タグ: ケリー・ライカート

  • 映画『ショーイング・アップ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描くアートと人生の交錯

    映画『ショーイング・アップ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描くアートと人生の交錯

    2022年公開の『ショーイング・アップ』は、ケリー・ライカート監督がオレゴンのアートコミュニティを舞台に、人間関係の難しさと日常の不確実さを描いた作品です。ミシェル・ウィリアムズを主演に迎え、アートの創作過程と、そこに生きる人々の人生を繊細に切り取ります。

    あらすじ|アートスクールで奮闘する女性の物語

    主人公リジー(ミシェル・ウィリアムズ)は、オレゴンのアートスクールで働きながら、自身もアーティストとしての活動を続けています。しかし、家族関係や日常のトラブルが彼女を悩ませ、アートの創作に集中することができません。

    リジーの大家であり友人でもある新進気鋭のアーティスト、ジョー(ホン・チャウ)は、リジーとは対照的におおらかでマイペースな性格。この二人の関係性や日々の出来事を通じて、アートと人生が交錯する様子が描かれます。

    テーマ|人生の不確実さと人間関係の複雑さ

    『ショーイング・アップ』のテーマは、「ままならない人生の一部分」です。ケリー・ライカート監督はこれまでも、人生の出発点や終着点を描くことなく、その途中に焦点を当ててきました。本作でも、リジーの日常の中で生じるトラブルや、他者との関係が描かれています。

    リジーは、壊れたシャワーや気難しい家族、いたずら好きの猫など、日常の細かい問題に悩まされながらも、自分のアートと向き合います。この「ままならなさ」が、映画全体を通じて観客に共感を呼び起こします。

    キャラクター造形|神経質なアーティストとおおらかな友人

    本作の中心は、ミシェル・ウィリアムズが演じるリジーと、ホン・チャウが演じるジョーという対照的なキャラクターです。

    • リジー(ミシェル・ウィリアムズ)
      リジーは、常にイライラしている神経質なアーティスト。家庭や仕事のストレスに振り回されながらも、自分のアートに真剣に取り組む姿が描かれます。普段は芯の強い役を多く演じるミシェル・ウィリアムズですが、本作ではカリカリした内向的な一面を見事に表現しています。

    • ジョー(ホン・チャウ)
      リジーの大家であり友人でもあるジョーは、成功した新進気鋭のアーティスト。おおらかで自由奔放な性格が、リジーの神経質さと対照的に描かれています。ホン・チャウの自然な演技が、キャラクターに深みを与えています。

    映画技法|日常をスケッチするような演出

    ケリー・ライカート監督は、ミニマルな演出と自然な語り口で観客を映画の世界に引き込みます。舞台となるアートスクールやその周辺の風景が、登場人物たちの感情を映し出す背景として機能しています。

    さらに、アートの制作過程そのものが物語の重要な要素として描かれており、観る者にアートの魅力と同時に、その背後にある苦労や喜びを感じさせます。

    まとめ|人生とアートの交差点を静かに描く一作

    『ショーイング・アップ』は、ケリー・ライカート監督がアートと人生の交錯を静かに描いた作品です。ままならない日常の中で、それでも何かを作り出し続ける人々の姿に共感を覚えることでしょう。

    ミシェル・ウィリアムズの卓越した演技とホン・チャウの自然な存在感が、映画全体を通じて観客を引き込む力を発揮しています。人生の断片を描いたスケッチのような映画を求める方に、ぜひおすすめしたい一作です。

     

  • 映画『ミークス・カットオフ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く静謐なオルタナティブ西部劇

    映画『ミークス・カットオフ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く静謐なオルタナティブ西部劇

    2010年公開の『ミークス・カットオフ』は、ケリー・ライカート監督が手がけた西部劇であり、「動かないロードムービー」という彼女の独特なスタイルを色濃く反映した作品です。19世紀のオレゴンを舞台に、移民団の家族たちが厳しい自然と不安に直面する姿を静かに描きます。

    あらすじ|未知の道を進む三家族の過酷な旅

    物語は、オレゴンを目指して移民団を離れた三家族が、西部への「近道(カットオフ)」とされる道を進む様子から始まります。案内人として雇ったスティーブン・ミーク(ブルース・グリーンウッド)は、自信満々に先導しますが、予定の二週間を過ぎても目的地に辿り着く気配はありません。

    水が底を突き、家族たちは希望と疑念の間で揺れ動きます。途中で遭遇したインディアン(ロッド・ロンデュー)の存在が、旅をさらに複雑なものにしていきますが、大きな事件が起きるわけでもなく、旅は淡々と続きます。出発点と終着点が描かれないこの物語は、観る者に「立ち往生」の感覚をリアルに伝えます。

    テーマ|オルタナティブ西部劇の新たな視点

    『ミークス・カットオフ』は、伝統的な西部劇とは一線を画す「オルタナティブ西部劇」として位置づけられます。本作では、派手なアクションや劇的な出来事はなく、登場人物たちの不安や葛藤が自然の風景とともに静かに描かれます。

    スティーブン・ミークという怪しい案内人と、未知の存在であるインディアン。どちらを信じるべきかという選択が、物語全体の核となっています。この選択は、未知の未来に向けての賭けであり、西部開拓時代における不確実性と人間の葛藤を象徴しています。

    キャラクター造形|対照的な二人の中心人物

    本作のキャラクター造形は、スティーブン・ミークとテスロー夫人(ミシェル・ウィリアムズ)の二人を軸に展開されます。

    • スティーブン・ミーク(ブルース・グリーンウッド)
      実在の人物をモデルにした案内人スティーブン・ミークは、経験豊富な風貌を見せながらも、その実力や知識には疑念が付きまといます。彼は家族たちの不安を象徴するキャラクターとして描かれています。

    • テスロー夫人(ミシェル・ウィリアムズ)
      表向きは淑女のように見えるテスロー夫人ですが、その実、冷静に状況を見極める「賭博師」の一面を持っています。彼女の強さと知性が、物語全体の緊張感を支えています。ミシェル・ウィリアムズは、本作でもその繊細な演技で観客を引き込む存在感を発揮しています。

    また、途中で遭遇するインディアン(ロッド・ロンデュー)は、物語の鍵を握る存在でありながら、その意図や立場が明示されることはなく、登場人物たちの不安をさらに煽る役割を果たしています。

    映画技法|自然の静けさを活かしたミニマルな演出

    ケリー・ライカート監督は、広大で乾いたオレゴンの風景を背景に、登場人物たちの孤独や葛藤を繊細に描いています。極力削ぎ落とされたセリフと、自然音を活かしたサウンドデザインが、観る者にリアルな没入感を与えます。

    視覚的には、広がりのあるスクリーンを逆手に取った、あえて閉塞感を感じさせるような構図が特徴的です。この演出が、物語の中で感じられる不安や停滞感をさらに際立たせています。

    まとめ|静かな不安が漂う異色の西部劇

    『ミークス・カットオフ』は、伝統的な西部劇の要素を取り入れながらも、ケリー・ライカート監督ならではのミニマルな演出と深いテーマ性が光る作品です。未知の未来に向けての「選択」や、希望と不安の間で揺れ動く人間の姿が静かに描かれます。

    西部劇の新たな視点を楽しみたい方や、自然と人間の関係性を考えさせられる映画を求める方に、特におすすめです。

    ミークス・カットオフ

    ミークス・カットオフ

    • ミシェル・ウィリアムズ

    Amazon

  • 映画評|『ファースト・カウ』ケリー・ライカート監督(2019年)

    映画評|『ファースト・カウ』ケリー・ライカート監督(2019年)

    ケリー・ライカート監督の現時点での最高傑作。主人公はパン職人。そして、やはりお得意の「動かないロードムービー」です。A24制作。

    これはあまり詳しくレビューを書いちゃいけない映画な気がします。そして、本作がどんな映画なのかを説明しない方が、この映画の本質に近づけるような気もします。

    おそらく最初は混乱すると思います。これはいつの時代の話なのだろう?ケリー・ライカート監督作品は物語の途中からはじまる感じがある。本作もそうで、すでに何かが起きている。もしくは起こったあと。

    最初は「空想の世界なんじゃないか?」と思えるくらいよくわからない。しかし物語が進むにつれ徐々に状況がわかってくる。場所がいつものようにオレゴンだということも分かってくる。

    本作のテーマも多くのケリー・ライカート監督作品がそうであるように「人生は立ち往生」なんだろうなあ。進もうとしても、なかなか進めない。それでも足掻き続ける。それが人生。

     

  • 映画『ウェンディ&ルーシー』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く「立ち往生」のロードムービー

    映画『ウェンディ&ルーシー』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く「立ち往生」のロードムービー

    2008年公開の『ウェンディ&ルーシー』は、ケリー・ライカート監督が手がけた静かなロードムービーです。「どこにも行かないロードムービー」とも言える本作は、主人公ウェンディー(ミシェル・ウィリアムズ)と愛犬ルーシーを中心に、人生の「立ち往生」をテーマにしています。

    あらすじ|アラスカを目指す途中で足止めされる女性

    ウェンディー(ミシェル・ウィリアムズ)は、愛犬ルーシーを連れてインディアナからアラスカを目指す途中、オレゴン州の小さな町で車が故障し、足止めされてしまいます。資金も底を突き、愛犬ルーシーとも離れ離れになったウェンディーは、予期せぬ困難に直面します。

    なぜインディアナを離れたのか、なぜアラスカを目指すのか。その背景は描かれません。しかし、オレゴンでの「立ち往生」こそが本作の核心であり、主人公が直面する現実の中に物語の本質があります。

    テーマ|人生の「立ち往生」とは何か

    『ウェンディ&ルーシー』のテーマは、「立ち往生する人生」そのものです。ケリー・ライカート監督は、ロードムービーという形式を取りながらも、出発点や終着点を描くことには重点を置きません。

    主人公ウェンディーの足止めされた状況が、経済的困難や孤独、予期せぬトラブルといった現代社会の現実を象徴的に表しています。彼女の行く先が明示されないことで、観る者は物語の中に自らの「立ち往生」を見出すことができます。

    キャラクター造形|ミシェル・ウィリアムズの卓越した演技

    本作の中心は、ウェンディーと愛犬ルーシー(本名もルーシー)の二人だけです。その中でもミシェル・ウィリアムズの演技が光ります。

    • ウェンディー(ミシェル・ウィリアムズ)
      ウェンディーは若く、どこか頼りなげな女性として描かれていますが、その姿には現実に直面する強さも感じられます。ミシェル・ウィリアムズは、本作で少女のようなあどけなさと、過酷な現実に耐える芯の強さを見事に演じています。

    • ルーシー(愛犬ルーシー)
      愛犬ルーシーは、ウェンディーの孤独を癒す唯一の存在です。二人の関係は、静かでありながら深い絆を感じさせます。ルーシーとの別れのシーンは、観る者に大きな感情の揺さぶりを与えます。

    その他、警備員の老紳士が登場しますが、彼の存在は物語の背景に過ぎず、ウェンディーとルーシーの物語が映画全体を支えています。

    映画技法|控えめな演出が伝える静けさ

    ケリー・ライカート監督は、本作でもミニマルな演出と自然の静けさを巧みに活かしています。特に、オレゴンの町並みや自然の風景が、ウェンディーの孤独や停滞感を際立たせています。

    音楽や効果音を極力排除したシンプルなサウンドデザインは、映画全体に静寂の緊張感を与え、観客に物語を深く感じさせます。

    まとめ|静かな感動を呼ぶ「行き場のないロードムービー」

    『ウェンディ&ルーシー』は、ケリー・ライカート監督の真骨頂とも言える静かな立ち往生のロードムービーです。物語はシンプルながらも、人生の「立ち往生」を描いた深いテーマが観る者の心に響きます。

    ミシェル・ウィリアムズの卓越した演技と、ライカート監督の控えめな演出が融合し、観客に静かで感動的な体験を提供する作品です。人生の厳しさや孤独を静かに考えさせる映画を求める方に、ぜひおすすめします。

    ウェンディ&ルーシー

    ウェンディ&ルーシー

    • ミシェル・ウィリアムズ

    Amazon

  • 映画評|道なく、愛なく、犯罪のないボニー&クライド|『リバー・オブ・グラス』ケリー・ライカート監督(1994年)

    映画評|道なく、愛なく、犯罪のないボニー&クライド|『リバー・オブ・グラス』ケリー・ライカート監督(1994年)

    有名監督の最初の作品って初期衝動が詰まっていて好きなものが多いです。スパイク・リー監督の『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』とかクエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』とか。しかし、意外と初期作品ってメディアになってなかったり、ストリーミングでも公開されていなかったりします。アメリカのクライテリオン・コレクションやイギリスのアロー・フィルムズのような高品質な再発専門レーベルからの発売を待たなければいけないのが常でした。日本映画ですらそうです。

    しかし、その状況も変わりつつあります。最近では映画の資金調達もクラウドファンディングで行われるようになりました。昨年公開された“Last Black Man in San Francisco”もそうでしたね。そして、昔のフィルムのレストレーションもクラウドファンディングで資金調達するケースが出てきました。ハル・ハートリーは自身の監督作品をクラウドファンディングで再発しています。今回紹介するケリー・ライヒャルト監督の最初の長編映画『リバー・オブ・グラス』のレストレーションもクラウドファンディングで資金調達されたものです。

    『リバー・オブ・グラス』はケリー・ライカート監督自身の言葉が全てを表しています。

    「道のないロードムービー、愛のない恋愛映画、犯罪のない犯罪映画」

    舞台はフロリダ州エバーグレーズ。東側にあるビーチエリアは観光客で賑わいますが、エバーグレーズは湿地帯で先住民がRiver of Grassと名付けた地域です。多くの映画はA地点から出発して、B地点にたどり着きます。または、A地点からいろいろな場所を周ってA地点に戻ります。A地点とかB地点は実際の土地の場合もありますし、心理的な状態の場合もあります。

    しかし、『リバー・オブ・グラス』の場合、登場人物たちはA地点にとどまり続けます。A地点が心地よいわけではありません。現状に満足していません。どこかに行きたい。でも、どこにも行けない。いや、どこにも行かない。バスにも乗れないし、高速の料金所すら越えられない。

    男と女、銃と車。設定と小道具は全て揃っています。『俺たちに明日はない』のボニー&クライドにだってなれるはず。でも、何も起きない。セックスも、ドラッグもロックンロールもない。でも、きっとボクらはそうなんですよ。何者にもなれない。何者かになったつもりでいるだけ。

    ケリー・ライヒャルト監督はこの後にオレゴン四部作を発表して大物監督の地位を獲得していきます。一貫したテーマは「取り残された人たち」で、徐々にリベラルでプログレッシブな政治的側面を見せてきます。経済学者ポール・クルーグマンにとても近いスタンスです。ただ、ポール・クルーグマンは非常に攻撃的ですが、ケリー・ライカート監督はとても繊細な伝え方をします。それは『リバー・オブ・グラス』でも共通していますね。

    しかし、オレゴン四部作からは動けない状態から徐々に動く状態を描くようになりました。それを進歩と取るのか、後退と取るのか。ボクには『リバー・オブ・グラス』の荒っぽい輝きがまぶしすぎて。

    リバー・オブ・グラス

    リバー・オブ・グラス

    • リサ・ドナルドソン

    Amazon

     

  • 映画『オールド・ジョイ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く「drift away」の美学

    映画『オールド・ジョイ』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く「drift away」の美学

    2006年公開の『オールド・ジョイ』は、ケリー・ライカート監督による静謐なロードムービー。二人の友人がオレゴンの自然を旅する物語を通じて、人間関係や社会の「drift away(漂流)」を静かに描き出します。ミニマルで詩的な表現と、ヨ・ラ・テンゴの音楽が融合し、観る者を深い感慨に誘います。

    あらすじ|オレゴンの温泉を目指す旅

    物語は、若い夫婦の家から始まります。夫のマーク(ダニエル・ロンドン)は妊娠中の妻との間に微妙な距離感を抱えています。そこに、旧友のカート(ウィル・オールダム)から連絡が入り、二人はオレゴンの温泉を目指して旅に出ます。

    道中、かつては親しかった二人の間に漂う微妙な違和感や、過去の思い出が語られます。しかし、物語が進むにつれ、二人の間の「距離」が少しずつ浮き彫りになっていきます。この旅は、温泉を目指すというシンプルな目的の裏に、時間とともに薄れていく友情や、人生の変化を象徴しています。

    テーマ|友情と人生の「drift away」

    『オールド・ジョイ』は、人と人との関係が、時間とともに少しずつ変化していく様子を描いた作品です。この「drift away」というテーマは、主人公たちの友情だけでなく、映画全体に流れる静かなメタファーとして機能しています。

    マークとカートは、かつての親密さを持ちながらも、現在では異なる人生を歩んでいます。妊娠中の妻と家族を築こうとするマークと、自由気ままに生きるカート。二人の間にある微妙な溝は、すべての人間関係が持つ避けられない変化を象徴しています。

    映画技法|ミニマルな映像美とヨ・ラ・テンゴの音楽

    ケリー・ライカート監督は、最小限の演出で深い感情を伝える手法を得意としています。オレゴンの自然を背景にした映像は、静けさと広がりを感じさせ、二人の関係性や心情を象徴的に表現しています。

    また、ヨ・ラ・テンゴによる音楽は、本作の雰囲気を一層高める重要な要素です。控えめで叙情的なサウンドトラックは、オレゴンの自然と主人公たちの心情に見事に調和しています。前作『Ode』に続いて音楽を担当した彼らの音楽は、ライカート監督の作品に欠かせない存在となっています。

    社会的背景|変わりゆく時代と「drift away」

    物語の背景には、社会の「drift away」も描かれています。車中のラジオは、物語が進む2006年という時代を反映し、民主党から共和党への政権交代がもたらした社会の変化を暗示します。

    1994年の『リバー・オブ・グラス』公開時にはビル・クリントン大統領(民主党)の時代でしたが、本作公開時にはジョージ・W・ブッシュ(共和党)の二期目。個人だけでなく、社会や政治の変化も「drift away」というテーマの一部として描かれています。

    まとめ|静かな詩情が響く人生の一片

    『オールド・ジョイ』は、友情や人生の変化を静かに描いた美しい作品です。ケリー・ライカート監督のミニマルな演出と、ヨ・ラ・テンゴの音楽、オレゴンの自然が織り成す詩情は、観る者に深い余韻を残します。

    人間関係や人生の変化について考えさせられる内容であり、シンプルながらも奥行きのある映画です。ゆっくりとした物語の進行を楽しめる方や、詩的な映画を好む方に特におすすめです。

    オールド・ジョイ

    オールド・ジョイ

    • ダニエル・ロンドン

    Amazon

  • 映画『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く日常と選択の物語

    映画『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』レビュー|ケリー・ライカート監督が描く日常と選択の物語

    2016年公開の『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、ケリー・ライカート監督がモンタナを舞台に描いた三編のオムニバス映画です。本作は、監督が愛犬ルーシーに捧げた作品であり、自然や動物、人間関係をテーマにした静かで深い物語が展開されます。

    あらすじ|モンタナを舞台に描かれる三つの物語

    『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、モンタナの広大な自然を背景に、異なる状況に置かれた三人の女性たちを中心に描かれた三つの物語から成り立っています。

    1. 弁護士と顧客のトラブル
       弁護士のローラが、問題を抱えた顧客との間で葛藤する姿を描きます。

    2. 家族とのすれ違い
       新居建設を進めるジーナが、家族との間に感じる微妙な距離感に向き合います。

    3. 教師と農場の女性の出会い
       遠方から夜間クラスを教えに通うベスが、農場で孤独な生活を送る女性と心を通わせます。

    三つの物語は、それぞれが静かに重なり合い、人生における「選択」と「孤独」を浮き彫りにしていきます。

    キャラクター造形|静かに深みを持つ女性たち

    本作の最大の魅力は、ケリー・ライカート監督によるキャラクターの繊細な描写にあります。三人の女性たちは、それぞれ異なる状況に置かれながらも、共通して内面的な葛藤や選択の難しさを抱えています。

    • ローラ(ローラ・ダーン)
      弁護士として仕事に取り組む中で、顧客の無理な要求に振り回される女性。ローラ・ダーンの演技は、ローラの内に秘めた疲労感や怒りを自然に表現し、観客に共感を呼び起こします。

    • ジーナ(ミシェル・ウィリアムズ)
      家族のために新しい家を建てようと奮闘する女性。しかし、夫や娘とのコミュニケーションがうまくいかず、すれ違いが積み重なっていきます。ジーナの微妙な孤独感が印象的です。

    • ベス(クリステン・スチュワート)
      夜間クラスの教師として働きながら、自らの将来に迷う若い女性。彼女が農場の孤独な女性(リリー・グラッドストーン)と築く不思議な絆は、物語の中で最も心に残る部分となっています。

    登場人物たちの心情が丁寧に描かれており、それぞれが独立した物語でありながら、共通のテーマで結びついています。

    テーマ|「置いていかれた人たち」の選択

    ケリー・ライカート監督は、社会の中で孤立し、取り残された人々を描くことを得意としています。本作では、三人の女性たちを通じて「人生における選択」と「孤独」をテーマにしています。

    彼女たちの静かな日常や葛藤は、観る者に自身の選択や生き方について考えさせるきっかけを与えてくれるでしょう。

    映画技法|自然と音楽が物語を補完

    モンタナの広大な自然が、登場人物たちの孤独や心の動きを象徴的に描き出しています。ライカート監督の演出は、自然の持つ静けさや美しさを活かし、セリフ以上に感情を伝える効果を持っています。また、音楽が控えめに使われることで、静寂や環境音が際立ち、観る者を深く物語に引き込みます。

    まとめ|静かな詩情が響く人生の一片

    『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は、広大な自然と繊細なキャラクター描写を通じて、人生の選択や孤独を描いたオムニバス映画です。ケリー・ライカート監督の独特の視点が光る作品であり、静かな感動と余韻を残します。

    自然や人間の繊細な関係性を描いた作品が好きな方には、特におすすめです。