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  • 書評|メールや会議は仕事じゃない、もっと価値のある仕事をしよう|”A World without Email” by Cal Newport

    書評|メールや会議は仕事じゃない、もっと価値のある仕事をしよう|”A World without Email” by Cal Newport

    前著『デジタル・ミニマリスト: 本当に大切なことに集中する』が日本でも翻訳出版されたカル・ニューポートの新著”A World without Email”は最近再び注目されつつあるeメールがテーマになっています。少なくとも英語圏ではHeyのような新しいメールサービスに人気が集まったり、ニュースレターが再び脚光を浴びて多額の投資を手に入れるスタートアップ が出てきたりしています。最近ではTwitterがSubstackを買収して話題になりましたよね。

    A World Without Email: Reimagining Work in an Age of Communication Overload

    A World Without Email: Reimagining Work in an Age of Communication Overload

    • 作者:Cal Newport
    • 発売日: 2021/03/02
    • メディア: Audible版

    しかし、本書”A World without Email”はeメールだけでなく、Slackなどを含めた非同期コミュニケーション手段全般を取り上げています。カル・ニューポートは以前に『大事なことに集中する(原題:Deep Work)』を出版していますが、本著はそのアップデート版であり実用書でもあります。

    大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法

    大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法

    • 作者:カル・ニューポート
    • 発売日: 2016/12/09
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)

    まず、カル・ニューポートのポジションを確認しましょう。カル・ニューポートはナレッジワークは2つに分類されると言います。一つはワークエクセキューション、もう一つはワークフローです。ワークエクセキューションが実際の価値を生み出します。「ディープワーク」とは価値を生み出すワークエクセキューションに集中することを指します。

    一方でワークフローは価値を生み出すために調整することです。メールやチャットでのやりとりがまさにワークフローです。まあ、実際に会議ばっかりしている人いますよね。メールがインボックスにすごく溜まってると嘆く人(さりげなく忙しいとアピールする人)もたくさんいます。カル・ニューポートに言わせれば、会議やメールのやり取りに忙しい人は、価値を生み出す活動をあまりしていないことになります。ボクもそう思うんですよね。会議やメールで忙しい人は生産性の悪さを恥じ入るべきだと思います。

    ナレッジワーカーのコンセプトを提唱したのはピーター・ドラッカーです。よく、「自律的に働く人材」と言いますが、この自律的な人材もドラッカーが考えるナレッジワーカー像でした。ナレッジワーカーは高度に専門的なプロフェッショナルなので、働き方は個人に委ねて自律性を尊重すべきだとしました。カル・ニューポートはドラッカーが示した「自律性」はワークエクセキューションであり、ワークフローではないと指摘します。メールやチャットなどの不定形で非同期のコミュニケーションは自律性は高めますが、生産性は低下させます。

    なぜ、メールやチャットは生産性を低下させるのか?まず、単純にボリュームが多い。CCを含め、たくさん宛先を指定できるので、気軽に多くの人に情報を配信できてしまいます。さらに、不定形なコミュニケーションなので、アクションアイテムが明確ではありません。これを解決するためには情報のオーバーロードを最小化するアプローチが必要となります。

    次に、時間が分断されワークエクセキューションに集中する時間が細切れになります。これも生産性の低下につながります。メールやチャットをチェックするのが習慣化してしまい、集中力が長く続かなくなってしまう。集中力が分断化されると生産性が低下するのは様々な研究結果からもわかっています。これを解決するためのアプローチはコンテキストスイッチの最小化です。

    情報のオーバーロードを最小化する、 コンテキストスイッチを最小化する。この二つを具体的にどうしたらいいのか?本書の後半はその具体的な方法を提示しています。カル・ニューポートって理論家ではなく、実践者なんですよね。だから、どうしてもハウトゥー本になってしまう。まあ、それが彼の良さなんでしょうが。

    彼が提案している非同期コミュニケーションの罠から脱出する方法の中で二つはボクもすでに実践していました。

    一つはプロジェクト管理ツールの活用です。何か具体的なアクションアイテムがある場合、プロジェクト化した方が効率的ですし、プロジェクトであればプロジェクト管理ツールを使った方がいい。例えば新入社員の受け入れ。PCやスマホの手配やトレーニング。やることがいっぱいありますよね。だとしたら「新入社員受け入れプロジェクト」としてやることリストをTrelloなどで管理した方がメールでやり取りするより数倍効率的です。

    カル・ニューポートはスクラムやXPなど、アジャイルの手法を普段の仕事に取り入れることも提案しています。ボク自身は開発プロジェクトで日常的にスクラムを実践しているので、これも理解できます。プログラマーならコードを書くことに集中して欲しいし、デザイナーならSketchやPhotoshopでどんどんUIを作って欲しい。ミーティングなんて朝会の15分で十分。進捗なんてJiraを見れてばわかるもの。ああ、そう言えば、そろそろZenHubに移行しようと思ってたんだ。

    ボクがまだ実践していないカル・ニューポートの提案の一つが人力アシスタントの活用です。これは実践してみたいと思いました。コンピュータのおかげで様々な業務が簡単になりました。そのため、バックエンド業務のセルフヘルプ形式が増えました。例えば経費精算。多くの社員は経費清算の作業を自分でやってますよね。しかし、そのために失われる生産性を考えれば、実際は給料が安いスタッフがやったほうが安い。自分がやるべきことじゃないのは、アウトソースしたほうがいい。ディゲーションが大事。

    もう一つ実践してみたいと思ったのがワークタイム制です。これはBasecampが実践している方法で『NO HARD WORK!』でも紹介されている方法です。ワークタイムとは他の人が自分にコンタクトできる時間です。つまり、コミュニケーション(=ワークフロー)に使う時間を限定して、残りの時間を実際の価値を生むワークエクセキューションに使うやり方です。

    カル・ニューポートの書籍は実践的なことが多く書かれているので、ハウトゥー本として低くみられたりします。でも、理論より実践。具体的なハウトゥーの方が役に立つこともあるんですよね。

  • 書評|ハマるしかけの次は、ハマらない時間管理|”Indistractable” by Nir Eyal

    書評|ハマるしかけの次は、ハマらない時間管理|”Indistractable” by Nir Eyal

    集中したい、でも集中できない。悩みは古今東西同じです。特に最近は「アテンションエコノミー」などと言われるように、人の注意力を引きつけることがビジネスにとっても重要になってきているため、あの手この手で誘惑してきます。人の注意を引きつけて虜にさせるにはどうしたらいいかと詳しく解説した前著”Hooked”が大ヒットしたニール・イヤール。新著”Indistractable”はその誘惑からいかに逃れて自分にとって本当に重要なことに集中するのかを解説しています。Kindle版より先にAudible版が出たので早速聴いてみました。

    Indistractable: How to Control Your Attention and Choose Your Life (English Edition)

    Indistractable: How to Control Your Attention and Choose Your Life (English Edition)

    最近はソーシャルメディアなど無益なことではなく、本当に自分に必要なことに集中したい人が増えたのか、そのような解説本が増えています。以前に紹介した”Digital Minimalism”なんてその典型ですね。ボクはフェイスブックをヤメて、だいぶ生産性が上がりました。あと、短期間で集中的に学習する“Ultralearning”も学ぶことに集中する敵である「気が散る」から逃れる方法を解説していました。

    ニール・イヤールはデジタル・ミニマリズムを完全否定はしませんが、問題なのは技術ではなく、自分自身だと説きます。彼自身もデジタル・ミニマリズムを試したそうですが、あまりうまくいかなかったそうです。デジタルを遠ざけても、別のことが気になってしまう。結局は気が散ってしまう。

    まずは、自分は何をしたいのか、何から逃れようとしているのか。自分自身の内面を覗き込んで、自分自身を理解することが大切です。自分が大切にすることは「自分(Self)」を円の中心におき、その外側に「プライベート(Relationship)」、一番最後に「仕事(Work)」とする三重円ができます。まずは、自分の健康大事。これを優先順位としてやることを決めましょう。決めたらタイムボクシングで時間管理をしましょう。簡単に言ってしまえばこういうことです。

    でも、結局それって『7つの習慣』なんじゃないの?という気がしないでもありませんでした。あれも結局はフランクリンプランナーというシステム手帳を売る仕組みだったと思うんですよね。覚えています?システム手帳が爆発的に流行したバブル後期。ええ、ボクも持ってましたよ。使いこなせませんでしたが。

    習慣化は時間管理から生まれる。リラックスする時間や趣味の時間もちゃんと予定を入れましょう。いま考えると、それはそれで悪いアイデアではないし、実践したほうがいいとは思います。とはいえ、今さらそれを繰り返しますか?と『7つの習慣』世代としては思うのです。

    完訳 7つの習慣 人格主義の回復

    完訳 7つの習慣 人格主義の回復

    • 作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン
    • 出版社/メーカー: キングベアー出版
    • 発売日: 2013/08/30
    • メディア: ハードカバー
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    この本はどんな人にオススメか

    『7つの習慣』を読んだことがなくて、もっと現代的な時間管理に興味がある人にはオススメです。『7つの習慣』は自己啓発的な部分が好き嫌いの分かれるところだと思います。ボクはあまり馴染めませんでした。ニール・イヤールの”Indistractable”はとても実利的で、インターネット/モバイル世代に即したアドバイスがたくさんあります。

    前著はなぜか『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』というキーワードを詰め込んだクソ長いSEOっぽい日本語タイトルがつきましたが、今回はどうなるでしょうね。

    Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

    Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

    • 作者: ニール・イヤール,ライアン・フーバー,Hooked翻訳チーム,金山裕樹,高橋雄介,山田案稜,TNB編集部
    • 出版社/メーカー: 翔泳社
    • 発売日: 2014/05/23
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  • 書評|ポリマスの時代を生きるためのスキル|”Ultralearning” by Scott H. Young

    書評|ポリマスの時代を生きるためのスキル|”Ultralearning” by Scott H. Young

    ポリマス(Polymath)の時代と言われています。何か一つに特化した専門家ではなく、多彩なジェネラリストがポリマスです。代表例がレオナルド・ダ・ヴィンチですね。新製品開発のディレクションやってると、幅広い知識やスキルが必要になってきます。マーケティング、デザイン、フロントエンド、バックエンド、プロモーション、法務、経理、財務、サポートなどなど。それぞれの専門家とそれなりに製品の方向性に関する深い話ができないといけない。全体を見渡せるってそういうことだと思います。

    今回紹介する書籍”Ultralearning”の著者であるスコット・ヤングは12ヶ月で通常では4年間かかるMITのコンピューターサイエンスの学位に必要なコースをすべて習得するチャレンジ“MIT Challenge”を実施し、見事達成しました。

    Ultralearning: Accelerate Your Career, Master Hard Skills and Outsmart the Competition

    Ultralearning: Accelerate Your Career, Master Hard Skills and Outsmart the Competition

    スコット・ヤングは知識やスキルを身につけるのにコツがあるんじゃないかと、同じように短期間で様々な知識やスキルを身につけた人たちにインタビューを行い、共通点を見出して体系化しました。それがこの本のタイトルにもなっているウルトララーニングです。

    ウルトララーニングとは自ら急激に知識やスキルを身につける戦略です。どうすれば効率的に学習ができるのか、どうすれば怠けずに集中できるのか、どうすれば忘れないのか様々な原則が提示されています。

    第一原則として挙げられているのが「メタ学習」です。メタ学習は学習の学習ですね。例えば、英語を学ぶ前に、英語の学び方を学ぶ。メタ学習は「なぜ学ぶのか?」「何を学ぶのか?」「どのように学ぶのか?」の観点で整理することができます。特に「なぜ学ぶのか?」は重要です。同じ英語を学ぶにしても、何かの手段として学ぶのか(instrumental)もしれません。例えば出世のためとか。好きな女の子が英語しか話せないとか。または、そのこと自体(intrinsic)が目的なのかもしれません。

    次に「何を学ぶのか?」を明確にします。これも数学のようなコンセプトなのか、語学のようにファクトなのか、自転車やギターのようにプロシージャーなのかで異なります。ここまで明確になれば「どうやって学ぶのか?」を調べるのはかなり楽になります。

    もう一つ大事だと思ったのは第三原則の「ディレクトネス」ですね。英語を話せるようになりたいなら、英語が母国語の国に行ってビザで滞在できる限界まで滞在して英語だけで生活する。バンドでギターを演奏して人前でライブをしたいのなら、そうする。もちろん、そういう環境にいれない場合もありますよね。ギター弾けないのにいきなり人前で弾けない。でも、なるべく近い環境にすることはできる。例えば、ライブ会場でなくても、スタジオでも近い環境は作れる。まだ、バンドを組むほどの腕前じゃない?だったらせめてギターストラップをつけて立ったまま弾くことはできますよね。演奏したい曲をひたすら練習すればいい。英語も同じで、その場に行かなくてもTwitterとかで友達作って、Skypeで話してみればいい。

    この本はどんな人にオススメか

    いろんな知識やスキルを身に付けたい人にはオススメです。ボク自身、英語と中国語を話せますし、フランス語とドイツ語も以前は話せました。自分で言うのもなんですが、マルチリンガルの類に入ると思います。また、自分自身でカレー屋をやるくらいにはカレー好きで、短期間に随分とメニューを開発しました。その語学やカレー作りの知識やスキルを身につけた方法は(振り返ってみれば)ここに書かれている原則に沿ったものでした。一方、ボクのギターは一向に上達しないのですが、ウルトララーニングの原則に従えばもうちょっと上手くなるんじゃないかと言う気もします。特にメタ学習は大事。

  • 書評|Facebookではスパークジョイしない!デジタル断捨離のススメ|”Digital Minimalism” by Cal Newport

    書評|Facebookではスパークジョイしない!デジタル断捨離のススメ|”Digital Minimalism” by Cal Newport

    コンマリこと近藤麻理恵さんはすごいですよね!アメリカでも大人気です。アメリカの価値観の基本は「消費」であり「ショッピング」です。足し算の生活。コンマリはスパーク・ジョイ(心がときめく)という非常にわかりやすいキーワードで断捨離(引き算の生活)というカルチャーシフトを紹介しました。コンマリはアメリカ人にとってはまさに「目から鱗」だったんです。

    ソーシャルメディアとスマホもカルチャーチェンジでしたが、これもアメリカ特有の足し算の生活の延長線上ですし、アテンションの消費でした。カルチャーシフトとまではいかない。そんなデジタルな世界にデジタル断捨離(というかデジタル・コンマリ)をもたらそうとしているのが今回紹介するカル・ニューポートによる著書”Digital Minimalism”です。

    なお、2019年2月のデジタル系書籍のベストセラー第1位であるこの”Digital Minimalism”も、前回紹介した”The Age of Surveillance Capitalism”の文脈で書かれています。「監視資本主義」から離れてより人間らしく暮らすにはどうしたらいいかという具体的な手法を提案しています。(2019年10月3日に日本語版が出ましたね)

    デジタル・ミニマリスト: 本当に大切なことに集中する

    • 作者: カル・ニューポート (著), 長場 雄 (イラスト), 佐々木 典士 (その他), 池田 真紀子 (翻訳)
    • 出版社/メーカー: 早川書房
    • 発売日: 2019/10/3
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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    Digital Minimalism: Choosing a Focused Life in a Noisy World

    Digital Minimalism: Choosing a Focused Life in a Noisy World

    デジタル・デトックスとデジタル・ミニマリズムの違い

    デジタル・ミニマリズムの話をするとかなりの確率でデジタル・デトックスと混同されるので、まずこのふたつの違いから解説します。

    デトックスは体から有害な毒素を排出させることです。溜まった毒を抜く。生活を改善しなければまた毒素はたまり、デトックスしなければいけません。デジタル・デトックスも一時的にデジタルの世界から離れてデジタルの毒素を抜くことを指します。生活を改善しなければデジタルの毒素はまたたまり、デジタル・デトックスしなければなりません。

    デジタル・ミニマリズムはデジタルの生活習慣自体を見直して、デジタルに使っていた時間をより有意義な時間に使うことです。一時的なものではなく、長く続く習慣を身につけることを目的としています。

    デジタル・ミニマリズムと断捨離の共通点

    デジタル・ミニマリズムはむしろ断捨離に似ています。デジタル断捨離です。

    断捨離は不用なモノを減らし、生活に調和をもたらすという思想です。

    デジタル・ミニマリズムは不要なコトを減らし、生活に調和をもたらす思想です。

    三つの前提条件

    カール・ニューポートはデジタル・ミニマリズムを実行する上で三つのポイントを紹介しています。

    • 散らかっている心理的コストは高い(Cluttering is expensive)
    • 優先順位付けが大切(Prioritization is important)
    • 意識的に行うことで満足感が得られる(Intentionality is satisfying)

    この三つのポイントもコンマリの「人生がときめく片づけの魔法」に似てると思ったんですよね。Clutteringとは英語で散らかっていること。整理整頓の「整頓」は散らかっている状態を捨てることで散らかっていない状態にすることで、英語ではDeclutteringと言います。ちなみに整理はOrganizingですね。整理整頓は合わせてDecluttering and organizingです。コンマリの著書『人生がときめく片づけの魔法』の英訳タイトルにも入ってますね。

    The Life-Changing Magic of Tidying Up: The Japanese Art of Decluttering and Organizing (The Life Changing Magic of Tidying Up)

    The Life-Changing Magic of Tidying Up: The Japanese Art of Decluttering and Organizing (The Life Changing Magic of Tidying Up)

    人生がときめく片づけの魔法

    人生がときめく片づけの魔法

    整理整頓する上では捨てる基準が大切になってきます。これが優先順位ですね。カール・ニューポートはOptionalなものは全て捨てて、必要なものだけを残そうと言います。コンマリはもっとシンプルで「心がときめくモノ」だけ残そうですよね。ここまでズバリと言えないのがカール・ニューポートの惜しいところです。まるまるパクってFacebookは心ときめく?いや、ときめかない!(Facebook, does this spark joy? No!)みたいにすればいいのに。優先順位づけをパーソナルに保ちつつ、基準をわかりやすくしたコンマリは偉大だと改めて思います。

    断捨離で「心ときめくモノ」だけ残った生活が幸福感・満足感を得やすいように、デジタル断捨離で「心ときめくコト」だけ残った生活はさらに幸福感・生活感を得やすいというのがカール・ニューポートの言いたいことなんだと思います。

    断捨離オリジンとしての『ウォールデン/森の生活』

    ちなみにカール・ニューポートがリファレンスとして使っているのは近藤麻理恵さんではなくて、ヘンリー・ソローの『ウォールデン/森の生活』です。これはこれで興味深いです。デジタル対民主主義の文脈でソローはよく引用されるからです。“The Age of Surveillance Capitalism”強化理論により行動データを取得するためにプライバシーを犠牲にするのはやむなしという論調を作り上げた大元として糾弾されているバラス・スキナーの著作で監視資本主義の未来を描いたディストピア小説(本人はユートピア小説だと思ってた)に『ウォールデン2』というのがあるんですよね。

    Walden Two

    Walden Two

    ソローは森の生活の中で新しい独自の経済学を構築しました。経済というのは価値の交換ですよね。一般的な経済学の価値とソローの経済学での価値は違います。一般的な経済学の価値は足し算です。例えばカバン。エルメスのカバンとグッチのカバンは同時に所有できます。二つあれば価値が増えます。ソローの経済学の価値は引き算です。最も価値が高いのは自分自身の時間です。エルメスとグッチのカバンを得るために自分の労働時間が消費されます。自分の時間の対価としてどれくらい価値があるかどうかが判断基準となります。自分の時間は最も価値が高いので、それを消費しない方が価値が高いと言えます。

    ソローはこの経済学を実践するために森の生活をおくりました。必要最低限の生活をするためのコストから必要な収入を導き出しました。そういう意味では断捨離オリジンと言える人です。

    ウォールデン 森の生活 上 (小学館文庫)

    ウォールデン 森の生活 上 (小学館文庫)

    この本で紹介されていた面白い事例

    ここまで書くと残りの内容をサマリーするのも面倒なので、面白かった事例のリンクだけ自分用のメモとして残しておきます。

    この本はどんな人にオススメか

    ボク自身は週末カレー屋をやったり、バンドをはじめたりでオフラインでの活動が増えてきていて、この本を読む前から必然的にオンラインでの活動が減ってきています。去年くらいからFacebookはほとんど使ってなかったですし、Twitterもこのブログのエゴサーチをするくらいにしか使っていませんでした。オフラインの活動が増えるほどに幸福度が増えてきていることは実感できます。この本を読んでから多くのSNSのアカウントを削除してしまいました。NewsPicksやニュース系のアプリもスマホからアプリを削除しました。スマホからアプリを削除するだけで随分と効果があります。

    もちろん、デジタルが悪いというわけではないし、むしろデジタルは補完的な役割として積極的に利用しています。Instagramは美味しいカレー屋を発見するのにとても役立っています。本を読む手段としてAudibleとScribdも毎日使ってますし、NetflixもSpotifyもボクの映画生活と音楽生活を豊かにしてくれます。ギターの練習にUltimate Guitarは手放せません。耳コピできるほど上級者ではないので。もちろん、カタパルトスープレックスはボクにとってスパークジョイなので続けています。

    「心ときめく」を基準としてスパークジョイするデジタルツールだけを残せばいいのです。そのガイドとしてこの本はオススメです。併せて近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』もいいかなと。

  • よくある質問:どうしてそんなに時間があるの?

    よくある質問:どうしてそんなに時間があるの?

    よくある質問:どうしてそんなに時間があるの?

    ボクは多くのこれを読んでいる皆さんと同様に普段は仕事をしています。その上で、このブログを書いたり、本を読んだり(だから週一ペースで書評の記事が書ける)、四川風のスパイスカレーを作ったり、オリジナルのクラフトドリンクを作っています。もちろん、音楽も聴きますし、映画だって観ます。友達と美味しいものを食べ歩いたりだってします。その分、ソーシャルメディアはほとんどやらなくなりました。

    それでも、リアルの知り合いには「どうしてそんなに時間があるの?」と聞かれます。

    簡単な答えは情報収集が効率的ということになるでしょう。通勤途中にオーディオブックで本を「読む」し、Feedlyでタイトルだけ読んで、気になる記事だけをPocketで取捨選択して読む。週末にカレーを作りながらSpotifyで音楽を聴く:土曜日に新曲がアップされることが多いので土曜日にまとめて聴いて、気に入った曲をプレイリストにまとめておく。

    文字と画像と音、視覚と聴覚

    大きな流れは視覚や聴覚で捉えるというのもボクの特徴かもしれません。視覚ならYouTubeやNetflixですし、聴覚ならオーディオブックやポッドキャスト。文字で読むよりも映像で見たほうが、音で聞いた方が大枠での理解できる速度が早い気がします。

    そんなわけで、効率的に情報収拾をする入り口としてのYouTubeとNetflixの番組情報をまとめてみました。

    Techquickie

    Linus Tech Tipsで大人気の技術系オタクYouTuberのリーナス・セバスチャンなどによる技術解説。彼のTwitterのヘッダー画像が『天元突破グレンラガン』のヨーコなのが素敵です。Linus Tech Tipsはコンピューター部品のレビューが中心ですが、Techquickieは飛行機でWiFiが使える理由などのもう少し概念的な技術解説になっています。

    Tested

    特殊効果アーティストのアダム・サヴェッジによるYouTube番組。様々な映画でモデルメーカーとしても活躍してきた彼がモデル作りを解説してくれています。例えば『となりのトトロ』のトトロを作ってくれたりしています。

    Startup eXpress

    チャーリーさんの『ビジネスモデル2.0』は多くのスタートアップのビジネスモデルを図解で解説している素晴らしい書籍です(みなさん買いましょう)。Startup eXpressはスタートアップのビジネスモデルをビデオで解説しています。チャーリーさんの『ビジネスモデル2.0』は逆説や八方よしなど独自のフレームワークを使っていて(それが素晴らしいのですが)、Startup eXpressはビジネスモデルキャンバスという汎用的なフレームワークで解説しているのが特徴です。

    The Modern Rogue

    カッコいい悪いおとなのためのYouTuberです。Rogueというのは悪漢という意味なんですが、「悪いおとな」ですね。Modern Rogueとは「いまどきの悪いおとな」ということでしょう。遊び心を忘れずに大人の嗜みを学んでいく感じ。ウィスキーの飲み方やステーキの焼き方など。

    Pitchfork Over / Under

    この番組はカタパルトスープレックスの趣旨からは少し外れるかもしれませんが、大好きなので。Pitchforkはイギリスの音楽メディアです。その中でOver Under(過大評価/過小評価)というシリーズが大好きで欠かさずみています。アーティストがランダムなトピックに対して「過大評価されている」か「過小評価されているか」決めていきます。Flying LotusとThundercatが「Kenny Gは過大評価されている?過小評価されている?」という質問に…

    世界の今をダイジェスト(オリジナルタイトル:Explained)

    Vox Mediaによるドキュメンタリーシリーズ。簡単にいえばテレビ版のVox。スタートアップ的な暗号化通貨のようなトピックだけではなく、Kポップの世界とかミレニアムのカルチャーを掘り下げています。

    世界の”バズる”情報局(オリジナルタイトル:Follow This)

    こちらはBuzzfeedによるドキュメンタリーシリーズ。簡単にいえばテレビ版のBuzzfeed。一つのトピックを取材する様子を追いかけることで、そのトピックについて文字だけではわからない映像のコンテキストで深みを与えています。日本だとオンラインとテレビのメディアミックスといえばAbemaTVですが、海外ではNetflixなんですね。

    リキッド・サイエンス 変わりゆく科学と未来(オリジナルタイトル:Liquid Science)

    ウータン・クランのGZAがホストをしている科学番組。環境や音楽や命といったテーマに関する科学を一つづつ取り上げていきます。まず、GZAがホストだというのがビックリだったのですが、彼は学校をドロップアウトしたものの科学にはずっと興味を持ち続けていたんですね。そして、ハーバード大学で講義を行ったり、コロンビア大学で科学普及のプロジェクトに参加したりしている。つまり、この番組も付け焼き刃の人寄せパンダではないということです。

    世界の”現実”旅行(オリジナルタイトル:Dark Tourist)

    ボクは『クレイジージャーニー』が大好きです。『世界の”現実”旅行』は簡単に言えばNetflix版の『クレイジージャーニー』です。あまり人が行かないようなところを観光するのをダークツアーというそうですが、これはダークツアーの紹介番組。

    まあ、ボクの場合は英語と中国語ができるというUnfair Advantageがあることは認めつつ、その習得に他の人より多くの時間をかけているわけですから、その投資を今になって回収していると言えなくもないです。何が言いたいかというと、ここまで効率的にできるようになるにはそれなりの積み上げも必要なんですよということ。努力せずに簡単に、なんてないかなと。

  • 書評|クソみたいなことを気にせず幸せになる|”The Subtle Art of Not Giving a F*ck” by Mark Manson

    書評|クソみたいなことを気にせず幸せになる|”The Subtle Art of Not Giving a F*ck” by Mark Manson

    I don’t give a fuckというのは「そんなクソみたいなこと気にしねーよ」という意味です。 The Subtle Art of Not Giving a Fuckとは「クソみたいなことを気にしなくなるような小ワザ」という意味ですね。

    クソは必ず道に落ちている。どのクソを気にして、どのクソを気にしないのかをきちんと選ぶこと。クソを選ぶことが大事なのだそうです。そういう意味ではベストセラーとなった”The Subtle Art of Not Giving a F*ck”の翻訳タイトル『その「決断」がすべてを解決する』は内容的には間違っていません。

     

    The Subtle Art of Not Giving a F*ck: A Counterintuitive Approach to Living a Good Life

    The Subtle Art of Not Giving a F*ck: A Counterintuitive Approach to Living a Good Life

     
    その「決断」がすべてを解決する (単行本)

    その「決断」がすべてを解決する (単行本)

     

     

    クソなことを気にせずもっと気楽にいこうぜ

    著者マーク・マンソンは「クソみたいなことは気にするな」と言います。日本だと「スルー力」と言いますが、これに近いと思います。

    例えばなんですが、海外と比べると日本はマナー広告がたくさんあると感じました。もちろん、他人に対する気遣いは大事です。ただ、それも限度があると思うんですよね。日本のマナー広告の場合のメッセージは要約すれば「もっとオレ(ワタシ)に気を使えよ、他人!」ということなんだと思います。

    マナーは大事かもしれないけど、もっと大事なことがあるよね。他人でストレス抱えずに気楽にいこうぜ。同じ交通広告でいえば「お先へどうぞ、ありがとう」ですね。他人に変化を求めてギスギスするのではなく、自分がゆとりを持った方がいい。

    それがこの本のメッセージです。

    まったく無関心でいればいいのか?

    全て対して無関心でいることではない。全てに対して無関心な人はサイコパスといいます。人が持てる関心は有限です。限りがあります。関心は無限にありません。

    なぜクソみたいなことを気にしないことが大切なのか?それはもっと気にしなければいけない大事なことがあるからです。

    何が大事なのかは個々人に依存しますが、クレーマーになったりストーカーになったりイジメをしたりするのはクソなことです。そんなストレスを抱えるようなクソなことはやめてしまいましょう。もっと大事なことに関心をもちましょう。

    この本はどんな人にオススメか?

    日々ストレスを感じている人は読んでみてもいいかもしれません。自分にとって何が大事で、何が大事ではないのか。そんなことを考えるきっかけになるかもしれません。

  • ゴールを追いかけると幸せになれない三つの理由

    ゴールを追いかけると幸せになれない三つの理由

    原文:”Forget About Setting Goals. Focus on This Instead.” by James Clear

     私たちは人生で達成したいことがあります。いい体型になりたい、起業で成功したい、いい家庭を築きたい、ベストセラーを書きた、チャンピオンになりたい、などなど。

     そして、最初にやることは具体的で実行可能なゴールを設定すること。少なくとも、それが私のこれまでのやり方でした。学校の教室でもゴールを設定して、ジムに通ってどれくらい減量したいのか決め、自分のビジネスで獲得する顧客を決め。

     私が気がついたのは、実行して前に進むにはもっといいやり方があるということです。

     それはゴールとシステムの違いです。説明しましょう。

     

    ゴールとシステムの違い

     ゴールとシステムの違いはなんでしょうか?

    • もしあなたがコーチなら、あなたのゴールはチームを優勝に導くこと。あなたのシステムはチームの毎日の練習。
    • もしあなたが作家なら、あなたのゴールは本を書くこと。あなたのシステムは毎週の執筆スケジュール。
    • もしあなたがランナーであれば、ゴールはマラソンを走ること。あなたのシステムはその月のトレーニングスケジュール。
    • もしあなたが起業家なら、あなたのゴールは100億ドルのビジネスを生み出すこと。あなたのシステムは営業とマーケティングのプロセス。

     そして質問です。

    もしゴールを完璧に無視してシステムにフォーカスしたら結果を出せるでしょうか?

     例えば、あなたがバスケットボールのコーチだとして、大会で優勝するというゴールを全く無視して、チームの日々の練習にフォーカスをしたとする。結果を出せるでしょうか?

     私は結果を出せると思います。

     例えば、私が書いたブログ記事の文字数。過去12ヶ月で私は11万5000文字以上書きました(ここに全てあります)。一般的な書籍は5万から6万文字です。つまり、私は二冊の書籍と同程度の文量を書いたことになります。

     これは非常に驚くべきことです。私は書くことに関してゴールを設定していないのですから。私はベンチマークを使って私の進捗を測ったりしません。特定のブログ記事の文字数のゴールもありません。「今年は二冊本を書くぞ」などといったこともありません。

     私がフォーカスしたのは毎週月曜日と木曜日に一つのブログ記事を書くこと。そしてそのスケジュールを11ヶ月続けた結果が11万5000文字でした。私はシステムとタスクを実行するプロセスにフォーカスしました。そして私は同じ(またはそれ以上の)結果を楽しむことができました。

     それでは、ゴールではなくシステムにフォーカスするべき三つの理由を見ていきましょう。

    1. ゴールは現在の幸福感を少なくする

     ゴールに向かっている時は基本的に「今は十分じゃない、でもゴールを達成すれば良くなる」という状態です。

     このマインドセットの問題は次のマイルストーンに達成するまで幸福感と成功を脇に置いておこうとすることです。「ゴールを達成したら幸せになる。ゴールを達成すれば成功したことになる」

    解決方法:ゴールではなくプロセスにコミットする

     ゴールを決めると精神的な負担が増えます。もし自分が今年二冊の本を書くと決めたら?そのゴールを書くだけでプレッシャーを感じるでしょう。

     でも、私たちはいつもそうしています。減量するため、ビジネスで成功するため、ベストセラーを書くために不必要なストレスを抱えます。大きな人生を左右するゴールではなく、毎日のプロセスにフォーカスしてそれを続けることでモノゴトをシンプルにしてストレスを減らすことができます。

     パフォーマンスではなく作業にフォーカスすることで、現在を楽しみながら改善することができます。

    2. ゴールは長期的なやる気を生み出さない

     ゴールを設定することで長期的にやる気を維持することができると考えるかもしれません。それは必ずしも正しくありません。

     ハーフマラソンのためのトレーニングを考えてみましょう。多くの人は数ヶ月ハードなトレーニングをするでしょう。しかし、大会が終わると練習をやめてしまう。ゴールはハーフマラソンを走りきることだから、それを達成したら練習を続ける「やる気」が持続できない。もし特定のゴールを達成するためにすごく努力したとして、それを達成した後には何が残りますか?

     これはゴールに向けてやったりやらなかったりという「ヨーヨー効果」に繋がります。このようなサイクルは長期的な習慣を作りにくくします。

    解決方法:直前のゴールから解放される

     先週ジムでトレーニングをして最後から二番目のクリーン&ジャークのセットをやっていました。セットの最中にかすかなズキっとする痛みを感じました。すごく痛いわけでもないですし、怪我をしたわけでもない。ワークアウトの後半にある疲れのサインです。ちょっとの間、最後のセットをやるかどうか考えました。私はこれを生涯やることと決めていたので、今日はやめておくことにしました。

     ゴールを基本とした考え方ではワークアウトを完了してゴールを達成する気持ちになるでしょう。ゴールを設定して達成しなければ、失敗したと感じてしまうからです。

     しかし、システムを基本とした考え方では、続けることに問題はありません。特定の数字を達成することが目的ではありません。プロセスを続けてワークアウトし続けることが大事なのです。

     もちろん、ワークアウトをし続ければ、長期的にはより重い重量を持ち上げることができることを知っています。そして、それこそがシステムがゴールより価値が高いことなのです。ゴールは短期間の結果です。システムは長期間のプロセスです。そして最終的にはプロセスが常に勝つのです。

    3. ゴールは管理できないことを管理できると錯覚させる

     失敗を予測することはできません。はい、ショックですよね。

     ゴールを設定するとそれを達成したくなります。自分たちがいつ、どこまで、何を達成するのか計画を立てます。どれくらい早く達成できるか予測します。どのような状況や環境がその先にあるかもわからないのに。

    解決方法:フィードバックの仕組みを作る

     毎週金曜日、自分のビジネスにとって重要な数値をスプレッドシートに15分使って埋めます。例えば、一つの列にコンバージョン率(Webサイトの訪問者がニュースターの購読者になってくれる割合)を埋めます。この数字について考えることはありません。しかし、数字を入れ続けることで自分のビジネスの状況を理解するためのフィードバックの仕組みを作ることができます。コンバージョン率が落ちたらもっと品質の高いトラフィックをWebサイトに誘導する必要があるということです。

     フィードバックの仕組みはよいシステムを作るために重要です。現在の状況に関する情報をトラッキングでき、全てを予測する必要がなくなります。そして、そのプレッシャーからも解放されます。予測などせず、何かを調整しなければいけないサインを捉えることに注力しましょう。

    システムに恋をする

     ゴールが無意味だと言っているわけではありません。ゴールは計画するのに適していて、システムは実際に実行するのに適しているというだけです。

     ゴールは方向性を与えてくれ短期的な動機も与えてくれます。しかし、よいシステムが常に勝ちます。システムを持つことが重要です。プロセスにコミットすることが結果に繋がります。