『13回の新月のある年に』映画レビュー|ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの愛と破滅のドラマ

1978年公開の『13回の新月のある年に』は、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が自身のパートナー、アルミン・マイヤーの死をきっかけに制作した深く個人的な作品です。「生きる意味としての愛」をテーマに、愛を求めて破滅へと向かう主人公の5日間を描いた本作は、ニュー・ジャーマン・シネマの中でも特に前衛的な一作として知られています。

あらすじ|愛を求めた果ての迷いと揺れ

主人公は、かつて男性だったエルヴィラ(フォルカー・シュペングラー)。愛する同僚アントン・ザイツ(ゴットフリード・ジョン)の「お前が女だったら愛せた」という言葉をきっかけに、性転換手術を受けた過去を持つ人物です。彼女は自分の人生を取り戻すため、最後の5日間でかつて関わった人々を訪ね歩きます。しかし、愛を求めるその行動は、次第に取り返しのつかない破滅へと向かっていきます。

テーマ|揺れるジェンダーと「新月」の象徴

本作のタイトル「13回の新月のある年に」は、太陰年の中で特別な不安定さや破滅を象徴しています。エルヴィラ自身の揺れるアイデンティティや、愛を求める中で迷走する彼女の姿が、この新月の不安定さに重ねられています。また、現代的なトランスジェンダーの定義にそのまま当てはまるかは議論の余地がありますが、エルヴィラの性別やジェンダーの揺れが、物語を動かす中心的な力となっています。

キャラクター造形|愛を巡る群像劇

主人公エルヴィラを演じるフォルカー・シュペングラーの演技は、複雑で繊細なキャラクターを見事に体現しています。また、イングリット・カーフェンやゴットフリード・ジョンといったファスビンダー作品の常連が脇を固め、監督自身も出演。キャスト全体が作品のテーマを深く理解し、強い一体感を持って物語を紡ぎ出しています。

映画技法|動きと静止で見せるファスビンダーの美学

ファスビンダー監督は本作でも、動きのあるハンディカメラと静止した構図のバランスを駆使し、視覚的な美しさを作り上げています。出発地点と到着地点で構図が決まるシーンは、彼の作品における空間の使い方の見事さを示しています。ただし、ニュー・ジャーマン・シネマらしい前衛的な手法が濃く反映されているため、物語のストーリー性が薄れたと感じる観客もいるかもしれません。

まとめ|愛の意味を問う、挑戦的で個人的な作品

『13回の新月のある年に』は、1978年11月16日に公開され、ファスビンダー監督の作品群の中でも特に個人的かつ挑戦的な一作です。ジェンダーの揺れや愛の破滅を描く物語は、観る者に深い印象を与える一方、独特の前衛性が好みを分ける可能性もあります。それでも、ファスビンダーの美学とテーマ性が詰まったこの作品は、彼のフィルモグラフィーの中で重要な位置を占める作品といえるでしょう。

13回の新月のある年に

13回の新月のある年に

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