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  • 書評|「使いやすさ」の歴史と未来|”User Friendly” by Cliff Kuang

    書評|「使いやすさ」の歴史と未来|”User Friendly” by Cliff Kuang

    「デザインが大事」と言うのは言葉では簡単なんですが、実際にはとても難しいです。なぜ難しいのか?それは「なぜ大事なのか」のWHYの部分をまず理解しないといけないからです。そして「何が大事なのか」のWHATの部分を理解しないといけません。おそらくほとんどの人は感覚的にはわかってるんです。それは「スマホみたいに使えること」だと。でも、それをきちんと説明できない。例えば「ユーザーフレンドリー」ってどう言うことですか?

    その答えを出す仕事に取り組んだのがWebメディアのFast CompanyのデザインをリードしてCo.Designを立ち上げたクリフ・クァンです。今回紹介するクリフ・クァンの最初の書籍である”User Friendly”は元Frog Designのロバート・ファブリカントとの会話から生まれたそうで、ファブリカントもクレジットされています。

    「ユーザーフレンドリー」全史 世界と人間を変えてきた「使いやすいモノ」の法則

    「ユーザーフレンドリー」全史 世界と人間を変えてきた「使いやすいモノ」の法則

    • 作者:クリフ・クアン,ロバート・ファブリカント
    • 発売日: 2020/09/29
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
    User Friendly: How the Hidden Rules of Design are Changing the Way We Live, Work & Play (English Edition)

    User Friendly: How the Hidden Rules of Design are Changing the Way We Live, Work & Play (English Edition)

    • 作者:Cliff Kuang,Robert Fabricant
    • 出版社/メーカー: Virgin Digital
    • 発売日: 2019/11/07
    • メディア: Kindle版

    クリス・クアンはまず現在の「ユーザーフレンドリー」の定義からはじめます。

    使いやすさを表す言葉として「ユーザーフレンドリー」しか持ち合わせていないにも関わらず、何が「ユーザーフレンドリー」なのか数限られた専門家にしかわかりません。そして、多くのデザイナーの間の中でも「ユーザーフレンドリー」が議論されてはいますが、そもそもの成り立ちはデザイナーの中でもあまり知られていません。ユーザーフレンドリーとは単に問題を解決するだけでなく、問題を簡単に解決することです。

    そして、現在の「ユーザーフレンドリー=使いやすい」を定義したのはアップルです。もっと具体的に言えばiPhoneです。人間にコンピューターを学ばせるのではなく、コンピューターに人間を学ばせる。スマートフォン以降、全てスマートフォンのように使いやすいことが期待されるようになりました。コンピューターと現在のユーザーフレンドリーは密接な関係があります。

    初期のコンピューターにおけるユーザーフレンドリーの代表例に1960年代にIBMがメインフレームを使いやすくするために開発したAPL(A Programming Language)がありました。IBMにはロゴをデザインしたポール・ランド、イームズと並んで数々の優れたプロダクトをデザインしたエーロ・サーリネン、ボール形状の印字部品を使ったセレクトリックタイプライターをデザインしたエリオット・ノイズなど優れたデザイナーたちが所属していました。しかし、IBMはアップルにはなれませんでした。

    なぜIBMはアップルになれなかったのか?

    クリス・クアンは次に現在の「ユーザーフレンドリー」の歴史を紐解きます。

    UXの歴史はレオナルド・ダ・ビンチまで遡ることができますが、現在のUXの歴史はアメリカの大量生産の歴史と重なります。アメリカにはドイツのバウハウスやフランスではル・コルビュジエユニテ・ダビタシオンなど理論的な思想はありませんでした。しかし、1929年の大恐慌での経済的な必要性が「ユーザーフレンドリー」に向かわせました。その代表例が1927年から1931年まで生産されて大ヒットしたフォード・モデルAです。一般的に大量生産で有名なのはフォード・モデルTですよね。大恐慌以降の新しいパラダイムが「工業生産の美しさ」です。そして、この時期に工業デザインのビッグ4が生まれます。レイモンド・ローウィノーマン・ベル・ゲデスウォルター・ドーウィン・ティーグヘンリー・ドレイファスです。特にヘンリー・ドレイファスは後のUXにとって重要な仕事をします。

    ちなみに、ボクはヘンリー・ドレイファスの”Designing for People“と後述するドン・ノーマンの”Design for Everyday Things”を読んだことがない「デザイナー」はあまり信用しません。論理的な基盤なしに感覚的にやってるってことですから。

    The Design of Everyday Things: Revised and Expanded Edition (English Edition)

    The Design of Everyday Things: Revised and Expanded Edition (English Edition)

    • 作者:Don Norman
    • 出版社/メーカー: Basic Books
    • 発売日: 2013/11/05
    • メディア: Kindle版
    Designing for People (English Edition)

    Designing for People (English Edition)

    • 作者:Henry Dreyfuss
    • 出版社/メーカー: Allworth
    • 発売日: 2012/11/30
    • メディア: Kindle版

    ヘンリー・ドレイファスは当時の日用品に満足できませんでした。そして、日用品を改良するためにはその生産プロセスを理解する必要があると考えました。単に見た目がいいだけではダメ。改善するには、その改善を適用するためのコストを把握する必要もあると考えました。ヘンリー・ドレイファスにとってデザインは見た目ではなく、どのように作られ、何が可能になるのかまで含まれています。要点としては以下の二つにまとめることができます。

    1. 見た目をモダン化する
    2. 使い方を再定義する

    バウハウスも考え方は同じなのですが、理解できるエリート向けでした。ヘンリー・ドレイファスをはじめとする当時のアメリカのデザイナーたちは実用的でありマーケット志向でした。実際に電話機とかこの頃に再定義されたデザインは現在まで生きています。

    クリス・クアンによると「使いやすさ」のデザインがさらに次の段階に進んだのが第二次世界大戦でした。実際に第一世代の工業デザイナーのレイモンド・ローウィ、ノーマン・ベル・ゲデス、ウォルター・ドーウィン・ティーグ、ヘンリー・ドレイファスたちはアメリカ政府に招聘されて軍用品のデザインをします。さらにアルフォンス・チャパニスS・S・スティーヴンスを中心に人間中心デザインが生まれます。そもそも、なぜ飛行機は墜落するのか?飛行機の操縦が難しいから。それでは、なぜ飛行機の操縦は難しいのか?人が間違うことを「ヒューマンエラー」と言います。それを否定して使いにくいことは「デザインエラー」と再定義されました。人間工学に基づくエルゴノミック・デザインの基礎はこの時期に確立されます。ヘンリー・ドレイファスは戦車のコクピットのデザインの経験を活かして人間中心のデザイン手法の一つであるペルソナの原型である“Joe”と”Josephine”を生み出しました。この辺もUXのオリジネーターであるダ・ヴィンチの影響を受けていますよね。

    そして、スリーマイル島原子力発電所事故です。アップルにデザイン文化を植え付ける決定的な仕事をしたのは先に触れた”Design for Everyday Things”の著者ドン・ノーマンです。ドン・ノーマンはアップルでUXプロフェッショナルと呼ばれる人たちを育てます。その一人がジョニー・アイブです。そして、ドン・ノーマンはスリーマイル島事故の調査チームの一員でした。ノーマンの分析によると、スリーマイル島の原子力発電所は技術的な課題を優先して、そこで働く人たちを考慮に入れなかったことだそうです。コントロールルームのデザインは後回しにされ、何か工夫をする時間も余裕もなかった。例えば、原子炉は常に「第一」と「第二」の二つペアで作られます。しかし、コントロールルームはひとつしか作られませんでした。一つ作って、その鏡面イメージをもう一つ作った方が安上がりだと考えました。エンジニアは全く逆の配置の二つのコントロールルームで仕事をしなければいけませんでした。

    1100のメーターと500以上のアラーム。コントロールパネルの色だけを見ても、「赤」が14の異なる意味を持ち、「緑」が11の異なる意味を持っていました。人間と機械が分かり合う共通言語の不足。ボタンやサインの配置にも特に意味がありませんでした。

    ここまでがこの本の前半。

    最初の疑問である「なぜIBMはアップルになれなかったのか?」ですが、答えは「アップルにはUXの歴史を踏まえた上で組織に実装してくれるドン・ノーマンがいたから」になるんだと思います。日本でも「ユーザーフレンドリー」の重要性は十分に理解されているにもかかわらず、デザインがなかなか組織に浸透しません。多分、日本にはUXの歴史を踏まえた上で組織に実装してくれるドン・ノーマンのような人がいないからなんでしょうね。ボクはせめてそうなりたいなと、いま日本企業でがんばってます。

    この本の後半は「ユーザーフレンドリー」を実現するために重要なコンセプトとともに、スマホ以後の「ユーザーフレンドリー」のユースケースを紹介しています。コンセプトはメタファー、共感力やパーソナライゼーションなどです。将来のユースケースはクルマの自動運転やボイスインターフェースやディズニーランドです。特にディズニーランドにおけるマジックバンドを使ったパーソナライゼーションの事例はとても面白かったです。

    この本はどんな人にオススメか

    デザイナーには読んで欲しいです。

    今のアプリデザインにこのような混乱が少ないのは、メニューの位置や意味、スワイプやタッチで何が起きるのかがテンプレートで標準化されているからです。いまのUXデザイナーがテンプレートなしで一からユーザーフレンドリーなデザインができるか?どうですかね。さほどスリーマイル島原子力発電所のエンジニアと変わらないのではないでしょうか。なぜなら、多くの「デザイナー」はこのような標準が出来上がってきた成り立ちを理解していないからです。

    情報設計などの「使いやすさ」の原理原則といえるものを理解している「デザイナー」って実はすごく少ないです。デザイン・システムとか流行っていますが、そのコンポーネントやアーティファクトを下支えしている(使いやすさを担保している)のは原理原則ですからね。

  • 書評|デザイナーのための気の利いた豆本|A Book Apart

    書評|デザイナーのための気の利いた豆本|A Book Apart

    Photo by picjumbo.com from Pexels

    ボクの社会人としての原点はサービスデザイナーです。その前にマーケティングもやっていましたが、自分のプロフェッショナルとして定義をする根っことなったのはサービスデザインでした。いまはさすがに自分自身ではデザインをしませんが、それでも出来上がってくるアプリのUXなどはチェックします。

    職業としてのデザイナーの定義はあいまいです。試験とか資格とかないので、誰でも自称デザイナーになれてしまいます。スタンフォード大学のd.schoolのような学校もないですしね。ボクなんかもちゃんとした教育を受けたことはないので、「なんちゃってデザイナー」なのかもしれません。とはいえ、ボクがはじめた頃はペルソナとかカスタマージャーニーマップとかツールがそろっていなかったので、独自で工夫するしかありませんでした。UXの世界に決定的に影響を与えた書籍”The Psycology of Everyday Things”(現在は”The Design of Everyday Things”に改名/日本語訳は『誰のためのデザイン?』)だって、世に出たのは1988年ですし、ペルソナを世に広め、インターフェースデザインに影響を与えたアラン・クーパーの”About Face”も1995年です。いま現在、日本でどれだけデザインについて学ぶ場所が提供が提供されているのかはよくわかりませんが、みんな試行錯誤しながらツールや方法論を作り上げてきました。ボクもそうです。

    それにしてもです。デザインをレビューするときに「もうちょっと基礎を知っておいてくれよ、基礎が確立されて少なくとも10年は経つんだから」と感じる場面が多々あります。見た目はきれいなんですよ。でも、直感的に使えない。FigmaとかZeplinとかNotionとか、Framerとかそういうツールを使うのは慣れている。オンラインのチュートリアルも充実してるし。まあ、モダンなツールを使えるに越したことはないのです。しかし、肝心のデザインの知識や経験が足りていない。「こればっかりは経験を重ねるしかない」という意見もあると思いますが、正しい知識は正しく教わらないと無駄に遠回りになってしまいます。寿司屋とか職人じゃないんだから(寿司も本当は体系立てて学べるとは思いますが)。

    そういう時に若いデザイナーたちに渡すのがA Book Apartの本です。英語の本ですが、日本語でこれくらい基礎知識が分野別にコンパクトにまとまってるシリーズはないので。

    最近買ってデザイナーたちに手渡したのは”Conversational Design”と”Everyday Information Architecture”です。Conversational Designとはどうやってデザインを通じてユーザーと対話をするかです。Maxims of Violationsのような重要なコンセプトが紹介されています。情報アーキテクチャの手法も大規模なWebサイトを作る上では日本でも活用されはじめていますが、アプリのデザインでは使われていなかったりします。LATCHがすべてじゃないですが、せめてLATCHとは何で、どうやって使うのかくらい知っておこうよ、マジで。

    A Book Apartの本は現時点でVol. 31 Expressive Design Systemsまで出ています。それぞれ100ページ強の軽い本ですが、ひとつの分野にフォーカスしているため、総合的な分厚いデザイン本一冊より各テーマについては深堀されています。こういう、軽くてサクッと読める本が日本語でもあるといいんですけどね。日本のデザイナーは日本語だけでは情報的には一周半くらい遅れてしまうので、常に最新の英語の資料に触れておきたいものです。Webコンテンツだと薄いので、A Book Apartくらいのコンパクトな豆本がちょうどいいと思います。

  • 書評|絶対防衛線としてのデザイン|”Ruined by Design” by Mike Monteiro

    書評|絶対防衛線としてのデザイン|”Ruined by Design” by Mike Monteiro

    「デザイン」はむやみに使われすぎていて、ボク自身、最近は避けてきた言葉です。デザインは数多くある手法の一つであって、目的ではない。目的に合った手法を使うべきであって、デザイン原理主義にハマりたくない。それでも、ユーザー中心に考える思想としてのデザインはやはり有用ですし、ボクの仕事のコアの部分を形成しています。

    YAMDAS現更新履歴でマイク・モンテイロの”Ruined by Design”が紹介されていて、読んでみたいと思っていました。最近になって本人の朗読によるオーディオブックが出たので、ようやく読む(聴く)ことができました。

    マイク・モンテイロ自身がMule Designを経営しているデザイナーですが、デザイン倫理学を広める伝道師的な役割を自ら担っています。”Ruined by Design”はデザイン倫理学の伝道師として、彼が言いたいことをとにかくぶつけてきたなかなか情熱的な書籍です。口語的な表現が多いので、書籍として読むより本人の声をオーディオブックで聴いた方がいいんじゃないかな。リバタリアンが大っ嫌いだとすごく伝わってきます。アイン・ランドなんてマジでクソ!みたいな(笑)。マイク・モンテイロはポジション的にはかなりリベラルです。バーニー・サンダース好きそう。どのような立場から発言しているのか、わかりやすくていい。

    Ruined by Design: How Designers Destroyed the World, and What We Can Do to Fix It (English Edition)

    Ruined by Design: How Designers Destroyed the World, and What We Can Do to Fix It (English Edition)

    前提としてのデザインの定義

    マイク・モンテイロは本書をデザインの定義からはじめます。すべてのモノやサービスはデザインされている。意識的であろうと、無意識的であろうと。フェイスブックもツイッターもビジネスの意図を実現するためにデザインされ、結果として現在の形になっている。

    つぎにデザイナーの定義をします。マイク・モンテイロはプロダクトやサービスの機能の決定や実装に関与する人は全てがデザイナーだと言います。UX、グラフィック、インタラクティブなど「ほにゃららデザイナー」などタイトルは関係ない。プロダクトオーナーも開発者もプロダクトの機能を定義したり、決定に関わる限り「デザイナー」です。

    まず、ここまでが前提ですね。感情的な本なのにストラクチャーがしっかりしているのが英語圏の人の性(サガ)ですね。ロジックがにじみ出てしまう。日本人だとこうはいかない。

    問題提起

    マイク・モンテイロは現在の多くのプロダクトやサービスのデザインはぶっ壊れていると問題提起します。フェイスブックとケンブリッジ・アナリティカの問題も、ウーバーがドライバーを搾取するのも、プロダクトがそのようにデザインされているからです。倫理よりもビジネスが優先された結果、プロダクトは倫理に反する動きをします。そうデザインされているのですから。フェイスブックなどのソーシャルメディアはニュージーランドで起きた乱射事件のライブストリーミングを止めることができませんでした。ソーシャルメディアは広めることを目的としてデザインされているからです。広めることを目的としてデザインされたツールを止めるのは非常に難しい。

    解決策の提案

    解決の方向性としてトップダウンとボトムアップがあります。マイク・モンテイロはマーク・ザッカーバーグやラリー・ペイジが自らの倫理観を今更変えることができないのでトップダウンは期待できないと言います。ウーバーのトラビス・カラニックやウィワークのアダム・ニューマンは自らを変えることができなかったら更迭されたわけですものね。

    そこで、マイク・モンテイロが提案するのがボトムアップのアプローチです。広義の「デザイナー」が強い倫理観を持って、企業や組織長が間違った判断をしようとしたら「ノー」と言いましょうと提案します。会社勤めしている会社員として、会社やボスが言うことを聞かなければいけないのはわかる。しかし、医者や弁護士はどうだ?とマイク・モンテイロは問いかけます。医者や弁護士はお金を払えばなんでもやるわけではなく、職業としての倫理規定が優先されます。医者の場合はヒポクラテスの誓いがあります。弁護士も各国の弁護士協会が倫理規定(アメリカのBar Associationの場合はこちら)を制定しています。

    デザイナーにも強い倫理規定が必要だとマイク・モンテイロは提案します。そこで、Githubにデザイン倫理のドラフトを公開しています。すでに様々な言語に翻訳されていますが、まだ日本語はないですね。

    倫理観に反する企業に対してエンジニアのSeth Vargoが個人として行動をとった例がDevOpsのツールとして有名なChefのGithubやRubyGEMのリポジトリにあるファイルが削除された事件です。Chefが悪名高きアメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE:Immigration and Customs Enforcement)と契約したのが事件の発端です。摘発の仕方が非人道的だと非難されています。詳しくは以下のニュースサイトを参照してください。ここにもあるように、最終的にはChefのCEOがICEとの契約を更新しないことを発表するまで追い込まれました。個人の倫理観に基づく行動が企業のの行動を変える代表的な例になるでしょうね。

    トランプ政権の非人道的な政策に抗議し、プログラマーが翻した反旗

    この本はどんな人にオススメか

    デザイナーって視野が得意分野に集中しがちなんですよね。広い意味でのデザインも分かっているつもりでも、日々の業務で実践できていない。デザイナー個人が倫理感を持って仕事をしても、ユーザー中心の考え方をしても、チームやグループで同じ考え方じゃないと孤立してしまいます。疲れちゃうから、結局は流されてしまう。

    まわりの人たちも悪気があるわけじゃない。優先順位が違うってだけ。デザイナーのマインドセットを持っていないだけ。じゃあ、そういう人たちにこの本をオススメして読むか?読まないでしょうね。それはマイク・モンテイロもわかっている。だから、わかってる人に語りかけ、行動を促すしかない。

    フェイスブックは投稿に対して心理実験Facebookがこっそりユーザー感情操作実験をしていた – NAVER まとめ)をしましたが、これも完全に倫理的には間違っています。ビジネスに倫理観は必要で、デザインで倫理観を規定するアプローチもあるでしょうね。ただ、デザインってそこまで万能かなあ……と個人的には思ってしまいます。まあ、日本語翻訳くらいはやるか。

  • 書評|差別するデザイン|”Technically Wrong” by Sara Wachter-Boettcher【2018年夏休み読書週間】

    書評|差別するデザイン|”Technically Wrong” by Sara Wachter-Boettcher【2018年夏休み読書週間】

    デザインは人を傷つけます。そして、場合によっては死に至らせる可能性もあります。このことについてはすでに翻訳が出ているジョナサン・シャリアートとシンシア・サヴァール・ソシエによる『悲劇的なデザイン』(デザイナー必読)でも詳しく紹介されています。

    このような悪いデザインの危険性は最近になってようやく認知する動きが出てきました。単にオシャレでキレイなだけでなく、もっと大事なものだという認識。今回紹介するサラ・ワッターーボーチャーの”Technically Wrong“もこのようなトレンドの中から生まれた書籍です。

    Technically Wrong: Sexist Apps, Biased Algorithms, and Other Threats of Toxic Tech

    Technically Wrong: Sexist Apps, Biased Algorithms, and Other Threats of Toxic Tech

     
    悲劇的なデザイン

    悲劇的なデザイン

    • 作者: ジョナサン・シャリアート,シンシア・サヴァール・ソシエ,高崎拓哉
    • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
    • 発売日: 2017/12/27
    • メディア: 単行本
    • この商品を含むブログ (2件) を見る
     

    ここでは全てを紹介することはできませんが、特に印象に残ったチャプターを紹介します。

     

    組織の問題:テクノロジー企業の大部分を占める「若い白人男子」の文化

    FacebookやGoogleといった大企業の開発者やデザイナーの大部分は若い白人男性です。ダイバーシティーに注力していますが、開発やデザイン分野のダイバーシティーに関して実際にはほとんど改善はありません。この辺の問題提起はシリコンバレーの白人男性至上主義を描いたエミリー・チャンの”Brotopia“にも通じるものがありますね。

     

    Brotopia: Breaking Up the Boys' Club of Silicon Valley

    Brotopia: Breaking Up the Boys’ Club of Silicon Valley

     

     

    ダイバーシティーの問題に関しては多くの企業も気がついているのだけれど、それを解決できていない。企業側の言い分としてはマイノリティーに人材がいない。「パイプライン」の問題(=企業は採用する気はあるが候補者がいない)なのですが、黒人女性がキャリアフォーラムなどにいっても無視されるというのが現実だそうです。つまり、本当はパイプラインはある(候補者はいる)のに無視する。

    また、「若い白人男性」以外に門戸を開いていたとしても、最終的な採用判断には「企業文化適応性 (Culture Fit)」が求められます。既存のカルチャーは「若い白人男性」なので、そこにフィットしない人は採用されません。

    採用されたとしても、その意見が採用されるとは限りません。実際の女性向けスマートウォッチ開発プロジェクトで唯一の女性メンバーの意見は全く聞き入れてもらえなかったそうです。きちんとしたUX調査をしてそれを発表しても、「若い白人男性」のステレオタイプの女性の見方とマッチしないために、その調査も採用されなかったそうです。このように実際のニーズではなく、「若い白人男性」のステレオタイプを基準としたデザインが少なくないのが実情なのだそうです。

    デザインの問題:狭い視野と狭いデフォルト

    ユーザーの視点に立つためにたくさんのデザインツールがあります。しかし、それらのツールを使っても、デザイナーやステークホルダーの視野が狭いと有効には使えません。

    ペルソナはUX調査に基づいて代表的なユーザー像を描くことで開発者、デザイナーなど製品開発に関わる人たちがユーザーに共感するためのデザイン手法です。しかし、実際にはペルソナで描かれるユーザー像の範囲は狭く、深く共感することは難しいのが現実です。例えば、生理のトラッキングアプリGlowの開発者は男ばかりでした。ターゲットユーザーはセクシャルにアクティブな妊娠したくないティーン。そのペルソナは理解できますが、実際のユースケースは妊娠したい女性もいます。しかし、男性にはそれが理解できません。

    デザイナーの世界では想定しないユーザーをエッジケースと呼びます。しかし、想定するユーザーは「若い白人男性」が想像できる範囲内です。そして、それ以外はエッジケースとされてしまいます。例えばペルソナで会社のCEOに黒人女性の写真を使うと不採用になります。ステークホルダーにはリアルだと思えない。ニーズや動機が重要であって、見た目は重要ではないのに。ステレオタイプがデフォルトになります。例えばAmazon Alexaの声。アシスタントという言葉は「若い白人男性」には女性を想起させるようです。なぜボイスアシスタントは女性の声なのでしょうか?

    この本ではなるべく多くのユーザーのストレスを軽減するために「ストレスケース」の採用を提案しています。

    Identify “Stress Cases” and Design with Compassion: Eric Meyer

    選択の問題:ユーザーを理解できないためのガベージ・イン

    ユーザーを理解してユーザーに最適な提案をする。そのために行動データやプロフィールを集めます。正しい情報を入れれば正しい結果を得ることができますが、間違った情報を入れれば、間違った結果が返ってきます。これを「ガベージ・イン/ガベージ・アウト」と言います。

    しかし、実際に正しい情報をユーザーが提供することは難しい場合がります。例えば、アメリカのインディアンはFacebookで本当の名前を使えないことがあります。Facebookの本名のポリシーに適合しないからです。例えばChase Iron Eyes(鉄の目を追う)が本名だとしても、Facebookにとっては偽名になってしまいます。

    Facebook: Native American Names ‘Inauthentic’ | Time

    Facebook Name Police: Native American Names Aren’t ‘Authentic’ Enough – IndianCountryToday.com

    また、選択の不自由もあります。アメリカの国勢調査では人種の選択は白人/黒人/アジア人/その他です。メキシコ系アメリカ人はこの場合は「白人」なのですが、多くのメキシコ系アメリカ人は「その他」を選んでしまいます。

    多くのサービスはユーザーに性別を聞きます。これはセグメンテーションとレコメンデーションなど分析のためなのですが、選択肢は男性/女性しかありません。しかし、トランスジェンダーは?これらもエッジケースとして無視したとして、それで正しいユーザープロフィールになるのかという問題があります。

    また、英語の名前だとMrやMsなどタイトルがあります。これもユーザープロフィールの質問でよく聞かれます。これもトランスジェンダーには難しい選択肢ですよね。しかも、英語の場合はDrやSirなどあります。イギリス政府のデザイン機関であるGDSはタイトルの質問をすることをやめました。選択肢を増やすのではなく、不正確な情報しか得られないのであれば聞くのをやめるという選択肢もあるわけです。

    Names – GOV.UK Design System

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  • スロースタートアップ|第二回:dribbble|おじさんたちのサイドプロジェクト

    スロースタートアップ|第二回:dribbble|おじさんたちのサイドプロジェクト

    スタートアップといえば急速な成長のためにベンチャーキャピタルからガツンと資金調達をするイメージがあると思います。しかし、ベンチャーキャピタルから資金調達をせずにずっとブートストラップ *1 しながら成長するスタートアップも存在します。日本だとサイバーエージェントがそうですよね。そういうブートストラップなスタートアップをスロースタートアップと呼びたいと思います。

    「スロースタートアップ」の第二回目はデザイナーならみんな大好きdribbble *2 です。どういうわけか、デザイナー御用達ツールはブートストラップが多いんですよね。ShutterStockとかBalsamiqとか。次回紹介するMailChimpもデザイナーのスタートアップですし。今回は若者スタートアップのヒリヒリした話ではなく、おじさんスタートアップのほんわかした話です。

    dribbbleってなに?

    まず、簡単にdribbbleについて。dribbbleはデザイナーが自分の作品をシェアできるWebサービスです。非常にコミュニティー色が強く、多くの場所でボランティアがdribbbleミートアップを開催しています。そういう意味では、世界で最も大きなデザイナーコミュニティーの一つだとも言えます。ボク自身はグラフィックデザイナーではないのでdribbbleは使ってなかったですが、シンガポールやアムステルダムにいた時代にUX関連のトピックではよく参加していました。dribbbleは招待制で、既存のユーザーから招待がないと正式なメンバーになれません。これがスノッブな感じがして、一部にはアンチも存在します。あとで説明しますが、招待制にしたのは理由があって、彼らが外部から資金調達をしないブートストラップのスタートアップであるのが影響しています。

    創業者はおじさんヒップスターとハッカー

    dribbbleの創業者であるリック・ソーネットとダン・シーダーホルムがユニークなのは、かなりおじさんだということですね。スタートした当時には結婚して子供もいた。それなりに安定した仕事もあった。Webの黎明期にインスパイアされてダンはデザイナーに、リックはデベロッパーになります。普通に考えれば、わざわざ大変なスタートアップなんてやる必要ありません。

    リック・ソーネットはリサーチャーだったそうです。でも、黎明期のWebの魅力にとりつかれ、プログラミングを再び学ぶために大学の修士課程に戻り、デベロッパーになりました。IBMやFideltyなどの大企業のほか、スタートアップでも働いていました。

    ダン・シーダーホルムはもともとWebデザインの世界では超有名人で、CSSの可能性を広げた人で、たくさんの著書があります。日本でも『Web標準デザインテクニック即戦ワークブック』が翻訳されていますね。元々はスケートボードのロゴやデザインが好きで、ミュージシャンとして働いていた時にアルバムのデザインなどをしていたそうです。自分がデザイナーだと認識しはじめたのは黎明期のWebの影響が大きかったそうです。タイポグラフィーなどいろんな要素が必要で、多くの人に見られることでデザイナーであることを意識したそうです。

    おじさん達の出会い

    この二人はどうやって出会ったのでしょうか。ダンとリックはボストンで近所に住んでいて、同じ年代の子供がいました。そこでおくさん同士が知り合いになり、二人は出会います。リックは「ダン・シーダーホルムってなんか聞いた名前だな?本とか出してなかったっけ?」と調べました。あ、やっぱり有名な人だ!

    最初は有名人とは釣り合わないんじゃないかと遠慮していたそうですが、そのうちに友達になります。リックは週二日ダンのオフィスを使わせてもらい、残りは家で仕事をしていました。当時はヘルスケアスタートアップのPatientsLikeMeというプロジェクトに関わっていました。リックがダンのオフィスにいるときに二人でサイドプロジェクトができたらいいねという話になりました。デザイナーとデベロッパー。ヒップスターとハッカーはいつの時代も黄金のコンビですよね。

    サイドプロジェクトとしてのdribbble

    ダンが考えていたのはデザイナーが自分たちの仕事を共有できて、「ドリブル」できる場所。2007年くらいからアイデアを温めていました。当時は写真共有サイトのFlickrがとても人気があり、Twitterも人気がではじめた頃でした。その二つを組み合わせたらどうだろうというのが最初のアイデアでした。そして、それは紫でなければいけない!と最初から決まっていたそうです(笑)

    ダンとリックの二人はプロトタイプを徐々に磨き上げ、ベータテストを始めます。手書きの招待状に招待コードを書いて、dribbbleのTシャツを同梱してデザイナーの友人たちに送りました。eメールではなく、創業者による手書きの招待状と手作りのTシャツ。これは最初のベータテスターに参加してもらうのにとても大事だったそうです。ダンのネットワークもあり初期の段階から30人のデザイナーが作品をアップするようになりました。

    dribbbleにとってプロダクトとは

    リックはベータの段階では最初は自分の家の猫の写真などをアップしていたそうです。本物のデザイナーが実際に作品をシェアするまで自分でも確信を持てなかったようです。つまり、Flicker+Twitterというコンセプトはあったものの、デザイナーのコミュニティーというアイデアが最初からあったわけではなかったのです。

    デザイナーたちが作品をアップしはじめると、彼らがどのような意図で、どのようなプロセスでデザインをしているのかがわかるようになりました。普段は最終的なデザインだけではわからなかったものが見えてくる。これ自体がエクスペリエンス(体験)だということがわかりました。

    当初はPixelの交換やゲーミフィケーションなど様々なアイデアがあったり、実際に実装したものもありましたが、ベータテストで方向性がクリアになると不必要な実装やアイデアは全て捨てたそうです。

    長いベータと最初の危機

    ダンもリックもフルタイムの仕事があって、家庭があって子供もいました。dribbbleはかなり長い間サイドプロジェクトでベータでした。招待制はあまり大きなサービスをサイドプロジェクトで続けることができないという理由からでした。多くの機能追加のリクエストもありましたが、優先順位をきちんとつける必要がありました。

    この長いベータ期間のため、デザイナーにとってdribbbleは知り合いが気兼ねなく作品をシェアできる場所でした。そしてこれが正式版のローンチになると問題になりました。デザイナーとしては自分の初期のアイデアをあまり共有したくない。ベータで少ない人だけに共有されていたからよかったが、一般公開になると話が違う。当然ながらプライベートモードなど多くのリクエストがありました。

    しかし、ダンと(特に)リックはプライベートモードの実装には反対しました。一部しか見れないのであればエクスペリエンスは失われてしまう。ユーザーがそれで離れていってしまうのだったら直さなければいけないが、まずはプライベートモード無しでいくと決めます。数週間はクレームの嵐だったそうですが、それでも作品の投稿が減ることはなかったそうです。ここでの学びは「目に見えた変更を行えばネガティブな反応がある。ネガティブな反応があったからといって、その変更が悪いかどうかはわからない。ユーザーの行動を見ていいか悪いかの判断をする必要がある」だそうです。

    ブートストラップとフルタイム

    一般的な若いスタートアップは資金調達をして必死に働いて急速に成長させようとします。その間、仕事に100%コミットする必要があります。ダンとリックの場合は違いました。ダンとリックにとっては家庭が最優先でした。これは他の若いスタートアップの起業家と大きく異なるところです。子供がいて家族を養うとなると「ラーメン利益 (Ramen Profitable)」ではやっていけません。

    最初は大きな宣伝はせずにゆっくりと育てる。これは前回紹介したGithubも同じことが言えます。Githubは最初の二年間で一回しかTechCrunchに取り上げられていません。外部から資金調達する一般的なスタートアップがファストスタートアップだとしたら、ブートストラップの場合はスロースタートアップですね。

    最初にdribbbleでフルタイムとして働きはじめたのはリックでした。2010年5月です。dribbbleの広告でリックの半分のサラリーが賄えるくらいの売り上げがありました。当時のdribbbleはデザインよりもエンジニアリングでやることが多かったので、まずはデベロッパーのリックから。二人一緒にフルタイムの必要はない。リックとしては一時的に収入が減ったとしてもdribbbleをフルタイムでやってみようと決意します。ダメだったらまたスタートアップでデベロッパーとして働けばいいじゃない。

    普通の(でもリッチな)おじさんに戻る

    dribbbleはInstagramと同様に少人数のチームで続けました。2017年1月にTinyに買収された時、従業員は8人でした。7年のスロースタートアップの後、ダンとリックは元の場所に戻っていきます。前よりお金に余裕をもって。

    参考資料

    Rich Thornett on bootstrapping Dribbble – DNSimple Blog

    Interview with Dribbble’s co-founder Dan Cederholm | Webdesigner Depot

    What Drives Dribbble Founder Dan Cederholm? – Envato

    Dribbble Founders on Design, Entrepreneurship, & Community – YouTube

    Dribbble 2.0 – Andrew Wilkinson – Medium

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    *1:自己資金で事業をするという意味。コンピューター用語としてコンピューターを起動することをブートと言います。ブートストラップは外部からの助けがなくプロセス実行できることを言います。それがスタートアップの世界でもそのまま使われるようになりました。ちなみに、本来的な意味はブーツの後ろにつく輪っかの部分です。ブーツをかける輪っか。

    *2:ドリブルと読みます。ロゴはバスケットボール。

  • 世界にサービスデザインを広めるアダム・ローレンスのサービスデザイナーとしての原動力

    世界にサービスデザインを広めるアダム・ローレンスのサービスデザイナーとしての原動力

    アダム・ローレンス(Adam Lawrence)さんはサービスデザインの世界を牽引しているキーパーソンの一人です。エージェンシーの設立者というだけでなく、Global Service Jamという世界的なコミュニティーイベントを運営したり、サービスデザインの実用書『This is Service Design Doing』の著者の一人として幅広くサービスデザインを世界に広めています。今回はそんなアダムさんの日本語による貴重なインタビューとなります。

    カタパルトなかむら(以下なかむら):アダムさんは最近出版されたサービスデザインの書籍『This is Service Design Doing』に参加されているほか、Global Service Jamのようなグローバルなサービスデザインイベントの立ち上げもされています。いろんなことをやっていますが、主に何をされているのでしょうか。

    アダム・ローレンス(以下アダム):職業としてはヨーロッパで最も優れたビジネススクールの一つであるマドリッドのIE Business Schoolのサービスデザイン思考の助教授です。そしてもちろん、中央ヨーロッパを中心に活動しているサービスイノベーションと顧客体験のコンサルティングエージェンシーであるWorkPlayExperienceの創業者の一人でもあります。

    私たちの仕事のほとんどは組織(特に大きな組織)の中の人たちがうまく一緒に働けるお手伝いをすることです。それは彼らの顧客、スタッフを含めた社員、パートナーにどのように良い体験(エクスペリエンス)を提供するかに集中することです。それをどのように柔軟的、効果的、現実的に実行するかです。具体的には実際のプロジェクトに参加したり、スタッフのためのトレーニングや認定までの道筋を作ったり、仕事のためのツールなどを作ったりします。「サービスデザイン導入のサービスデザイン」とも言えますね。

    なかむら:最近出版された『This is Service Design Doing』に関連するのかもしれませんが、日本の組織が直面している課題の一つに「モノづくり」から「コトづくり」へのシフトがあります。おそらく日本企業の中で働いている多くの人は顧客中心であり、サービス思考であるべきだと考えてはいると思います。しかし、実際に変わるには「考える(Thinking)」だけではダメで、「行動(Doing)」が必要になります。行動に移す難しさについて何かお考えになる部分はありますか?

    This Is Service Design Doing: Applying Service Design Thinking in the Real World: A Practitioners' Handbook

    This Is Service Design Doing: Applying Service Design Thinking in the Real World: A Practitioners’ Handbook

    • 作者: Marc Stickdorn,Adam Lawrence,Markus Edgar Hormess,Jakob Schneider
    • 出版社/メーカー: Oreilly & Associates Inc
    • 発売日: 2018/01/12
    • メディア: ペーパーバック
    • この商品を含むブログを見る
     

    アダム:思考の変化は会議室やオフィスで座っているだけでは難しいです。オフィスから出て顧客と時間を過ごし、顧客と行動を共にして彼らが直面する課題に触れると見えてくるものが全く変わります。学術的なプロダクトとサービスの違いや、デジタルと非デジタルの違いは顧客にとって全く意味がないことに気がつきます。顧客は単に自分たちの課題を解決して欲しいだけなんです。生活に役立つ、できれば良い体験ができることが欲しいだけなんです。

    それらの問題はオフィスから出ないと発見できないのと同様に、会議室に立てこもっていては顧客の役に立つこともできません。私たちは顧客やステークホルダーのいる世界に出ていかなければいけません。プロトタイプを作り、実際の世界で試さなければいけません。そうすることで共創の「実行(doing)」が戦略立案会議よりよっぽど効果出来だとわかります。

    Global Service Jamでのマーカスさん(左)とアダムさん(右)。写真クレジット:@kirsty_joan

    人はとにかく話したがります。合意形成の中で安心感を得たいからです。しかし、イノベーションに必ずしも合意形成は必要ありません。プロジェクトの中では意見の多様性が必要な段階があって、複数の方向性を荒くても構わないので素早くプロトタイプを同時進行で作っていく必要があります。そうすることで、私たちはマネージャーへの報告やPowerPointではなく、顧客の近くにいること、現実を基にした実験の文化が成功への近道だと学ぶのです。

    なかむら:アダムさんが創立者の一人となっているGlobal Service Jamについて教えてください。

    アダム:私たちは変革の立ち上げや改善にジャム(Jamming)の方法を使います。また、組織で適切な人たちと協業する時です。これは「圧力鍋」の調理法で、通常は二日間、チームを作って素早い開発のイタレーションを行います。これには素早いゲリラ調査、速射砲的アイデア出し、エクスペリエンスのローファイ*1プロトタイピングを作って実世界に戻って検証や追加調査をします。これはテーマを知り、基本的なツールやサービスデザインのマインドに触れる素晴らしい方法です。

    私たちはこの方法がとても気に入っているので、世界中に共有したいと考えました。そして三つのグローバル・ジャム(Global Jam)をスタートしました。グローバル・サービス・ジャム、グローバル・ガバジャム(Global GovJam:公共サービスのためのGlobal Jam)、グローバル・サステイナビリティー・ジャムです。詳しくはGlobal JamのWebサイトで確認できます。

    なかむら:私たちも『デザイン+ジャパン』という日本の社会的課題をデザインコミュニティーで解決するイニシアティブを立ち上げたんですよ。次回のGlobal Service Jamに参加させていただくかもしれません。

    アダム:それは素晴らしい!

    なかむら:ところで、このような活動をどうしてやってるんですか?

    アダム:私はもともと心理学、マーケティング、プロダクト開発をやってたんですよ。あと、俳優や監督としても長年やってきました。だから、ビジネスの世界を舞台に見立てて探索してきました。そして「サービスデザイナー」と呼ばれる人たちのコミュニティーがあることを知りました。ビジネスパートナーであるマーカスと私はすでに顧客のエクスペリエンスの分野で舞台の手法を使っていました。だから、このコミュニティーと出会って自分たちのしていることを共有することは素晴らしいことでした。

    今やっていることは、人が本当にやりたかったことの実現を助けることができます。いわゆる「仕事」ではなく、他人にとっての価値を生み出し、自分もそれを楽しむことができること。だから、今やっていることをやり続けているんです。

    なかむら:「サービスデザイナー」は比較的新しい職種なので、様々なバックグラウンドの人がいて面白いですよね。ボク自身がサービスデザインのプロジェクトと呼べることをやったのはマイクロソフトでビジネスアナリストをしている時でした。アダムさんのおっしゃる通り、他人に対して情熱を持てることはサービスデザイナーの持つ資質のひとつだとおもいます。優れたサービスデザイナーになる条件ってなんだと思いますか?

    アダム:優れたサービスデザイナーは情熱と同時に批判的なものの見方が必要だと思います。問題の裏側にある課題の発見に情熱を注がなければいけません。そして、それに関わる人たちに情熱を持たなければいけません。そうすることによって耳を傾ける事ができます。そして調査、プロトタイピング、導入といった重要な活動に情熱を持たなければいけません。

    これらの活動を実行する上で、どのように人々が働き、技術がどのように使われているのか、組織がどのように変革するのかを理解しなければいけません。そして、謙虚でありつつも仮説、アイデア、プロトタイプに対して批判的な見方ができなければいけません。常にそれを壊してさらに良いものを作る姿勢が大事です。

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    *1:プロトタイピングにはいくつかの段階があって、ロウファイ(Low Fidelity)は見た目が荒い簡単なプロトタイプのこと。もっと製品版に千和桁見た目のいいプロトタイプはハイファイ(High Fidelity)プロトタイプという。通常、ロウファイの前にスケッチなどでアイデア出しをする。

  • デザイナーのための『UXストラテジーガイド』

    デザイナーのための『UXストラテジーガイド』

    原文:”THIS UX STRATEGY GUIDE HELPS DESIGNERS MAKE BETTER DECISIONS” by Alex Souza

     デザイナー(特に経験の浅いデザイナー)は企業戦略を見落としがちです。デザイナーが戦略立案に関わる機会が少ないことが原因なのではないかと考えています。または、企業はデザイナーが魔法のように問題を解決してくれると期待しているといったボタンのかけ違いが原因かもしれません。

      デザイナーが企業のゴール、新製品立ち上げの期待、新機能の追加を理解していないのは、ユーザーを理解していないのと同じです。知識の欠落は問題解決を難しくします。本当に。

    「デザイナーは企業戦略を見落としてはいけない」
    “Designers shouldn’t overlook corporate strategy.”

     Jeff GothelfのリーンUXキャンバスやJim KalbachのUXストラテジーブループリントなど素晴らしいツールがありますが、デザイナーや講師としてデザイナーと関わる機会が多い私から見るとこれらのツールは新しいデザイナーが習得して実戦で使うには難しい。このプロジェクトが実現する価値があるかどうか判断するのが単純に彼らにとって難しいのです。

     UXストラテジーブループリントはハイレベルの戦略を理解するためには素晴らしいツールです。しかし、そこから日々の仕事まで掘り下げていくことはできません。リーンUXキャンバスは仮説を設定して次のステップに進むための強力なツールです。しかし、経験が浅いデザイナーがそれを続けるべきかどうかを判断することは判断するのには足りません。

     この問題を解決するためにUXストラテジーガイドを作りました。

    github.com

    UXストラテジーガイド

     このUXストラテジーガイドはデザイナーがリーンUXキャンバスとUXストラテジーブループリントの両方を使いつつ、最終的な決定ができる情報を追加しています。

     このガイドは考えているプロダクトに関わる問題、オーディエンス、アイデア、仮説、リスク分析と判断基準を考える手助けとなるようになっています。

     5カテゴリーに分かれた12ステップで構成されています。最終決定をする上で最後のステップを完成させるには数回のイタレーションが必要となります。

    課題は何?

     最初のカテゴリー(ライトブルーのステップ1から5)では課題の理解、何を解決することを期待されているのか、どのような問題を乗り越えるのか、既存のソリューションとの違い、成功の数値的な目安を設定します。

     集める情報が多いほど、ソリューションのアイデアや想定するユーザーとメリットを考えリスクを減らすことができます。

     ほとんどの情報はプロダクトマネージャーと埋めることができるでしょう。小さな規模の会社であれば会社のオーナーと埋めることができるかもしれません。

     このガイドの他のフェーズでも同様ですが、全ての質問に答えて棚卸しが終わってから次のステップに進みましょう。信じられないかもしれませんが、多くのプロジェクトはステップ2とステップ3が不十分なために失敗します。

    「先に問題を明確にし、次にソリューションを考える」
    “First identify the problem, then work on the solution.”

     このカテゴリーでは存在するであろう課題について書いていることを忘れないでください。既存のプロダクトでよくある間違いはソリューションが直面している課題について説明してしまうことです。ここでの目的は課題を明確にすることで、ソリューションの発見はその次になります。

    誰のため?何のため?

     二つ目のカテゴリー(ライトグリーンのステップ6と7)ではそのプロダクトを使うであろう実際のユーザーとユーザーメリットを理解します。

     これは「ミニ・ペルソナ」のようなものです。

     UXリサーチを実施するのにいいタイミングです。可能であれば潜在的なユーザーと話をしてみましょう。 リーン・サーベイ・キャンバスは調査の準備するのにとてもよいツールです。

    アイデアに名前をつける

     ステップ8(ライトイエロー)はその前のステップで集めた情報をもとに機能に関するアイデアを記録しておくため場所です。いわゆる「完璧なアイデア」はユーザーやビジネスにフィットしないことが多いです。

     例えば主なユーザーが発展途上国にいるとして、電話のアプリケーションを作ろうとしているとします。その場合はiPhoneよりもAndroidのプラットフォームのほうがいいでしょう。

    何が重要なのかを把握する

     ステップ9から11(ライトオレンジ)はJeff GothelfのリーンUXにあたる部分となります。

     ここで機能がユーザーと企業にとってどのように有益なのか仮説をたてます。さらに最も深刻なリスクとその可能性について検討します。

     それぞれリスクが少ない仮説がデザインと開発チームのバックログに入ります。リスクが高い仮説は破棄されるか将来のイタレーションのためにガイドに残します。

    メインステップ

     デザイナーとしてピクセルを操作して画面との関係を考えることは大好きです。12全てのステップに答えて全てが「イエス」であればプロトタイプを作りはじめることができます。

     一つ以上「ノー」がある場合は意思決定をするには情報が足りていないことになります。そのまま続けてもやり直しのリスクが非常に高くなります。結局のところ、イタレーションを繰り返してわからない部分をなくしたほうが、やり直したり破棄するような失敗プロジェクトに関わるよりいいのです。

    まとめ

     UXストラテジーは学習、忍耐と献身を必要とするテーマです。様々なデザイン分野をカバーし、プロダクトマネージメントやマーケティングといった企業のデザイン以外の分野とも緊密に連携する必要があります。このような知識を理解して役に立てることはデザインに大きな価値を生み出します。

     この『UXストラテジーガイド』はデザイナーが企業、オーディエンスやマーケットをよりよく理解するために作られています。必要があればいつでも使ってみてください。

    訳者からの解説

     フォーマット訳者より:実際に試しに埋めてみましたが、ある程度慣れとセンスは必要だと感じました。翻訳上は、「UX Strategy」「Lean Startup」のナレッジをある程度前提としているので、Assumption – 前提とHypothesis -仮説は各々どう定義するのか、そもそも何を指して言っているのか…ということにそれぞれの文脈の影響で少し揺らぎがあったりします。なので、そのまま日本語訳するとちょっとわかりづらい、ということを中村さんともディスカッションして、もともとのフォーマットには無い解説などが付記されています。

     それと、なるべく厳しい目線で使わないと、マッチポンプ的に意外とイケそうな感じにも書けてしまうのは他の戦略フォーマットと同様かと思います。とはいえ、最後に「全部ほんとに調査したか?」「本当にこのアイデアで行けそうか?」という問いのところはすべてクリアしないと先に進めないので、無意識的な甘さは排除しやすいかもしれません。とりあえず全体像を俯瞰しながら進む戻るを検討しアタマを整理するのには良いと思いますので、試しにつかってみてください。

    赤羽太郎

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  • プロダクト開発の優先順位のラディカルでシンプルな付け方

    プロダクト開発の優先順位のラディカルでシンプルな付け方

    原文:”A Radical, And Simple, Approach To Product Prioritization” by Richard Banfield

    「すべきことを終わらせる」ための最大の課題は「何をすべきかを知る」ことなのは皮肉なことです。私たちの本の『Product Leadership』でこのトピックにまるまる一つのセクションを費やしました。最近では、この課題を確認するためにいくつかの調査を実施しました。100人以上のプロダクトプロフェッショナルを対象としたアンケート調査で、TwitterとLinkedInで投票をしましたが、結果は同じでした。プロダクト担当者の最大のチャレンジは優先順位付け。

    Source: Twitter Poll

    なんで優先順位づけは難しいのか?

     プロダクトのクリエイターは多くの責任がありますが、そのタスクを遂行するために必要な権限はありません。役員たちはチームに多くの要求し、顧客や営業はカスタム機能やバグ修正を依頼してきます。これらを断るのは難しい。

     ほとんどのプロダクトマネージャーやリーダーは優先順位づけに必要な手法を持ち合わせていないことがわかりました。どのアイテムが重要で、どのアイテムは後回しにできるかを分別する簡単な方法。売上の圧力、偉い人の意見、組織内の合意で優先順位づけをしている場合が多すぎます。彼らには助けが必要です。

     必要なのは概念ではなく具体的な方法です。

    どのように優先順位づけをするのか?

     優先順位付けは明確なビジョンとそこに到達する道のりを明確にすることからスタートします。幸いにそのためのシンプルで洗練されたソリューションがあります。私の同僚のGeordie Kaytesと友人のRadhika DuttとNidhi Aggarwalが非常に便利なソリューションを作りました。

    「プロダクトが魅力的なビジョンから生まれることは非常にまれです。今までのキャリアを通じて私たちみんな素晴らしいプロダクトを作る努力をしてきました。しかし明確な道筋はありませんでした。私たちは自分たちの見識を比較し、ビジョンからプロダクトを作るためのプロセスを考え出しました」 – Radhika Dutt

    彼らはそれをラディカルプロダクトと呼んでいて、それは私はスゲエと感じました。

    ステップ1:プロダクトビジョンを作る

     彼らのビジョンデベロップメントワークシートを使うと簡単なステップでクリアで明瞭なビジョンに近づくことができます。あなたがスタートアップの創業者であれ、プロダクトリーダーであれ、チームと一緒にこの作業を行うことを勧めています。

     ワークシートを使うって最初のビジョンを作り、チームとともに反復作業をします。これがそのワークシート…

    ビジョンデベロップメントワークシート

     これがその穴埋め問題式のフォーム…

     現在、[カスタマーセグメント]が[行動や結果]したいとき、彼らは[現在のソリューショ ン] します。これは非常に耐えがたいことです、なぜなら [現時点でのソリューションの欠点]だからです。私たちは [課題が解決された世界]を望みます。私たちは[技術やアプローチの概要]で実現します。

    ステップ2:ビジョンとプロダクトストラテジーを結びつける

     このラディカルプロダクトモデルでは優れたプロダクトストラテジーのための4つの要素が定義されています。ペインポイント、デザイン、機能とロジスティックです。

    ペインポイントとは「誰のため?」と「彼らの痛みは何?」です。

    デザインとは「ユーザーが目にする最も重要なフィーチャーやコンポーネントは何ですか?」と「それはどのような感情をユーザーにもたらしますか?」という問いに答えるものです。

    機能とは「どのようにそのフィーチャーをユーザーに届けますか?」と「どのような技術、専門性、データ、パートナーシップや機能を開発する必要がありますか?」にあたります。

    ロジスティクスは「その製品はどのようにユーザーに届けられますか?」や「どのようにサポートしますか?」といったチャネルに関することです。

     これにより作業を明確にして優先順位をつけるためのロードマップが準備できます。

    RDCLストラテジーキャンバス

     Radical Productの作者はこのシートを定期的に見直すことを進めています。

    ステップ3:ビジョンに当てはめて優先順位を決める

     下にある2×2マトリックスを使ってどのニーズにチームがフォーカスすべきかを評価することができます。どれを無視して、どれを後回しにするか。ビジョンを基準としてフィルターすることで何が必要で何が不必要なのか優先順位を決めます。

    ビジョン/事業継続性テスト

    ビジョンのフィットと事業継続性から優先順位を決める

     資金が潤沢にあればビジョンに投資すべきです。投資家や顧客を説得できるのであれば特に。資金が足りない場合は「ビジョンの負債」を取ることもできます。しかし、「技術的負債」と同様にこの負債は将来的に返済する必要があります。

    難しいのはビジョンとフィットするけど事業継続性が低い場合や、ビジョンはフィットしないけどビジネスの心配をせずによく寝れる場合です 🙂 – Nidhi Aggarwal

    ステップ4:プロダクトビジョンを計測する

     実行は計測しなければいけません。優先順位がどのような結果を生むかを知る必要があります。計測することで改善ができます。残念ながら、ほとんどのプロダクトチームは顧客の価値や満足の結果に紐づかない自己満足の指標を使いつづけています。

     この最後のトピックはもっと詳細な説明を必要とするでしょう。このトピックに関してはNate WalkingshawのMind The ProductプレゼンテーションとDuttの製品分析と測定に関する考えを読むことを強くお勧めします。

    ここで紹介されているRDCLツールキットの日本語版はカタパルトスープレックスデザインに収録されています。

    カタパルトスープレックスデザインはデザインやイノベーションに役立つオープンソースで無償のツールを集めたツールボックスです。

    この記事はFresh Tiled SoilのCEOであるRichard Banfield氏による”A Radical, And Simple, Approach To Product Prioritization“の翻訳です。

  • スタンフォード大学でも使われている『共感マップ』のアップデート

    スタンフォード大学でも使われている『共感マップ』のアップデート

    原文:”Updated Empathy Map Canvas” by Dave Gray

     何年も前にXPLANEで共感マップをデザインしました。私たちがゲームストーミングと名付けた人間中心デザインツールキットの一部でした。

     共感マップは多くのチームが共感による人に対する深い理解を共有することに役立っています。顧客のエクスペリエンスを向上、社内政治の理解、より良い仕事環境など多くのプロジェクトで活用されています。

     共感マップは私たちのワイルドドリームを超えて成功しました。スタンフォード大学d.schoolのカリキュラムで採用され、ハーバードビジネスレビューでも掲載されました。IDEOの創設者であるDavid KelleyとビジネスパートナーTom Kelleyが「IDEOのリーダーからの3つの創造的チャレンジ」の一つにも選ばれました。

    なんでアップデート?

     共感マップが作られ数年経ちますが、その間に多くのバージョンが現れました。共感マップは共感を育むためのエクササイズを補完するフレームワークとして特定のアイデアを元にデザインされています。共感マップの成功はエキサイティングであり、非常に喜ばしいことですが、数年に渡る様々な解釈の中で失われたものもあります。また、Webで展開されているいくつかのバージョンはオリジナルからダウングレードされています。

     最近では、ビジネスモデル・キャンバスのデザイナーのAlex Osterwalderと協力してCulture Mapという組織文化をマッピングするための新しいツールを開発しました。その過程で私はキャンバスデザインについて多くのことを学びました。

    そこで『共感マップ』の新しいバージョンを作ることにしました。Alexから学んだことを活かしてより使いやすく、より良いエクスペリエンスと成果を目指しました。

    アップデートの内容

    1. チームが活動のコンテキストと目的を明確にするためゴールを組み入れました。このゴールはWhoDoのエクササイズでも明確にすることができます。
    2. 活動の流れをより明示的にするためにセクションに番号を加えました。 流れの説明は後ほど説明します。
    3. 「考えると感じる」のセクションを頭の中心に置きました。これのより観察できる外の現象と 観察が難しい内面を区別しやすくなります。また外側にあった「痛みとメリット」も頭の中に移動しました。
    4. チームがエクササイズに入りやすくするためのいくつかの思考準備の質問を追加しました。

    使い方

    1. ゴールからはじめましょう。「誰」が共感マップの主人公で、あなたは「何」をしてほしいのか。これは新しい観察可能な行動から形作られる必要があります。
    2. ゴールを明確にしたら、キャンバスを時計回りで作業していきましょう。「見る」「言う」「やる」「聞く」の順番です。観察可能な現象(目に見えるもの、聞くもの)に集中することによりその対象に深く共感できるようになります。彼らの経験がどのようなものか想像する機会となり、「彼らのように感じる」感覚に近づきます。
    3. 外側の要素を埋めてから、頭の中の動きにフォーカスしはじめます。多くの共感マップは頭の外側に「考えてること、感じていること」を置いて、あまり書き込む余地がないことに気づきました。真ん中の大きな頭はこのマップデザインの最も重要な側面の1つです。実際に最初の名前は「The Big Head」でした。なぜなら、もともとのコンセプトはその人が何を感じて何を考えているか知ることだからです。そして、それは今も変わりません。
    4. もしプロダクト、サービス、またはカスタマーエクスペリエンスをデザインしている立場であれば、共感マップは価値のデザインにとても良いインプットになります。価値のデザインはAlexのもうひとつのツールであるValue Proposition Canvasが使えます。

     この新しい『共感マップ』テンプレートを使用すると何が起こるかについてフィードバックを聞きたいと思っています。このようなツールは、ユーザーのフィードバックの共有からのみ改善されます。このツールを試して、どのように機能しているのか、どのように改善できるか教えてください。 コメントであなたの考えやフィードバックを共有してください。

     このアップデートされた『共感マップ』の日本語版はカタパルトスープレックスデザインに収録されています。

     カタパルトスープレックスデザインはデザインやイノベーションに役立つオープンソースで無償のツールを集めたツールボックスです。

     『共感マップ』日本語版はXPLANE社の許可を得て配布しています。この記事はXPLANE創業者Dave Gray氏による”Updated Empathy Map Canvas“の翻訳です。

  • ジャレッド・スプールが語る|NPSは役に立たないどころか害になる(UXはどうすべきか)

    ジャレッド・スプールが語る|NPSは役に立たないどころか害になる(UXはどうすべきか)

    原文:”Net Promoter Score Considered Harmful (and What UX Professionals Can Do About It)” by Jared M Spool

     2003年にコンサルタントのFred Reichheldがハーバードビジネスレビューの記事「伸ばすべきたった一つの数字 “The One Number You Need To Grow”」という記事でビジネス界に火をつけました。彼は顧客のロイヤリティーを測るたった一つの質問で経営者は顧客がビジネスに対する感情を測ることができると断言しました。彼は記事の最後に「この数字こそが伸ばすべきたった一つの数字です。シンプルで奥深い。」と締めくくりました。

     結局のところNPSはシンプルでもなければ奥深くもありませんでした。経営者が顧客のロイヤリティーを測る助けにもなりませんでした。

      それでもネットプロモータースコア(略してNPS)は「使える」ビジネス指標としての一般的な必要事項は満たしていました。

    • 簡単に測定できる
    • トラッキングできる数字を生み出す
    • 正当だと感じることができる

     NPSの正体が優れた多くの論文によって確固として暴かれた後でも、いまだにビジネスの世界では確固として使われ続けています。いまだに企業が新しいNPS測定プログラムを開始したと毎日のように聞きます。

     業界のリーダーたちはNPSを賞賛し続けています。例えばStephen BennettがIntuitのCEOだった時に「全ての事業ラインはNPSを戦略計画に含めている。業務予算のコンポーネントとなっているし、役員のボーナスにも組み込まれている。ビジネスの進捗をNPSで毎月レビューしている。」と語っていました。

     Intuitのような会社は会社の重要な決断をNPSを元にして行なっていましたが、この数値は彼らが測ろうとしていたことを測るものではありませんでした。実際のところNPSは特に何も測っていません。実際にNPSがどれほど空虚なものなのかを見ていきましょう。

    NPSの数式の裏にある奇妙な科学

     NPSがおかしな点の一つはその数式にあります。インプットはシンプルな質問からきます。「あなたはこの[企業]を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対して0なら「全く可能性がない」10なら「非常に高い可能性がある」と数字で回答します。(後のバージョンでFred Reichheldはその数字にした理由を聞くようにしています。それも後で見ていきましょう。)

     普通の統計学者であれば集められた数字の平均値を報告します。その理由はよく説明されてはいませんが、NPSでは平均値を利用しません。その代わりにスコアを三つのセグメントに分けます。

    9と10は「プロモーター」

    7と8は「受動的な立場」

    6から0は「批判的な立場」

    Net Promoter Score

     スコアを計算する式は以下の通り。

     NPS =「プロモーター」の割合 マイナス 「批判的立場」の割合

     例えば10人の回答者がいたとします。データは 0、0、1、4、5、6、7、8、9と10。

     この平均は5となります。

     NPSは「プロモーター」20%で「批判的立場」が60%なので、マイナス40となります。

    NPSの分布

     5が平均というのは良くも悪くも有りません。ニュートラルと言えます。しかしマイナス40は非常に悪いですよね。 (マイナス100よりは悪くないですが、それでもすごく悪いです)

     なぜかというとNPSの考えではニュートラルなスコアをつける人は他人にその会社を薦めないからです。ロイヤルではありません。「プロモーター」に引き上げないといけないので「批判的な立場」とされます。

    NPSはエクスペリエンスの成功を隠す

    回答が全て0だった場合

     例えばものすごい悪い日があったとします。10人の回答者全てゼロ:0、0、0、0、0、0、0、0、0で0。

     平均はゼロです(当然ながら)。

     NPSはマイナス100。これがNPSでの最悪のスコアです。

     理解できます。ゼロは最悪です。ゼロに祝福はありません。

     そして、チームはすごく頑張ったとします。プロダクトをよくしました。

    回答が全て6だった場合

     ガンバってスコアを全て6にしました。6、6、6、6、6、6、6、6、6と6。

     平均は6です。

     しかし、NPSはまだマイナス100です。

     何らかの理由でNPSは6はゼロと同じだと考えます。NPS以外ではそうは考えていませんが。Intuitのような会社で働いていると、ゼロから6に改善するために多大な努力をしたとしても認められません。役員もボーナスをもらえません。何もやってないのと同じ。

    回答が全て8だった場合

     もちろん、これはあなたが6しかもらえなかったから。例えば8をもらえるくらいプロダクトを改善したらどうでしょうか?8、8、8、8、8、8、8、8、8と8。

     平均は8でNPSは…ゼロです。

     全てのユーザーをゼロから8に引き上げるというのは普通の組織ではものすごい達成です。しかし、NPSを採用しているとゼロですのでボーナスはもらえません。

    回答が全て9だった場合

     ではデータを全て9にしてみましょう。9、9、9、9、9、9、9、9、9と9。

     平均は9で、なんとNPSは100です!

     8から見ると100%の改善です。やった!ボーナスがもらえる!データをちょっと押し上げるだけで真ん中から最高になりました。天才ですか?

     このようにNPSの計算は納得できる部分は多くありません。ビジネス的にも数学的にもこのようなスコアの急激な変化に意味はありません。

     小さな改善の蓄積が小さなスコアの改善に反映されるべきです。大きな改善のみ大きなスコアの変化に表れるべきです。NPSはそのようになっていませんし、それについて誰も説明できません。

     これはKate Rutterが言うところの「分析劇場」です。プロダクトやサービスを改善するためではなく、ドラマを生み出すため数字の劇的変化を演出する方法です。

     平均の方が数字で何が起きているのかを理解することができます。シンプルで改善を表現します。

    もしNPSの問題が単なる計算式の問題だけであれば平均を使えば解決です。しかし、平均はデータに意味がある場合にのみ有効です。不幸にしてNPSの質問をどのように解釈するかによってデータは意味がなさなくなります。

    ノイズが科学を装う11ポイントスケール

    3ポイントスケール

     「この記事が面白かったですか?」と質問をして「はい」「いいえ」「わからない」の三つの選択肢があったらどのように回答しますか?三つから選ぶのはさほど難しくありません。

    5ポイントスケール

     それが3ポイントスケールです。これを5ポイントスケールに引き上げると少し回答するのが難しくなります。「とても面白い」「ちょっと面白い」「わからない」「ちょっとつまらない」「とてもつまらない」。「ちょっとつまらない」ってなんでしょうか?ちょっと面白いけど最後まで読みおえるほどは面白くない?

    7ポイントスケール

     7ポイントスケールだとさらに難しくなります。ラベルがつけられなくなり、数字に頼るようになります。「とても面白い」、6と5、「わからない」、3と2、「とてもつまらない」。

     回答が難しいだけでなく、解釈も難しくなります。3と2の違いは何でしょうか?両方とも悪いスコアです。しかし、何が違うのでしょうか?回答者はその時々で一貫性がある回答をすることができるのでしょうか?他の回答者との一貫性はどうでしょうか?

    11ポイントスケール

     NPSでは11ポイントスケールを使います。これはとても多い数字ですし、数字の違いは明確ではありません。私とあなたは全く同じエクスペリエンスを体験するかもしれませが、私は7、あなたは6をつけるかもしれません。何か意味のある違いがあるのでしょうか?

     私たちは6と7の違いを理解すると何となく想定されていますが、多くの回答者は理解していません。何を選ぶかは気まぐれです。

     NPSでは6のみのデータセットではマイナス100で7のみのデータセットではゼロになります。NPSにとっては大きな区別ですが、回答者にとってはノイズでしかありません。回答者はどうしてその数字なのか説明できません。

    NPSの質問:無意味なデータを入力すれば無意味な結果が返ってくる

     NPSを導入するときに、回答者に友達や同僚に[企業]を勧める可能性を聞きます。表面的に顧客のロイヤリティーについての質問にみえます。元々のハーバードビジネスレビューの記事でも著者は実際の再購入や紹介と強い関連性があると主張しています。

     しかし、後の調査で関連性は見つかりませんでした。その理由がこちら。

     良い質問は未来ではなく過去についての質問です。健康的な生活を送るつもりですか?とか砂糖をこれからは抑えますか?とかこの商品を買いますか?などの質問は未来を予測するものです。私たちはこれから何をするかよりもこれまでに何を行なったかに関心を持ちます。私たちは行動の予測ではなく実際の行動に関心を持ちます。

     こちらがその例となります。イギリスの分析コンサルタントでNPSの信奉者のDan Barkerに協力してもらいました。一つのeコマースから16ヶ月のNPSデータです。

    eコマースのNPS

     DanのNPSデータポイントは5から10までの広がりがあります。このデータから読み取れないのは実際にそのような行動をとったかどうかです。その企業を実際に友人や同僚に勧めたかどうかわかりません。

     Danの購入履歴から彼の顧客はスコア8の回答に最もお金($110)を使っています。一番安い買い物($57.60)に9をつけています。スコア5がつけられた時の価格は10がつけられた時の価格と$3.00しか違いがありません。このデータから買い物の行動とNPSの回答の関連性はみられません。ロイヤリティーの関連性もです。

    NPSは本当にロイヤリティーと成長の数値なのか?

     ロイヤリティーは長い道のりです。長期間の行動です。ハーバードビジネスレビューの記事でFred Reichheldは「ロイヤリティーは個人的な投資や犠牲と引き換えに企業との関係性を深めたいというのぞみです」と解説しています。

     しかしNPSの質問は投資や犠牲について触れていません。ロイヤリティーについても触れていません。会社を勧めるかどうかしか聞いていません。

     将来の行動についての質問はロイヤリティーではなく、楽観主義です。

     もし本当にロイヤリティーについて関心があるのであれば、別の質問ができます:「過去6週間に私たちのサービスを友達または同僚に紹介してもらえましたか?」。これはNetflixが初期に実際に顧客に質問したやり方です。Netflixはこれと同時に決定的な質問を購読者全員にします「新しく購読するにあたり、友達や家族から紹介されましたか?」

    Netflix

     Netflixではこの質問の「はい」の回答と新しい購読者の成長と関連性を見出しました。そして「はい」の回答がなくなるとキャンセルが増え新しい購読者の成長が鈍りました。これらの質問はNetflixの成長と直接関連づいています。質問は過去の行動についてであり、未来の予測ではありません。

    エクスペリエンスとNPSはマッチしない

     これを書いている時まさにユナイテッド航空のWebサイトで私が891,116マイルを飛んだと表示しています。今年だけで49回のフライトで73,890マイル飛んでいます。このデータだけでロイヤルカスタマーと言えるでしょう。

     私のTwitterをフォローしている人であれば私がユナイテッド航空のサービスに文句ばっかり言ってるのにお気づきでしょう。もしユナイテッド航空がNPSの質問をしたならば5以上の回答はあまりしないでしょう。(誰も殴られなかった時が5です)

     私はユナイテッド航空のロイヤルカスタマーでしょうか?NPSの質問(未来の行動)でもNetflixの質問(過去の行動でも)ユナイテッド航空に高い得点を与えるでしょう。

     驚くことに私はいつもユナイテッド航空を勧めています。ボストンから西海岸に移行するのにベストチョイスです。寛容できる程度の国際線サービスもあります。

     しかし「ベストチョイス」が「ウキウキするサービス」というわけではありません。最悪の中では一番マシというだけです。彼らが好きだから勧めるのではなく、他が大嫌いだから勧めるのです。

     この記事を書いていると知っている友人がCitiオンラインバンキングのNPS質問を送ってきてくれました。

    CitibankのNPS

     その友人はお金を送るためにCitiのアカウントにログインんしました。その取引は平凡なものでした。なんで平凡なサービスのためにCitiを銀行として推薦するのでしょうか。そもそも普段の銀行取引は平凡なものです。何か違ったことがあるとしたら、それは悪い知らせです。

     NPSはユーザーのこのような粒度を反映してデザインされていません。この質問をされる前に4回別の取引をしたかもしれません。どうしてそれらを覚えているでしょうか?うまくいったのでしょうか?

     NPSが目的とするデザインの通り試したのですが、企業がこのやり方を試す時には問題に直面します。回答に何も意味はないのですから。

    NPSを質的調査に組み込んでみる

     数年の間、私たちはNPSの質問を質的調査に組み込んでみました。どうしてそのスコアを選んだのか。私たちの発見は、人々はその質問の意味を理解していなかったということです。

     低いスコアをつける典型的な参加者は全く問題のないサービスやプロダクトのエクスペリエンスを私たちのラボでは体験します。なぜ低いスコアをつけたかを聞くと、過去に悪い体験をしたためにそのサービスを勧めるのに抵抗があると言います。そのサービスやプロダクトをそれ以来使っていないかというと、何回も使ってると言います。

     またサービスやプロダクトを使いにくそうにしていたのに10をつけた参加者がいました。彼らの答えは「思ったより良かった」や「まあ、いいかも」でした。このプロダクトやサービスを実際に使うかどうかを聞くと「多分使わない」です。

     私たちは「誰に推薦するか思いつかない」という理由で0をつける多くの参加者をみてきました。他の人たちは友達がその会社で働いているという理由で10を付けました。企業が回答に対してAmazonのギフトカードなどインセンティブを提供する場合もスコアは高くなる傾向があります。「ゼロをつける参加者にギフトはもらえないだろう」と考えるからです。

     私たちはNPSが顧客のエクスペリエンスもロイヤリティーも表していないことを学びました。実際にNPSは何も有益なことを表していません。

    NPSは簡単に操作できる

     もしボーナスがNPSスコアと連動しているなら $100のインセンティブはスコアを上げる有効な手段です。そしてこれはNPSを操作する唯一の手段ではありません。

     質問をユーザープロセスの最後にすることでもスコアを上げることができます。理想的なタイミングはタスクの完了を成功したときです。例えば購入とか。

     それにより、成功した人にだけ質問をすることができます。プロセスにフラストレーションを感じて途中でやめた人を除外できます。回答は自然とポジティブなものが集まります。

    回答率7%

     もう一つの方法は回答率を無視することですhほとんどのNPS調査でのフィローアップ質問の回答率は4%から7%です。7%の回答率というのは1人から回答のあったら13人は回答していないということです。この答えなかった13人は答えた1人と同じ回答でしょうか?おそらく違うでしょう。

     イライラした人はわざわざフィードバックをしないというのが低い回答率の説明の一つです。 Fred Reichheldのロイヤリティの定義で言えば、興味のない人はさらなる投資をしません。

     スコアを更に操作するならば、「批判的な立場」のユーザーには早い段階で脱落してもらうことです。悪いエクスペリエンスによって意識的に離脱を促し、スコアを改善することができます。意図的でなくとも、これを発見して改善する方法はほぼないので、結果的にそうなりやすいです。 

     このようなNPSのダークなテクニックで高いスコアを獲得でき、もっとボーナスがもらえます。みんなが幸せになりますよね? 

     私たちはNPSを有害だと考えます。全く改善していないエクスペリエンスをあたかも改善したように操作できます。

    フォローアップ質問の本当の価値

     NPS信者は数字以外は何も質問しないといいます。スマートな実施は常になぜそのスコアなのかフォローアップ質問をします。 洗練された調査ではスコアによってフォローアップ質問を変えます。プロモーターには「何が良かったのか」、批判的な立場には「どう改善すればいいか」を聞きます。

     これはとても正しいことです。本当の価値は「なぜ」という質問です。ユーザーは何が実際に起こり、どうすれば改善できるのかを教えてくれます。また、すでによくできていることを壊さないように。

     NPS信奉者に私は素晴らしいデータを取っていると言います。なんでわざわざ数字の質問までするんでしょうか?質的な質問で十分ではないでしょうか。彼らの反応はモゴモゴ口ごもったり、セグメントやインディケーターに関するフワフワした説明や理屈のつかないタワゴトです。

     私たちは「なぜ」の質問を対面の質的ユーザー調査に追加します。その反応はデザインに関する問題部分とうまくいっている部分に関するヒントを与えてくれます。しかし、NPSスコアの反応はそのセッションで何が起きたかと関係がありません。これは私たちが実際に集めたデータにも表れています。NPSは現実を表していません。

    でも、偉い人たちは数字が欲しいんですよ!

     最近Fortune 500企業のデザイン担当の上級副社長が「全ての部門の役員ミーティングでは数字を発表します。多くの場合、NPSだったりします。NPSじゃなければ何か改善を示す別の数字が必要なんですよ」と言いました。

     数字なんてたくさんあります。実際に無数にあります。

     それでも企業のカスタマーエクスペリエンスを表すたった一つの数字はありません。NPSですらです。だからといって、挑戦をやめる理由にはなりません。

     私たちは事業の数字を使うことができます。サブスクリプションの数や離脱率など。売上、純収益や利益でも構いません。

     これらの数字はプロダクトのデザインに直接関係してきます。顧客が満足なのか、さらにワクワクしているのかはわかりません。

     これこそがNPSがやろうとしていることです。成功していないというだけで。ではどうしたらいいでしょうか?以下は代替案です。

    どれくらいウキウキ、それともイライラしましたか?

    お役に立てましたか?

    ハッピーにできましたか?

     どれでも構わないと思います。もっと大事なのが次の質問です。

    どのようにすればもっとよくなりますか?

     このフォローアップ質問こそが価値となります。いろんな質問の仕方があるでしょう。顧客に耳を傾けるのが重要なのです。

    カスタマーエクスペリエンスを一つの数字で表すことはできない

     これがNPSの欠陥です。達成できない結果を達成しようとする。簡単に問題を解決するという約束自体が経営陣には魅力的なのです。実際に問題は解決しないのですが。

     カスタマーエクスペリエンスとは製品、Webサイト、従業員やブランド全てとの関わりの総合点です。そのやりとりの流れは顧客によって全て違います。

     NPSを信じる人たちは欲しているものを実現しないものを欲しています。NPSは星占いのようなもので、科学的ではありません。信仰です。

     UXのプロといえど星占いが本物だと信じている人を説得するのは難しいでしょう。それでも私たちは罠を避け、組織に対して価値のある測定をすることはできます。

     この記事を友人や同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?

     

    解説

    ジャレッド・スプールはUIEの創業者でUI/UXの専門家として知られています。最近だとKickstarterキャンペーンでCenter CentreというUXデザインを教える教育機関を設立しました。ボク個人もNPSには納得できない部分があって、こうやって説明されると「なるほどな」と思います。

    カタパルトスープレックスなかむらかずや