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  • シリコンバレーから見たクルマの自動運転

    シリコンバレーから見たクルマの自動運転

    ソース:a16z Podcast: Self-Driving Cars — Where Are We, Really? by a16z

    ざっくり言うと

    • a16z Summitsの自動運転のセッションサマリー。モデレーター:Frank Chen(a16z)、パネル:Qasar Younis, CEO of Applied Intuition、James Wu, CEO and co-founder of DeepMap、Taggart Matthiesen, head of product at Lyft
    • 自動運転のクルマはいつ実現する?
    • 何が実現を遅らせる?
    • 利便性と安全以外にクルマの自動運転のメリットは?何が変わる?

    自動運転のクルマはいつ実現する?

    • 2、3年という近い将来ではない。メジャーなOEM(いわゆる自動車会社)がレベル4の自動運転のクルマを出荷すると発表しているタイムラインは2020年、2021年。ただ、13年もかからないとは思う。
    • 少しづつイノベーションが起きて徐々に自動運転に近づいていく。

    参考:

    • トヨタの例で言えばOEMがトヨタで完成品としてのクルマを作る会社。Tier 1サプライヤーがデンソーとかアイシン精機とか。その下にTier 2以降のサプライヤーが存在。
    • 自動運転の定義(Wikipedia)レベル4は高度自動運転でレベル5は完全自動運転

    何が実現を遅らせる?

    • レベル4やレベル5を大規模で実現するには経済的なメリットがまだない。例えば雪の日や雨の日の対応や地域的に制限がある地域などをどのようにカバーするか。
    • インフラの問題が大きい。ソフトウェアなどのインフラがまだ整備されていないのと、実際のプロダクトのリリースをするインフラも準備ができていない。
    • 人材不足が深刻になる。特にロボティック分野の人材。

    利便性と安全以外にクルマの自動運転のメリットは?何が変わる?

    • 犯罪発生率は下がる。クルマは移動センサーのようなものだから、犯罪の監視には最適。
    • 不動産の価格に影響する。これまで駐車場に必要だった土地が、住宅のために使うことができる。
    • Tier 1のサプライヤーよりもクルマに関連する既存のソフトウェア企業にとって壊滅的なダメージを与える可能性がある。既存のソフトウェアサプライヤーにとっては危機だし、新しいプレーヤーにとっては機会となる。
    • クルマの自動運転によって時間の無駄が削減される。浮いた時間をどのように使うのかが機会となる(Netflixのようなパーソナライゼーション)。
    • クルマのリモートコントロールのサービスが生まれる。そのようなスタートアップがすでにいくつか出てきている。クルマが状況を把握できずに立ち往生をしているときに、何をしていいのかクルマが理解できるようにリモートから助ける。
    • データセンターのDevOpsのようになる。クルマのDevOps。B2Bでは輸送管理のシステムにおける応用は大きい。

    自動運転のクルマを進めるために自分が州知事だとしたら何をする?

    • アリゾナ州、ネバダ州、ミシガン州、フロリダ州などすでに自動運転に積極的な州がある。例えばソフトウェアのアップデート一つをとったとしても1万台ではなく100万台の自動運転のクルマを管理するというのはどういうことなのか。これはクルマだけでなくインテリジェントなロボット全般に言えること。イノベーションを阻害することなく、市民の安全も確保するにはどうしたらいいのか。
    • フィンテックに関わる銀行取引や証券取引に規制があるように、シャトルや運送など人の命に関わることに関して政府が関わる意味は大きい。
    • 政府はデジタルインフラのためにコラボレーションを促進する役目を担える。もう一つは自動運転でできることとできないことの境界線を設定すること。例えば自動運転のクルマの専用レーンを設定するとか。

    クルマの愛好家の中には自動運転に反対する人もいます。どうやってその反対に反論する?

    • これは個人の趣味嗜好の問題ではなく、社会全体で考えないといけないこと。好むと好まざるに関わらず、クルマの自動運転化は進んでいく。
    • クルマの愛好家からクルマを取り上げるわけではなく、クルマをレーストラックのようなところで運転しようと思えばできる。
    • クラシックカーが好きだったり、スポーツカーが好きな人がある日突然にクルマに乗れなくなるなんてことは起きない。この変化は徐々にやってくる。あとは、自動運転のクルマが多くなった時、安全性を考えていつまで人間が運転できるようにするかとという問題。今の時代に馬で通勤している人があまりいないのと同じ。乗馬をしたい人は乗馬ができる場所が今でもある。
    • あまりクルマの出入りがなくデータがない土地では人間が運転する必要があると思う。

    安全性の問題について。監視できるようオープンソースにすべき?ハイジャックをどう防ぐ?

    • Webと同じで問題は起きる。インフラが整うまでに痛みを伴うし、一歩下がって二歩下がることもある。
    • ここにいる誰もその答えは持っていないと思う。これは大きなチャレンジ。
    • クルマにはたくさんのデータが集まる。個人情報やデータのセキュリティーは大きな課題であり、スタートアップにとっては機会だと思う。

    soundcloud.com

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  • 子供にやさしいクルマの自動運転をデザインする

    子供にやさしいクルマの自動運転をデザインする

    ハロウィーンの仮装をした子供を認識するクルマ (Google)

    原文:”Child-Friendly Autonomous Vehicles” by Leslie Nooteboom, Nov 14, 2017

     2017年11月7日にWaymo(元Googleの自動運転プロジェクト)*1がアメリカはアリゾナ州フェニックス近郊で完全自走車の公道テストを開始したことで、クルマの自動運転が主流になることが日々現実化していきます。「トロリー問題*2」以外にも多くの課題を解決する必要があります。

     現時点で多くの自動運転システムは特殊な状況に対処するのに十分な環境認識をすることができません。通常の道路利用者に関しては学習されていますが、それでも時には自動車が「フリーズロボットの問題(何をするにもリスクがある状況における対応)」を経験します。自動運転のクルマのインタラクションが安全で効率的であることを確実にするには、業界が特定のシナリオ毎に取り組んでいく必要があります。自動運転のクルマと子供との関わりはその中でも特に重要なシナリオの一つです。

     アメリカにおける子供の死亡事故の主な原因の1つは交通事故です。クルマの自動運転はこれを大幅に改善する可能性があります。しかし、子供の認識は大人とは異なるコンピュータビジョン分析とインタラクションが必要となります。この課題はまだ解決されていません。

    一般的な認識

     道路安全、交通工学、交通システムを専門とする研究者であるEleonora Papadimitriou博士は、「渡るか、渡らないか」の判断は道路の種類、交通量、交通管制から大きく影響を受けると述べています。博士は歩行者が道路を横断する上での三つの行動要素を見出しました。「リスクを取る人と最適化」、「保守的な公共交通ユーザー」と「歩行者の喜び」です。この研究は歩行者が道路で「なぜ」「どのように」行動をするのかを理解する上でとても重要な要素です。

     子供の歩行者の交通事故を具体的にみていきましょう。UAB Youth Safety LabのディレクターDavid C. Schwebel博士は同様の要因を示す研究結果を発表しました。大部分の子供の歩行者の傷害は中央ブロックと視界の悪い道路状況で起きています。事故は一般的に「ダートアウト」の状況で起きます。ダートアウトとは子供がオモチャやペットを追いかけるために何も考えずに道路に入ることです。子供が出現することを予期できる環境です。危険ではないと判断してしまう子供の判断ミスはもう一つの事故原因です。実際には安全ではないのに道路に入ってしまう。子供の脳の知覚的および認知的経験不足がこの問題の原因です。

     子供と交通の関係を見るときに、環境だけでなく人間の行動の文脈も考慮に入れる必要があることを二つの研究は示しています。

    トロリー問題の例 (Iyad Rahwan/Popular Mechanics)

    環境

     次のシナリオを考えてみましょう。ボールが通りに転がります。人間の運転手はこの状況を把握するための目を持っています。脳の後頭葉で状況を視覚的に目の前で何が起こっているのかを処理します。その結果としてボールが道路に転がっていることを理解します。

     自動運転のクルマの場合、私たちの目の機能はビジョンセンサーの品質に依存することとなります。カメラの視覚奥行きデータは環境を識別するのに十分高い能力がある必要があります。そして基本的なビジュアル処理を行わなければいけません。視覚の範囲に人がいるか、歩道はどこか、他のクルマが来ているか、視界を妨げているものがあるか、道路に転がっているあの丸い物体はなんなのか。このようなプロセスを実際に実行するためには何年もの研究が必要で、人間が環境をどのように認識できるかに徐々に近づいていっています。

     クルマのセンサーと処理能力でボールが道路に転がっていることがわかりました。次に何が起こるでしょうか?このステップで意思決定が行われます。ボールの経路を予測し、クルマの進路に入る時間を計算します。多くの計算を迅速に行う必要があります。私たちの人間の脳はニューロンのリンクを作り、その状況から子供が飛び出して来る可能性を判断します。自動運転のクルマは予期せぬ状況に対応するために訓練されなければいけません。ボールだけでなく、フリスビー、ドローンなど様々な状況が考えられます。最初の判断は不意な事象には減速することです。そして、子供が姿を現したらクルマの歩行者検出アルゴリズムによって認識されなければいけません。

    Redball Art Project (Jeremy F/YouTube)

     道路に飛び出そうとしている人が大人なのか子供なのかを判断するのも非常に難しいです。身体のサイズとそのほかの相対的な大きさを測るのは一つの方法です。James W. Davis博士が「子供と大人の歩行スタイルの視覚的分類」で説明している別の興味深い方法があります。歩幅の長さと周期の特性から93-95%の確率で大人と子供を見分けました*3。これらの研究でクルマに関して扱っている問題は子供についてだということです。

     これらはクルマのソフトウェアにとって必要であり困難な進化です。自動運転のクルマが人間のドライバーよりも安全であるためには、人間の脳の処理スピードの3/4秒以内に状況全体を理解する必要があると考えています。クルマが街の環境を理解し、子供を認識し、子供の行動を理解する必要があります。それにはコンピューターの視覚技術だけではなく身体運動科学の観点から子供を認識するスマートな方法が必要となってきます。

    子供の行動

     子供の道路での行動は大人とは異なります。同じ研究論文で、Schwebel博士は人間が交通の理解と、その状況に対応する技能がどのように発達していくのかを説明しています。大人の歩行者の事故原因は主に視界が悪い夜に歩くこと、酔って歩くこと、歩きスマホなど集中せずに歩くことです。子供は知覚能力や認知能力は大人ほど発達していません。子供の歩行者の事故で考慮すべき要因は不注意、気性、性格と社会的影響です。 この中のいくつかの要素はコンピューターから認識できるもので、NVIDIAの「co-pilot」には「不注意」を認識する仕組みがあります。視覚センサーを利用することでいくつかの子供の特性を理解することができます。

     Hugo H. van der Molen博士は1981年に「歩行者としての子供の交通への露出:事故と行動」という論文を発表しました。そこでは行動を関数とイベントダイアグラムに分割して「ソフトウェアプログラマブル」になっているところが興味深いです。考慮すべき要因とされているのは子供の個人や社会や環境といったパラメータ、そして子供の交通と行動です。この論文は道路での子供の行動の非常に詳細に解説しています。しかし、1981年に書かれたものなので道路状況は大きく異なります。私たちは自動運転も考慮に入れたこの研究の現代版が必要だと考えています。クルマの自動運転の歩行者に対する反応を分析する研究はいくつかありますが、子供に焦点を当てた研究はまだありません。

    フォードとヴァージニア工科大学によるクルマのコミュニケーションの実験 (Wired)

    反応

     自動運転のクルマがボールが近づいてくるのを認識して速度を落とし、子供を認識できるまでに発達したとします。クルマは環境と人間を理解した後にどのような行動を取るかを決める必要があります。危険な状況では緊急停止を行う必要があります。すぐに危険はないものの、子供が何をするのか完全に理解できない場合は待たなければいけません。その子供自身も何をしていいかわからずに歩道で立ち尽くしている状況もあるでしょう。もしクルマが過度に安全性を重視した設定になっていればかなり長い時間待つことになります。Berkeley AI Lab実行委員会のAnca Dragan氏はこのようなフリーズロボットの問題を「人間が最悪の行動を取る場合クルマが何をするにも事故のリスクがある」と説明しています。クルマは子供が姿を消すまで待つしかありません。

     クルマがとるべき最初の反応はより丁重なモードの変化であり、大人と比べて子供にはより慎重な対応をすることです。例えば減速する、距離を取るといった人間のドライバーの本能的な行動です。子供のためのよりフレンドリーな運転アルゴリズムを実行することとなります。

     クルマの意思決定ツリーにレイヤーを加えることは一つの方法です。子供が大人とは違う行動を取るのであれば、クルマも違う反応をするはずです。下の図では緑色は子供の場合の反応の選択肢を表しています。子供であれば二つのアクション。より注意深く運転し、子供に関するデータベースを利用して歩行者に対処する。これでより安全な環境を作り出し、子供への対応をより正確に判断することができます。

    クルマの子供に対する対応レイヤー

    コミュニケーション

     コミュニケーションは新しいチャレンジです。大人は道路規制を学び、知覚的および認知的なシステムを訓練することで交通を理解する時間がありました。子供はまだこの経験や訓練を十分に受けていません。子供はクルマの運転手とコミュニケーションすることができます。「行っていいよ」といいう手の仕草や軽いホーンは子供でも理解できます。親が子供にいいことをしたら褒め、悪いことをしたらしつけるように。上の図で青がこのようなコミュニケーションとなります。

     たとえドライバーがいなくとも子供はクルマとコミュニケーションが取れ、理解できなければいけません。それには最も基本的なコミュニケーションに戻る必要があります。子供にとって視覚と聴覚はクルマが何をするかを最も理解しやすい合図です。おそらく、クルマには特定の感情やジェスチャーを示すための顔が必要です。もしくはクルマの外部にスピーカーを加えてAmazon Alexaのような音声制御機能を持たせる。GoogleUberは歩行者とのコミュニケーションついて特許を申請しています。まだ公開されている研究は少なく、この分野はさらなる実験が必要です。

    ほほえむクルマ (Semcon)

    まとめ

     自動運転のクルマが子供のいる環境に入るには周囲の環境や子供の行動を理解する認識力が必要です。コンピュータービジョンは交差点や視界が悪い場所といったリスクの高い環境、さらには注意が散漫な傾向のある子供について十分に学習しなければいけません。クルマの反応も様々なレベルでの学習が必要です。それが安全かつ効率的なのかだけでなく、クルマの「脳」の中で何が起こっているのかを子供に伝える必要もあります。そうすれば子供はクルマの行動を理解することができます。

     最もよい方法は子供たちとのテストとフィードバックを通じてからのみ探りあてることができます。大人の設計チームやエンジニアリングチームは子供が自動運転のクルマを見て何を考えるのかを完全に理解することはできません。子供の状況にフォーカスすることで公道でのクルマの自動運転が子供のためのより良い街の環境を作り出すことに貢献することができます。

    解説

    今年6月に神奈川県の東名高速道路で夫婦が亡くなった事故は人間が運転するクルマは本当に安全なのかを考えるきっかけにもなったとても悲しい事故でした。危険運転でヒヤっとしたドライバーも少なくないのではないでしょうか。自動運転のクルマではこのようなことは起きません。物理の法則がある限り事故が全くなくなることはないでしょう。しかし、大幅に減少することはできるはず。交通渋滞の緩和にも効果がありそうです。

    もちろん、クルマを運転する楽しみもあるのでしょう。しかし、社会インフラとしてのクルマの役割を考えると安全の方が優先順位は高い。おそらくクルマの運転を楽しむのは公道では制限される社会になるのではないでしょうか。

    この記事は子供に優しいクルマの自動運転をデザインする上で考慮すべきことをを解説した”Child-Friendly Autonomous Vehicles“の翻訳です。これを書いたのはHumanising Autonomyの共同創設者でCOOのLeslie Nooteboom氏です。

    安全なクルマの自動運転を実現するためにはどのようなことを考慮する必要があるのかを理解することができます。クルマの自動運転に不安を感じる人は多いでしょうが、まずは知ることが大事だとボクは思います。

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    *1:もともとGoogleが実験していたクルマの自動運転プロジェクトを親会社のAlpabetが子会社化

    *2:ある人を助けるために他の人を犠牲にできるか?という状況判断

    *3:これは2001年の研究で、小さなデータセットが使用されていました

  • 電気自動車とビットコイン共通点の問題|カタパルト式アンリーディング

    電気自動車とビットコイン共通点の問題|カタパルト式アンリーディング

     最近、このカタパルト式スープレックスで集中的に取り上げているのが電気自動車とブロックチェーンです。この二つを調べていくと共通点があります。それはビットコインも電気自動車も電気を食うということです。

    ビットコインも電気自動車も電力を食う

    ビットコインの場合

     ビットコインを運営するにはコンピューターによる計算が必要です。つまり、そのコンピューターを維持するための電力が必要です。これが莫大な電力消費量となっています。ビットコインを国だとすると世界で62番目に電力消費量が多い国(デンマークとセルビアの間)ということになります。イギリスの全電力消費量の10%くらい。ビットコインはヨーロッパの20の国より多く電力を消費しています。

     当然ながら、この問題を解決しようとする動きがたくさんあります。マイニングをもっと効率化する方法や、マイニングが必要ない方法が模索されています。イーサリアムのキャスパーから導入がはじまるPoSやIOTAがそれです。IOTAでは計算処理はエッジで行われるため、大規模なマイニング施設は基本的には必要なくなります。

    電気自動車の場合

     電気自動車もガソリンやディーゼルエンジンと比べて環境に優しいというイメージがあります。電気自動車自体は環境ガスを出しませんが、その動力となる電気は発電所で作られています。電気自動車の普及でイギリスでは全体で15%、ピーク時で最大40%の電力消費が増えると考えられています。テスラのトレーラーも当然ながら電気がたくさん必要になる。

    IEA(国際エネルギー機関)が11月に発表した年次報告書「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」の2017年版は、2040年に世界のEV保有台数は2億8千万台まで膨らむと予測している(現在の世界の自動車保有台数は約13億台)。 そして、日量250万バレルの石油消費の削減効果があるとしている。だがこれは、日量9200万バレルという現在の世界の石油消費量の3%にも満たない。

    電気自動車は石油消費を減らせない?』石油経済研究会 大場 紀章

    ビットコインと電気自動車に共通する電気の問題

     電気自動車が本当の意味で環境に優しくなるためには、発電、送電と配電、電気の再利用、モビリティーの再定義のといった複数の解決が求められるでしょう。

    「発電」は太陽光発電や風力発電などの環境に優しい発電へのシフト。まあ、これはわかりますよね。

    「送電と配電」は環境に優しい発電方法がきちんと供給網に乗ること。電気は作っただけではダメで、ちゃんと家や工場に届けないといけない。その供給網の問題。ソフトバンクの孫さんが問題視しているのはこの部分ですね。エネルギーの事業者がクリーンエネルギーで参入しても送れなければ意味がない。

    「電気の再利用」は作った電気をちゃんと使い切ること。無駄をなくすこと。使ってない電気をバッテリーに貯めたり、それを近所に売ったりということです。以前に掲載したブロックチェーンによるIoT事業にはそういう意味があります。ブロックチェーンは電力のシェア経済にも役に立てる可能性があります。

    「モビリティーの再定義」とはクルマの所有から共有への移行を意味しています。そもそも消費量を下げることもできるのではないかということです。クルマの自動運転が普及すればクルマを運転する意味が大きく変わります。以前にインタビューで紹介したフランスのBlaBlaCarは個人に所有されたクルマの共有でした。Uberも基本的にはそうですよね。

     でも、クルマが自律的に動けるスマートマシンになればクルマが必要とする人を見つけて行きたい場所へ運ぶことができます。そうすればクルマの需要は最適化されて必要なクルマの台数も最適化されると想像できます。

     また、電気ではないエネルギーの利用も検討すべきなのでしょう。小型車での水素燃料は燃料のサプライチェーンを考えると普及には時間がかかると思いますが、電車や長距離輸送のトラックやトレーラーなどには使えるのではないでしょうか。

     アンリーディングはインプット [reading] に対するアウトプット [unreading] の意味で使っています。カンファレンスに対するアンカンファレンス。コーディングに対するデコーディングのようなもの。カタパルト式スープレックスの造語です。英語のアンリーディング [Unreading]はそのままの意味だと「読まないこと」という意味になります。

     このブログのためにいろんな本や情報を読みます。その中で有用だと感じた記事については翻訳して紹介しています。たくさんのインプットがあると、それを咀嚼してアウトプットとしても出したくなってきます。

     なんでカタパルト式スープレックスでコレらの記事を翻訳して出したのか。その思考をアンリーディングとして解説していきます。

  • スマートマシン(IoTとAI)が顧客になる時 – マシンのためのデザイン

    スマートマシン(IoTとAI)が顧客になる時 – マシンのためのデザイン

    原文:”When a Machine is the Customer – Designing for Machines” by Dr. Carsten Stöcker and Kerstin Eichmann氏, August 27, 2017

    アメリカテキサス州にて:子供がAmazon Echoに「ドールハウスを買って私と遊んで」とお願いし、ドールハウスが送られてくる。

    イギリスにて:「OK Google、ワッパーバーガーってなに?」という言葉が、Google Homeスマートスピーカーのバーガーキングの広告トリガーとなって、かきたてるような商品の説明をはじめる。

     そしていつかすぐに、あなたの車はメンテナンスや充電のための最適な価格を選ぶだけでなく、スマートなクルマは自ら出かけて充電するでしょう *1

     ようこそ、人間ではなくスマートマシンが意思決定をする新しい世界へ。マシンが何をどの価格で買うかを決め、そのやりとりは仲介者なしにブロックチェーンの分散台帳で行われます。「スマートスピーカー」を介する市場は非常に巨大になります。Amazon Echoのようなスマートスピーカーから購入する家庭用品、スマート温度計から購入される電力、工業ロボットが購入する原材料や最適化のためのアルゴリズムの購入まで。

     このような発展を通じて「アルゴリズム利益」が誕生します。スマートマシンの売り手と買い手による取引やニーズをマッチングするサービスの手数料です。

     例えば再生可能な電力供給網では、「エネルギー供給のボラティリティー」が重要な課題です。グリッド制御システムは電力の供給と消費をリアルタイムでマッチさせる必要があります。余分なエネルギーを蓄えるためのバッテリーやエネルギーの柔軟な供給にはグリッド制御システムに「生理学的なマシンのニーズ」が求められています。柔軟性を集約するアルゴリズムはグリッド制御システムという「顧客」に対して集約され検証された柔軟性のポートフォリオへのアクセスと管理という「サービス」を販売できます。このアルゴリズムによる信頼性の高い柔軟性を最適化するサービスは自分自身のアルゴリズムや集約ボットを通じて自己収益をあげます。

    スマートマシン顧客のためのマシン中心デザイン

     先進的な企業はデザイン思考や人間中心デザインに注目しています *2。 これらのメソッドにリーンスタートアップやアジャイル開発を組む合わせてプロトタイプやユーザーテストを行います。これらの手法では人間の顧客を中心においてフォーカスします。

     企業はインサイトから人間のニーズを理解し、そのニーズを満たすためのアイデアを開発しようとします。新製品やサービスをすばやく市場投入するためにプロトタイピングMVP、ユーザーテストを活用します。

     スマートマシンのためのデザインには新しいアプローチが必要となります。スマートマシンのニーズの理解、ソフトウェアコードのライフサイクル、法的、規制上および倫理上の問題に至る全てにおいてです。

    「マシン中心デザイン」の取り組みに遅れを取ることは競合他社が2020年までに何十億ものインターネット上のデバイスのニーズと能力を活用していくことを意味します。

    Alexaを満足させる – マシンのニーズを満たすデザイン

     顧客としてのスマートマシンは無限に多様なニーズ、能力、成熟段階を形作ります。人間と同様に。アブラハム・マズローの人間の欲求段階に相当するマシンの欲求段階(図参照)はマシン顧客が何を必要とし、どのように自社の製品やサービスを売ることができるかを理解するのに役立ちます。

     人の欲求は下から空気、水、食糧などの生理的欲求から、安全の欲求、所属の欲求、承認欲求、そして自己実現の欲求に段階が上がっていきます。

     スマートマシンのニーズも人と同様に下から基本欲求(電力、コンピューティングパワー、ネットワーク接続性)、安全欲求(ファイアウォールや暗号化暗号など)、所属の欲求、そして承認欲求にまでおよびます。これらの欲求はソフトウェアによって満たされます。自律システムがお互いを見つけて識別し、信頼メカニズムによってサービスのレベルを把握することができます。

     人と同じように「自己実現」はスマートマシンによって異なるでしょう。バーチャルアシスタント(Virtual Personal Assistant:VPA)の場合、持ち主の微妙なストレス音感を検出し、落ち着くことのできる音楽を自動的にサジェスチョンすることかもしれません。自律型のナノ衛星の場合は最適な監視ターゲットを選択してコモディティトレードや農業「マシン」顧客に最高の利益をもたらすことかもしれません。

     一つの非常に本当の恐怖は意思を持ったシンギュラリティの「自己実現」スマートマシンが私たちとの共存を望むのか*3、あるいはマシンのニーズを人間より上に置いて奴隷化したり撲滅したいということです。 非営利の倫理グループから産業界の巨人まで、この問題に取り組んでいます*4*5。 今のところ問題の重要性を認識し、製品デザイン、ソフトウェアに組み込まれた倫理原則や人の顧客とのコミュニケーションにおいて意識すべきでしょう。

    innogyが考えるスマートマシンの欲求段階

    スマートマシンのライフサイクル

     物理的な製品と同様にマシン(物理的またはバーチャル)は、デザイン、利用からリサイクルまでのライフサイクルがあります。それらをデザインするときは、製品またはサービスがライフサイクルのどの段階なのかを考慮する必要があります。

     技術が急速に変化している状況で、完璧な答えを求めてはいけません。理解を深めながらマシンの要求に応え戦略を洗練させていくべきです。

    スマートマシンのライフサイクル

    スマートマシンのカスタマージャーニー

     人間のカスタマージャーニーは製品やサービスを意識することからはじまり、検討、購入、サービスの利用開始からサポートに至ります。さらに(願わくば)ロイヤリティーが高まり他の人にもオススメしてくれるように進んでいきます。

     スマートマシンの顧客もP2Pネットワーク上で同じようなカスタマージャーニーを辿ります。このジャーニーはアルゴリズムにより実行され、時間の経過とともに選択を学習して改善されていきます。このアルゴリズムはオンラインランキングなどの信用システムや評判システムによって補強されていきます。

     電気自動車が「意識すること」はバッテリーが少なくなることからはじまります。タイヤ交換や清掃が必要だと意識して、その必要性を訴えかけます。製品やサービスの提供者からの価格、在庫、納期を提示することで「検討」がはじまります。購買はブロックチェーンを介してP2Pのスマートコントラクトを介して実行されます。*6 

     デザイナーは「意識する」段階において適切なオンライン取引所にリストされ、マシンが読める適切なフォーマットで説明がされるようジャーニーをデザインすることができます。また購入段階で取引が正確で完全であることを確実にし、サービス段階では消費をするスマートマシンが適切な時期に適切な保守サービスや補充サービスが提供されるようにデザインできます。

    人とスマートマシーンのカスタマージャーニー比較

    スマートマシンのためのデザイン:何が違うのか

     人が中心の世界では市場調査、フォーカスグループ、顧客インタビュー、エスノグラフィーを通じて要件を明確にしてデザインされます。ターゲットとなるマーケットは「ペルソナ」というユーザー像として表現されます。ペルソナを通じて性別、年齢、教育、職業、役割、責任、さらには趣味など特徴を理解します。

    1. マシンのニーズと機会は主にマシン間のトランザクションのデータのマイニングと分析、場所やパフォーマンスなどの「状態」情報によって分かります。ターゲット市場は様々なクラスのマシンの異なる能力で分類されます。
    2. 人間中心デザインではインターフェースが重視され、観察によってその効果が評価されます。 マシン中心デザインではデバイスやソフトウェアの技術的ニーズに適応しているかで評価されます。コードの効率性、必要なAPIやプロトコルの遵守、トランザクションの速度や信頼性が重要になります。
    3. 人間中心デザインではSCRUM、ラピッドプロトタイピング、MVP、DevOpsなどアジャイル開発方法で製品とサービスの迅速なデリバリーを実現します。マシン中心デザインでも同じ方法が使用されていますが、データ分析、機械学習、ボットフォレンジックに大きくに依存ます。
    4. マシンのためのデザインには新しいインフラ、プロセスとスキルが必要です。マシンロジック、データマシンの種類と量に関する知識、アルゴリズムやディープラーニングから得られるインサイト。基盤となるAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)や認証およびブロックチェーンテクノロジの理解も必要になります。そして、最大限の機会「スイートスポット」を見つけて集中するビジネスコンテキストも必要です。
    5. 法律とガバナンスの面では、マシンツーマシンの売買にはスマートコントラクトの共通標準が必要となります。双方が提供している製品やサービスを理解し、カウンターオファーを行う能力、その受領や拒否のシグナルなどです。また、やり取りを標準化して管理するための新しい法律や規制も必要となります。「マシンに対する課税」領域の設定や人同士と同様に紛争解決のための仲介も必要となるでしょう。

    未来のロードマップ

    Show Me the Money

     マシンのためのデザインは単に既存の製品マーケティング(シャンプーや電気など)を人間以外の「顧客」のために微調整することだけではないと認識することは非常に重要です。実際の革命的な利点の源泉は新しいビジネスモデルの創造と開発です。それはインテリジェントで自律的なスマートマシンのニーズを満たしながら実際の人間社会との整合性を合わせることです。

     たとえば、マシン間の取引でどのように収益を上げるのでしょうか。ブロックチェーンは取引のコストを限りなくゼロにします。これは買い手や売り手には良いですが、銀行、クレジットカードプロセッサーなどの仲介業者には悪いことです。顧客が人間である場合、サービスは価値を作り出し、その価値がお金になります。それは利便性、柔軟性や容易さです。基本的なサービス(例えば輸送)がコモディティとなり価格が下がったとしましょう。人はそれでも最短ルートにお金を払い、友達をピックアップしたりお使いのため遠回りをすることにお金を払うでしょう。

     マシンが他のマシンにサービスを提供する場合、価値の創造から収益を上げる機会はひとりの人間の顧客のための取引を最適化することでは無くなります。ネットワークを通じてマシンを集約することで生まれます。例えば電気自動車がグリッドに余剰電力を売る場合に価格が最も高いピーク需要期を待つことでプレミアムを請求することができます。また、グリッドの安定アルゴリズムでバッテリ容量を柔軟に集約して売却することによってグリッドの安定に貢献することもできます。

     マシンとマシンによる取引の新しい収益機会はデータです。例えば、道路に設置されたスマートセンサーが舗装の摩耗や裂傷に関する業界データを舗装業者に提供し、舗装修繕サービスのディスカウントを受けることができます。また、スマートセンサーから交通情報を小売業者や不動産業者提供することにより建設プロジェクトに貢献することができます。

     このようにスマートマシンの欲求段階、ライフサイクル、スマートマシンのカスタマージャーニーなどのツールは、これから到来するスマートマシンの経済を理解し、その恩恵を受けるために役立ちます*7。スマートマシンの経済に置き換えられるのではなく、製品、サービス、マーケティングを一から考え直すことを積極的に導いていきます。

    この記事は人間中心デザインからマシン中心デザインを予見させる「スマートマシンが顧客になる時 – マシンのためのデザイン」”When a Machine is the Customer – Designing for Machines“の翻訳です。これを書いたのはinnogyのthe Machine Economy Innovation Lighthouse Leadに所属する部長のCarsten Stöcker博士Kerstin Eichmann氏です。あまり関係ないですが、Kerstinさんは同じマイクロソフト出身者として個人的にすごく親近感を覚えます(笑)

    Innogyはドイツ第二位の電力会社RWE AGの子会社です。IoT、ブロックチェーン、AIなどの先端技術を使ったイノベーションプロジェクトを多く手がけています。以前に紹介したブロックチェーンによるIoTの事例もInnogyのプロジェクトでしたね。

    ボク自身は人間中心のサービスデザインを専門としているので、この記事を読んだ時すごくハッとしました。カスタマージャーニーなどのデザイン手法をAIやIoTの世界に当てはめるのはとても新鮮です。

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    About the Authors:

    Dr. Carsten Stöcker is Senior Manager in the Machine Economy Innovation Lighthouse Lead at innogy SE. He is a physicist by training with a Ph.D. from the University of Aachen. He also serves as a Council Member of Global Future Network for the World Economic Forum. Prior to joining innogy SE, Dr. Stöcker worked for the German Aerospace Center (DLR) and Accenture GmbH. Carsten.Stoecker@innogy.com | Twitter: @CarstenStoecker

    Kerstin Eichmann is leading the Machine Economy lighthouse. She also worked as Manager for Microsoft Deutschland GmbH. Prior to Innogy, she worked as a manager in the developer experience unit of Microsoft Deutschland GmbH, Fidor Bank and BBDO. Kerstin.Eichmann@innogy.com| Twitter: @OriginalKed