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  • インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|UPI編

    インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|UPI編

    今回のインドのキャッシュレス特集では、第一回目はインドのeコマースを利用してカバンを買おうとしたらインド特有のクレジットカード事情のためにつまづいてしまったという話。第二回目はモバイルペイメントも使えなかったというお話をしました。

    では、インド特有のUPIとQRコードではどうでしょうか?インドのQRコードは統一されていて、Alipay(アリペイ|支付宝)とWeChat Pay(ウィチャットペイ|微信支付)ではQRコードがそれぞれ違う中国よりずっと便利なんですけどねえ……というのが今回の内容です。

    UPIとは

    ウォレットとUPIの違いですが、ウォレットはウォレットサービスの中にお金をチャージしておいて、それを切り崩して使います。足りなくなったら、チャージします。UPIは統一したインターフェースによって銀行口座と直接繋げることによって支払いができるようにします。簡単に言えばデジタル版のデビットカードサービスです。銀行口座があるんだから、モバイルペイメントだけの特別な口座なんていらないよね?というインド人らしい合理的な考え方から生まれたものです。

    ウォレットって実は意外と不便です。例えばPayPayからSuicaにお金は移せないですよね。ウォレットごとにお金を貯めておかないといけない。UPIだと銀行口座と直結だから銀行口座があればいい。中国のAlipayやWeChat Payのようにクレジットカード機能やキャッシング機能のような銀行口座ではない機能があると違うのですけど。

    UPIの仕組み

    UPI(Unified Payments Interface)は第一回『インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|クレジットカード編』でも登場したインド決済公社(National Payments Corporation of India)が開発したリアルタイム決済システムです。UPIを使うと具体的には以下の五つの方法(インターフェース)で自分の銀行口座とお金のやり取りをすることができます。

    UPIを使うには銀行のUPIアプリをインストールする必要があります。UPIアプリをインストールすると決済用アドレスが割り当てられます。UPIアドレスは “ユーザー名@銀行名” になっています。これに加えてモバイル通貨ID(MMID: Mobile Money IDentifier)が必要になります

    • 仮想決済アドレス(VPA: Virtual Payment Address):仮想決済アドレスと紐づけられた銀行口座とのお金の送金/受け取り。
    • 携帯番号:携帯電話の番号と紐づけられた銀行口座とのお金の送金/受け取り。
    • 口座番号とインド金融システムコード(IFSC: Indian Financial System Code):銀行口座またはインド金融システムコードを使ったお金の送金/受け取り。国際的に使われているのはアイバン(IBAN: International Bank Account Number)ですが、インドは特殊なコードを使います。
    • インドのマイナンバー「アダール」アダールと紐づけられた銀行口座とのお金の送金/受け取り。
    • QRコード:送金に必要な情報(VPA、口座番号、IFSCまたは携帯番号)QRコードで伝えることによりお金の送金。インドのモバイルペイメントのQRコードは各社バラバラではなくてBharatQRという規格で統一されています。これも元締めはインド決済公社(National Payments Corporation of India)です。

    UPIが生まれた背景

    UPIが発表されたのは2016年4月でした。そしてモディ首相が高額紙幣廃止をしたのが2016年11月。以下がUPIに関わる主な出来事のタイムラインとなります。このタイムラインを見ればわかるように、インドの金融自由化はモディ政権以前からゆっくりではありますが徐々に進んではいました。

    2008年12月:インド決済公社(National Payments Corporation of India)の設立

    2012年3月:インドのナショナルブランドのクレジットカードRuPayの誕生

    2014年5月:モディ政権誕生

    2016年4月:UPI(Unified Payments Interface)発表

    2016年9月:統一QRコードのBharatQR発表

    2016年11月:高額紙幣廃止

    2017年4月:銀行間の送金アプリBHIM(Bharat Interface for Money)発表

    しかし、不正や脱税の温床となっていた現金主義から決別するには高額紙幣廃止という荒治療が必要でした。そして、現金からキャッシュレスにシフトするための施策が必要でした。UPIやBharatQR、BHIMなど重要な施策が高額紙幣廃止前後に矢継ぎ早に発表されているのは偶然ではないでしょう。

    UPIをサポートするアプリ

    すでにGoogle PayやWhatsAppなど国際的なアプリがUPIをサポートしています。彼らにとっては非常に都合がいいサービスですよね。UPIをサポートすればモバイルペイメントができるようになってしまうのですから。

    特にWhatsAppはインドでのシェアが高いので、かなりの人はWhatsAppとUPIを使ってお金のやり取りをしていると考えられます。この辺の合理性は本当にインド人っぽいです。

    さらに、UPIをサポートすればQRコード決済もできるようになっちゃうんですから。LINEもインドでUPIサポートすればいいのに。

    で、日本人はUPIを使えるのか?

    念のために改めて書きますが、この連載はインドのeコマースで無事にカバンが買えるのか?という記事です(笑)

    どうやれば支払いができるのかを研究しているうちに、連載するくらいの情報が入手できてしまったので、それを整理して書いています。察しのいい方はお気づきだと思いますが、UPIを使って日本から支払いはできません。だって、インドの銀行口座持ってないですもの。

    (次回は解決編の予定です。え?解決するの?はい、解決しました!)

  • インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|モバイルペイメント編

    インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|モバイルペイメント編

    前回はファッションのeコマースを利用してカバンを買おうとしたらインド特有のクレジットカード事情のためにつまづいてしまった話でした。

    今回はクレジットカードが使えないならどうする?という話です。では、クレジットカード以外はどのような選択肢があるのでしょうか。スクリーンショットを見ると、ネットバンキング、ウォレット、UPIとQRコードという選択肢があります。

    インドのモバイルペイメント理解のための前提

    インドは中国とは違います。日本とも違います。まず、これを理解しないといけません。モバイルペイメントの普及には技術と市場の両方が必要です。インドの技術は高いです。日本のPayPayも中身はインドのPaytmです。インドは昔から開発のオフシュアとしてレベルの高い開発者がたくさん育ててきました。

    しかし、市場としてはまだまだ未成熟です。中国のモバイルペイメントの発展の歴史に関する記事でも書きましたが、モバイルペイメントは様々な要素が合わさってはじめて実現します。インドの人口は13億人で中国についで二番目に人口の多い国です。そして、スマホユーザーが3億人強(普及率約23%)です。これが中国や日本と大きく異なる点です。インドは技術は高くても、国内市場はまだまだ発展途上なのが特徴です。

    インドでのモバイルペイメントの普及率は7.6%です。7390万人だと言われています。中国のモバイルペイメントの普及率は98%(日本は6%)だそうなので、中国と比べると大きな開きがあります。日本と同様で、まだまだ小さな市場に群雄割拠で小さなプレーヤーも含めてしのぎを削っているのが現在のインド市場です。

    インドのウォレット

    ウォレットアプリとはお金をアプリにチャージしておいて、それをQRコードなどで使うアプリです。中国のAliapay(アリペイ|支付宝)やWeChat Pay(ウィチャットペイ|微信支付)みたいなものです。日本のSuicaもウォレットですね。インドで最も普及しているウォレットアプリといえばPaytmだと思います。しかし、今回のオンラインショップで採用されているペイメントゲートウェイのRazorpayではどうやらPaytmやOxigenはサポートされていないようで、PayZapp、Ola MoneyとFreechargeのみ利用できます。

    Paytm

    2016年の高額紙幣廃止からUberやインド鉄道がいち早く採用するなど、急速に伸びたサービスがPaytmです。ちなみに日本のPayPayの基礎技術はPaytmです。インドのAlipayやWeChat Payといったポジショニングです。Alibaba(アリババ|阿里巴巴)やソフトバンクが主要株主です。800万のオフライン加盟店を獲得していて、インドの街を歩いていればPaytmのサインを見かけることは多いかと思います。

    RBIからオンラインバンクとしては最初の認可を受けて決済銀行であるPaytm Payments Bank Limitedを設立しています。この辺り、中国と全く同じ流れですね。

     

    MobiKwik

    MobiKwikはPaytmの次にシェアを獲得しているモバイルペイメントですが、こちらもRazorpayではサポートされていません。MobiKwikもUberに採用されているモバイルペイメントです。

    MobiKwikの拡大チャネルはeコマースとのパートナーシップで、オフラインから拡大したPaytmとの差別化ポイントとなっていました。でも、今は同じですけどね。

    Oxigen Wallet

    Oxigen Walletもインドで人気のあるモバイルペイメントの一つだと思うのですが、Razorpayではこちらもサポートされていません。実はインドで最初にモバイルウォレットを発表したのはPaytmではなくてOxigenでした。

    PayZapp

    PayZappはHDFC銀行が提供しているウォレットです。インドの銀行は1969年にほとんど国有化されました。1990年代からインドでも銀行業が自由化されはじめ、新しい民間の銀行が生まれました。HDFC銀行(The Housing Development Finance Corporation Limited)もその一つで1994年に設立されました。

    それでも、国有銀行の方がまだまだ大きく、インドの4大銀行(インドステイト銀行/ICICI銀行/パンジャブ国立銀行 /バローダ銀行)もICICI銀行を除いて全て国有銀行です。HDFC銀行は挑戦者の立場なので、ウォレットのPayZappだけでなく、P2P決済のChillrなど新しいテクノロジーの採用に積極的です。

    とはいえ、状況はまだまだ厳しいといえます。4大銀行の一角であるインドステイト銀行(SBI)のウォレットアプリであるBuddyは2018年11月にサービス終了しました。まだまだ未成熟なインド市場でHDFC銀行がどこまで頑張れるか。

    Ola Money

    Olaはインドで最も有名なタクシーアプリで、Uberとしのぎを削っています。中国でいえばDidi( 滴滴出行)のような存在。そのOlaが提供するウォレットアプリがOla Moneyです。AlibabaがDidiに出資してAlipayとの連携を深めたように、タクシーや映画館のような日々オフラインで利用するサービスの決済とウォレットアプリの相性は非常にいいです。

    Freecharge

    SnapdealFlipkartに次ぐ第2位のインドのeコマースサイトで、中国のAlibaba(第2位だからJD.comか)のような存在です。実際にソフトバンクやAlibabaから投資を受けています。このSnapdealが2015年に買収して組み込んだモバイルペイメントがFreechargeです。Alibabaの例もありますが、eコマースも当然ながら決済サービスと相性がいいです。

    しかし、2017年には大手民間銀行のアクシス銀行がSnapdealからFreechargeを買い上げました。アクシス銀行は新興の民間銀行で、PayZappを提供しているHDFC銀行の直接的なライバルとなります。

    で、問題は解決した?

    察しのいい方はすでにお分かりでしょうが、インドの銀行に口座を持たない日本人はこれらのインドのモバイルペイメントは利用できません。つまり、まだカバンは買えないのです!ここまで書いておいてなんですが。

    第三回:インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|UPI編

  • インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|クレジットカード編

    インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|クレジットカード編

    ボクはファッションに関してはちょっとしたこだわりを持っています。音楽、映画、アート、ファッションはボクのアイデンティティの一部といってもいい。これに「食」を加えた五つにはオタク的なこだわりがあります。リアルに会って、これらを語らせたら迷惑なほどうるさいです。故に、今回は本題に入るまで前書きが長いです。

    ボクのファッションのこだわりの一つは「ワンポイント」です。色でもアイテムでもアクセントを重視します。そのためには個性的でセンスのいいものが欲しい。個性的でセンスのいいアイテムは海外のオンラインショップで買うことが多いです。すみません、持っている人が増えると困るので、ここでは具体的なブランド名は書かないです。それらを身に付けていると「いいね、それ。どこで買ったの?」とよく聞かれます。聞かれれば、ちゃんと答えます(笑)。アクセントだから目立つんですよね。ちなみに、靴だけは日本のブランドで、スピングルです。アクセントになるアイテム以外はユニクロやZOZOのお世話になっています。ARIGATO会員はマジありがたい。

    このブログではあまりボクのこだわりについて書かないのですが、ファッションという個人的なこだわりトピックからスタートしているのには理由があります。

    インドのeコマースでカバンを買うための戦い

    最近、ボクのインドの知り合いがカバンのブランドを立ち上げました。ここがスゴイ。センスのいい革の鞄とか一万円しません。コスパ最強です。インド人はもともと色彩センスが素晴らしいのですが*1、そのセンスが最大限に発揮されています。というわけで、すぐにオーダーしたのですが、これがなかなかうまくいかない。その理由はインド独自の決済システムにあります。やっと本題に入りました!

    インドのタンス貯金と現金主義からの決別

    インドは日本と同様に現金主義の国でした。それでも、日本では銀行に預けますが、インドではリアルタンス貯金でした。現金を家に溜め込むのです。その理由は節税です。あ、脱税か。これが一部の特殊な層だけやっていることではなく、一般的な家庭レベルのやり方でした。そのため、つい最近までインドでは決済の90%以上が現金です。日本も現金主義ですが、インドはそれ以上に現金主義です。

    最近はモディ首相も勢いが衰えていますが、彼は近年稀に見るリーダーシップを発揮した政治家です。本当に尊敬しています。そして、モディ首相がまだ勢いのあった時にガツンとやったのが高額紙幣廃止でした。

    2016年11月に突然、タンス貯金として溜め込んだ高額紙幣(1000ルピーと500ルピー:それぞれ1700円、850円くらい)は一定期間内に金融機関に預け入れるか、新紙幣と交換しなくては紙くずになってしまうと発表しました。本当に一部の関係者しか知らない極秘裏に進めたプロジェクトで、ほとんどの人にとって寝耳に水の発表でした。政治腐敗があればこういうことできないですよね。モディ首相はこういうことができるのが本当にすごい。自分たちの資産であるタンス貯金が紙くずになってはたまらないので、インド人たちは銀行に殺到し、結果的に15兆2800億ルピー(約26兆3000億円)が銀行に集まりました。

    この時のことをよく覚えていますが、シンガポールやアメリカに住んでいる友人たちも急いでインドに戻って家のタンス貯金を銀行に預けていました。全く価値がゼロになるよりは税金を払ったほうがマシ。それでも預けきれずに紙くずになってしまった資産もあったそうです。

    インドの急速なキャッシュレス化

    インド人はとても合理的な人たちです。気持ちの切り替わりが早い。これまで現金しか使えなかった店舗で小さな店舗も含めてクレジットカードが使えるようになりました。そもそも、現金を使ってたのは脱税のためですからね。その理由がなくなれば、キャッシュレスの方が便利だから使うよ。

    インドのクレジットカードを海外で使う場合

    しかし、インドのクレジットカードのシステムはインド国外のシステムと若干違います。クレジットカードやデビッドカードは海外への不正送金を妨げるためにRBI(インド準備銀行:インドの中央銀行)によって規制されているからです。

    この規制により、インドの銀行から発行されたクレジットカードは基本的にはインド国内でしか使えません。海外で使う場合は、発行してもらう時に海外で使えるようにしてもらわなければいけません。

    どうしてそのような事がおきるのか?これは中国も同じなのですが、既存の国際ブランドへの警戒感もあるのだと思います。中国では独自のブランドであるUnionPay(2004年から普及開始)があるように、インドにはRuPay(2012年)があり、36%のマーケットシェアを獲得しています。中国のUnionPayが2002年に設立され、実際の普及開始まで時間がかかったように、インドのRuPayもその母体であるインド決済公社(National Payments Corporation of India)が設立された2008年から普及までは時間がかかっています。

    海外のクレジットカードをインドで使う場合

    インド国内で発行されたクレジットカードだけでなく、日本を含むインド国外で発行されたクレジットカードのインド国内での利用もRBIによって規制されています。このため、せっかく店舗でクレジットカードを受け付けていても……”International Cards are not accepted”とバッチリ拒否られます。

    2018年4月にRBIは全ての決済サービス企業に対してインド国内における決済データ全てをインドで保管するよう求めました。つまり、国際ブランドであるVisaやMastercardもこの新しい規制に従わないといけなくなります。Bloombergの記事”Be Fully Compliant With RBI Rules By September“によると2019年9月までにはこの規制に対応して、海外のクレジットカードもインド国内で使えるようになりそうです。でも、それまでどうするの?

    友人のファッションブランドであるTribeではRazorpayという決済サービス(日本だとGMOペイメントゲイトウェイ、海外だとStripeのようなもの)を使っています。Razorpayはインドの決済サービスなので、デフォルト設定ではインドの規制に準拠した設定になっています。つまり、インド国外で発行されたクレジットカードは”International Cards are not accepted”というメッセージとともに拒否されてしまいます。

    でも、そんなことで挫けるボクではありません。欲しいと思ったら欲しいのです。

    第二回:インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|モバイルペイメント編

    *1:マドラス模様とかインド人のセンスじゃないと生まれないですよね。マドラスは現在のチェンナイです。