはまだ確立されていないこれからの分野だと言えます。少なくとも立ち上げやすくなはなった。これから継続して成長する手法を確立していくことになります。カタパルトスープレックスとしてはハードウェアスタートアップの未来には非常に楽観的です。

    参考文献

    Oculus Rift History – How it All Started – Rift Info

    A brief history of VR and the Oculus Rift | TALES FROM THE RIFT

    A Brief History of Oculus, from Day Zero to Day One

    #AltDevBlog » Latency Mitigation Strategies

    関連記事

     

    *1:投資家と創業者が投資を回収すること

  • アメリカ政府機関「18F」から学ぶプロダクトオーナーの役割

    アメリカ政府機関「18F」から学ぶプロダクトオーナーの役割

    原文:”So, you’re a Product Owner…” by Hannah Kane

    18Fで官公庁のパートナーとのプロジェクトでデジタルプロダクトを開発するときの最大のゴールは最終的に官公庁パートナーがそのデジタルプロダクトとその結果のオーナーシップを完全に持つことです。これこそ私ちが政府の技術的プロジェクトにおけるトランスフォーメーションにおけるミッションの実現につながっています。

    このオーナーシップの意識を醸成する方法の一つがプロダクトオーナーを初期の段階で決めることです。プロダクトオーナーは官公庁のメンバーで、18Fと一緒に働きプロダクトを初期段階から最終的なデリバリー、さらにその先へと導いていきます。プロダクトオーナー(PO)は18Fとのエンゲージメントが終了した後にプロダクトの全責任を持ちます。

    18Fプロジェクトにおけるプロダクトオーナーの役割とは?

    私たちのパートナーシッププリンシプルに記述されているように、エンパワメントされたプロダクトオーナーは「所属する官公庁や部門の仕事や課題に関して理解していて、共に開発するプロダクトの普及支援ができる人物。ユーザーリサーチに基づきプロダクトの長期的ビジョンを確立し、戦略を実行に落とし込み、進捗をリードしていく」という役割を持っています。

    POがプロジェクトに使わなければいけない時間はそのプロダクトの性質に依存しますし、時間と共に変化します。POは初期の段階ではプロダクトとの責任を18Fのメンバーと共有します。しかし、18Fのメンバーはプロジェクトが進むに従ってその責任をPOに移管していきます。データを多く扱うWebサイトやインタラクティブなアプリケーションの場合は、最終的にPOはフルタイムの仕事となる可能性があります。

    私たちは官公庁のPOに戦略的なやり方と戦術的なやり方の両方を求めます。POはプロダクトのビジョンを持ち、これは解決する問題の深い理解に基づきます。18Fとの仕事では、ユーザーとプログラムが必要とする戦略を作るためにユーザー中心のアプローチをとります。また、プロダクトの成功を組織の内側と外側の両方に位置づけます。

    戦術的なレベルにおいてPOはソフトウェア開発におけるバックログの改善からスプリント計画といった会議やタッチポイントに参加し、場合においては主導的な役割を果たします。これらの専門用語がわからない場合(多くの官公庁POははじめての人が多い)、これらがソフトウェアプロジェクトの具体的で戦術的なタスクを定義して計画するため定期的に頻繁(多くは毎日)に訪れる機会だと覚えておいてください。

    プロダクトオーナーは技術的なバックグラウンドが必要?

    POはソフトウェア開発チームの重要な一員ですが、技術的なバックグラウンドは必要ありません。多くの場合、潜在的なユーザーやユーザーが持つ課題についての理解、そして課題に着実に近づいていく姿勢の方が技術的知識より決定的に重要になります。 複雑なステークホルダーとの関係を調整し、ビジネスとプログラムのゴールを理解し、難しい決断をし、時には妥協点を探ることもプロダクトオーナーの仕事です。

    プロダクトオーナーが顧客やユーザーの声を代表していると考えるのであれば、POは技術的なバックグラウンドがない方が望ましいことが多いです。もちろん、対象とするユーザー層が非常に技術的でなければ、技術に疎いPOはユーザーニーズを理解しやすいでしょう。

    大きなインパクト

    それではプロダクトオーナーはソフトウエア開発においてどのように大きなインパクトを与えるのでしょうか?以下はプロセスにおいてあなたのスキルや経験を活かすヒントです:

    • ユーザーのニーズを常に前面に打ち出し、ほかのメンバーにも同じ姿勢を求めましょう。よくあることですが、チームやステークホルダーは自らの仕事を機能で説明する習慣に戻ってしまいます。機能やバグなしのコードのためではなく、人々が持つ具体的な問題を解決するためにここにいるのだと思い起こさせましょう。プロジェクトの成功をユーザーニーズの解決と位置付けましょう。
    • プロダクトを使うユーザーとできる限り頻繁に繋がりましょう。構造化されたリサーチ活動(インタビューやコンテキストインタビュー)、ユーザーテスト(ユーザーがプロダクトを使う様子を観察)、スプリントレビュー(ステークホルダーに定期的にデモをしてレビューを受ける)や共創活動(デザインスタジオなど)多くの機会があります。全ての機会を利用してユーザーのニーズを理解する努力をしましょう。ユーザーが使う言葉や、苛立ち、混乱、驚き、喜びのポイントをノートに残しましょう。
    • ステークホルダーと繋がり情報をアップデートしましょう。定期的なアップデートのデモへ招待したり、プロダクトの様々な部分における専門家として話を聞いたり、プロダクトのビジョンや戦略について話をするために時間をとってもらいましょう。
    • 柔軟的でいましょう。最近、18FとのプロジェクトでPOの役割を果たしたAmber Sprinkleは「POのビジョンはチームを導くのに役立ちますが、そのビジョンにたどり着く道筋に関してはオープンマインドでいることが必要です。そして、ビジョンは変わることも理解しておかなければいけません」と語っています。
    • 簡潔な言葉を使いを意識し、ほかの人にも簡潔な言葉を使うことを求めましょう。簡潔な言葉は一般の人たちにとって読みやすく、理解しやすく、政府の公共サービスを理解しやすくなります。専門用語に注意をし、シンプルでストレートな言い方を推進しましょう。
    • 難しい決断をしましょう。POは相反する優先順位に関して戦略的に選択をすることでチームの成功に大きな貢献をすることができます。POはプロダクトバックログの完了に責任を持ちます。その優先順位は常に現在の優先順位に反映されなければいけません。
    • チームの推進力と士気を上げましょう。チームメートが問題解決にフォーカスして結果を出すことを助けましょう。成功を積極的に称えましょう。失敗やつまずきから学ぶことにリーダーシップを発揮しましょう。開発のプロセスの中でチームは見失いがちで、POの仕事はチームを前に進めることです。

    プロダクトオーナーの仕事に興味があるのであれば、米国森林局のオンライン許可プロジェクトにPOであるAaron Burk氏のインタビューを読んでみることをお勧めします。Aaron氏はPOについて大事なことを指摘しています。POは技術ではなく、課題を解決して価値を提供することが仕事だと述べています。 このような価値観を持っているのであれば、POの仕事はとても意味のあるものとなるでしょう。

    関連記事

     

  • 支付宝と微信のミニプログラムの違い

    支付宝と微信のミニプログラムの違い

    この記事のポイント

    • 中国では支付宝(アリペイ|Alipay)と微信(ウィチャット|WeChat)がミニプログラムというAppleのAppStoreもGoogleのPlayStoreも必要なエコシステムを作った。
    • やっぱ、芝麻信用(セサミクレジット|Sesami Credit)すげえ。
    • すごいなあと思う反面、これってガラパゴスにならない?とも思う。

    原文:”We’ve experimented with Alipay Mini Programs” by Thibault Genaitay

    背景

     5億2000万の登録ユーザーを持つ支付宝(Alipay)は約60のミニプログラムを提供しています。これらのミニプログラムは以下の三つのカテゴリーに分類することができます。

    • Alipayが開発したミニプログラム
    • その他の阿里巴巴(アリババ|Alibaba)グループと共同開発したミニプログラム(例:淘宝网|Taobao、优酷|Youku)
    • サードパーティーと共同開発したミニプログラム(滴滴出行|Didi Chuxing、Airbnb、携程|Ctripなど)

    ミニプログラムの見つけ方

    1. 支付宝から「小程序」または「Mini Programs」で検索

    2. ミニプログラムを立ち上げると新しい「小程序」タブが「Friends」リストに作られる

    3. オフラインQRからも当然ながら

     これを念頭に置き、私たちは2017年8月末に開始された開発者向けのオープンベータをテストすることにしました。

    実際に微信のミニプログラムとどう違う?

     技術的には1%くらいでしょうか、マジで。

    支付宝の小程序を開発するためのIDE

     もうすでにみなさんはあるニュースを耳にしているかもしれません。微信のミニプログラムをパクったことについて公式に謝罪をしたのです。このリリースは読む価値があります。

    👉 https://zhuanlan.zhihu.com/p/28605175

    「微信のミニプログラムに脱帽です」🤦

    では、その1%の差はなんでしょうか?

    私たちが現時点でわかっていることは…

    アクセス:

    • エンタープライズアカウントのみ (ベータ期間中は個人登録はできない)
    • ベータプログラムの審査には1日かかる
    • エンタープライズアカウント一つで10個のミニプログラムを開発できる
    • 一つのミニプログラムで開発者10人とテスター50人を登録できる

    開発環境:

    • IDEは先進的なプレビューモードがある:“Push to yourself”と“Push to developers”(一回で全て通知が完了)
    • スタイルは .ACSS(AntFinancial Cascading Stylesheets)に格納
    • マークアップとページ構成は .AXML(AntFinancial Markup Language)に格納
    • ESLintサポートとApplet-specific シンタックスのヒント

    独自機能:

    Progressive Web Appとの違い

    • ミニプログラムはキャッシュが10MB使えるので理論的にオフラインで使えるけど、実際にはAPIコールが発生するのでオフラインは難しい(PWAは大丈夫)
    • AlipayとWeChatの独自機能がウリ(PWAは無理)

    プロダクトの観点

     この芝麻信用へのアクセスは大きいかもしれません。ここで芝麻信用についておさらいしましょう。芝麻信用はユーザーの信用を350から950 の得点で表します。これはクレジット履歴、買い物履歴、契約履行履歴、学歴や職務経歴書ソーシャル上のつながりで判断されます。 2015年から運営しているというアドバンテージに加えて、芝麻信用は阿里巴巴が傘下のショッピングサイトから収集している行動データがあります。

     機能的に考えるとこれは全く新しい顧客データの世界です。信用ベースのプロダクトは新しい可能性に満ちています。新しいイノベーションが起きる予感がします。

     それと同時に、マーケターも開発者も微信については一つのジレンマがあります。それはH5にするかミニプログラムにするかです。

    H5とは

    H5は微信のHTML5ベースのアプリです。

    支付宝にはすでに多くの信用ベースのサービスがあります。デポジットが必要ないシェアバイクやバーチャルクレジットカードなどです。支付宝のミニプログラムを使うことで多くのサービスにデポジットが不要になります。
    – Eva Xiao, Tech in Asia 2017年9月8日

    開発者の意見

     次に支付宝に難題を吹っ掛ける開発者の集まるフォーラムを覗いてみました。ポイントは大きく三つ。

    1. 微信のミニプログラムではできるのに、これは支付宝ではできない!
    2. 中国語のIDEがない!
    3. ファイルの拡張子とAPIの名前しか違いがないことから、微信のミニプログラムのソースコードから支付宝のミニプラグラムを作るやり方

    ちょっと待って、それっていいことなんじゃ?

     もし二つのフレームワークがほとんど同じなのであれば、開発工数がすごく削減できる。iOSとAndroidの両方を開発しなければいけない手間を考えてみれば一目瞭然。

     理論的にミニプログラムを一つ開発すれば二つのプラットフォームで動かせるはず(両方ともJavascript ES6とマークアップなんだから)

    まだ機能的に大きなギャップもある

     微信は支付宝が(まだ)提供していない機能がいくつかある。

    • wx.getWeRunData
    • wx.chooseInvoiceTitle
    • カスタマーサービスAPIs
    • 通知のためのメッセージテンプレート
    • ほかのミニプログラムと行き来するナビゲーション
    • WXMLノード
    • 加速度計やコンパスへのアクセス

    そのほかにプラットフォームとしての魅力、ソーシャルの側面におけるすべてとカスタマーサービス!

    で、これからどうなるか?

    (1) 技術的な観点から言えば、WEPTのような人気が出つつあるフレームワークがプロプラエタリーなIDEより開発生産性を高め、ソースコードを素早く適用する助けになることを期待しています。

    WEPT https://chemzqm.github.io/wept/

    (2) サービスの観点からは大企業、銀行、航空会社、ホテルなどのチャネルが特典としてロイヤルカスタマーにサービスを売る機会を作ると考えます。信用にアクセスできるのでデポジットが必要なくなり、優良顧客をさらに好待遇で扱うことができます。

    「ほら、900セサミポイント持ってるよ!」 => 「お客様、こちらへどうぞ」 (Photo Credit: MARK CHEONG)

    関連記事