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  • 書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|”The NeuroGeneration” by Tan Le

    書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|”The NeuroGeneration” by Tan Le

     映画『アベンジャーズ』でロバート・ダウニー・ジュニア扮するトニー・スタークが浮かんでいる画面を手でササっと操作したり、やはり映画『ドクター・ストレンジ』でベネディクト・カンバーバッチが光の魔法陣をバッと手から出して防御したりカッコいいですよね!やってみたいですよね!残念ながら光ってフォトンが何かにぶつからないと出ないから、宙に浮かぶディスプレイや光の魔法陣は今の技術ではできそうにありません。残念!

    しかし、映画『X-MEN』のメインキャラクターの一人で史上最強のテレパスであるプロフェッサーXが使うセレブロのような脳の拡張装置はできてしまうかもしれません。ちなみに、セレブロはスペイン語で「脳」という意味です。

    今回紹介する書籍”The NeuroGeneration”では小型の脳波測定装置を開発するスタートアップEmotivの共同創業者であるタン・リーが様々な最新技術を紹介してくれています。

    タン・リーはまず最初にわかりやすい事例を紹介してくれています。両手、両足が麻痺して動かない四肢麻痺の男性が脳波でF1カーを運転できるようになった事例です。四肢欠損の乙武洋匡さんでも車が運転できるようになる可能性があるということです。論より証拠でYouTubeのビデオを見てもらった方が早いでしょう。

    この本では脳科学を応用した技術的進歩を「ニューロジェネレーション」として7つのケースを紹介しています。全てをここで紹介することはできませんが、面白いと思った一部を紹介します。

    まずは、ブレイン・コンピューター・インターフェイス。F1カーを運転するとか、まさにそうですね。コンピューターのインターフェースは文字のキャラクター・ユーザー・インターフェイス(CUI)から、マウスで操作するグラフィック・ユーザー・インターフェイス(GUI)に。そして、スマホでタッチ・インターフェイスに進化してきました。いま期待されているのはボイス・インターフェイスですが理想とされるのはインターフェイスがない「ノー・インターフェイス」です。おそらく、ノー・インターフェイスに一番近いのがブレイン・コンピューター・インターフェイスです。イーロン・マスクのニューラルリンクも同じコンセプトです。ニューラルリンクの場合は手術で脳に埋め込まないといけないので、ちょっと嫌ですけどね。できれば、プロフェッサーXセレブロのような脳波を使ったウェアラブルでお願いしたい。

    考えていることをコンピューターが理解できるって便利でもありますが、怖いことでもあります。この本でも紹介されていますが、脳波を使った事例としてキャンペーンの多変量テストがあります。タバコのキャンペーンでABCの3種類をテストしました。アンケートではAが一番いいスコアでしたが、脳波が一番反応を示したのはキャンペーンBでした。そして、実際のキャンペーン結果はBが一番良く、Aが一番悪かったそうです。グーグルとかフェイスブックなんて真っ先に飛びつきそうじゃないですか?VRゴーグルのオキュラスとかすごく相性良さそうだけど、自分の脳波がフェイスブックにだだ漏れとかちょっとヤダなあとか。

    また、インプランタブル・デバイスとかも面白そうです。たびたび例に出して恐縮なのですが、四肢欠損の乙武洋匡さんが義手や義足を(自分の手足と同じように)頭で考えて動かせればって思いません?この本で紹介されているアメリカのマーク・ポロックさんは四肢麻痺な上に盲目です。マーク・ポロックさんが使っているのはエクソ・バイオニックという可動式の補助器具です。『エイリアン2』でシガニー・ウィーバーが使ったパワースーツに近いですかね。

    肉体と機械の融合体をサイボーグと言います。例えば『攻殻機動隊』の草薙素子は脳と脊髄の一部を除く全身が人工物なのでサイボーグです。映画『ロボコップ』のロボコップもサイボーグです。脳が人間なので。ちなみに、脳も含めて全てが人工物の場合はアンドロイドやロボットです。わかりやすい例が『ターミネーター』でアーノルド・シュワルツネッガー演じるT-800です。あれはアンドロイド。アンドロイドやロボットの脳は人工知能(AI)ですね。映画『ブレードランナー』に登場するレプリカントはおそらくアンドロイドです。なぜなら原作のタイトルが『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』だからです。

    ブレイン・コンピューター・インターフェースやインプランタブル・デバイスのおかげで、サイボーグはだいぶ現実味が増してきています。そのため、サイボーグ・アーティストのニール・ハービソンとニール・リバスが共同でサイボーグ促進を目的としたサイボーグ基金(サイボーグ・ファウンデーション)を設立したりしています。

    人間の脳を活かしたサイボーグが可能なのであれば、人工知能を活かしたアンドロイドだって可能なんじゃないか?って考えちゃいますよね。タン・リーは人工知能は人間の脳と補完関係になると考えているようです。例えば、人間の脳をサイバースペースにアップロードしたり、さらにアンドロイドの人工知能にそれを埋め込んだり。アニメ『楽園追放』がそれに近い世界ですよね。実態のない電脳パーソナリティが器となる生身の体(マテリアルボディ)にダウンロードして動けるようになる。『エヴァンゲリオン』の綾波レイも同じ仕組みだと推測します。

    もちろん、このような世界はまだまだ先の話。人工知能(AI)がシンギュラリティまで到達した上で、意識とは何か解明する必要があります。

    そのほかにもかなり近いであろう分野もたくさん紹介されています。身体的ドーピングだけでなく、意識のドーピングとか。身体拡張だけでなく、脳拡張です。勉強ができるようになるスマートサプリとかです。

    ケトジェニック・ダイエットKeton-esterなどは元々DARPAと民間のHVMNが開発して民生利用されたニューロ医薬といえるサプリです。ニューロ医薬は薬だけでなく、Mindstrongのようなアプリも含まれるコンセプトでFDAの承認が必要になります。

    この本はどんな人にオススメか

    脳科学や将来のインターフェイスに興味がある人にはオススメです。ボク自身もここまで脳のインターフェイスが進んでいるとは知りませんでした。普通の人が身体拡張や脳拡張に使うのもそれほど遠い将来ではないと思いました。人工知能(AI)の研究も脳科学とのシナジーは大きそうです。

    これは本書でも軽く触れられていますが、脳科学の応用が進むにつれて、規制やモラルの問題も大きくなっていくことが予想されます。プライバシーの問題が脳波にまで及ぶのですから。そして、格差問題もより大きくなることが予想されます。だって、脳の拡張ができるような資産を持っている人は、より高度な仕事ができるようになるわけですよ。しかも、それはそれほど遠い将来ではないかもしれない。

  • 書評|Oculusの歴史「ラッキー・パーマーの章」 “The History of the Future” by Blake J. Harris

    書評|Oculusの歴史「ラッキー・パーマーの章」 “The History of the Future” by Blake J. Harris

    スマホの伸びが鈍化していて「スマホの次のプラットフォーム」が期待されています。「スマホの次」に期待がかかるのはAmazon Echoに代表されるボイスと、Oculusに代表されるVRですね。今回紹介する書籍”The History of the Future”はOculusの創業からFacebookに買収、ラッキー・パーマーの追放までを追ったドキュメンタリーです。

    タイトルを日本語にすると「未来の歴史」。VRが未来のプラットフォームだと信じる人たちの歴史です。

    The History of the Future: Oculus, Facebook, and the Revolution That Swept Virtual Reality

    The History of the Future: Oculus, Facebook, and the Revolution That Swept Virtual Reality

    Oculusの創業の歴史については以前にも記事に書きました。簡単に書くとこうなってしまうのですが、実に簡単ではなかったことがこの本を読むとわかります。とても情報量が豊かで、この本を読んでVRに関するボクの思い込みは随分と解消されました。

    ゲームプラットフォームとしてのVR

    まず、ボク自身の思い込みが晴れたことの一つがOculusは新しいゲームプラットフォームとして開発されたことです。Oculusはスマホのような汎用性の高い一般的なプラットフォームではなく、先ずはプレステやファミコンのようなゲームプラットフォームなんだと。著者のブレイク・ハリス(写真)は”Console Wars”といったゲーム業界の本を他にも出していますが、なるほど、その流れでOculusなんですね。まあ、あとはDMMですかね。

    Console Wars: Sega, Nintendo, and the Battle that Defined a Generation

    Console Wars: Sega, Nintendo, and the Battle that Defined a Generation

    クラウドファンディングはチームプレイ

    二つ目はOculusのような大規模なクラウドファンディングは個人では太刀打ちできるレベルではなくなってるという事実。クラウドファンディングってお金のない起業家がサクッとお金を集めるプラットフォームのイメージがありますが、とんでもない。

    ラッキー・パーマーは最初は小さなキャンペーンを考えていました。起業についてもそれほど乗り気ではありませんでした。しかし、ブレンダン・イリーベがラッキー・パーマーを説得してOculusを設立、マイケル・アントノフとネイト・ミッシェルが参加して巨大なキャンペーンに仕立て上げました。

    Kickstarterのキャンペーンをはじめる前に、ゲームエンジンのUnityやUnreal Engineに対応してもらうように奔走したり、チャネルとしてSteamと連携できるように交渉したり。こういうビジネス面でリードを取るのはブレンダン・イリーベ。そりゃそうだよなあ。いくらラッキー・パーマーがVRのハードウェア開発では天才でも、ビジネスは経験が全くないからわからないものね。

    ラッキー・パーマー追放の真相

    Oculusは最終的にはFacebookに買収されてめでたしめでたしなんですが、創業者のラッキー・パーマーは追放されてしまいます。もう、いろんなスキャンダルがありすぎました。実際には読んでいただいた方がいいと思いますが、一言で言えば「あんた、脇が甘すぎるよ!」ですね。でも、まあ、若いんだからしょうがない。

    この本はどんな人にオススメか

    VR関連をフォローしている人は当然ながら読んだ方がいいです。GOROmanさんとか日本でも有名なゲームやVR関連の人たちがたくさん出てきます。新しいゲーム業界の構造を理解することもできるので、ゲーム業界に興味がある人にもオススメです。

    これからOculus Questを買おうと考えている人は悩ましいですよね。この本を読んで思うのは、もともとOculusが考えていた世界はOculus Questが一つの到達点なのかもと。それでも、Oculus Questが「スマホの次」と言い切れない。それは、もともとOculusがスマホのような汎用的なプラットフォームではないから。Facebookは一般的なプラットフォームになる可能性まで含めてOculusを買収したんでしょうね。だから、本書のタイトルである”the History of the Future”となるのはまだまだ先かなと。その答えは本書にもありません。

    本書はOculusの歴史「ラッキー・パーマーの章」であり、ゲームプラットフォームとしてのOculusの歴史なので、「スマホの次」を知りたい人はラッキー・パーマー以降のOculusの歴史が出るのを待つ必要があります。

  • スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

    スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

    スタートアップでよく言われるのは地味な産業の地味な問題を解決しろです。競争相手が少ないのが一つ、本当に困っているからお金を払ってもらえるのが二つ目の理由です。以前に通っていた歯医者さんに「歯科向けのソフト開発しなよ、絶対売れるから」と言われていました。作らなかったけど、作ってたら売れたのかなあ。

    建設は地味だけど大きな市場で無駄がたくさんある産業の代表例です。アメリカでは600万人が建設業界に携わっていて、毎年1兆円規模のプロジェクトを行なっています。

     

     

    建設業界の課題

    建設業界は金融業界と並び、スタートアップにとってはロマンあふれる市場です。いや、本当ですよ。マッキンゼーによると2030年までに57億ドル(約6400兆円)のインフラ投資が必要になります。また、建設業界は非効率的な産業で納期の遅れと予算オーバーが常態化しています。デジタル化が遅れていて、「紙が一番の競合」と言われたりしています。世界の生産性の平均は35ドル/時間ですが、建設業界の平均は25ドル/時間です。これにより1兆6000万ドル(約180兆円!)の生産性のギャップが一年間で発生しています。

    じゃあ、具体的にどれくらいの資料の量なのかというと、平成29年度の国土交通白書によると、約14ヶ月の橋梁下部工事の場合、資料の厚みが3メートル以上(360cm)だったそうです。それを削減してもまだ1メートル以上(納品資料:53cm/提示資料:112cm)あるんだからすごいですね。それでもこれまで半分以上削減したのだから大したものです。

    国土交通省 i-Constructionの推進状況 2018年6月1日 第3回企画委員会 資料-1

    多くの資料や検査が必要なのは仕方がない部分があります。建物や道路など公共のインフラを作るのには安全が第一です。長く使うものですしね。しかも、設計、調達、施工、管理のそれぞれの段階で多くの関係企業や省庁がかかわってきます。プレーヤーが多いのです。

    建設業界デジタル化の潮流

    コンストラクションテックはAutodeskの主戦場です。設計はまずAutoCADですからね。そして、今は設計情報のデータベースとも言えるビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)の時代ですね。建設データのデジタル化が全体的なトレンドです。この分野で大きなシェアを持っているのはArchiCADとAutodeskのBIM 360です。

    しかし、当然ながら大手だけでどうにかなる市場ではないので、多くのスタートアップがシェアを求めて挑戦してきています。日本でも富士通とかNECとか日立とか大きなところが幅を利かせている市場ですが、スタートアップが寄り付かないのが海外との違いです、残念ながら。

    建設市場へのテックの挑戦

    建設市場は成長が見込まれる市場なので投資も集まっています。投資が集まるということはスタートアップも参入しますし、ユニコーン(10億ドル以上の資産評価される未公開企業)も生まれます。

    サービスとしての建設:Katerra

    ここ最近、大きな資金調達をして話題を集めているのがKaterraです。シリーズDでSoftBank Vision Fundから8億6500万ドルを調達しました。30億ドルの資産評価でユニコーンの仲間入りをしました。中国の自転車レンタルサービスのOfoがそれくらいの資産評価だったと思います。

    Katerraはソフトウェア会社というよりは建設業界に特化したサービスプロバイダーです。自社工場で部品を製造し、組み立てを行い、建設現場に資材を届け、施工まで行います。全てのプロセスを一社で行うのです。

    ソフトウェアを使いこなすには時間がかかりますし、プレーヤーが多いとなおのことです。だったら、自分たちでソフトウェアを使いこなして、全部やっちゃえ!というアプローチですね。建設業界でもモノからサービス、ソフトウェアからサービスへの移行が進む可能性がありますね。

    コンストラクションテックのパイオニア:Procore

    この市場の可能性に早くから気づいて、2002年に創業したのが建設に特化したプロジェクト管理のProcoreです。シリーズGまで進んでいて、10億ドルの資産評価を受けたユニコーンでもあります。CDNのCloudflareやアドテックのInMobiと同じくらいの資産評価ですね。

    BIMがデータの管理だとしたら、Procoreコラボレーションソフトですね。創業者でCEOのトゥーイ・コートマンチは自宅の建設中に設計チームとコミュニケーションをするのが大変だった経験から創業のアイデアを得たそうです。

    Procoreくらい存在感が出てくると、Autodeskとしても無視できないようで、色々とぶつかっているようです。一方でRhumbixには投資してるので、組めるところは組む、組めないところは徹底的に戦うということなんでしょう。

    Y Combinator卒業のエリート:PlanGrid

    コンストラクションテックに一番投資をしているのが何を隠そうY Combinatorです。そしてその卒業生の代表選手がPlanGridです。その名が示す通り、ブループリント(設計図)を共有するサービスです。ブループリントは変更が多いデータで、紙で全てをトラッキングするのは非常に困難でした。全部をやろうとせず、一番困っているニッチな部分を探すのって大事ですよね。

    PlanGridも2015年にシリーズBで5000万ドルの資金調達に成功しています。

    建設業界でのAR/AR活用:Scope AR/Yulio VR

    AR/VRって建設業界で活かせそうですよね。実際にそう考えるスタートアップは多くて、スタートアップがたくさん参入しています。主なユースケースはトレーニングとデザインです。

    Scope ARはARを使って現場のスタッフに適切な情報や指示を送ることができます。マイクロソフトのHoloLensを使っています。こちらもY Combinator卒業生。

    YulioはVRを使ったショールーミング。CADのデータを取り入れてVR環境を作ります。Webやアプリの開発ではInVisionのようなプロトタイプツールで開発前にどのようなUXなのかをデザイナーと開発者で共有することができますし、クライアントにプレゼンテーションもできます。Yulioはその3D版という感じですね。同様のサービスにIris VRもあります。

    建設業界での人工知能(AI)活用:Smartvid.io/Doxel

    BIMで建設データをデジタル化したら、それを分析したくなりますよね。そして、分析できるということは人工知能を使える場面も増えるということです。

    Smartvid.ioは建設業界に特化した画像解析のAIです。現場で撮影され、BIMに登録された写真や動画に自動的にタグ付けをして管理を容易にします。Adobe SenseiがストックフォトサービスのAdobe Stockでやっていることの建設特化版ですね。シリーズAで1000万ドルの資金調達に成功しています。

    Doxelも同様に建設業界に特化した画像解析AIですが、自律走行ロボットを活用して画像を収集するというところが新しいアプローチになっています。

    ただ、ドローンを使った画像解析サービスのAirware130億円を溶かして壮大に破綻したので、独自のハードウェアはちょっと注意が必要ですかね。どこまで汎用品を使い、どこまで専用のものを開発するかの見極めは大事です。

  • イーロン・マスクのマリファナインタビューが(内容は)素晴らしすぎる

    イーロン・マスクのマリファナインタビューが(内容は)素晴らしすぎる

    イーロン・マスク といえばテスラやスペースXが有名ですが、他にもボーリングカンパニーニューラリンクといった面白いことをやっています。そのイーロン・マスクがマリファナを吸ったということでジョー・ローガンのポッドキャストが注目を浴びましたが、内容はイーロン・マスク が様々なことについて台本なしに率直に語った素晴らしいものです。マリファナの部分だけを抜き出して批判するのはもったいない内容です。質問に対して数秒考えて、ゆっくりとリラックスしながらも真摯に答える態度はとても好感が持てます。

    しかも映画『スペースボール』のファンだなんて、ボクはイーロン・マスクが一気に大好きになってしまいました。

    このインタビューは日本の人たちにも知ってもらいたいので、英語の内容を聞き取り日本語の抄訳を用意しました。何しろ2時30分という長丁場です。全てを翻訳できませんが、重要だと思われる部分は翻訳しました。

     

     

    火炎放射器とスペースボール

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    • 誰も反対しなかった?もちろん反対したよ。悪いアイデアだ。絶対に買っちゃダメだっていった。でも止められなかったよ。火炎放射器は20000個が4日で売れた。一個500ドル。帽子は50000個作って、100万ドルくらいの売り上げになった。
    • でも、実際には火炎放射器じゃない。バーナーにエアライフルのカバーをのっけただけ。
    • どうしたらそんな時間がある?みんなボクのことをビジネスの人だと思ってる。Wikipediaにはビジネス・マグニート *1 とか書いてあるし。でも、実際に80%の時間はモノを作ってる時間。アイデアを実現するのがエンジニア。

    トンネルを掘る理由

    • トンネルを掘る理由?ロスには16年住んでるんだよね。交通渋滞はずっと問題だったわけだ。トンネル以外の解決方法がないから、トンネルを掘ってる。成功するかどうかはわからないけど。
    • ロスからはじめて世界中に広める?なんでロスかといえば、ロスに住んでるから。それだけだよ。ロスは実際にはトンネルを掘るには最悪の場所なんだ。ものすごい書類の量。地震もあるしね。
    • でも、地震の時にトンネルほど安全な場所はないんだけどね。嵐の時に潜水艦が安全なのと同じ理由で。地面が動いてもそれに合わせて動くことができる。
    • どうやってはじめた?スペースXのエンジニアに話したらやろうということになった。ロス・アンジェルスには穴を掘るって申請した。最初は穴を掘るだけだからね。
    • トンネルの良さを理解していない人は、地上の道路の問題を理解していない。地上の道路は2Dの交通システムの上に3Dの生活空間がある。生活空間が3Dなのに交通システムが2Dだから渋滞になる。交通システムが3Dになれば渋滞は解決される
    • 交通システムが3Dになるには空飛ぶ車で上に行くか、トンネルで下に行くかしかない。空を飛ぶ車に関しては技術的には実現可能でも騒音と車を持ち上げるために必要な風圧の問題がある。トンネルは100層にもできる。

    AIについてまだ心配している?

    • AIに関しては前よりは心配していないけど、そうだね。いまは運命論者のような気分だ。
    • いまは運命だから避けられないものだとあきらめている。AIは必ずしも悪いものじゃないんだ。人間がコントロールできる範疇じゃないってだけ。難しいのはAIを兵器として活用する欲望にどう抗うかだね。機械対人間ではなく、人間対人間の兵器としてね。

    • まず理解しなければいけないのは、企業は機械と人間によるサイバーネティックの集合体だということ。そして、ボクらはその大きな集合体の枝葉だということ。そして、ボクらは集合的にAIをプログラムしている。Googleの検索エンジンみたいなもの。FacebookやTwitterのようなソーシャルネットワークも同じ。

    AIと脳が繋がるニューラリンクに取り組む理由

    • AIについては人間のコントロールが効かなくなるまでそれほど時間がかからない。それが実現した世界がいいものなのか、悪いものなのかはわからない。人間がコントロールできなくなるというだけ。止めることができないなら、参加したほうがいい。そういうことでニューラリンクNeuralinkのWebサイト)をはじめた。
    • 一番いいシナリオの一つはAIが人間にとっての認識レイヤーの一つになること。現在は人間の脳とAIが直接繋がるにはバンド幅に問題がある。人間には大脳辺縁系(生命維持や本能行動、情動行動を司る)があり大脳皮質(知覚、随意運動、思考、推理、記憶など、脳の高次機能を司る)がある。大脳皮質は大脳辺縁系を幸せにしようとする。もしこれに三つ目のレイヤーとしてAIがあれば人間と共生関係になれる。そうなれば理論的には誰でもスーパーヒューマンになれる。
    • どれくらいスーパーヒューマンになれる?スマホのある自分と、スマホのない自分ではどっちがスマートかということ。実際に「スマホ有り自分」の方が「スマホ無しの自分」より相当賢いはず。スマホで人間のできることは大幅に向上した。スマホと人間の関係を考えれば、ボクたちはすでにサイボーグだと言える。スマホはすでに自分の一部なのだから。
    • しかし、スマホやパソコンと人間の間の情報伝達速度は遅い。すごく遅い。「デジタルの自分」と「生物としての自分」の間はすごく細い線でつながっている。これを太くするのがニューラリンク。インターフェースの問題を解決する。さらに進めばデジタルの自分のスナップショットを保存することも可能になり、生物の自分が死んだ後も生き残る。

    ソーシャルメディアの延長線としてのVRの将来

    • ソーシャルメディアは人を幸せにしていない。ルーズベルトの言う「比べると幸せは奪われる “Comparison Is the Thief of Joy”」と言うこと?そうだね。「現実 マイナス 期待=幸せ “Reality minus expectation equal happiness」とも言える。
    • ソーシャルメディアの問題は実際よりもよく見せること。そして、他人のいい写真を見てうらやましくなる。他人のソーシャルストリームを眺め続けることで、絶えず自分の期待値を変えている。
    • それがソーシャルメディアの現時点だとして、これからどこへ向かっていくと思う?リアリティーとシミュレーションのさがなくなって来ると思う。すでにシミュレーションの世界に住んでいるのかもしれない
    • もし、自分たちがシミュレーションの中に住んでいるとしたら、シミュレーションの外の世界は退屈だと思う。完成したハリウッド映画は素晴らしいけど、その撮影過程は退屈だ。グリーンスクリーンの前で演技したり。
    • VRの中で「今どこにいる?」という質問は意味がない。どこにいるかは意識の問題でしかない。

    テスラについて

    • みんなテスラについてわかってない。例えばバレーだって踊れる。他にも色々できる。
    • テスラはお金で買うことができる最も面白いものの一つだと思う。テスラは究極的にはクルマじゃない。楽しくすること。アタリのエミュレーターでミサイルコマンドのゲームをやったりね。トラックボールは使いづらいから、タッチスクリーンにする。
    • サンフランシスコでの居眠り運転のビデオが有名だが、最近ソフトウェアをアップデートして、ハンドルから手を離したら徐々に減速して停車し、ハザードランプを点灯。そのあとにクラクションでドライバーを起こすように変更した。
    • 電気自動車はもっと効率的にならないといけない。一回の充電でもっと遠くまでいけるようにならないと。今の技術でもできるけど、コストが高すぎる。
    • Fiskerの車がハリケーンで爆発した。バッテリーは燃えやすいけどテスラは大丈夫?テスラのバッテリーは防水だから大丈夫だよ。
    • 電気自動車はガソリン車より反応が早いし、精密な動きができる。それがエンジンとモーターの違い。プリンターや医療機器にガソリンエンジンではなく電気モーターを使うのはそのため。雪道でスリップしてもちゃんとコントロールができる。スリップする前にコントロールするけど。

    持続可能なエネルギーについて

    • トンネルの他にも垂直離着陸機(VTOL)についても新しいアイデアがある。でも、電気飛行機は電気自動車と比べて優先順位が低い。持続可能なエネルギーはとても優先順位が高く、だからこそ電気自動車が必要になる。
    • 地上から炭素を掘り出して空中に放出するのは歴史上最も馬鹿げた実験だ。あまりにも多くの産業があまりにも多くの化石燃料に依存している。全ての自動車を電気自動車に置き換えるのに25年はかかる。
    • テスラが作っているソーラータイル?これまでのソーラーパネルと違って屋根と同化してるんだ。一般的な家庭に必要な少なくとも1/2の電力を賄うことができる。電力を使うのはエアコン。だから、エアコンの使い方に依存する。
    • エアコンは作らないのか?ふふふ、将来のことについては言えないね。うーん、いいアイデアかも。

    イーロン・マスクにとって難しいこと

    • 会社を経営するのは難しい。特にテスラは。クルマ会社を経営するのは難しい。アメリカのクルマ会社で破産しなかったのはフォードとテスラだけ。
    • 例えばテスラの初期はロータスエリーゼを電気自動車に改造すれば大丈夫と考えてた。でも、それは間違っていた。結局、既存の自動車部品で使えたのは7%以下。あとは全て作り直さなければいけなかった。

     

     

    *1:X-Menの登場人物

  • 書評|バーチャルリアリティーの歴史|Dawn of the New Everything by Jaron Lanier

    書評|バーチャルリアリティーの歴史|Dawn of the New Everything by Jaron Lanier

    ジャロン・ラニアーはヴァーチャルリアリティーを商用製品としてはじめて世に送り出したVPL Researchの共同創業者で「VRの父」と呼ばれる人です。VR自体はずっと前に生み出されているので、彼自身はその称号にあまり心地よさを感じてはいないようですが、間違いなくVRのパイオニアの一人です。

    日本でも彼の著作が翻訳されていますが、ボクはこの本がはじめて。内容的にはジャロン・ラニアーの生い立ちとヴァーチャルリアリティーの解説の二つの軸が入れ替わるように進んでいきます。トマス・ピンチョンがたまに出てきますが、「ああ、こういうのが好きなんだなあ」感がひしひし伝わってきます。つまり、読みづらいけど面白い。

     

    Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality

    Dawn of the New Everything: A Journey Through Virtual Reality

     

     

    ジャロン・ラニアーの生い立ち

    まず、ジャロン・ラニアーの生い立ちが面白い。家庭の大黒柱で彼にとっても精神的な支柱であった母親を若くして亡くしたことが彼の人生に大きな影響を与えます。母親が家計を支えていたので、父親が働くことに。母親が残してくれたお金で買った家が完成前に放火で焼失。数年間父親とテント暮らしをします。

    ジオデシック・ドームの家

    いろんなことに興味があって、オシロスコープを家に照射してハロウィーンの演出をしたりしていたそうです。テント暮らしで少しづつお金がたまり、それで徐々に家を建てました。父親はジャロンに家を設計させてくれました。そこでジオデシック・ドームを設計して二年かけて完成させます。普通の子供はオシロスコープで遊んだりジオでシック・ドームの家を作ったりしませんよね。

    権威も学位も何もないアヴァンギャルドサイケデリックヒッピー

    高校はあまりいかず、ニューメキシコ州立大学でなんとなく講義を受けます。そして、そのままニューメキシコ州立大学に入ってしまったそうです。プログラミングはここで覚えます。そのあとはニューヨークに行ってミュージシャンをしたり、恋人についてロサンジェルスまで行ったりします。基本的に無職の放浪生活。なんとなくジャック・ケルアックの『路上』を彷彿させます。ビートではなく、アヴァンギャルドサイケデリックヒッピー風ではありますが。ジョン・ケージとか出てきます。

    ふとしたきっかけで国境の川べりに沈んでいたクルマをもらい、それでシリコンバレーに行きます。スクリュードライバーでエンジンスタート。最初はミートアップのスピーカーとして呼ばれたそうです。そこでヴァーチャルリアリティーの話をしたのがシリコンバレーにきたきっかけ。ストリートミュージシャンをしながら生計を立てていたそうですが、ゲーム会社に就職してようやく社会人デビュー。アラン・ケイやスティーブ・ジョブズなどいろんな人が登場してきます。また、Suicide ClubとかSurvival Researchとか失われた当時のシリコンバレー文化についても触れられています。

    シリコンバレーでビデオゲームのプログラミング。そのお金でVRの会社を立ち上げ。ビジュアルを操作できるコンピュータはまだなかったので、最初はプログラム言語の開発。これがバーチャルリアリティーとしては初めての商用セットRB2 (reality built for two)を開発するVPL Researchとなります。でも、一番売れたのはEyePhoneとDataGloveだそうです。

    バーチャルリアリティとは

    この本では50以上のバーチャルリアリティーの定義が紹介されています。つまり、バーチャルリアリティーはいろんな意味に捉えることができる。それがこの本のタイトル”Dawn of the New Everything”の由来となっているのでしょう。バーチャルリアリティの定義の一つが「脳と感覚のシミュレーション」です。人間の脳は直接風景を見ることはできませんよね。目というセンサーを通じて見ることができる。これをジャロン・ラニアーは潜水艦と潜望鏡の関係に例えています。

    人間にはたくさんのセンサーがあります。皮膚にもたくさんのセンサーがある。熱を感じるセンサー、痛みを感じるセンサー、摩擦を感じるセンサー。パブリックイメージではゴーグルがバーチャルリアリティーですが、バーチャルリアリティーは視覚だけではないんですね。ポケモンGOもそういう意味ではバーチャルリアリティーなんです。

    バーチャルリアリティーに関する素朴な疑問への回答

    アベンジャーズみたいに画面操作できるようになる?

    ハリウッド映画とかで目の前にスクリーンが出てきてそれを操作するシーンとかありますよね。アヴェンジャーズとか。 ジャロン・ラニアーによるとあれは無理なんだそうです。フォトンが物質にあたる必要がある。そうしないと光は発生しない。でも、ナノロボットでそういう操作はできるようになるかもしれない。ナノロボットもバーチャルリアリティーを構成する要素なんです。

    ナノロボットもバーチャルリアリティー?

    例えば、ゴーグルで風景を見たとしても、実際に触れることはできない。でも、ナノロボットでバーチャルな物質を作ればそれを触れることでバーチャルに触れることができる。人間の視覚と触覚を騙すことができる。

    この人間のセンサーを騙すのがバーチャルリアリティーなんですね。少なくともその定義の一つ。

    なんで3D酔いするの?

    あまり長い間、バーチャルリアリティーの世界にいると3D酔いします。バーチャルリアリティーは人間のセンサーを騙す仕組みなので、これがうまくいかないと酔ってしまうわけです。そして視覚を騙すにはトラッキングが重要なのだそうです。このトラッキングの問題は徐々に改善されてきてはいるものの、完全に無くすことは難しいとのことです。まず、個人差が大きい。そして、人間はすぐに慣れて、騙されていることに気づいてしまうんですって。人間ってすごいですね。

    この他にも、LSDとバーチャルリアリティーの違いや明晰夢(Lucid Dream)とバーチャルリアリティーの違いなども解説してくれています。Kinect Hackなど最近のバーチャルリアリティー文化についても触れられています。

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