『スター80』映画レビュー|プレイメイト殺人事件を描いた実録ドラマ

1983年公開の『スター80』は、ボブ・フォッシー監督が遺作として手掛けた作品です。題材となったのは、実際に起きたプレイメイト殺人事件。1970年代後半、プレイボーイ誌で注目を浴びたドロシー・ストラットンが、夫でありマネージャーのポール・スナイダーに殺害された事件を忠実に再現しています。

主演はドロシー役にマリエル・ヘミングウェイ、ポール役にエリック・ロバーツ。監督の独自性が控えめな本作は、リアリティ重視で進む反面、ボブ・フォッシー作品に期待されるドラマ性や演出の華やかさは抑えられています。

あらすじ|嫉妬と支配欲が引き起こす悲劇

田舎町で生まれた美しい少女ドロシー・ストラットン(マリエル・ヘミングウェイ)は、ナイトクラブで働く中でポール・スナイダー(エリック・ロバーツ)と出会います。ポールは彼女をプレイボーイ誌のモデルとして成功させ、彼女のキャリアは急上昇。しかし、ポールはドロシーが次第に自分から離れていくことに耐えられず、嫉妬と劣等感に支配されていきます。

ドロシーが映画にも出演し、さらなる成功を収める中、ポールの不安定な精神状態が二人の関係を破綻させ、最終的に彼女を殺害するという悲劇的な結末を迎えます。映画は、事件後の関係者へのインタビューを挿入しながら、物語を進めていきます。

テーマ|成功の代償と嫉妬の恐怖

『スター80』では、成功と嫉妬、そして人間関係の歪みが中心テーマとなっています。ドロシーが成功を掴む一方で、ポールは自分の存在意義を見失い、彼女を所有しようとする執着が悲劇を招きます。成功の光が彼らの関係を蝕むというメッセージは興味深いものの、物語の展開が単調で、テーマを掘り下げることには成功していない印象を受けます。

また、ハリウッドのショービジネスの残酷さも描かれていますが、それが映画全体に効果的に活かされているかというと疑問が残ります。キャラクターの感情や関係性が淡々と進むため、物語に強いドラマ性や緊張感を期待すると肩透かしを食らうかもしれません。

キャラクター造形|ポールとドロシーの対比

ドロシー・ストラットン(マリエル・ヘミングウェイ)

美しく成功を掴んだドロシーは、純粋で人懐っこい性格が魅力的ですが、内面や感情の深い部分があまり描かれておらず、観客にとって立体的なキャラクターとして映りにくい部分があります。

ポール・スナイダー(エリック・ロバーツ)

ポールはナルシシストで野心的ですが、脆い内面が彼の破滅的な行動に繋がる重要なキャラクターです。エリック・ロバーツは、彼の虚栄心や嫉妬を巧みに演じていますが、ポールの感情が深掘りされないため、彼の行動に対する理解が薄れがちです。

二人の対比は興味深いものの、ストーリーが単調で盛り上がりに欠けるため、彼らの関係性が十分に観客に伝わらない点が惜しいところです。

映画技法|リアリティを追求した演出

インタビュー形式の採用

事件後の関係者へのインタビューを挿入する手法は、実話ベースの映画としてリアリティを高める意図が感じられます。しかし、この構成が物語を断片的に進行させるため、観客がキャラクターに感情移入しづらい部分もあります。

控えめな演出

フォッシー監督の過去作に見られる華やかさや演出の遊び心は抑えられており、シンプルな映像が続きます。この選択は実話の重さを際立たせる意図があると考えられますが、その分、映画のテンポが冗長に感じられることもあります。

まとめ|フォッシー作品としては控えめな一作

『スター80』は、実際の事件を題材にし、リアリティを追求した映画です。エリック・ロバーツやマリエル・ヘミングウェイの演技は見応えがありますが、ストーリーの単調さと盛り上がりに欠ける展開が評価を分ける要因となっています。

フォッシー監督の過去作と比べると、華やかさやドラマ性が薄く、特筆すべき部分が少ない印象を受けます。本作を楽しむかどうかは、題材やキャラクターの興味深さにどれだけ魅力を感じるか次第でしょう。過去のフォッシー作品が好きな方でも、本作がその期待を超えるかは疑問が残るところです。

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