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  • 書評|データサイエンス時代のソフィストたちに騙されない方法|”Calling Bullshit” by Carl Bergstrom and Jevin West

    書評|データサイエンス時代のソフィストたちに騙されない方法|”Calling Bullshit” by Carl Bergstrom and Jevin West

    英語でブルシット(Bullshit)は「バカらしい戯言」です。ウソ(Lie)とも言い切れない。嘘の場合もあれば、本当の場合もある。ブルシットは多くの場合はハッタリだったり、ごまかしたり、騙そうとする意図があります。ブルシットだとわかれば、トランプのゲーム『ダウト』みたいに「ブルシット!」とコールできます。

    本書”Calling Bullshit”は難しい知識がなくてもブルシットを見破り、「ブルシット!」とコールできるようになるための指南書です。

    Calling Bullshit: The Art of Skepticism in a Data-Driven World (English Edition)

    Calling Bullshit: The Art of Skepticism in a Data-Driven World (English Edition)

    • 作者:Bergstrom, Carl T.,West, Jevin D.
    • 発売日: 2020/08/04
    • メディア: Kindle版

    ブルシットは昔からあります。古代ギリシャでもソフィストと呼ばれる弁論家たちがいました。プラトンの『国家』でソクラテスが散々やり込めるのがソフィストたちです。政治家もブルシットが得意です。本書ではビル・クリントン元大統領のモニカ・ルインスキーとの浮気について否定する発言が(過去まで遡る現在完了形ではなく)現在形であったことにツッコミを入れていました。

    現代のソフィストたちはデータを使い、ソーシャルメディアでブルシットをばら撒きます。ブルシットはより早く、より広く伝わるようになりました。現代の代表的なブルシットがフェイクニュースです。

    著者のカール・バーグストームとジェヴィン・ウェストは現代のブルシットに対抗するには三つの方法があると言います。1)ソーシャルメディアが自主的にフェイクニュースの広げない努力をする、2)政府が法律で規制する、3)教育でブルシットを誰でも見分けられるようにする。本書がとっているアプローチは三番目のアプローチである教育です。フェイスブックやツイッターが真面目にフェイクニュース撲滅に取り組むとは思えない。だって、彼らにとっても商売になりますからね。法律でフェイクニュースを規制するのも良し悪しです。フェイクニュースだとどういう基準で誰が決める?

    本書でオススメするブルシットに対する教育とは、ズバリ、論理的思考です。マッキンゼーとかボスコンとかのアレです。イヤイヤイヤイヤ、それできたらみんなビジネスコンサルできるから。しょっぱなから怒涛のツッコミを入れたくなります。無理無理無理無理。そう思いながらも読み進めることにします。

    まず、例に出しているのがAIネタにありがちなブルシット。いろんな人の顔を学習させて犯罪者をAIで見分ける研究。AIは学習データが大事です。犯罪者の顔は運転免許証など証明写真。普通の人たちはネットで見つけたスナップ写真。当然ながら笑顔。そんなデータを学習したら笑顔じゃない人は犯罪者ってことになってしまいますよね。AIで何かを判断するのであれば、その学習過程までちゃんと説明していないような記事は「ブルシット!」と叫んでいいと二人の著者は言います。

    次に統計にありがちなブルシット。例えば、初キッスを済ませた人は、自分に自信を持っている説。初キッスをしたから、自信がつくのか?自信があるから、初キッスができるのか。その因果関係ってわからないですよね。ちゃんと統計をやった人ならわかってる。相関関係は見つけることができるけど、因果関係は簡単には見つからない。相関関係を見つけてから、そこから仮説を導き出し、因果関係を特定する実験を何回も行わないといけない。まあ、そんなことは統計をやったことのある人間ならみんな知ってる。

    ボク自身も行動データの分析サービスをやってたことがあるので、よーくわかる。まずは二つのデータの相関係数を計算する。これは最近ならExcelでもできる。いろんなデータの組み合わせをあーでもない、こーでもないとひたすら計算する。そこでなんとなく相関関係がありそうだなーと思えるセットがいくつか見つかる。そこからストーリーを考えないといけないんですよ。相関係数なんて1から-1の間の単なる数字ですから。ストーリーを考えて上で、実験が可能な仮説を作らないといけない。すっごい大変なんですよ、この作業。

    流石に著者の二人はそこまでできるようになれとは言いません。でも、記事の内容が因果関係がありそうな言い方をしていたら「ブルシット!」と叫んでいいと言います。相関関係に関する記事はつまらない。ファーストキスと自信には相関関係があるなんてつまらない。自信がつけばキスができる。だから自信をつけよう!の方が面白い記事になりますよね、確かに。でも、そんな面白そうな記事のほとんどは「ブルシット」なのだそうです。これ以外にもビッグデータや、データの可視化など様々な数字に関わる「ブルシット」を紹介していきます。

    じゃあ、どうしたらいいのさ?著者の二人は六つのやり方を提示します。

    1. 情報のソースを疑え
    2. 単純な比較を疑え
    3. あまりにもできすぎた話は疑え
    4. 大きすぎる数字を疑え(フェルミ推定で調べられるよ!)
    5. 自分の確証バイアスを疑え(自分が正しいと思う情報が正しいと思う)
    6. 仮説は常に複数あると認識せよ

    ボクも、マーケティングの仕事をやっている人や、企業の戦略を考える人であればフェルミ推定くらい自分で使えるようになった方がいいと思うし、ボクも会社でやり方を教えたりしています。でも、普通の人には無理ですよ。かなりのトレーニングが必要になります。確証バイアスも自分自身がバイアスがあることを意識しないといけません。これってすっごく難しいんですよ。保守な人は保守なことしか信じないし、リベラルの人はリベラルなことしか信じない。これがエコーチェンバーで拡張されるんだから。フィルターバブルを自ら破れる人って数えるほどしかいない。

    ここまでは「ブルシット」の見つけ方です。

    著者の二人は、さらに「ブルシット」を「コール」しようと勧めます。だから、この本のタイトル”Calling Bullshit”なんですね。ネットで「ブルシット」な情報を見つけるのは個人的な活動で、個人的なメリットです。しかし、ネットで「ブルシット」な情報を見つけた上で、「ブルシット」をコールするのは公共の活動で、公共のメリットにつながると主張します。でもさあ、実際にブルシットな情報でフェイスブックもツイッターも溢れていますよ。これは右も左も同じです。それを一つ一つ指摘するのも疲れますが、その指摘に対する反発に対応するのは更に疲れます。

    ボクはこの本に書いてあることの一つ一つはとても納得できるし、論理的思考はとても大事だと思います。数字にも強くなった方がいい。一方で、そのスキルを手に入れるのはとても大変な努力が必要だと知っています。ボクも教える立場にありますが、自分自身が間違う可能性はいまだにあると思います。確かにフェイクニュースやフィルターバブルは問題だと思います。それはシステムによって生み出されたものなので、個人で戦っていくのは(無理とまでは言いませんが)かなり難しいのではないでしょうか。

    ボクは通信品位法第230条が改定され、プラットフォームがコンテンツに対して責任を負うようになれば状況はだいぶ良くなるのではないかと(楽観的かもしれませんが)期待はしています。システムのエラーはシステムで直した方がいい。システムのエラーを人で直すのは、少なくともフェイスブックやツイッターのスケールではなかなか困難だと思います。著者も指摘する通り、「ブルシット」は基本的な人権の一つである表現の自由に関わる難しい課題です。だって、「ブルシット」だって表現のひとつですから。問題は「ブルシット」ではないとボクは思います。「ブルシット」は昔からあった。「ブルシット」を広げるエコーチェンバーの問題です。だから、フェイスブックやツイッターのようなエコーチェンバーのエラーを直した方がいい。ボクはそう思います。

  • インターネットのビジネス再入門|前編:インターネットの広告をちゃんと理解する

    インターネットのビジネス再入門|前編:インターネットの広告をちゃんと理解する

    インターネットが道路だとしたら、広告は燃料です。GoogleもFacebookもYouTubeも広告がなければ存在できません。インターネットはマグロのようなもので、動いていないと死んでしまいます。それを動かしているのが広告です。この意味においてAppleやAmazonのようなモノやサービスも広告に依存しています。インターネットという道路に交通量(トラフィック)がなければAppleもAmazonも何も売れないからです。

    インターネットのトラフィックは大きく分ければ以下の四つに分けることができます。

    1. 検索
    2. ソーシャル
    3. 広告
    4. 直接リンク

    1) 検索と2) ソーシャルは広告収入があることが前提でビジネスで提供されています。つまり、1から3まで広告なんです。インターネットという「道路」をコンテンツやサービスという「クルマ」が通るには広告という「燃料」が直接的にも間接的にも必要です。これはモバイルでもほぼ変わりません。App Storeが加わったくらいなものです。

    インターネットは常に脚光を浴びてイノベーションの象徴とされてきましたが、広告は日陰者の邪魔者で悪いニュースがほとんどでした。しかしながら、広告はインターネットの根幹の一部ですので、改めてきちんと理解しておきたいところです。

    電通、デジタル広告で”不適切取引”の裏事情 | 東洋経済オンライン

    オンライン広告の歴史

    最初のオンライン広告:バナー広告

    最初のオンライン広告はアメリカの雑誌Wiredのオンライン版であるHotWiredのローンチのために1994年10月27日に掲載されたバナー広告でした。最初に人気の出たブラウザーのMosaicがリリースされたのが1993年の1月23日ですから、ブラウザー登場から2年弱で最初のオンライン広告が生まれたことになります。

    最初のオンライン広告(クレジット:Wired)

    当時にはまだクリックごとにチャージされるPay Per Clickはなく、バナー広告の設置期間によって広告の価格が決まっていました。当時のオンライン広告は雑誌の延長線にあって、限られた紙面をどれくらい占有するかが価値の測り方だったんですね。

    検索の誕生:GoogleのAdWords

    一番はじめに検索連動型広告を発売したのはOpen Textでした。1996年のことです。しかし、一般的に検索連動型広告を世に広めたのはOvertureでしょう。GoTo.com(Overtureの最初の名前。のちにYahoo!に買収される)が検索連動型広告を発売したのが1998年です。Overtureの検索連動型広告はMSNやYahoo!といった当時の人気ポータルサイトに採用されました。そして、スーザン・ウォシッキーのガレージでGoogleが産声をあげたのが1998年9月4日です。最初のオンライン広告から4年が経過しています。

    インターネットのビジネスにとって重要なのはどれだけのコンテンツやサービスがその道を通るか。つまり交通量(トラフィック)が重要な要素となります。Googleの検索の仕組みであるPageRankは優れいていたので、結果的にオンライン広告の仕組みであるAdWordsはより多くの燃料を生み出すことになりました。

    Googleがどうやって会社を運営する資金を稼いでいるかといえば、この広告収入です。広告収入がなければGoogleという企業自体存在することができません。2017年度のGoogleの売り上げ(2017 annual report)は1110億ドル(約12兆4700億円)ですが、広告売り上げは約86%の953億ドル(約10兆円)です。5年前くらいは95%以上が広告収入だったので、これでも比率としてはだいぶ下がってきましたが、まだまだ大きな割合を占めています。

    ソーシャルの誕生:Facebook Flyer

    ソーシャルといえばFacebookですね。Facebookの売り上げの98%は広告です(2017 annual report)。Facebookは2004年の創業時から広告をビジネスモデルとしてきました。ただ、初期のFacebookは友達のニュースフィードを見ることはできませんので、見た目は随分と違ったものでした。

    Facebookの初期の広告(クレジット:collegewebeditor.com)

    その頃のFacebookの広告がFacebook Flyerでした。その間にニュースフィード(2006年)を発表したり、ソーシャルグラフをベースにしてFarmVilleのようなサードパーティーのアプリケーションにプラットフォームを解放(2007年)したり、Facebook Connect(2008年)で外のサービスと繋がるようにしたり、「いいね」(2008年)を発表してソーシャルプラットフォームとして磨きをかけてきました。2006年からFacebookがMySpaceを追い抜いたのは2009年の三年間がFacebookが一番輝いていた頃ですね。過去形にして申し訳ないですが。

    ターゲット広告:Cookieとソーシャルグラフ

    勢いは徐々に弱まりつつあるものの、ソーシャルは検索とともにトラフィックの二大巨頭です。Shareholicの調査データによると2016年まではソーシャルのトラフィックが検索を上回っていました。

    検索とソーシャルのトラフィックトレンド(クレジット:Shareholic)

    広告のプラットフォームとして考えた時に、交通量(トラフィック)以外にもう一つ大切なことがあります。それがターゲット情報です。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」ではなく、あるターゲットとなるマトを絞って広告を表示させたいですよね。インターネットのビジネスを考える上でトラフィックと並んで大切な概念がコンバージョンです。

    例えば、100回広告を出して1個売れたとします。この場合、100のトラフィックで1%のコンバージョンということになります。これが20回広告を出して、同じく1個売れたとします。この場合は20のトラフィックで5%のコンバージョンということになります。結果が同じなら5%のコンバージョンの方が効率的です。

    このコンバージョンを高める方法のひとつがターゲット広告です。

    ソーシャルメディアの場合

    ソーシャルメディアの場合は、かなり個人情報を提供していますよね。年齢、住んでいる地域、性別、好きな映画や音楽、そして交友範囲。これらが広告の出し分けに利用されています。

    この仕組みは基本的には企業のオウンドメディアでも同じです。サインアップしてプロフィールを登録すれば、それを広告やキャンペーンに利用できます。

    Facebookの場合はFacebookピクセルによってリターゲティングやダイナミック広告も可能にしています。

    バナー広告や検索連動型広告の場合

    ソーシャルメディアやオウンドメディアの場合はプロフィールを提供するから広告もターゲットできる理由がわかりますよね。それではバナー広告や検索連動型広告の場合はどうでしょうか。

    Cookieとは

    オンライン広告のかなり初期からCookieは利用されてきました。Cookieは簡単に言えば識別情報です。例えばAさんがサイトXにアクセスします。サイトXはCookieというテキスト情報をAさんのブラウザに渡します。この時に初めての訪問なので「ようこそいらっしゃいました!」と表示します。

    AさんがサイトXを2回目に訪問した時、サイトXはCookie情報を読むことでAさんが2回目の訪問だとわかります。2回目なので「お帰りなさい!」と違うメッセージを表示することができます。これは非常に単純な例ですが、もっと高度なことができます。

    例えば、なんでGoogleは訪問者の年代や性別、趣味嗜好を推測することができるのでしょうか?GoogleもCookieを使っていて、その情報を分析しているからです。AIはとっくの昔にあたりまえのように広告では使われています。広告はインターネットの燃料なんですから。

    Cookieデータが人の形になる:データをまとめるDMP

    広告をターゲットのユーザーに出し分けるために、ソーシャルのプロファイルやピクセル情報、企業のオウンドメディアの情報、それに加えてCookie情報があるのがわかりました。でも、それってバラバラですよね。じゃあ、まとめてしまいましょう!というのがデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)です。ツールとしては日本だとTreasure DataとかAudienceOneが有名でしょうか。

    ログイン情報がない場合、そのサイトに訪れるユーザーのプロフィールは推論するしかありません。その推論の方法がLook-alikeという分析方法で、データはCookieから得ることができます。例えば、同じバナー広告でもユーザーの特性によって背景や天気を変えたりできます。京都のユーザーが雨の日にサイトに訪れたら京都の背景に雨が降ってるのに、東京は晴れていたら晴れた日のスカイツリーを背景にするとか。

    ひとつのCookieデータだけだとぼんやりとして見えなかったユーザー像がいろんなデータを組み合わせることによってよりくっきりと見えてきます。世の中にはLotameSalesfoce DMP(旧Krux)、Nielsen DMP(旧Exelate)のような多くのデータ取引所があります。

    (次回はGDPRやブラウザーのCookie締め出しといった広告モデルの変革の必要性について書く予定です)

  • 書評|シリコンバレーのユートピアドリームから目を覚ませ|”People vs Tech” by Jamie Bartlett【2018年夏休み読書週間】

    書評|シリコンバレーのユートピアドリームから目を覚ませ|”People vs Tech” by Jamie Bartlett【2018年夏休み読書週間】

    これまで新しいテクノロジーで古い仕組みを壊すことはいいことだとされてきました。既得権益にあぐらをかいている古い業界を新しくする。そして、多くの場合、新しいテクノロジーを使うのは小さなスタートアップで、古い仕組みと既得権益にしがみつくのは大企業。ダビデとゴリアテ。でも、本当にそうでしょうか?

    確かに、この構図は存在していました。GoogleもFacebookもAmazonも最初はスタートアップだったのですから。しかし、UberやAirbnbのようなユニコーンですら今は日本の大企業より大きな資産価値評価です。このようなプラットフォーマーは大きすぎてすでに小さな英雄ダビデとは言えない。彼ら自身が大きなゴリアテになってきている

    今回紹介するジェイミー・バーレットの書籍”People v. Tech”の主題は技術による民主主義への攻撃です。

    The People Vs Tech: How the internet is killing democracy (and how we save it)

    The People Vs Tech: How the internet is killing democracy (and how we save it)

    操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

    操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

     

     

    このような論調や警笛は最近のメディアでは増えてきています。Facebookとケンブリッジアナリティカの事件でマーク・ザッカーバーグは上院の公聴会の出席を余儀なくされました『ザッカーバーグ氏が議会で証言、情報流出を謝罪 ロシアと「軍拡競争」』。また、日本ではあまり報道されていませんがUberもドライバーが最低賃金ギリギリしか収入を得られないことで批判にさらされています “Uber Better Not Be the Future of Work“。このようなプラットフォーマー寡占について書かれたスコット・ギャロウェイのベストセラー”Four“もその代表ですね。

    前提1:反面教師としての「悪の帝国」マイクロソフト

    Google、Amazon、FacebookやApple(GAFA)以前のプラットフォーマーはMicrosoftでした。そして、Microsoftは「悪の帝国 (Evel Empire)」と言われてきました。そして最終的には独禁法で訴えられるに至ります。アメリカ合衆国対Microsoft(United States v. Microsoft Corp.)の裁判です。

    Google、Amazon、FacebookやAppleは同じ道をたどりたくありません。だから、「悪の帝国」と見られないような発言を心がけます。以前のGoogleのモットーだった「悪にならない (Don’t be evil)」もその意識の表れとも言えます。「好かれる企業イメージ」はGAFAにとって非常に重要です。Uberは創業者のトラビス・カラニックを追放しましたが、そうしないとUberのイメージが悪くなる一方だったからです。 彼の行動は目に余るものがありました。Uberの運転手に暴言、元社員にセクハラ、ユーザーの利用状況を閲覧できるデータベースの不適切な利用などなど。

    「悪の帝国」時代のマイクロソフトより良い印象を与えたとしても、寡占状態のプラットフォーマーの持つ危険性は変わらないし、当時のマイクロソフト以上の危険性があります。

    前提2:サイバースペース独立宣言とテクノロジーユートピア

    サイバースペース独立宣言」はグレイトフル・デッドの作詞家であり電子フロンティア財団の共同設立者のジョン・ペリー・バーロウがインターネットとインターネット上での活動は統治できないし、されるべきではないとダボス会議の期間中にメールで宣言したものです。

    では、そのユートピア思想は民主主義よりも尊いものなのか?というのが今回紹介する”People vs Tech”が投げかけている疑問です。

    民主主義の敵としてのテクノロジー

    今回紹介するジェイミー・バーレットの書籍”People v. Tech”が面白いのは個別企業の独禁ではなく、民主主義の敵としてテクノロジーを位置付けているところです。つまり、アメリカ合衆国対グーグル(United States v. Google)のような個別企業との独禁法での争いではなく、民主主義対テクノロジー(People v. Tech)です。

    ジェイミー・バーレットによれば民主主義には6つの柱があります。

    1. 活発な市民(Active Citizens)
    2. 共有された文化(Shared Culture)
    3. 自由選挙(Free Election)
    4. ステイクホルダーの品質(Stakeholder Quality)
    5. 自由競争(Competitive Economy)
    6. 権威に対する信頼(Trust in Authority)

    これら全ての民主主義の柱に対して現在のテクノロジーは攻撃を与えているというのがこの本の趣旨です。これら全てを紹介することはできませんが、この中から代表的なものをピックアップして紹介します。ちなみに最後の「権威に対する信頼」はサイファーパンクについてでここだけプラットフォーマーじゃないんですが、これはこれで面白いなーと思いました。これはテクノロジーというより「完全自由主義」対「民主主義」ですね。本来は対立する考えではないのですが、この本ではそのように捉えられています。

    自由選挙の危機

    ドナルド・トランプが勝利した2016年アメリカ合衆国大統領選は選挙を変えたと言われています。デジタルキャンペーンが選挙の結果に大きな影響を与えることを証明しました。そしてロシアなどの外国がデジタルツールを使ってアメリカの大統領選に影響力を与えることができると証明しました。

    トランプは大統領選で徹底的にデジタルキャンペーンを行いました。それがProject Alamoです。Project Alamoでは「ダークアド」と言われるデータを徹底的に活用した手法が展開されました。個人データの不正利用で有名となったケンブリッジアナリティカも深く関わっています。テレビ広告でもサブリミナル効果の使用など問題になりますが、Project Alamoでは選挙民のWebのデータを分析して徹底的なマイクロターゲティングを行い、最適化されたメッセージを配信し続けました。トランプ本人ではなく、Project Alamoのスタッフたちがメッセージを作成、A/Bテストで最もエンゲージメントが高いメッセージに仕上げていきます。

    もし、政治家が有権者の行動データを使って投票行動まである程度操作できるのであれば、それは自由選挙に対する大いなる攻撃ですね。

    文化とアイデアの独占

    プラットフォームは寡占状態を生み出します。検索ならGoogleだし、ソーシャルネットワークならFacebook、eコマースならAmazon。競争がないわけではない(=独占状態ではない)のですが、ネットワーク効果で彼らの存在は突出(=寡占状態)します。新しい競合も生まれますが、プラットフォーマーは競合の芽が小さいうちに買収します。

    以前であれば独占や寡占の弊害は価格の操作でした。競争相手がいないから価格を高く維持できる。しかし、現代の独占や寡占の問題はパワーとデータの集中です。これにより、価格の操作よりさらに重大な「文化の操作」ができます。

    アメリカではオンライン海賊行為防止法案に反対するため、Googleはキャンペーンを仕掛けます。この法案は否決されてしまいます。問題はGoogleがその法案に反対していることではありません。いい法案なのか、悪い法案なのかでもありません。Googleがトップページでキャンペーンを行うことで、多くの人に影響を与えることができたということです。そしてそのような影響力を行使できるのはGoogleのような限られた企業だということです。寡占状態なのですから。

    他にもUberはChange.orgを使ってロンドンの規制と戦うキャンペーンを行ったり、Airbnbはホストのコミュニティー(ホームシェアリングクラブ)を作り、そのコミュニティーから地方政治にアピールするキャンペーンを行ったりしています。ロビー活動は企業に認められた権利ですし、その主義主張も間違っていないのかもしれません。問題はこのようなキャンペーンを行って影響力を行使できるのが限られたプラットフォーマーだけだということです。ソフトバンクの孫さんはたまにポジショントークをやりますが、あれを組織的にやってるようなものです。

    日本人が考えなければいけない大切なこと

    日本の場合は「ダビデとゴリアテ」というよりは「ペリーの黒船来航」に例えたほうがいいのかもしれません。変われない日本の業界を変えてくれる海外の先進企業。ただ、中国をみてもわかるように外に変えてもらうより、中から変わったほうがいいんですけどね。

    海外の先進企業を盲信するだけでなく、プラットフォーマーがどのような批判にさらされているのか、きちんと理解することも大切です。日本のゴリアテ(伝統的な業界)が海外のゴリアテ(プラットフォーマー)に変わっただけになったら意味ないですよね。利用できるところは利用する。でも、自分たち自身がいいように利用されないように細心の注意を払う。それくらいのしたたかさが必要でしょう。EUなんていい例です。

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  • 書評|コミュニティーとソーシャルと催涙ガス?|Twitter and Tear Gas by Zeynep Tufekci

    書評|コミュニティーとソーシャルと催涙ガス?|Twitter and Tear Gas by Zeynep Tufekci

     

     インターネットとソーシャルメディアでコミュニティー活動がとてもやりやすくなりました。ボク自身も『デザイン+ジャパン』というデザインで日本の社会的問題を解決するコミュニティーをはじめましたが、インターネットがなければまともに活動できません。

     

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

     

     

    コミュニティーとインターネットとソーシャル

    コミュニティー活動自体は昔から存在していましたが、インターネットとソーシャルメディアがコミュニティーを加速度的に広げて行きました。昔だとはてなのヘビーユーザーの「はてな村」なんてありましたが(いまでもある?)、あれも一種のコミュニティーです。コミュニティーの影響力は大きく、企業でも活用しています。AWSのユーザーグループコミュニティーのJAWS-USなんて代表的な成功事例ですよね。

    目的や嗜好を共有する人たちの集まりという意味でコミュニティー活動は当然ながらインターネット以前から存在していました。例えば、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアなど公民権運動の活動家たちも人種差別をなくすという目的を共有した人たちの集まりで、モンゴメリー・バス・ボイコットやワシントンD.C.への20万人デモ行進など組織的にやらないと当然ながら実現できない。それを実現したのが当時のコミュニティーでした。

    ソーシャルと催涙ガス

    今回の本は”Twitter and Tear Gas“(Twitterと催涙ガス)という非常に物騒なタイトルで、インターネットとソーシャルがどのようにコミュニティー活動に影響を与えているか、特に政治的活動家と言われている人たちのコミュニティーに影響を与えているかを考察した本です。

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

    Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest

     

    インターネットとソーシャルによって公民権運動のような活動が簡単にできるようになりました。それが表面化したのが「アラブの春」と呼ばれる一連の運動でした。海外生活が長いとはいえ、ボクも日本人なので馴染みの薄いアラブの世界はよくわからなかったです。オランダにもたくさんアラブの難民がいて、ヨーロッパ全体で難民問題は課題になっていました。

    この本を読んでわかったのですが、アラブの春って社会的にはすごいインパクトだったんですね。エジプトでの運動なんて、タハリール広場に集まった200万人の必要物資をたった四人の海外のエジプト人がロジスティックをオンラインで全て調整したんですから驚きです。オンラインと言ったって、専用ツールとかじゃなく、TwitterやGoogleスプレッドシートのような普段から使っているツールです。そして現場では座り込みを阻止するために催涙ガスで制圧しようとして軍と市民が衝突となりました。本のタイトルはここから来てるわけです。

    デジタル時代のコミュニティー維持の難しさ

    デジタル時代のコミュニティー活動はすぐに大きくなるけど継続は難しいという特徴があるようです。例えば一連のデジタルコミュニティー革命と言える事象はこれといった成果を達成していないことでもわかります。エジプトではムバラクは退陣しても軍事政権はそのままだし、アメリカでも特に貧富の差が解消されたわけではないし。

    著者は目的意識や共通認識の醸成は単純に時間がかかるというのが理由の一つとしています。「で、どうしたいの?」という合意がコミュニティー全体では生まれにくい。それはリーダーがいないというデジタル時代のコミュニティーの特徴でもある。例えば『デザイン+ジャパン』で今一番時間を使っているのは「目的と手段」の定義です。社会的課題ってなに?デザインってなに?誰が主体的なの?自分たちの役割は?こういうことを行動と並行してコミュニティー全体で考えていかないと、ツールがあっても中身がなくなってしまう。そして、その中身がコミュニティーの外からも共感が得られないようだと続かない。著者はこの辺りをシグナリング理論で説明しています。

    デジタルコミュニティーとティール組織

    この目的や行動規範の醸成という課題はティール組織やホラクラシーにも通じると思うんですよ。リーダーがいないフラットな組織という意味ではコミュニティーとティールは似ている。『デザイン+ジャパン』の組織デザインを考えた時も参考にしたのはティール組織でした。ボク自身(や数人のメンバー)がリーダーとしてなんでも決めるモデルにはしたくなかった。そして、実際にやってみるとそれはかなり難しい。「で、どうしたいの?」という共通認識がやっぱり大事です。それでも、企業の場合は「お金を儲ける」とか、「サービスを広げる」とか目先のゴールの共通認識は生まれやすいでしょう。でも、もっと大きな「で、どうしたいの?」という企業がよく掲げるミッションステートメントやビジョン、行動規範みたいなものです。コミュニティーが人の集まりであり、人それぞれ違った考えを持っている以上、こういった目的意識や行動規範の方向性を揃えるには時間がかかるのだろうと思います。

    この本ではソーシャルメディアが持ついい側面と悪い側面を活動家の立場から分析もしています。フェイクニュースやネット中立性など重要なトピックについて考えるときも、普段あまり考えたことのないアングル(政治活動家の立場)から紹介しているので理解が深まりました。

    興味のある方はTEDTalkもありますので、ご覧ください。

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  • クラウドの先にあるプラットフォームとしてのブロックチェーンの全体像

    クラウドの先にあるプラットフォームとしてのブロックチェーンの全体像

    原文:”Blockchain Infrastructure Landscape: A First Principles Framing” by Trent McConaghy, July 15, 2017

    分散アプリにおけるストレージ、コンピューティングおよびコミュニケーションを明らかにする

     Ethereum、IPFS/Filecoin、BigchainDBはどのように補完しあっているのでしょうか?Golem、Polkadot、Interledgerは?このような質問をよく受けます。だから、私はこれらの質問に答えてみることにしました。

    簡単な答え:魔法のようにすべてを行う「ブロックチェーン」という魔法のシステムはありません。分散化アプリケーションを効率的に開発するために組み合わせて利用できる優れたビルディングブロックならあります。Ethereumはその役割があり、BigchainDBも役割があり、それ以外にも多くの技術がビルディングブロックを形作っています。それを今から見ていきましょう。

    背景

     コンピューター処理の要素は、ストレージ、コンピューティングとコミュニケーションの三つです。メインフレーム、PC、モバイル、クラウドは共通してこれらの要素を独自の方法で実現しています。特殊なビルディングブロックがこれらの要素のトレードオフを補完する形で生まれることもあります。

     たとえば、ストレージ要素にはファイルシステムとデータベースがあります。ファイルシステムはディレクトリーとファイルの階層にmp3のようなブロブを格納するためのものです。データベースは構造化メタデータを格納するためのものでSQL*1のようなクエリインタフェースを備えています。集中型のクラウドに置き換えて考えると、ブロブストレージにAmazon S3、データベースはMongoDB Atlas、プロセッシングはAmazon EC2に相当します。

     この記事ではコンピューター処理の各要素のブロックとシステムの例を中心にブロックチェーンの視点で説明します。

    ブロックチェーンのビルディングブロック

    以下がそれぞれの要素と関連する分散化のビルディングブロックです:

    • ストレージ:トークンストレージ、データベース、ファイルシステム/ブロブ
    • ブロセッシング:ステートフル/ステートレスなビジネスロジック、ハイパフォーマンスコンピューティング
    • コミュニケーション:データ、バリュー、ステートのネットワークを繋げる

    ブロックチェーンのインフラにおけるランドスケープ

     ブロックチェーン技術は以下のようにコンピューター処理の要素にマッピングすることができます。

    コンピューティングの三要素

    ストレージ

     基本的なコンピューター処理におけるストレージ要素は次のビルディングブロックがあります。

    トークンストレージ

     トークンは価値(資産や証券など)を格納します。例えばBitcoins、飛行機のマイレージ、デジタルアートの著作権などです。トークンストレージシステムは二重支出を防ぎながらバリアントとともにトークンを発行/トランスファーします。

     BitcoinZcashはトークンにフォーカスした代表的な「ピュアプレイ」システムです。 Ethereumは世界のコンピュータとなるミッションの実現のためトークンをサービスで利用しています。これらはすべてネットワークインフラストラクチャを運用するための内部インセンティブとして使われるトークンの例です。

     その他のトークンはネットワーク自体に力を供給するための内部性を持ちません。より低いレベルのインフラストラクチャが実際にトークンを格納する上位ネットワークのインセンティブに使用します。Ethereumメインネットの上のGolem(GNT)のようなERC20トークンは一つの例です。IPDBネットワーク上で動作するEnvokeのIPライセンストークンももう一つの例です。

     最後にほとんどのブロックチェーンシステムにトークンストレージの仕組みがあることを示すために”.*“をリストしました。

    データベース:データベースは構造化されたメタデータの格納に特化しています。例えばテーブル(リレーショナルデータベース)、ドキュメントストア(JSONなど)、KVS、時系列、グラフなどです。クエリ(SQLなど)を介してデータを迅速に取得することができます。

     MongoDBCassandraのような伝統的な分散型(ただし集中化された)データベースは数百テラバイト、さらにはペタバイトのデータを毎秒100万回書き込むことができます(Netflixの事例)。

     SQLのようなクエリ言語は実装と仕様を分離しているため特定のアプリケーションに縛られません。SQLは何十年にもわたる標準です。同じデータベースシステムをさまざまな業界で使用することができるのはこのためです。

     別の言い方をすれば、アプリケーション固有のコードを使わずBitcoinを超えてブロックチェーンのアプリケーションを一般的なものにするためにチューリング完全性を徹底する必要はありません。データベースが必要なだけです。これには単純さと規模のメリットがあります。ただし、いくつかの場面でチューリング完全性を持つ大きな意味がまだあります。これについては「分散処理」のセクションでさらに解説します。

     BigchainDBは分散データベースソフトウェアです。具体的にはドキュメントストアです。MongoDB(またはRethinkDB)上に構築されているため、Mongoのクエリとスケールを継承しています。さらに分散制御、耐タンパー性、トークンサポートなどのブロックチェーン特性も備えています。IPDBはBigchainDBのガバナンス機能を持った公開ネットインスタンスです。

     また、IOTAはブロックチェーン分野における時系列データベースと考えることもできます。

    ファイルシステム/データブロブストレージ

     これらは大きなファイル(ムービー、mp3、大規模なデータセット)を格納するためのシステムで、ディレクトリとファイルの階層構造をとります。

     IPFSTahoe-LAFSは分散型のファイルシステムで、分散型/集中型のブロブストレージをラッピングします。FileCoinStorjSiaTieronは分散型ブロブストレージです。古き良きBitTorrentもそうですトークンではなくtit-for-tatスキームを使用します。 Ethereum SwarmDatSwarm-JSは基本的に両方を行います。

    データマーケットプレイス

     これらのシステムはデータ所有者(企業など)とデータ消費者(AIスタートアップなど)を仲介します。本来ならデータベースやファイルシステムよりも高いレイヤーのものですが、データを必要とする無数のアプリケーション(AIなど)がそのようなサービスに依存するため、コアインフラストラクチャにもなります。Oceanはデータマーケットプレイスを構築することができるプロトコルとネットワークの例です。アプリケーション固有のマーケットプレイスもあります:暗号市場のEnigma Catalyst、個人データ用のDatum、 IoTストリーム用のDataBroker DAO [2]などです。

    プロセッシング

     次に基本的なコンピューター処理のプロセッシング要素について説明しましょう。

    「スマートコントラクト」は分散型の処理を行うシステムにとって人気のある呼び方です*2。 実際にはステートレス(コンビネーショナル)ビジネスロジックとステートフル(シーケンシャル)ビジネスロジックの2つのサブセットがあります。ステートレスとステートフルは複雑さや検証可能性などにおいて根本的に違うものです。さらにHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)という3つ目の分散処理ブロックがあります。

    ステートレス(コンビネーショナル)ビジネスロジック

     内部的にステートを保持しない任意のロジックです。電気工学用語では組合せ論理回路と位置づけられます。ロジックは真理値表、回路図、または条件文を保持するコード(if / then、and、orを組み合わせたもの)として表現されます。ステートを持たないため、大きなステートレスなスマートコントラクトを検証するのは容易です。このため大規模な検証/安全なシステムを構築することができます。N個の入力と1個の出力を検証するためにO(2 ^ N)回の計算が必要です。

     インターレジャープロトコル(ILP)には組み合わせ回路を明確に指定する暗号条件(クリプトコンディション:CC)プロトコルを含みます。CCはIETFを通じてインターネット標準となっているため、知っておいたほうがいい技術です。またILPは集中管理と分散管理の両方のペイメントネットワーク(例:75以上の銀行がRippleを介した取引)で普及しています。CCはJavaScriptPythonJavaなどのスタンドアロン実装があります。 BigchainDBやRippleなどのシステムはCCを使用し、組み合わせビジネスロジック/スマートコントラクトをサポートします。

     BitsharesとEosはステートレスなビジネスロジックもサポートしています。

     ステートフルロジックはステートレスロジックのスーパーセットであるため、ステートフルロジックをサポートするシステムは(複雑さと検証の難しさを犠牲にして)ステートレスロジックもサポートします。

     BigchainDB、BitsharesとEosはイベントもサポートしています()。このためステートフルなビジネスロジックに近いレベルの永続性を与えます。

    ステートフル(シーケンシャル)ビジネスロジック

     内部的にステートを保持する任意のロジックです。つまりメモリーを保持します。または少なくとも1つのフィードバックループ(およびクロック)を備えた組み合わせ論理回路です。たとえばマイクロプロセッサには内部レジスタがあり、それに送られるマシンコード命令に従って更新されます。より一般的にはステートフルなビジネスロジックは、一連の入力を受け取り、一連の出力を返すチューリングマシンです。このようなシステムはチューリング完全システムと呼ばれています*3

     Ethereumはステートフルなビジネスロジック/スマートコントラクトを直接チェーン上で実行する最も有名なブロックチェーンシステムです。 LiskRChainDFINITYAeternityTezosFabricSawtoothなど多くががこれを実装しています。実行コードが「ちょうどそこに、どこかに」というのは多くのユースケースを適用することのできる強力なコンセプトです。これこそがEthereumが立ち上がった理由です。そして、そのエコシステムが成長して、それ自身がプラットフォームである理由です。このビルディングブロックに多くの強豪が参入してくる理由でもあります。

     シーケンシャルロジックは組み合わせロジックのスーパーセットであるため、これらのシステムは組み合わせロジックもサポートします。

     The DAOのハッキング事件でも示されたとおり、コードの小さな間違いは重大な結果を招く可能性があります。正式な検証はチップ業界を助けたように役立ちます。 Ethereum Foundationはこれに取り組んでいます。しかしスケールには限界があります。内部変数がすべてブール値であると仮定して、組み合わせ回路の場合可能なマッピングの数は2 ^(入力数)です。シーケンシャルの場合、内部状態の数は2 ^(内部ステート変数の数)です。たとえば、3入力の組み合わせ回路を使用している場合、²³ =8のsステートの可能性を検証する必要があります。これが32ビットレジスタを持つ順序回路であれば、²²= 42億のステートを検証する必要があることになります。このように順序回路の複雑さが制限されます(仮に信頼したい場合)。 Rchainがrho calculusで行ったように、ステートフルなスマートコントラクトを信頼するもう1つのアプローチは「Correct-by-construction」です。

     分散処理が必要な場合はより簡単なアプローチがあります。プロセッシングをJavaScriptやSwiftでブラウザやモバイルデバイスなどクライアントで行うのです。この方法ではクライアントでの処理を信頼する必要がありますが、手元のデバイスにおいてそれは許容されることが多いです。これを「ファットプロトコル」の代替としての「ファットクライアント」だと考えています。 このアーキテクチャはメインストリームのWeb開発者にとっては簡単です。多くのWebアプリケーションに必要なのはアプリケーションステートです。これを構築するにはJavaScriptとIPDB(js-bigchaindb-driverを使用)を使うだけです。また、アプリにブロブストレージとペイメントが必要な場合はJSクライアントバージョンのIPFS(ipfs.js)とEthereum(web3.js)を追加します。以下の図がその例となります。

    ファットクライアントスタック

    ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)

     レンダリング、機械学習、回路シミュレーション、天気予報、タンパク質フォールディングなど「重い」計算を行う処理です。ここでの計算ジョブはマシンのクラスタ(CPU、GPU、場合によってはTPU)で数時間から数週間かかることがあります。

     HPCの分散処理にはいくつかのアプローチがあります:

    • GolemiEx.ecは分散型スーパーコンピュータとそれに関連するアプリの組み合わせとしてとらえています。
    • Nyriadはストレージ処理としてとらえています。基本的に処理は分散ストレージ(Nyriadにも解決策があります)と隣接しています。
    • TrueBitはサードパーティが計算。その計算後のチェックを行います(可能な場合は暗黙的にチェックし、質問が発生した場合は明示的にチェックします)。
    • 一部の人々は単にVMまたはDockerコンテナで重い計算を実行し、その結果(最終的なVMステートまたは計算結果のみ)をアクセスが制限されたブロブストレージに格納します。次にトークン化された読み取り権限などを利用してコンテナへのアクセスを販売します。このアプローチはクライアントに結果検証をより多く要求しますが、今日使える技術で全てできることが利点です。これはTrueBitが成熟するにつれてTrueBitと自然に統合されます。

    コミュニケーション

     ここでは第3の基本的なコンピューティング要素のコミュニケーションについて説明します。コミュニケーションをとらえるには多くの方法があります。ここではネットワークへの接続に焦点を当てます。データ、価値、ステートの3つのレベルがあります。

    データ

     私たちは60年代にARPAnetを手に入れました。この成功はNPLCYCLADESのようないくつかの同様のネットワークを生み出しました。そして新しい問題も生まれました。異なるネットワークはお互い会話ができませんでした。CerfとKahnは70年代にTCP/IPを開発して現在インターネットと呼ばれるネットワークのネットワークを作りました。 TCP/IPは現在ネットワークを接続する事実上の標準になっています。OSIは競合するプロトコルでしたが衰退していきました。しかし、皮肉なことに、そのモデルは有用であることが証明されています。したがって、長い年月が経っているにもかかわらず、TCP/IPはデータのネットワークをつなぐための分散ビルディングブロックです。

     Torプロジェクトはユーザーのプライバシーを保護するためのTCP/IPオーバーレイと見なすことができます。しかし、アメリカ国防総省からの資金提供はいうまでもないことですが、集中化の側面があります。トークン化されたTorのようなプロジェクトが出現しはじめています。今しばらくお待ちください[2]。

    価値

     TCP/IPはネットワークをデータレベルでのみ接続します。TCP/IPではパケットを二重に使うことがあります(一度に複数の宛先に同じパケットを送ります)がそれは気にしません。しかし、ネットワークに接続して価値を送る場合はどうでしょうか?たとえばBitcoinやEthereum、あるいはSWIFT決済ネットワークからRippleのXRPネットワーク。トークンを一度に一つの宛先だけに送りたいはずです。交換機は二重支出を防ぎながらネットワークに接続する方法の一つです。しかし交換機の利用はかなり重いです。ただし暗号エスクローを使用することで、交換機の本質部分だけ抽出してスリム化し、仲介人の必要性を取り除くことができます。アリスはMalloryを介してボブに送金することができます。Malloryはファンドを送りますが、使うことはできません(そしてMalloryは永遠にファンドを留めることができないので、その場合はタイムアウトとなります)。これがインターレジャープロトコル(ILP)の本質です。双方向ペグ(サイドチェーン)とステートチャンネル(LightningRaiden)とコンセプト的には同じです。しかし、価値のネットワーク接続に100%フォーカスしています。 ILPに加えてCosmosもあります。Cosmosはより利便性を高めるために複雑さを少し増しています。

    ステート

     価値をネットワークにつなぐ先は何でしょうか? あるネットワークから別のネットワークにジャンプすることができる独自のBitcoinウォレットを備えたコンピュータウイルスを想像してみてください。またEthereumメインネット内のスマートコントラクトがその状態を別のEthereumネットうあ別の互換性のあるネットに移すことができたら?またはAI DAOを1つのネットに制限するのはなぜですか?

     Polkadotはこのためにあります。ステートをネットワークでつなぐ。Aeternityは価値のネットワークとステートのネットワークの間のどこかにあてはまります。

    ビルディングブロックを組み合わせた事例

     ここまでコンピューティングの3つの要素(ストレージ、プロセッシング、コミュニケーション)と、それぞれのビルディングブロックおよびサンプルプロジェクトを紹介してきました。

     人々は組み合わせながらシステムを構築しはじめています。二つのブロックの多くの組み合わせるプロジェクトはたくさんあります。通常はIPFSとEthereumまたはIPFSとIPDBの組み合わせです。そして三つ以上のブロックを組み合わせる事例もあります。ここでいくつかの最先端の事例を紹介します。

    Ujoの事例

    UjoではIPFS|Swarm + IPDB + Ethereumの組み合わせで分散型音楽サービスを実現しています。IPFSまたはSwarmはファイルシステムとブロブストレージとして、IPDBとBigchainDBはメタデータの格納とクエリに、Ethereumはトークンの格納とステートフルなビジネスロジックに使用されます。

    Innogyの事例

    Innogyではサプライチェーン/IoTアプリケーションにIPFS + IPDB + IOTAを使用しています。IPFSはファイルシステムとブロブストレージとして、IPDBとBigchainDBはメタデータの格納とクエリに、IOTAは時系列データに使用されます。

    そのほかのフレーミング

     ブロックチェーンコミュニティにおける他の人たちによる他のフレーミングも紹介します。それぞれの人たちとの会話を私は大いに楽しみました。

     Joel Monegroの”Fat Protocolsは各ビルディングブロックをプロトコルとして位置づけています。なかなかクールなフレーミングの方法だと思っていますが、それはビルディングブロックがネットワークプロトコルを介してのみ会話をすることとなります。別の方法もあります。ブロックは単に1つの「インポート」ステートメントまたはライブラリ呼び出しとする。

     インポートを使用する理由は(a)レイテンシを短くすること:ネットワークコールに時間がかかりユーザビリティを損なう可能性がある(b)シンプルさ:ライブラリ(または埋め込みコード)の利用はネットワークでの接続、トークンの支払いなどより簡単(c)より成熟している:プロトコルスタックが誕生してきています。私たちは数十年にわたる素晴らしいUnixライブラリを持っています。PythonとJavaScriptのブロックも15年以上経過しています。

     Fred Ehrsamの “Dapp Developer StackはWebビジネスモデルに重点を置いています。 このフレーミングも非常に有益ですが、特定のコンピューティング要素(ファイルシステムとデータベースの違いなど)のブロックをさらに区別することを目的としていません。

     BigchainDBのホワイトペーパー[PDF](2016年2月に公開)図1は、このポストのスタックの初期バージョンです。以下のチャートがそれです:

    集中化アプリと分散化アプリのスタック

     この図ではプロセッシング、ファイルシステムおよびデータベースのビルディングブロックにフォーカスしています。「コンピューティングの要素」という観点からは枠組みを構成しておらず、分散処理の種類も区別していませんでした。私がこの記事はこのホワイトペーパーを書いた一年半からの私の考えの進化とも言えます。私の考えは段階的に進化していき5月22日のConcensus 2017でのトークはこの記事と非常によく似ています。そしてこの記事を書いた理由はこのトークをきちんと形にするリクエストをたくさん受けたからです 🙂

     この図は完全集中化(左)から完全分散化(右)までのスペクトラムがあることを示しています。このような表現は既存のシステムを徐々に分権化する上で、どこが最も分散化の恩恵を受けるのか理解するのに役立ちます。

     Stephan Tualの “Web 3.0 Revisitedはこの記事と精神的な部分で近いですが、よりEthereumに重点を置いています。多くのプロジェクトを類似のビルディングブロックにグループ化することでコミュニティに役立つ貢献をしています。自分の考え方ととても似ていることに喜んで驚いていました。しかしアプリケーション(メッセージング、ストレージ、コンセンサス、ガバナンスなどのブロック)を構成するブロックに「アプリ」「What」「How」の3つの要素が混ざり合っています。私にとってはブロックは「What」でなければなりません。したがって、メッセージングは​​アプリです(アプリケーションレベル)。ストレージはより細分化する必要があります。コンセンサスは「How」の一部です。ガバナンスも「How」です。また下位のブロックとして(ネットワーク)プロトコルがあります。私はライブラリの呼び出しと同様にブロックが互いに話すことができる方法の一つだと考えています。それにもかかわらず、私はこれが優れた記事とスタックだと思います 🙂

     Alexander Ruppertの“Mapping the decentralized worldには約20のグループに整理され、x軸はインフラストラクチャ層からアプリケーション層まで4つの上位レベルのグループを表していて、ミドルウェアと流動性を中間レベルに位置づけています。これも素晴らしいやり方です。私はAlexのマップを手伝うことができてうれしいです。コアインフラストラクチャーに重点を置いておらず、より幅広いトレンドに焦点を当てています。これもコアインフラストラクチャに関する第一原則フレーミングです。

    将来

     UjoのプロジェクトではIPFSとSwarm(ブロブ)+ Ethereum(トークンとビジネスロジック)+ IPDBとBigchainDB(データベースと高速クエリ)を組み合わせて全てのメリットを享受しています。

     この傾向はビルディングブロックの関係性の理解が進むにつれて増えていくと考えます。「ブロックチェーン」という大きなモノリスにすべてを詰め込むより生産的です。

     このスタック自体も分散型エコシステムとともに絶えず進化するでしょう。AWSはブロブストレージ用のS3というたった一つのサービスからはじまりました。 それからプロセッシングのためのEC2が追加され、AWSのサービスは増え続けています。ここにAWSのリリースタイムラインがあります。現在AWSには50以上のブロックがあります。以下はすべてのAWSサービスの現在のスナップショットです。

    AWSのサービス一覧(2017年7月)

     AWSで起きたことが分散化の分野でも起きると予想しています。おそらく現在ある全てのAWSブロックは分散化されるでしょう。もちろんクラウド、モバイル、分散システムにはそれぞれ独自のブロックがあります。分散システムであればトークンストレージなどです。これからの将来はとても楽しみです。

     

     ここ数年、このスタックについて私にフィードバックをくれた無数の人々に感謝します。Carly Sheridan、Troy McConaghy、Dimi de Jongheの編集協力に感謝します。最後にビルディングブロックを改善し続け、さらに興味深いアプリケーションを開発し続けている宇宙の皆様に感謝します:)

    翻訳:カタパルト式スープレックスなかむらかずや

    この記事はシステムの視点でブロックチェーンを解説した”Blockchain Infrastructure Landscape: A First Principles Framing“の翻訳です。これを書いたのはBigchainDBの共同創設者でCTOのTrent McConaghy氏です。

    ボク自身はビットコインのような仮想通貨にはあまり興味なくって、コンピューター技術としてのブロックチェーンに興味がありました。「Ethereumに興味がある」と言っても「最近値上がりしてるよね」と答えが返ってくると(Ether [ETH]でなくってEthereumなんだけどと)ガッカリしたりして。

    今はEthereumやIOTA、Polkadotなど面白い技術がたくさん出てきています。ただ、技術要素はたくさんあるのだけれど、全体的に俯瞰できるような資料があまりなかった。そんな時に出会ったのがこの記事でした。

    メインフレームからクライアントサーバー型、そしてクラウドコンピューティングに移り変わりました。そして、クラウドの先にある世界。これから起きるであろう変化は本当の意味での分散型のシステムで、ブロックチェーン(またはTangleなどその次世代の仕組み)がその中心にある可能性が高いと思います。

    カタパルトスープレックスなかむらかずや

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    *1:[1] これらのビルディングブロックを階層化することもできます。例えばデータベースは生データ(ブロブ)ストレージが格納されるファイルシステムの上に存在します。分散データベースにはコミュニケーションが含まれます。例えば最新のデータベースのほとんどは、Ext4、XFS、GridFSなどのファイルシステムを介して、基礎となるストレージと通信します。この記事で紹介しているフレーミングはアプリケーション開発者からの視点です。

    *2:[3] 私は「スマートコントラクト」という名前は好きではありません。 AIの世界から見ればスマートコントラクトはスマートではありませんし、法的意味で「コントラクト」とは何の関係もありません。 それらに法規が含まれている場合、リカーディアン・コントラクトのようにそのように言及されています。「分散プロセス」というラベルとその中の「分散型ビジネスロジック」というラベルの方が理にかなっています。しかし、「スマートコントラクト」はすでに広まってしまった名前なので、しかたありません。ラベルの上に戦うより集中すべきことがたくさんあります😀

    *3:[4] 理論的には純粋な意味ではなく、実用的な意味で「チューリング完全」です。 つまり、マシンはインプットのビットとその現在の内部ステートの関数としてストリングのビットを返します。無限に実行されたり「いつ機械が止まるのか」という問題(停止問題)を解決するのは実用的です。

  • 書評|シェアリング経済以降の新しい地図「WTF」Tim O’Reilly

    Tim O'Reilly (3)

    “WTF”の著者、Tim O’Reilly氏

     インターネットで世の中が大きく変わり、変わり続けています。時代が変わると地図も変わります。コンピューターの時代はIBMがエコシステムの中心でした。パソコンの時代はマイクロソフトがエコシステムの中心でした。さらにオープンソースが地図を書き換え、GoogleやFacebookがさらにその地図を書き換えました。そして、今また地図が書き換えられようとしています。その地図はどんなものなのか。それがティム・オライリーの最新著書”WTF“の主題です。

     ティム・オライリーはソフトウェア開発者ならおそらく誰でも一冊は持っている本の出版会社O’Reilly Mediaの創業者で、Web 2.0という言葉を広めた人です。そう、Web 2.0もその当時の地図でした。WTFは英語で”What the fuck”の略ですが、この本では色々な意味で取れます。”What’s the future”もその一つ。WTFという時は驚きとともに色々な感情が込められます。日本語だと「なんてこった」に近いかもしれません。すごい発明を見た時に発せられる「なんてこった」とか。すごく悪いことが起きた時に発する「なんてこった」とか。

     新しい技術はいいことばかりではない。フェイクニュースや人工知能(AI)についての不安感。WTFはどちらにでもなるし、それを選ぶのは私たち自身ですよというのがこの本の言いたいことかな。

    昔の地図

     この本は昔の地図からはじまります。パターンは繰り返されるので、昔の地図の変遷を見ることでそのパターンを読み取ることができるからです。ボク自身はマイクロソフトに勤めていたので、IBMからマイクロソフトへのパソコンの主役の移り変わりやそのあとのオープンソースの流れも理解しているつもりです。

     それでもフリーソフトウェアからオープンソースへの流れって曖昧でした。Linux FoundationはLinuxだけでなく様々なオープンソースプロジェクトの支援をしていますが、その成り立ちもあまり理解していませんでした。

     この辺はあまり物語として日本で語られていない部分なんじゃないかという気がします。ジェダイとシスの戦いは面白いけど、シスが滅びて平和になった世界の話はあまり面白くない。この本ではそんな新しい希望と可能性の世界地図がどのようにできたかの物語として伝えようとしています。そこからパターンを探る。「フォースを感じるのだ」みたい。見た目もちょっとオビ=ワン・ケノービっぽい。

    新しい地図

     この本の面白いところはインターネットの技術的な話にとどまらないところです。シェアリング経済やIoTはネットと実社会の垣根を限りなく無くした。それがどういうことを意味するのか。ボクたちはどのように今の地図を読み解けばいいのか。それをティム・オライリーと一緒に考えるような形になっています。

     その範囲はかなり広く、政府や公共サービスのあり方、メディアのあり方、組織のあり方まで広がっています。特にCode for Americaとの関わりから始まる公共サービスに関しての章は非常にエキサイティングでした。少し中だるみする部分もあるのですが、全般的にわくわく感を維持しています。

    この本はおススメか?

     テクノロジー分野やインターネットに興味がある人にはおススメです。あと政府関係や自治体の人たちも読んだほうがいいかも。これから起業しようとする人、新規事業に取り組もうという会社員もここで描かれる新しい地図は参考になるでしょう。翻訳が待たれるところです。まあ、ティム・オライリーの本なんでどこかの出版社が日本語版を出してくれるでしょう。

    WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us

    WTF?: What’s the Future and Why It’s Up to Us

     

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