哲学者リー・マキンタイアによるデマと戦う指南書『On Disinformation』の紹介です。ティモシー・スナイダーの『暴政(原題:On Tyranny)』 がインスピレーションになっているそうで、道理でタイトルが似ているはずだ。本書は2024年の大統領選でドナルド・トランプの当選を阻止するための啓もう書なのだと思います。結果的にドナルド・トランプと共和党はマキンタイアの願いとは裏腹に勝利してしまうのですが。
本書ではまずデマの定義をします。そして、デマが広がるパターンを解説したうえで、デマと戦うやり方を考察します。本書においてデマ(Disinformation)とは意図的に作成され、拡散される虚偽の情報。目的は他人を欺き、操作することと定義しています。これは単なる間違った情報(misinformation)と異なり、悪意を持って真実を破壊します。
現代のモダンなデマ戦術は「秘密警察の父」といわれるロシアのフェリックス・ジェルジンスキーが1920年代に生み出しました。それがアメリカではじめてつかわれたのは1953年のプラザホテルの会合からはじまるタバコ会社による偽情報作戦でした。事実を隠したり壊したりできなければ、嘘で溢れさせればいい。そうすれば何が本当なのかわからなくなる。このタバコ会社のデマ戦略は成功して何十年も規制を逃れることができました。こんな嘘が通用するなら、どんな嘘も通用する。これが成功体験となってしまった。
実際にドナルド・トランプは前回の大統領としての4年間の任期中に30,573回嘘をついているとワシントン・ポストは報じました。それでも何かペナルティーがあったわけではない。2024年の大統領選挙の結果を見る限り、ある意味、ドナルド・トランプのデマ戦略も成功してしまったということなんだと思います。
リー・マキンタイアはデマ戦略は共通して以下の5つのステップから構成されると解説します。
- 都合のいい証拠だけを使う
- 陰謀説を織り交ぜる
- 非論理的な説明をする
- 専門家をでっちあげる
- 相手に達成不可能な条件を突きつける
なんか、Xの議論のテンプレみたいな感じですね。おそらく両方がそう思っているんだと思います。意図してなのか、してないのか分かりませんが、それが二極化につながります。リー・マキンタイアはデマは意図的に拡散されるものととらえているので、二極化も意図的に起こされていると考えています。デマを作る人がいて、拡散する人がいて、信じる人がいる。この過程で敵と味方に分けられてしまう。「敵」になってしまったらどんな非論理的なことでも信じてしまう。デマと戦う戦術の一つは「二極化」に乗らないだそうです。
以下がそれを含むマッキンタイヤが示す「デマと戦うための10の行動指針」です。
- うそをつく者と正面から対立する
- 過去の同様の戦いから教訓を得る
- 二極化にのらない、信じている相手に対して可能な限り親切に接する
- 対立する相手を被害者として扱う
- 重要な課題に焦点を当て続ける
- 教育や批判的思考だけで解決できるという幻想を捨てる
- 勝利は容易ではないことを受け入れる
- 政治家により多くのリソースを要求する
- 仲間の存在から力を得る
- 情報収集能力を向上させる
2024年の選挙結果を観るとリー・マキンタイアが望む世界はなかなか遠そうですが、それでも戦い続けなければいけないということなのでしょう。
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